02026_中小企業の海外でのM&A成功例について(教えて!鐵丸先生Vol. 34)

<事例/質問> 

中小企業の海外M&Aについて、知り合いの経営者が、皆ほとんど失敗している、と言っていますが、

逆に、成功しているところってどんなところなんでしょうか?

成功の秘訣のようなものはあるのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

「海外進出を任せるに足るリーダー(責任者)」
の有無が成功・失敗を分ける最大のポイントです。

このリーダーのスペックを議論する前提として、まずは彼らのタスクを明確にする必要があります。

「海外の国や人々や各団体と仲良くなって、国際交流する」
などといった活動とは真逆の、国内事業展開より数倍、数十倍困難な海外進出を経済的に成功させるためのタスクです。

以下に、私の実務経験を基に設計したタスクを示します。

1 現地の人間にナメられないような制度やカルチャーを現地法人に浸透させ、確立する。
2 強烈な強制力を持った圧倒的なオーラを醸し出し、徹底して高圧的な支配を実行する(とはいえ、支配的な要素は見せず、極めてジェントルかつエレガントに展開する)。
3 俗悪・無作法・怠惰を許さない、徹底した管理を行う。
4 客観的基準と合理的観察による厳しい能力評価を行い、論功行賞を明確に実施し、ルール違反者に対する厳しい懲罰を徹底する。
5 独占禁止法を無視する精神で、競争者の存在を否定し、新規参入を容赦なく阻止する形で市場を迅速かつ圧倒的に支配する(法令には細心の注意を払う)。
6 このような市場支配を大量の資金と物量を背景に、高圧的に、スピーディーに、SMART基準に従って効率的に行う。

もちろん、コンプライアンスは無視できませんので、諸外国の法令を含めてあらゆる法令に違反しないよう、細心の注意を払う必要があります。

「海外進出を任せることのできるリーダー(責任者)」
の人材イメージとしては以下のようになります。

1 海外進出を経済的に成功させるために必要な各タスクを、命を賭して完全に成し遂げる強靭な意志。
2 各タスクを一定の冗長性を確保しつつ、涼しい顔で平然とやり遂げる知識・経験・スキル。
3 成功時に得られる魅力的なインセンティブを設計し、臆面もなく要求する豪胆さと、それに対する健全な欲望。
4 声を発することなく、被支配者が自然とひれ伏す強烈なオーラ。
5 悪魔の手先のような性根。
6 遂行しているタスクの厳しさを全く感じさせず、常にジェントルかつエレガントに振る舞う典雅さ。

このリーダー像に、どこかで見覚えがあると感じるかもしれません。

それは、東京でたまに見かける
「日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらい、唖然とするくらい良い暮らしをしている、クソ忌々しい外資系企業の幹部」
の姿に似ていませんか?

そして、そういった幹部によって経営されている外資系企業は、どの企業も順調に儲かっているのではないでしょうか。

このように説明すれば、帰納的に理解・納得いただけるのではないかと思います。

詳細は、以下をお聴きください。


※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組後半、40分30秒以降から開始されます

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02025_中小企業の海外M&Aについて(教えて!鐵丸先生Vol. 33)

<事例/質問> 

中小企業の海外M&Aについて、知り合いの経営者が、皆ほとんど失敗している、と言っています。失敗する原因のようなものって、あるのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

中小企業の海外M&Aについて、多くの経営者がほとんど失敗しているといえます。

では、失敗する原因は何なのでしょうか?

中小企業のほとんどが海外M&Aで成功していないのは、現実的な目的が具体的に明確に整理されていないことが主な原因です。

本音と建前が曖昧で、頭の中がカオスになっている企業や、
「国際進出をした国際的な企業の社長」
と見られたいという見栄で進出を自己目的化している企業は、確実に失敗します。

そもそも、なぜ中国やその他アジア各国に進出するのでしょうか?

その経済的意味はどこにあるのでしょうか?

ここでは倫理や道徳を捨て、純経済的に目的を考察します。

「生産拠点を日本からアジアにシフトすることを考える企業」
にとって、アジア進出のメリットは
「低賃金」
です。

つまり、
「現地の方を安い給料で雇える」
という理由で進出するのです。

だからこそ、
「最近は中国の人件費が高くなったからベトナムがいい」
「いや、ベトナムも高いから、ミャンマーやカンボジアだ」
といった話が出てくるのです。

要するに、生産拠点をシフトする形で中国に進出する企業は、中国が好きだとか、民間レベルの日中友好を進めたいとか、本場の中国料理が好きだとか、そういう動機ではなく、
「安くて豊富な労働力がある」
と考えて進出するのです。

