00331_日本企業法務史(5)「シェアホールダーズのみならず、ステークホルダーズをも裏切る、重篤な企業不祥事」の急増

2000年に入ると、雪印乳業の賞味期限切牛乳販売による集団食中毒事件、三菱自動車のリコール隠し事件、カネボウの粉飾決算、西武鉄道の株主名義偽装事件等、大型の企業不祥事が続発しました。 それまでの総会屋への利益供与といった不祥事は、いわば、シェアホールダーズ(株主、投資家)という、特定少数の属性の企業関係者を裏切るもので...

00330_日本企業法務史(4)外資系企業やベンチャー企業の台頭による企業法務プラクティスの進化

1998年に一時国有化された日本長期信用銀行(長銀、現:新生銀行)の売却交渉の際、外資系ファンドであるリップルウッドがウォールストリート流の交渉戦略を駆使し、8兆円超もの公的資金が投入された長銀をわずか10億円で買収しました。 その後、リップルウッドは「譲渡から3年以内に、当初の正常債権の判定に瑕疵が生じ、簿価より2割...

00329_日本企業法務史(3)「事前規制の時代」から「事後監視の時代」へ

護送船団行政全盛時代は、バブル経済崩壊後の1990年代後半頃には終焉を迎え、状況が一変し始めます。 1998年に中央省庁等改革基本法が成立し、2001年をもって、それまでの1府22省庁は、1府12省庁に再編されることになりました。 加えて、このあたりから、規制緩和が推進され、「護送船団行政」やこれを支えてきた裁量行政は...

00328_日本企業法務史(2)護送船団行政全盛時代における「企業の法務課題処理方法」

1980年から1990年代にかけて、企業がトラブルや問題が生じたときに駆け込むのは法務部や顧問弁護士のところではなく、まずは、監督行政機関や業界団体でした。 監督行政機関からの指導に対しては、阿咋の呼吸で伝えられるものも含め、徹底して従うことが企業のリスク管理行動として最も推奨されるものでした。 監督行政機関の見解を糺...

00327_日本企業法務史(1)護送船団時代

日本では、1980年代終わりから90年代なかばころまで、官庁の主導により産業界の育成が図られていた時代が存在しました。 この時代、各業界において競争力が最も欠落した企業であっても維持・存続できるような業界育成が行政の最大のミッションと考えられ、行政機関は、許認可権限やこれに基づく行政指導等の権限(行政裁量権)を駆使して...

00326_「顧客や従業員の引抜き」が「私的独占」に該当する場合

ある会社が、ライバル企業の3割近くの従業員を引き抜いた上、さらに、当該ライバル企業の顧客に対し、「自社との取引に切り替えれば、他の顧客にはない特別な条件で取引する」という不当な差別対価を提示して勧誘したという事件がありました。 この事件について東京地方裁判所は、「違法な引き抜き行為」に加え、これと近接した時期に「違法な...

00324_破産直前期に横行するドサクサ紛れの違法行為とその抑止システム

企業の経営が傾き、破産までカウントダウンの状態になると、ドサクサ紛れの不当な行為が横行するようになります。 まず、破産する企業の社長などは、将来の生活や再起に備えて少しでも多くしようと、あの手この手で財産を隠匿しようと画策します。 また、債権者の方も、1円でも多く自己の債権を回収しようと、脅し、すかし、だまし、なだめな...

00323_マイカー通勤制による使用者責任リスク

従業員にマイカー通勤をさせると、経費削減や時間短縮につながることがあり、特に自動車での移動頻度が高い地方の企業等においては、マイカー利用を前提とした通勤体制を構築する企業も多いようです。 しかしながら、マイカー通勤を採用することは、メリットばかりではありません。 マイカー通勤する従業員が事故を起こしたことによって従業員...

00322_事業者団体(業界団体)の自主規制が独占禁止法違反となる場合

学校のイジメや村八分ではありませんが、特定の企業が集まって、部外者企業を除け者にしていじめ倒すようなことをする場合があります。 その際、事業者団体の加入企業による個別のカルテルや各種不公正取引行為だけでなく、事業者団体そのものが主体となった反競争的行為も厳しく取り締まられることになります。 例えば、安全審査基準を設ける...

00321_企業の集まり(事業者団体)を独占禁止法が目の敵にする理由と背景

憲法では、集会・結社の自由が人権として保障されていますが、企業が集まる場合、 「経済活動の憲法」 たる「独占禁止法」は、保障しているどころか、あまり快く思わず、むしろ、目の敵にしているような状況です。 例えば、ある事業者団体が、「製造・販売業者の団体が製品の安全確保のため、自主的に厳しい安全基準を課す」として、高圧的な...