01064_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(2)トップマネジメント直属の法務関連諮問機関(コンプライアンス委員会等)>法的位置づけ

この組織の位置づけですが、会社法に特段根拠を持つものではなく、代表取締役や取締役会の私的な諮問機関です(無論、定款変更により、当該機関の設置根拠を定款に記載すれば、会社の私的自治による任意の法的機関となることもありえます)。

この委員会は、高度に専門的な法的論点や取締役会のみが判断すると中立性・公正性に疑義が生じるような事項について、独立・中立の組織の判断を経由することにより、意思決定機関の決定に公正さ・適正さを確保しようとするものであり、代表取締役や取締役会のビジネスジャッジメントを補完する役割をもちます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01063_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(2)トップマネジメント直属の法務関連諮問機関(コンプライアンス委員会等)>立場と役割等

企業によっては、経営意思決定を補完すべきものとして、社外専門家を招聘し独立委員会を組織し、経営上の助言や勧告を行わせる場合があります。

典型的な例としては、企業内部で不祥事が生じたため、不祥事に関する調査を行う場合に、独立委員会を立ち上げることで、調査の遂行及び結果の報告を求める場面が挙げられます。

その他、一定の買い占め行為に対して買収防衛策(ライツプラン等)を発動させるか否かを取締役会が決議するにあたって、社外専門家数名で構成される委員会(例えば、企業価値防衛委員会等)を構築し、当該委員会に諮問する場合が挙げられます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01062_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(1)企業トップマネジメント(代表取締役、代表執行役・CEO、社長等)

そもそも
「取締役」
とは、会社法に基づき、会社組織を取り締まる(統括する)者との意味であり、取締役が企業経営を行うにあたってまず必要となるのは、会社法その他法令に関する知識です。

しかしながら、現実には、各企業トップは、営業ノウハウやマーケティング、コスト削減に関する知識は豊富であっても、トップに就任するにあたって、試験等により会社法等の法令知識が試されることがないため、法令に関する知識は必ずしも十分ではありません。

企業のトップマネジメントは企業法務を直接実務として取り扱うことまでは求められていませんが、自らが法務知識に欠けることを十分自覚し、企業法務体制を充実させるとともに、
「経営意思決定の際、法令解釈に照らした適法性・妥当性を積極的に検証する」
という意識を常に持っておく必要があります。

なお、企業法務活動における企業のトップマネジメントの役割として最も重要なのは、企業法務活動に対して十分な人員・予算上の措置を講じることです。

企業内の法務セクションは、間接部門の最たるものであり、特に、予防法務活動(契約法務やコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務))に関しては、活動の効果が見えにくいため、
「不要不急の活動に人員も予算も割けない」
という社内世論が起こりやすくなります。

この点は、トップマネジメントとして、適正にジャッジしていかなければ、法務体制の貧弱さゆえ、思わぬところで足をすくわれることにもなりかねません。

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01061_「企業法務」の具体的内容>予防対策フェーズ(フェーズ3)>予防法務その1・契約法務(契約事故・企業間紛争予防のための法務活動)(フェーズ3A)

法務活動の中で、現代型企業法務の中核である予防法務、すなわち、 トラブル予防のための法務活動が挙げられます。

予防法務は、契約事故・企業間紛争を防ぐための予防活動(契約法務)と、法令違反を防ぐための予防活動(コンプライアンス法務)とに分類されます。

前者に関しては、契約自由の原則に立脚し、企業の優位を確立するため、提案された契約書のリスク・シミュレーションとリスク・コントロール(リスクの回避・移転・保有等)を行い(契約書精査)、契約条件について利己的・功利的に交渉し(交渉法務)、その成果を緻密に文書化していくこと(契約書作成法務)が活動のポイントとなります。