だから、中国より安いところがあれば、経済的判断に基づいて進出先を変更するのです。

かつての植民地支配の時代、欧米列強は現地の労働力を廉価に活用できるという理由でアジアやアフリカ、中南米に生産活動を行いました。

現代の企業がアジアに進出する動機も、倫理や道徳を捨てて純経済的に考えれば、これと同様です。

また、別の企業は進出するアジアの国を、自社の商品を消費してくれる巨大市場とみて進出します。

この点でも、かつての欧米列強が文明レベルの低いと見なした現地人に対して価値ある商品・サービスを提供し、市場支配を目指したのと同様です。

現代の企業も、有利な競争環境を求めてアジアに進出します。

無論、企業はこんな
「時代錯誤も甚だしい下劣な言い方」
で動機を語ることはありません。

ジェントルでエレガントに響く進出目的(相互互恵による国際的な協調、対等なパートナーシップによる相互発展など)を掲げ、情報を偽装します。

「この種の韜晦をいけしゃあしゃあとカマし、実際の動機は植民地時代の欧米列強と同様のものを持ち、これをSMART基準に落とし込み、的確な指示を出し、目的を達成する」
企業は、まず間違いなく進出に成功します。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02024_企業が抱える解雇にまつわるトラブル(教えて!鐵丸先生Vol. 32)

<事例/質問> 

知り合いの社長が、労働者から訴えられて、裁判でも主張が受け入れてもらえなかったとぼやいていましたが、企業が労働問題で苦労するのは何か原因があるのでしょうか。

逆に、労働問題を起こさずに安全・安心に経営するコツってあるのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

企業が労働法でつまずく大きな原因は、企業が
「ヒト」

「モノ」
の区別を正しく理解していないことにあります。

昔、人類社会には奴隷制度がありました。

労働力を提供する
「奴隷」
と呼ばれる人たちは、人間としての権利や尊厳を持たず、
「モノ」
と同様に扱われていました。

例えば、仕事でパソコンという
「モノ」
を使います。

パソコンは手頃な値段で購入でき、情報処理を助けてくれます。

しかし、何年か経つと壊れたり、陳腐化したりして使えなくなります。

そのとき、私たちは使えなくなったパソコンをどうするでしょうか?

大事に保管し続けたり、保守料を払い続けたりはせず、速攻でゴミ箱に捨ててしまいます。

では、労働者はどうでしょうか?

労働者はモノとは違い、成長し続ける存在です。

しかし、時には健康を害したり、スキルの見直しが必要になったりすることもあります。

経営者はそうした状況の労働者をどうするのでしょうか?

多くの社長さんは
「速攻で解雇してポイ」
と言いたいでしょう。

また、実際にそうしている社長さんも少なくないと思われます。

なぜなら、
「日本では、10社中7~8社の企業が労働関連法規を無視して経営している」
という実態があるからです。

しかし、残念ながら、近代法治国家では
「ヒト」

「モノ」
は明確に区別されています。

パソコンでできるような廃棄物処理は、
「ヒト」
には一切許されません。

ヒトとモノの区別ができていない、古臭い人権感覚を持った企業トップが多いことが問題です。

そのため、
「日本では、10社中7~8社の企業が労働関連法規を無視して経営している」
実態が改善されず、厳然と存在しているのです。

詳細は、以下をお聴きください。


※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組後半、37分47秒以降から開始されます

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02023_労働問題を起こさずに安全・安心に経営するコツ(教えて!鐵丸先生Vol. 31)

<事例/質問> 

労働紛争が増えていると思いますし、知り合いの社長が、大変苦労した、と聞きました。

労働裁判ってやっぱり難しいのですか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

労働紛争が増えている昨今、労働裁判は本当に難しいものなのでしょうか?

企業の経営には、ヒト、モノ、カネ、チエといった経営資源が必要ですが、その中でも
「ヒト」
すなわち
「労働者」
という資源は非常に重要です。

しかし、経営者にとって最も知識が不足しているのが労働取引に関するルール、つまり労働関係法規です。

毎年発行される
「労働白書」
によれば、労働基準監督官が国内の事業所を調査した結果、労働基準法や労働安全衛生法などの違反率は毎年70%前後、業種によっては85%前後に達しています。

つまり、日本では10社中7~8社が労働関連法規を違反して経営しているという実態が浮かび上がってきます。

このため、労働問題は税務問題と並んで
「つつけば必ずホコリが出る」
法務課題の代表例です。

最近、政府の政策で増えた弁護士たちが労働者の代理人となり、企業を次々と訴えているのもその一因です。

企業が訴えられて弁護士の事務所に駆け込む際、最初に言われるのは、
「先生、こんなインチキ通るんですか!こんなの絶対おかしい。出るとこ出たら、絶対勝って下さい!」
というものです。

しかし、冷静に事実関係を確認し、関係法令や裁判例を示すと、多くの場合は企業側に非があることがわかります。

「出るとこ出た」
ら、かえって自分が恥を晒すことを理解していただくのです。

相談に来た当初は鼻息荒かった社長や人事責任者も、最終的にはしょんぼりして、
「なんとか和解でお願いします」
と蚊の泣くような声で言うようになります。

労働問題を防ぐためには、経営者として労働環境の改善と法令順守を徹底し、問題が深刻化する前に専門家に相談することが重要です。

労働者との信頼関係を築くことも大切であり、日頃からのコミュニケーションが鍵となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02022_刑事事件への対応やアプローチ(教えて!鐵丸先生Vol. 30)

<事例/質問> 

先生は、刑事事件って受けられます?

