00359_メーカーが下請に在庫引取を強制した場合における、下請法違反リスク

下請法は、適用対象となる下請取引について、発注元会社に対し
「下請代金の減額」や「買いたたき」等

「11の禁止事項」
を命じており、そのうちのひとつとして、
「正当な理由なく自己の指定する物を強制して購入させること」
を禁止しています(物の購入強制の禁止。同法4条1項6号)。

違反した発注元会社には、公取委による警告や勧告措置等が待っています。

ここにいう
「正当な理由」
とは、例えば、
「下請業者に発注した製品の品質を一定に保つために、発注元会社が自社製原材料の(適正な価格での)購入を要請する場合」
などが挙げられますが、今回のように、単に自社の在庫の消化を目的としているような場合には、正当な理由があるとは認められません。

また、
「強制して購入させること」
とは、下請業者による上辺だけの
「任意の了承」
の有無で決まるわけではなく、発注元会社としての強い立場を利用し、物の購入を取引条件に組み入れさせる場合はもちろん、事実上、物の購入を余儀なくさせているような場合も含まれます。

典型例としては、
1 発注担当者など下請取引に影響を及ぼし得る者が購入を要請する場合
2 下請業者ごとに目標額や目標量を定めて購入を要請する場合
3 購入しなければ不利益な取扱いをする旨を示唆するような場合
4 下請業者が反対したにもかかわらず重ねて購入を要請する場合
等が挙げられます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00358_下請イジメをした場合に適用されるのは、下請法か「優越的地位の濫用」か?

独禁法は、大企業など取引上優越した地位にある企業が、その地位を不当に利用して圧力をかけるなどし、相手方企業に不利な取引条件等を強要することを、
「不公正な取引方法」
のうちのひとつ、
「優越的地位の濫用」
として禁止しています。

もっとも、この弱肉強食の資本主義経済においては、契約締結や取引条件の交渉等の局面において厳しい交渉が行われるのは当然のことであり、
「どこまでやると不当なのか」
の判断は難しく、その分、公取委(公正取引委員会)が
「優越的地位の濫用」
として独禁法違反を認定するためには、長時間を要する慎重な調査や手続が不可欠となっています。

そこで、一般に極めて弱い立場にあるといえる下請業者を画一的な基準と簡易な手続で迅速に救済するために、独禁法の補完法としての下請代金支払遅延等防止法(長ったらしいので「下請法」と略称されます)が制定されました。

例えば、メーカー下請とメーカーの関係については
「物品の製造委託」
の場合、原則として、
1 資本金3億円を超える企業が3億円以下の業者に下請けさせる場合、
もしくは
2 資本金1千万円を超える企業が1千万以下の業者に下請けさせる場合に、
下請法が適用されます。

著者:弁護士 畑中鐵丸
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00357_実績の乏しい「割引」表示をした場合のリスク

景品表示法とは、正式には不当景品類及び不当表示防止法といいます。

消費者は、商品を購入するにあたり、より質の高いもの、より価格の安いものを求めますし、商品を販売する事業者等はそのような消費者の期待に応えるため、他の事業者の商品よりも質を向上させ、また、より安く販売する努力をし、このような過程を通じて市場経済が発展していきます。

ところが、品質や価格などに関して、誇大な広告や過大な景品類の提供が行われるようになると、消費者が誇大な広告に惑わされたり、商品を選択する際に商品の品質ではなく景品の善しあしに左右されるようになり、その結果、質が良く安い商品を選ぼうとする消費者の適正な選択に悪影響を与えてしまい、本来あるべき
「商品の価格と品質による競争」
がなくなってしまいます。

そこで、公正な競争を確保し、もって一般消費者の利益を保護することを目的として景品表示法が制定されたのです。

以上のような趣旨で定められた景品表示法ですが、第4条第1項第2号において
「実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるものであって、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる広告」
等を禁止しています。

具体的には、商品・サービスの取引条件、購入方法などについて、実際よりも顧客にとって有利であると偽って宣伝したりする行為、例えば、過去に定価で販売したことがないにも関わらず、広告などで
「今なら通常価格から1000円引!」
などと表示する行為が
「有利誤認表示」
に該当することになります。

消費者庁(かつての所管官庁であった公正取引委員会から2009<平成21>年9月1日付で消費者庁に移管されました)から、
当該「有利誤認表示」行為
の排除命令がなされ、命令の公表等を通じて対消費者イメージが急激に悪化してしまう場合があります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00356_違約金の種別と、効果と、契約記載テクニック

