企業と一労働者との民事問題に労働組合が介入してくる場合もあります。
これは、労働組合という
「労働紛争のプロ」
が、団体交渉開始を通知して、労働紛争に介入し、労働者の団結を背景に、要求貫徹に向けてアグレッシブに交渉をしてくることを意味します。
この点、
「労働組合による団体交渉というのは、労働者が結束して賃上げとか職場環境改善とかを問題とするのであって、一不良社員のクビを切ったという個人的な問題を交渉するのは筋違いではないか」
と疑間をもつ方もいるかもしれませんが、現在の労働組合法の解釈上、労働組合が組合員個人の解雇や配転を団体交渉の議題とすることは認められています。
解雇理由の有無や解雇の相当性等の問題は、最終的には事実認定権と法律解釈権を有する裁判所で判断しないことには埒があかない話ですし、団体交渉にて大人数で声を張り上げたほうの主張が正しいというわけではありません。
その意味では、
「裁判所で判断してもらうから、君たちとは交渉しても無駄」
という考えも一理あるのですが、労働組合法上、企業は法的義務として
「労働組合との団体交渉に誠実に応じる」
義務を負います。
逆の言い方をすれば、企業が不当に団体交渉を拒否したりすると、不当労働行為になり、労働委員会に呼ばれて、謝罪を求められたりする場合があります。
また、不当労働行為に対する労働組合のカウンターアタックとして、争議行為が展開されることがあります。
争議行為といっても、独立系労組に駆け込んだ解雇した従業員一人が
「ストライキするから、明日から仕事には来ません」
と言ったところで、
「もともとデキないからクビを切った従業員がストライキしたところでも痛くもかゆくもない」
と考えられる経営者もいると思います。
しかし、実際には、労働組合に属する他の組合員が、赤い鉢巻をして、プラカードと赤旗を立てて、ビラを撒いて、シュプレヒコールをあげる、などということも起こりえます。
メーカーや卸売業などであれば、外で騒がれても問題ないかもしれませんが、ホテルやレストランや宝石店や美容室などであれば、非常に恥ずかしい話になりますし、顧客にも迷惑がかかり、信用問題につながりかねません。
ですので、
「どうせ裁判所でしか解決できないから」
という理由で不誠実な対応をしていると、大きなトラブルに発展することもありますので、注意が必要です。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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