刑事事件について取り組む場合、どのような対応をされていますか?

「畑中鐵丸先生”ならでは”のアプローチ」
とかってありますか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

刑事事件についての私の考えをお話ししましょう。

刑事事件が刑事裁判にまで持ち込まれたら、勝ち目はほぼありません。

99.9%負けるのです。

こんな不利な土俵で戦うのはあまりにも愚かです。

もちろん、無罪判決を勝ち取る名手のような弁護士もいますが、その先生方でさえ、常に無罪を勝ち取れるわけではありません。

つまり、
「無罪判決を取れるスキルがある!」
と豪語する弁護士でも、失敗事件があるのです。

刑事裁判の有罪率が99.9%という事実を考えれば、どんな凄腕の刑事弁護士でも表に出さない失敗事件が相当数あると考えるのが合理的です。

しかし、私自身も刑事事件で勝っているケースは多く、それもかなりの割合を占めます。

その理由は、
「裁判になったら99.9%負ける」
というゲームのルールを前提にしているからです。

このルールを所与として、前提条件を潰すことに注力し、
「裁判にしない」
「裁判になる手前で事件を潰す」
という特殊な刑事弁護活動を展開しています。

具体的には、客観面で争える場合には、警察や検察が辟易するまで徹底的に事実との齟齬を争います。

客観面で争うことが難しい場合でも、認識面、故意か過失か、不注意かといった主観面を徹底して争います。

それでも争えなければ、情状面で争い、事件としてではなく事故として未立件や立件阻止を目指します。

そして、立件されても不起訴を目指し、
「裁判以前の手前の段階で事件潰し」
を画策します。

私や私が所属する弁護士法人畑中鐵丸法律事務所では、このような
「公判前弁護活動」
を中心に刑事事件を取り扱っています。

その結果、多くのクライアントに満足していただいています。

刑事訴訟にまでもつれ込んだ場合には、作戦環境の現実的認識・評価を前提にして、作戦目標についてクライアントと徹底した議論を行い、執行猶予や減刑を目指し、尽力します。

劇的な無罪判決は少ないかもしれませんが、目標達成に向けた取り組みで、こちらも多くのクライアントに満足いただいています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02021_裁判官にも個性がある?変わった裁判官の話(教えて!鐵丸先生Vol. 29)

<事例/質問> 

裁判官というと、みなさん、だいたい同じように真面目でしっかりしていて、コンサバなイメージですが、プロの弁護士としてご覧になっていて変わった裁判官とか理解に苦しむような裁判官っているのですか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

裁判官といえば、真面目で堅実なイメージがありますが、実際には変わった裁判官もいます。

プロの弁護士として見てきた経験から、少しご紹介しましょう。

行政官僚と裁判官は、バックグラウンドや試験科目が似ており、どちらも東大や京大などの難関大学出身が多いです。

行政官僚は
「法律による行政」

「絶対的上命下服」
の原理で厳しく規律されています。

しかし、裁判官はその反対で、憲法76条3項により
「独立して職権を行う」
とされています。

つまり、裁判官は自分の良心に従い、誰にも指示されずに仕事を進めることができます。

そのため、裁判官の中には個性が強く、独特な判断をする人もいます。

例えば、
「東京地裁の藤山コート」
という言葉が法曹界では有名です。

1999年頃、東京地方裁判所の行政専門部の1つである地裁民事3部に、藤山雅行という裁判官がいました。

彼は国側に不利な判決を連発し、
「国破れて山河在り」
にちなみ
「国破れて3部あり」
とまで言われました。

彼の裁判部で訴訟を起こそうとする原告側が多く、何度も訴え提起と取り下げを繰り返すという噂もありました。

裁判官は非常に自由に自分の判断を下すことができます。

地裁の一裁判官でも、誰の命令も受けず、独自の解釈で法を運用します。

そのため、裁判官の個性や判断基準が大きく影響するのです。

実際、裁判官の中には常識や良識が通じない、非常に独特な方も少なからずいます。

司法試験に合格したエリート裁判官は、日本に約2800名いますが、その中には常識的な方もいれば、非常に個性的な方もいます。

こうした裁判官の存在が、裁判の予測を難しくし、奥深いものにしているのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02020_弁護士が裁判所で意識する話し方や態度(教えて!鐵丸先生Vol. 28)