ここで、契約書作成やレビュー、校正する、という企業法務活動を行う上で、重要な前提知識を確認しておきます。

まず、
「契約書に何を、どのような形で記載するか」
ということについては、公式なルールは一切ありません。

契約書というのは、紛争予防のための重要なツール・デバイスと認識されておりますが、具体的な訴訟の場面での機能・役割としては、
「証拠」
の1つ(とはいっても重要な証拠ですが)に過ぎません。

すなわち、契約書は、
「一定の時点において、当事者間において、一定の合意がなされた」
という事実が記録されたものであり、合意内容に関して紛議が生じた場合に、議論のスタートとして、共通認識としての合意内容を確認する際に、合意内容を記述したもっとも端的かつ確実な記録としての契約書が、証拠として使われることになります。

どのような内容を書くかは当事者間の自由であり、公序良俗に反するものでない限り、どのような約束を書いても自由であり、約束が理解可能で具体性がある限り、書いたら書いた分だけ、法的効果が認められます。

書き方も、書く順番も、文体も、字体も自由です。
「甲」「乙」
という略称を使わなくても結構です。

「A」「B」「C」
でも
「α」「γ」「β」
でも、あるいは、
「トヨタ自動車株式会社、以下、『TMC』という」
という形で、適当な略称ないし記号を用いても構いません。

常体、敬体、方言でも構いませんし、字体も、明朝でもゴシックでも行書体でもギャル文字でも構いません。

内容も平均的裁判官が了解可能な程度に具体性と明確性があれば大丈夫です。

「利益を均等に配分する」
という内容も、
「利益は折半」「半々」「山分け」「プロラタ」「頭割り」
いずれでも意味は通じると思いますので、絶対駄目というわけではありません(裁判官に気持ちよく、ノイズを感じずに読んでもらう、という意味においては、表現上の選択としてはよく考えるべきですが)。

使用する紙も、コピー紙でも、ダンボール紙でも、ハンカチでも、紙ナプキンでも、板でも、構いません。

新聞紙やチラシに書いてもいいのですが、判読できない場合のリスクを考えると、おすすめできませんが、
「新聞紙やチラシに書いたら即無効」
と断言するような法律があるわけではありません。

思考を柔軟にして本質をご理解いただくために、極論を申し上げましたが、あまり奇天烈な契約書を用いた場合、裁判所がドン引きして、証拠の価値を低下させたりするかもしれません。

数百億円のM&Aの契約書が、紙ナプキンの上に、鉛筆で、河内弁を用いて、ギャル文字で書かれてあった場合、裁判所が、合意の真摯性を疑い、心裡留保と認定し、契約の瑕疵を認めるかもしれませんが、そのあたりは、自由心証主義に委ねられます。

紛争予防効果の高い、いざというときに役に立つ、良い契約書というのは、取引内容が具体的かつ明瞭に記述され、かつ、将来の不愉快な出来事が生じた場合の両当事者の対処方法が明確に定められているものです。

その意味では、まず、取引内容が曖昧で抽象的であってはならず、具体化、明瞭化されていることが先決課題として重要です。

この点、依頼部署である営業部門や企画部署では、曖昧で適当な合意内容で、あとは、
「実際やってみて、様子をみながら、もし問題があったら、あとは円満に話し合いで」
というスタンスで取引を走らせ、相当な資源動員を開始することを目論むかもしれませんが、このような内容を契約書として文書化したところで、紛争予防効果は皆無であり、たとえ、契約書があっても、トラブルに発展する危険が大きいことは明らかです。

したがって、法務部としては、契約書を作成する前提として、まず、取引内容を具体化、客観化、明確化する方向で、依頼部署に、条件を詰めさせることを指導することになります。

また、契約内容が狂った内容である場合、どれほど緻密な契約書があっても、紛争が防げません。

例えば、
「遠方の発展途上国にある、全く信用実績のない会社との間で、数億円の商品を掛売りし、契約トラブルは、先方の裁判所で解決する」
という、経済合理性も取引安全性も皆無の、ビジネス的には狂っているとしか言いようがない取引内容を、どんなに緻密に文書化し、大部の契約書を作り上げたところで、債権が支払われなければ、即座に、ギブアップするほかありません。