「違約金」

「制裁金」
「ペナルティ」
という言葉は、ビジネスの世界でもよく耳にしますが、その実際の意味について正確に理解している方はあまり多くないように思われます。

それもそのはず、
「違約金」
という言葉は、
「債務者が債務不履行の場合に、債権者に対して給付することを約束した金銭」
などと説明されるものの、実際には、次のように
1 予め定められた損害賠償額(損害賠償額の予定)
2 実際の損害のほかにプラスαで課される制裁金(違約罰)
などなど、多種多様な意味で用いられる、いわば
「玉虫色のマジックワード」
なのです。

これらは、それぞれ似たようなものに見えるかもしれませんが、
「1 損害賠償額の予定」
の意味であれば、実際に発生した損害額がいくらであるかとは無関係に予定額の賠償しか請求できないのに対し、
「2 違約罰」
の意味であれば、当該金額の請求に加えて、別個に、実際に生じた損害額の賠償をも請求できます。

このように
「たかが言葉一つ」
とはいえ、解釈によって、時に巨額の差を生み出します。

民法は、
「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合においては、裁判所は、その額を増減することができない」(420条1項)
と規定し、
「1 損害賠償額の予定」
に拘束されます(ただし、法外に高額または低額の予定をすると公序良俗違反として無効にされることがあるほか、利息制限法などの特別法による規制もあります)。

その上で、同条3項は、
「違約金は、賠償額の予定と推定する」
と規定し、
「違約金」は、(推定を覆すような)特段の定めがない限り、「2 違約罰」ではなく「1 損害賠償額の予定」として解釈されるべし、
というデフォルトルールを決めています。

したがって、契約書の中に特段の説明がなく
「違約金」
とだけ書かれた約定が存在する場合、損害賠償を請求する側は、この推定を覆さない限り、実際に発生した損害額が予定額を上回ったとしても、予定額しか請求することができません。

予定額以上の損害を請求するには、あらかじめ契約書の中で、
「違約罰として○○円を支払う。ただし、甲はさらに契約の履行を請求し、あるいは実際に生じた損害の賠償を求めることができる」
等と定める必要があるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00355_越境EC(外国人に日本の商品をネットで売る)の準拠法

場所や当事者などの要素に外国が絡む渉外的な法律関係には、
「どこの国の法律により規律されるのか」
という問題があり、規律する国の法律を
「準拠法」
と呼びます。

わが国の法の適用に関する通則法(通則法)7条によれば、私人同士の契約の成立や効力についての準拠法は、当事者が契約の際に合意した国の法律となります。

仮に契約の際に準拠法を決めなかった場合には、例えば通常の動産売買契約であれば売主側の国の法律が準拠法となります(通則法8条)。

今回の場合、売買契約の際に準拠法が決められていなかったようなので、売主側の国の法律、すなわち日本法が契約準拠法となるのが原則です。

ところが、平成19年1月から施行された通則法において、消費者と事業者の間の契約(消費者契約)について、消費者保護の観点から、
「消費者契約の特例」
が新設されました(通則法11条)。

これによると、契約の際に準拠法が決められていなかった場合には、消費者が常日頃生活している国(常居所地)の法律が準拠法となります。

また、準拠法が決められていた場合でも、消費者が、自分の常居所地の法律のうち特定の強行規定(契約当事者同士が適用しない旨を合意しても、強制的に適用されてしまう規定)も適用するよう求めた場合には、その規定が適用されることになっています。

ですから、事業者は、外国人のお客さんと契約の場合、十分注意をしないと、思わぬところで
「アウェーの法律」
に縛られることになります。

もっとも、
「消費者契約の特例」
にも例外があります。

消費者自らが事業者側の国に赴いて契約を締結した場合(「能動的消費者」と呼ばれます)、
「自ら進んで外国の事業者と取引したのだから保護してあげる必要はない」
とされ、適用がなくなるのです。

ただし、事業者が消費者に対し、当該消費者の常居所地で
「勧誘」
を行っていた場合には、
「消費者契約の特例」
が適用されるので注意してください。

この場合は、
「外国の事業者の勧誘に乗っかって取引をしてしまったのだから、保護してあげる必要がある」
というわけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00354_満期白地の手形を振り出したら、何時までも手形の責任を負担しなければならないのか?

満期日が記載された手形であれば、その手形の時効は、記載された満期日から3年後ということになります(手形法70条「満期ノ日ヨリ三年」)。

すなわち、記載された満期日から3年が経過してしまえば、その手形本体が時効にかかってしまいますので、白地補充権が行使できなくなり、手形としての強力な権利行使が不可能となり、単なる民商事債権の証拠としてしか使えなくなります。

他方、満期日が記載されず空白のままである場合については、手形法70条が
「満期ノ日ヨリ三年」
と規定する以上、時効がいつまでたっても始まらないのではないか、との疑問が生じます。

この点については、簡便な金融手段として手形が飛び交い、これに比例して事故が多発した昭和30年代まで裁判例・学説が入り乱れた状態でしたが、昭和36年11月24日に、最高裁が小切手に関する訴訟において、
「『手形に関する行為』(商法501条4号)に準じて5年間の消滅時効にかかる」
との判断を下すことにより、理論上の決着がつきました。

