01155_有事対応フェーズ>法務活動・フェーズ4>不祥事等対応法務(フェーズ4B)>(7)各ステークホルダーの特性に応じた個別対応>株主総会対策

法令違反の不祥事に伴って不可避的に発生するのが、株主総会での究明質疑です。

株主は企業のオーナーとして、最も重要なステークホルダーです。

とりわけ、株主総会を、実質的な討議の場とすることなく簡潔なセレモニーで終わらせたいと願う日本企業の経営陣の多くにとって、不祥事直後の株主総会ほど忌避したいものはないと思われます。

しかし、前述のとおり、そもそも企業が株主の所有に帰すものであり、取締役や代表取締役等の経営陣は、所詮株主から投資された資本を運用している立場に過ぎない以上、上記の考え方は、本来の株式会社のあり方からして極めて不健全であるといえます。

株主総会対策の基本は報道機関対策と同じです。

嘘をつかない、隠さない、逃げないという原則を守り、調査の結果、判明した確定的な事実をもとに、具体的な対応策・再発防止計画を明快に述べることです。

株主総会での対応で特に問題となるのは、不祥事に関連する訴訟の見通しや監督行政機関からの処分の見通し等の株価に影響を与える事実を投資家に対してわかりやすく述べることです。

一方的な総会運営で強引に乗り切ろうとすると、かえって事態を悪化させ、無用の紛争を招く場合もあるので注意が必要となります。

なお、法令違反の不祥事を起こした企業は、総会屋のターゲットとなり、株付(入手した株を多人数に細かく分割譲渡し、名義の書換を要求する行為)の形で殺到してくることもあると思われます。

しかし、会社として本来対応すべき限界を超えてこれらの特殊株主の要求に答えることは必要ないばかりか、このような対応はかえって会社法違反(利益供与罪)として指弾されることにつながります。

ただ、特定企業のように、何度も法令違反の不祥事を起こし、多少のことに動揺しないだけの免疫がついてしまい、逆の意味で総会対策が万全なところはともかく、長年株付が行われず、総会対策の具体的ノウハウがないところは、総会前から専門の弁護士を増強し、総会屋への対応力をつけておくべきでしょう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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