これは、契約書の問題というより、取引設計の問題であり、取引内容が、経済合理性や取引安全性の点で常軌を逸した内容であれば、どんなに優秀な弁護士が、どんなに立派な言語と文書で、分厚い契約書を作ったところで、
「狂った取引内容を正確に記述した」
というだけであり、紛争予防効果など期待すべくもありません。

最後に、契約内容は簡素でも、緻密でも差し支えありませんが、
「書いていないことは、何をやっても自由」
というのが、取引法の大原則です。

「何をやっても自由」
というのは、法律に反しない限り、どんなに不正義で不公平で非常識で卑怯で姑息で容認しがたいものであっても、
「やりたい放題」
ということを意味します。

もちろん、民法に定めのある典型契約に該当する場合、民法所定のルールが適用されますし、また、あまりに不正義な行為については、権利濫用や信義則といった一般法理で救済されることもあるにはありますが、基本的には、
「書いていないことは、何をやっても自由」
であり、
「やられたくなかったら、やられて困ることを発見・特定し、言語化・文書化して、禁忌事項とペナルティを記述しておく」
ということが推奨されます。

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01060_「企業法務」の具体的内容>経営政策・法務戦略構築フェーズ(フェーズ2)> 経営サポート法務(あるいは提言法務・提案法務)(フェーズ2A)

経営サポート法務とは、一般に企業経営上の重要な意思決定における立案・審議(経営政策や経営意思決定及び重要な事業企画の立案・審議)に参加し、企業の意思形成過程に関わる法律業務、法的知見を提供し、各ビジネスジャッジメントに合法性・合理性を確保させるための法務活動を指します。

なお、企業法務セクションが遂行するこのような活動を
「戦略法務」
と呼称する論者もいるようです。

しかし、法務スタッフが経営意思決定にオブザーバーとして参画したり、事業企画を検討する場で提案したりする活動を
「戦略法務」
と定義づけるのは、
「戦略」
という言葉が有する
「徹底した競争優位を指向し、ときに相手を出し抜くことも辞さない」
とのニュアンスにそぐわないと考えられます。

そこで、著者の概念整理上の見解として、
「戦略法務」
については
「規制不備(法の不備や盲点、さらには行政機関による運用不備や特異な業界慣行により生じた事業機会)を見つけ出し、競争優位確立のためにこれを積極的に利用する法務活動」
として定義づけることとし、上記のような法務活動は
「経営サポート法務」
と定義します。

前世紀においては、企業にとっては、監督官庁こそが、法制定者であり、法執行者であり、紛争解決機関であり“神様”でした。

監督官庁と緊密な関係さえ保っていれば、そもそも違反自体を逐一指摘されることはありませんでしたし、万が一違反が明るみになっても、監督官庁が
「何とかしてくれる」
という状況にあったのです。

この時代、
「企業の意思決定における合法性や合理性の確保」
という課題達成との関係では、法務スタッフや社内弁護士の知見を前提に経営意思決定をすることではなく、
「何でも監督官庁によく相談する」
ことこそが重要だったのです。

実際、昭和や平成初期において、金融機関が新しい金融商品を開発しその合法性に疑義が生じたときに相談に行く先は、法務部でも顧問弁護士でもなく、旧大蔵省銀行局(現金融庁)でした。

しかしながら、護送船団行政システムが終焉を迎え、徹底した規制緩和が行われ、監督官庁は
「法を制定し、解釈し、運用し、紛争を解決するオールマイティの神様」
から、法令を執行するという単純な役割(とはいえ、これが本来の役割ですが)に留まることになりました。