この判例法理により、手形についても、満期が白地とされた場合、振出日から5年間で白地補充権が消滅時効にかかり、以後、手形としての権利行使ができなくなると解釈されています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00353_白地(しらじ)手形の取扱ノウハウ

手形は、振出人が重大な債務を負うという性格から、その記載方法は、厳しく規律されます。

すなわち、法律上、
「必ず記載しないと、未完成手形として、法的効力が生じない事項(必要的記載事項)」
というのが定まっています。

とはいえ、実際の手形取引においては、設例のケースのように、手形の必要的記載事項の一部をブランク(白地)にしたまま振り出され、後日、その手形の受取人が振出人との合意にしたがってブランクを埋めること(「補充」と呼ばれます)で、その手形を完成させる取扱とすることが多く見受けられます。

手形の決済日を後日取り決める趣旨で白地にしておくような場合は、
「満期白地」
などといい、手形取引の世界ではよくみられるものです。

そして、白地手形の白地部分に必要な記載を行い、完成手形に仕上げることのできる権利は
「白地補充権」
と呼ばれ、当該権利は、振出人と受取人の合意によって生じるものとされています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00352_「行政指導に従わず、建築確認申請を留保された場合」の対抗策構築の際に参考となる判例

建築主と周辺住民との間の紛争に関する行政指導が行われていることのみを理由として建築確認申請に対する処分を留保したことにつき、当該
「建築確認を留保したこと」
の是非をめぐって国家賠償請求訴訟が提起されたことがあります。

これに対し、最高裁判所(昭和60年7月16日判決)は、原則として
「建築主事が当該確認申請について行う確認処分自体は基本的に裁量の余地のない確認的行為の性格を有するものと解するのが相当である。(中略)建築主事としては速やかに確認処分を行う義務があるものといわなければならない」
としつつ、
「建築主が確認処分の留保につき任意に同意をしているものと認められる場合」
などには、当該留保も例外的に適法としました。

しかしながら、さらなる例外則として、
「建築主が右のような行政指導に不協力・不服従の意思を表明している場合には、(中略)行政指導に対する建築主の不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは違法である」
としました。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00351_建物建築の際に必要となる建築確認とは?

建築確認とは、建築基準法に基づき建築確認を行う建築主事等が、一定規模以上の建築物の建築を希望する者の申請にかかる建築計画が建築基準法や建築基準関係の規定に適合しているかどうかを工事開始前に審査する行政行為をいいます。

そして、この行政行為としての建築確認は、
「許可」

「認可」
といった一定の裁量を伴う行為ではなく、その文言通り、
「申請」
であり、行政当局の裁量は働かない、というのが本来ないし建前です。

すなわち、行政当局が行うのは、建築確認申請に添付された設計図書などが建築基準法やその他の建築基準関係規定に適合するか否かを機械的に
「確認」
する作業に過ぎません。

したがって、適正に行われた建築申請に対し、建築主事等が何らかの裁量をはたらかせることは原則としてできないと考えられています。

ところが、実際は、
「申請」

「確認」
の間に
「行政指導」
余計なものが登場することがあります。

行政指導とは、行政機関が、一定の行政目的を実現するために特定の者に対し一定の作為や不作為を求める勧告や助言などをいいます。

このような行政指導に従うか否かはあくまで任意とされていますが、行政指導に従わないことを理由として、あるいはあからさまな理由とせず、一定の不利益処分(行政処分)が行われたり、姑息に意地悪をされることもあるので注意と警戒が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00350_外国人の入国・在留許可制度と不法就労助長罪

外国人が日本に入国し在留するためには、外国人が旅券を有していること以外にも、当該外国人において在留資格が原則必要となりますが、在留資格は、日本に滞在する目的ごとに付与されることになります。

現在、出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法)は、
「外交」
「報道」
「留学」
「家族滞在」
といった27種類の在留資格を規定しておりますが、外国人は、日本国から与えられた在留資格以外の活動は行うことができません。

ここで注意しなければならないのは、入管法は、日本国内にて就労する資格については、
「就労」
という一般的抽象的な在留資格ではなく、個別具体的に就労資格の種類を規定しているということです。

例えば、日本の中学校で外国語を教えるために
「教育」
の在留資格で在留している外国人が、本来、
「技能」
の在留資格が必要となるコックとして就労した場合などには、最高で1年以下の懲役刑が科せられたり(入管法73条)、日本からの退去強制に処せられる場合もあります(入管法27条以下)し、そのような外国人を雇った者も、不法就労助長罪として、最高で3年以下の懲役刑が科せられることがあります(入管法73条の2)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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