01158_有事対応フェーズ>法務活動・フェーズ4>不祥事等対応法務(フェーズ4B)>(7)各ステークホルダーの特性に応じた個別対応>訴訟対策その1

1 被害者代理人のプロフィールや動静に関する情報収集

まず、法令違反により被害を被った被害者が原告となって、企業に対する訴訟提起をしてくることに対して相応の対策を立てる必要があります。

このような場合、最初に調査すべきは、原告がそれぞれ独自にアクションを起こしてくるのか、あるいは、原告団を結成して集団的なアクションを起こしてくるのか、という点です。

適格消費者団体から交渉を申し入れられ、協議不調となって、差止請求通知を経て差止訴訟提起に至る場合もありますので、このような動静にも注意を払わなければなりません。

また、原告団の代理を行う弁護士についても調査を行う必要があります。

原告団の代理人の力量によって、この種のアクションの成否は大きく変わってくるからです。

すなわち、被害者弁護に関しては、事実調査、証拠収集、法令解釈といった純弁護士的能力のほか、報道機関を使った世論喚起や裁判所から和解勧告等を引き出すための様々なテクニック等が必要となり、このような集団アクションの取扱いに慣れた弁護士の手にかかれば、訴訟慣れしていない大手法律事務所の弁護士を何人集めても歯が立たないことが相当あります。

薬害エイズ弁護団が、報道機関を動かし、最後は厚生大臣(当時)まで動かし、和解を勝ち取った経緯をみても、戦略のスケールの壮大さは目を見張るものがあります。

2 企業側の顧問弁護士(契約法律事務所)の力量把握

企業としても、普段使っている顧問弁護士(契約法律事務所)のカ量もよく知っておく必要があります。

すなわち、
「ビジネスや会計知識に明るく、企画型法務に創造的な頭脳を発揮する弁護士」
「契約書が緻密で、予防法務に強い弁護士」

「訴訟に強い弁護士」
とは全く別の人種である、という意識を持って、使い分ける必要も出てきます。

3 企業側としての対応の基本方針の策定

相手方に弁護士が就任した場合、まず、内容証明郵便による通知書が送付され、訴訟前の示談交渉が開始されることになります。

この時までに、対応の基本方針を定めておく必要があります。

というのは、示談戦略か訴訟戦略か、訴訟戦略についてもどの程度まで争うのかによってその後の展開が大きく違ってくるからです。

すなわち、原告団が結成されていないような状況では、原則として示談ベースで各個に対応していく戦略が優れています。

これは、一般に被害者・消費者側は経済力がなく、時間がかかる訴訟手続より多少経済的な回復に不満があっても、示談での早期解決を望むことが多いからです。

また、被害者・原告側につく弁護士の力量も様々で、かつ他の原告代理人弁護士との連携も一般に難しく、交渉を展開する上で必要な情報も不足しているケースがあります。

企業側を代表する弁護士の力量と原告側弁護士との個別的な相対的・比較的優劣によっては、企業側としては、早期に示談でまとめることにより、自己に有利な結果を導くことも不可能ではありません。

なお、民事訴訟法91条1項で
「何人も、裁判所書記官に対して訴訟記録の閲覧を請求することができる」
とされ、事件が終結していなくても同種事件の記録閲覧ができる点にも注意を要します。

すなわち、同種事件の原告は、先行する他の民事訴訟の進行を睨みつつ、その結果を援用する形で訴訟戦略を構築するのが一般的です。

こういう点からして、示談から訴訟に発展させてしまうと、被告企業側の訴訟戦略における手の内を見せることにもなるので、不利は著しいということになります。

以上のとおり、分散する原告が集団化する前段階でたたいてしまう
「各個撃破」
戦略が優れている、ということがいえます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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