ここで、企業の法務上の負荷が増大しました。

「これまで気軽に経営意思決定の合法性に関する問題を相談できた“神様(=監督官庁)”」
が神殿の奥に引っ込んでしまい、自前で法務部(さらには社内弁護士)を増強し、自らのリスクとコストで法令を調べさせ、法務の知見を採取しながら、さらに心配であれば面倒な事前照会制度(ノーアクションレター)を活用するなどして、経営意思決定をしなければならなくなったのです。

このような時代の変化もあり、
「法務部の役割は、事件処理(臨床法務)や契約法務(予防法務)だけでは足りない。法的知見を提供し、経営政策や経営意思決定や事業企画に際して、これら経営判断に合法性・合理性を確保させる法務活動こそが重要だ」
といわれるようになり、経営サポート法務(提言法務・提案法務。論者により「戦略法務」)というプラクティスが確立するようになったのです。

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01058_「企業法務」の具体的内容>アセスメント・環境整備フェーズ(フェーズ1)>法令管理(フェーズ1A)

リスク管理活動の一種である企業法務においては、個別の法務活動を十全に展開する前提として、まず、適正なリスクアセスメントを行うことが重要です。

これは、一般的事業活動や、プロジェクトマネジメントにおいても、アセスメントや、フィージビリティ・スタディといった、ゲームルールやゲーム環境が、前提課題・先決課題として、意識的に先行されるのと同様です。

すなわち、企業法務を行うためのゲームルールやゲーム環境を把握する活動として、法令や規制環境の把握・管理が必要になります。

具体的には、企業活動に関わる法令・通達・条例のほか、裁判例や実務面での取扱慣行に関する情報の収集・整理が求められます(法令管理あるいは法令調査)。

そして、このような情報は、企業の属する産業分野や、企業の属する事業段階ごと、さらには企業の規模や上場・非上場の別によっても異なりますので、各企業の法務セクションや顧問弁護士(契約法律事務所)が意識的に収集・整理し、日々の法務活動に利用できる状態に置く必要があります。

また、法令や規制環境の調査・情報収集・整理といった規範の管理に加え、法が
「具体的事実を前提に、これを特定の規範にあてはめて、特定の法的効果が生じるか否かを観察する」
というロジックに立つ以上、規範にあてはめるべき具体的事実、すなわち、
「個々の企業活動がどのような状況になっているか」
という点の非法律的アセスメント(事実調査)も必要になる場合が出てきます。

このような事業活動を経済性や合理性の側面から状況把握や実体把握していく、という非法律的プロセスも法務の重要なオペレーションを構成します。

特に、この点は、顧問弁護士等の社外の専門家の手が十分回らないところであり、企業内部の専門集団である企業法務部が真価を発揮する場面です。

一般のビジネスパースンにとっては、裁判や紛議の場面で、弁護士は、法解釈や理屈を振り回しているだけのように誤解されているかもしれませんが、裁判や紛議の場面では、具体的事実とその痕跡たる証拠が決定的であり、また、法解釈は、裁判官の専権であり、弁護士が介入する余地はほとんどありません。

「汝(当事者や弁護士)、事実を語れ、我(裁判所)、法を適用せん」
という裁判手続きにおける役割分担の本質を描写した法格言のとおり、弁護士は、有利な法適用の前提を整えるべく、事実の把握と、痕跡の収集に奔走します。

その際、弁護士が必要とする事実や状況を、
「言語化され、文書化され、痕跡がされた、客観的記録」
として整理された資料を、
「戦闘に必要な武器弾薬等の軍需物資」
として、銃後で調達し、最前線で戦う弁護士に適時適切に届けるのが、有事における企業法務部の中心的機能・役割となります。そして、これができるのが、法的な考え方を弁護士と共有でき、
「法律」
という特殊言語・特殊文化を理解でき、企業活動に日常的にかかわっている企業法務組織のスタッフです。

その意味では、企業活動を法的側面から把握し、また、法適用の前提として、企業活動の実体や状況を
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化」
して把握する活動は、企業の法務安全保障という点からも非常に重要な意味と価値をもちます。

なお、文書や記録だけの理解・把握では不十分な場合もあります。

今後問題が発生しそうな事案や、新しいプロジェクトに関しては、関係書類を精査してビジネスゴールや状況把握に努めるとともに、時には、法務スタッフがオン・サイト・スタディー(実地調査)を行う必要も出てきます。

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01059_「企業法務」の具体的内容>アセスメント・環境整備フェーズ(フェーズ1)>文書管理(フェーズ1B)

「法務活動の前提環境を整備する」
という法務活動の中には、法令管理に加え、文書管理というものもあります。

契約書が適正に保存管理されるべきことは当然として、定款、議事録、許可証、登録証などの重要法務文書の管理も重要な法務活動の一環です。

すなわち、これら法務文書は、紛争発生時の証拠として活用されることを想定して、一定の歴史的事実を正確に記したものであり、これを利用する可能性が最も高いのが法務セクションであるからです。

そして、文書管理上の最大のリスク、すなわち
「所在分散による紛失事故」
を予防する意味でも、重要法務文書は法務セクシヨンにおいて集中した原本管理がなされるべきです。

仮に法務セクシヨンが原本管理をしない場合であっても、保管部門に対して適切な管理指導を行うことは
「法務部の重要な支援活動の1つ」
と位置づけられます。

なお、文書管理、すなわち、活動や状況を、ミエル化、カタチ化、言語化、文書化、フォーマル化するという活動については、軽視されがちです。

「本当に何があったか、どのような状況か、何が行われたか、は、自分たちが一番よく知っている」
「事実が捻じ曲げられるはずはない」
「説明すればわかってくれるし、説明するなんて簡単」
という楽観的なメンタリティーによるバイアスが作用していると思います。

このような集団バイアスによって、記録管理という営みが全般として軽視されがちで、このことが訴訟やトラブルにおける重大な耐性欠如となって、無残な結果をもたらします。

泣く子と地頭には勝ない、といいますが、法曹界では、役所と銀行には裁判で勝てない、という俗説があります。

要するに、銀行相手の訴訟や、国相手の国家賠償請求、税務争訟、また、これも一種の国相手の訴訟と言えますが、刑事事件においては、たいてい(90%前後の確率で)、訴訟の相手方が敗訴の憂き目に遭う、という経験上の蓋然性が存在する、ということです。

この理由について、
「裁判所が銀行や国といった強者やエスタブリッシュメント側にシンパシーがあり、不公平に味方するから」
ということがまことしやかに語られますが、私は邪推、都市伝説の類だと考えます。

すなわち、訴訟において、国や銀行が圧倒的な強さを発揮するのは、その文書管理能力の高さにあるから、と考えます。

相当規模が大きく法務組織が充実している特定の一部上場企業を除き、一般市民や一般事業会社においては、まともな記録管理や文書管理がされていません。

1ヶ月前、半年前、数年前の出来事について、5W2H(いつ、誰が、どこで、何を、どのように、いくら、どの量を、どうした)ということを、痕跡を添えて、明瞭に説明しようとしても、日常からその意味と価値と重要性を理解し、そのための予算とマンパワーがあって、適切な組織が整備され、継続的組織的に記録管理活動をしていないと、スマートかつスピーディーにこなすことは不可能です。

例えば、最強の中央官庁と言われる財務省(旧大蔵省)を例にとってみると、新卒総合職でもっとも優秀・有望な事務官の配属先は、主計局でも主税局でも国際局でもなく、大臣官房文書課(かつては秘書課文書係)であった、と仄聞します。

そのくらい、中央官庁の文書管理を重要視し、重きを置いている、ということであろう、と思われます。

すなわち、中央官庁でも、銀行でも、活動や状況を、ミエル化、カタチ化、言語化、文書化、フォーマル化するという活動をことのほか重要視しており、そのためのマンパワーやこれを支える予算整備に資源動員している、ということを表しています。

一般市民や一般事業会社が訴訟を起こしたり、巻き込まれたりした場合、訴訟代理人弁護士が就いている就いていないにかかわらず、日常の記録管理体制が不備・不十分とうこともあり、
「具体的事実を、5W2H(いつ、誰が、どこで、何を、どのように、いくら、どの量を、どうした)というフォーマットにしたがって、痕跡を添えて、明瞭に説明する」
ことがほとんどできておらず、
「これは不当」
「これは不正義・不公平」
「正義に反する」
といった形で、論拠や根拠もなく、イデオロギーを一方的に展開するだけ、という状況が傾向として多く見受けられます。

「汝(当事者、弁護士)、事実を語れ、我(裁判所)、法を適用せん」
という行動原理に忠実に従う裁判所としては、具体的な事実を誠実に語らず、正義や公平といったイデオロギーを振り回したり、裁判所の職分を冒して一方的に
「法を語る」
側を嫌悪・忌避し、しっかりとした記録を基礎に具体的事実を痕跡を添えて明瞭に説明する国や銀行の主張を是として、後者を有利に扱う運用をするのは、当然といえば当然です。

いずれにせよ、文書管理、すなわち、活動や状況を、ミエル化、カタチ化、言語化、文書化、フォーマル化するという活動については、決して軽視されるべきではなく、中央官庁や銀行を範とし、企業規模に応じたしかるべき資源動員を行って、適切適正に遂行されるべき課題として捉えるべきです。

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01057_企業法務活動を担う社内外の関係当事者

企業法務組織を構築にあたり、企業法務活動を担う社内外の当事者について整理しておきます。

「企業法務」
という企業における法務上の安全保障や有事対応といった活動を担当するのは、法務部や法規室等の企業内法務セクションと顧問弁護士だけと思われがちですが、企業法務を担うのはこれらの部門・人員だけに限りません。

企業法務は、企業の生死を決する重要な機能であり、経営トップが直接判断すべき事項も多く、 トップやトップを補佐すべき機関の役割も非常に重要です。

加えて、企業法務活動展開の上では、依頼部門(あるいは原局、ともいいます。例えば、法務相談を持ち込む事業部や製品部)や協働部門(例えば、契約の財務・税務に関わる部分について協働して解決にあたる財務部門や経理部門)との連携や、他の専門家(監査法人や税理士、弁理士等)との協議・調整も欠かせません。

企業法務を組織面から考察するにあたり、以上のように企業法務活動の担い手(企業法務活動を担うハードウェア)とその機能・役割を広い視点からみていく必要があります。

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01056_「非法務活動(疑似法務活動)の概念整理(概念区分)」による法務活動の定義外延の明確化

企業法務の活動を正しく理解し、位置づける上では、倫理、道徳、伝統文化、環境問題、社会貢献、CSRといった
「非法務活動(あるいは疑似法務活動)」
と企業法務の関係性を概念整理(概念区分)し、このような
「非法務活動」

「本来の企業法務活動」
に混在させないことが極めて重要です。

学者や実務家の中には、コンプライアンス法務に企業倫理、環境経営、社会貢献といった非法律的マターを含めて考える説を唱える方もいますが、著者はこの立場に強く反対します。

憲法22条1項による営業の自由の保障を通じて、わが国は自由主義経済体制を採用しました。

企業は法律で明確に禁止された事項以外について自由な活動を保障され、競争を通じて産業社会の発展に貢献するものとされます。

そして、企業法務とは、このような企業の自由な競争活動を支援するために、リスクとしての法環境を分析し、科学的・合理的に管理することを行動の本旨とするものです。

このような活動哲学を持つべき部署に、広報・IR政策として推進されるべき倫理や道徳の遵守、環境への配慮、社会貢献などを担わせることは、アクセルとブレーキを同時に踏ませるがごとき愚行であり、全く不合理で理解できない行動といえます。

「道徳や倫理、地球環境への配慮、CO2排出削減といった非法律的要求事項を遵守するか否か、遵守するとしてどの程度遵守するか」
といった非法務活動(あるいは疑似法務活動)は、これらの遵守が明確な法規範となれば格別、
「契約自由の原則及び営業活動の自由の理念に基づき、営利追求を本質とする企業活動を最大限支援する」
という企業法務活動とは明確に分離すべきものです。

したがって、合理的な企業法務活動を整理構築する上では、これら疑似概念との関係性を概念整理した上で、意識の点でも、所掌分担の点でも、明確に除外することが重要となります。

もちろん、著者は、ここで
「非法務活動(あるいは疑似法務活動)」
として整理分類した、
「倫理、道徳、伝統文化、環境問題、社会貢献やCSR等」
にまつわる企業活動の価値の一切を否定する意図はありません。

著者の意図は、
「非法務活動(あるいは疑似法務活動)は企業法務活動として、主体性と責任をもって推進する課題とは別のものである」
という認識上の整理を明確にすべきである、という点にあります。

「倫理、道徳、伝統文化、環境問題、社会貢献やCSR等にまつわる企業活動」
も重要ですが、
「このような企業活動を推奨することは、社会全体にとって望ましい結果になるので、規範としては強制されないが、行った方がいいかもしれない」
という程度のものに過ぎません。

企業の社会貢献に関しても、多くの企業は重篤な誤解をしていますが、企業の存在目的は営利の追求であり、企業の最大かつ唯一の社会貢献は、効率的な営利追求と、これを前提とした極力多くの額の納税です。

そして、企業の営利追求の結果として行われた納税により、健全な財政基盤を確保した国家が、倫理、道徳、伝統文化、環境問題、社会貢献といった事柄の増進や解決を担う姿こそが本来のあり方といえます。

いずれにせよ、
「非法務活動の概念整理による法務活動外延の明確化」
というテーマは、企業法務活動としての本質を見失わないためにも必要不可欠な事柄です。

こういう概念整理をおろそかにしながら、企業法務を担う部署に
「法の許す範囲で徹底的に営利を追求しろ。
ただ、倫理や地球環境、社会貢献、伝統文化も考えろ」
などといった不合理な指示を与えても混乱を招くだけであり、このような愚行は避けるべきと考えます。

運営管理コード:CLBP27TO28

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01055_今更ですが、法人って何ですか?(教えて!鐵丸先生Vol.010)

「法人」
という概念は、よく聞く言葉ですが、実はまったく理解できない法律概念の1つと思われますので、法人制度について解説します。

法人の対義語は、自然人です。

生身の人間です。

法人とは、
「法」律によって特別に人扱いしてあげる、バーチャル「人」間のこと
を指します。

たとえると、アイドルグループとかプロスポーツチームとか野球球団とかの集団に仮想人格を与えて、あたかも人間扱いするような制度を、
「法人制度」
ということができます。

人の集まりか、財産の集まりを、特別に人並みに扱い、取引社会に、契約社会に、法律の世界へ、どうぞいらっしゃい、参加して結構ですよ、普通の生身の人間と、どうぞ、取引したり、活動したり、していいですよ、法律として、特別にそれを認めてあげましょう、という制度です。

これが法人制度です。

人の集まりを社団法人、財産の集まりを財団法人、といいます。

法人の中で、もっとも数が多く、ポピュラーなものは、株式会社です。

株式会社は、営利社団法人といわれます。

営利追求という理念や志をかかげ、この志の下に結集した、人の集団、これが株式会社です。

集まった人たちは
「株主」
といわれます。

ちなみに、株式会社は、人類史上、偉大な発明、といわれています。

この仕組みができたから、資本主義ができ、社会で取引がどんどん活発になり、社会が豊かになり、みんな楽しく生活できている、といわれているのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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