<事例/質問> 

プロの弁護士として、裁判所でお話されたり行動されたりする場合、話し方や態度でどんなことを意識されているでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

弁護士として裁判所で話す時に意識するポイントをお話しします。

まず、弁護士は決して偉くはありません。

裁判は弁護士なしでも進められますし、必須の存在ではないのです。

裁判において絶対的に偉いのは裁判官だけで、彼らは圧倒的な権力を持っています。

裁判官は、憲法76条3項に基づき、その良心に従い独立して職権を行使します。

つまり、裁判官は誰にも指示されず、自分の判断で裁判を進めることができます。

この
「裁判官の独立」
は、他の国家機関や上司からの指示や干渉を受けないことを意味します。

裁判官は、自分の判断で事実を認定し、法律を解釈し、解決を決定するのです。

弁護士は裁判所の出入り業者のような存在です。

納期を厳守することが求められ、提出物や主張の期限を守らないと裁判官に嫌われます。

裁判官は
「小さい頃から宿題を期限内に提出する」
タイプの人たちであり、納期感覚がしっかりしています。

そんな彼らに対して、ルーズな態度は通用しません。

弁論準備室や法廷でのやり取りは時間が限られているため、主張や証拠は事前に提出する必要があります。

提出期限は通常、期日の1週間前に設定されますが、遅れそうな場合は事前に報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を徹底し、対応を協議することが重要です。

弁護士が意識すべきなのは、裁判官の心証を良くするための態度です。

納期厳守とフォローを怠らず、裁判官に対して誠実で真面目な姿勢を見せることが、裁判を有利に進めるための鍵となります。

これらを徹底することは、裁判官の心証を少しでも良くして、クライアントにとって有利な結果を導くために、きわめて重要なポイントになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02019_法廷ドラマと現実の裁判の違い(教えて!鐵丸先生Vol. 26)

<事例/質問> 

法廷もののドラマをよくみますが、ドラマの中の裁判と現実の裁判とではどんなところが違うのでしょうか?

プロの弁護士の方が、法廷ドラマをみていて違和感を感じることがあったら、教えて下さい。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

法廷ドラマはスリリングで見応えがありますが、実際の裁判とはかなり異なります。

プロの弁護士が感じる違和感についてお話ししましょう。

まず、ドラマでは傍聴席がいつも満席ですが、現実の裁判はほとんどガラガラです。

コロナ前から同じで、傍聴人がいないことも珍しくありません。

また、ドラマでは弁護士が熱心に主張を読み上げますが、実際の民事裁判では事前に書面で提出され、法廷では
「準備書面を提出した」
と報告するだけです。

傍聴人には何が話されているのか全くわからないまま進行します。

証人尋問も違います。

ドラマでは裁判官が興味深く聞いていますが、現実ではあまり興味を示しません。

結論を先に決めていることが多いため、ただ流れ作業のように進めます。

ドラマのような激しい異議や驚くべき新事実の暴露もほとんどありません。

尋問では予想外の答えを引き出す質問は避けられ、すでに知っていることを確認するだけです。

証人が観念して真実を語るシーンも現実には少ないです。

証人尋問では嘘がつき放題であり、年間数万件の民事事件の中で偽証罪に問われるのはごくわずかです。

嘘をついてもお咎めなしなので、信憑性のある嘘をついた方が勝つことが多いのです。

民事裁判では真実や正義よりも、エゴ対エゴ、欲対欲の争いが中心です。

途中でやめたり和解で終わることが多く、判決まで持ち込むケースはまれです。

和解が多いのも特徴です。

判決言い渡しの日には原告も被告も欠席し、裁判官は結論をぼそぼそと述べるだけで理由は省略されます。

日本では、加害者にやさしく被害者に厳しいのが現実です。

パワハラ、セクハラ、モラハラなど、精神的苦痛の賠償、慰謝料は、本当に安いです。

弁護士費用の方が高かったりするのです。

「やられたらやり返す」
のは大損。経済的には、
「やられたら、放置」
「やられたら泣き寝入り」
が一番オトク、というのが現実なのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02018_ドラマの中の弁護士と現実の弁護士の違い(教えて!鐵丸先生Vol. 26)

<事例/質問> 

弁護士もののドラマをよくみますが、ドラマの中の弁護士と現実の弁護士とではどんなところが違うのでしょうか?

プロの弁護士の方が、弁護士もののドラマをみていて違和感があったら、教えて下さい。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

ドラマには六法全書をすべて覚えている弁護士が登場しますが、これは全くの嘘です。

法令の数は膨大で、法律だけでも1960本あり、法令全体では8284本にもなります。

こんな量を覚えることは不可能です。

実際、司法試験の論文試験には六法の持ち込みが可能で、試験会場には試験用六法が置かれています。

つまり、覚える必要はないのです。

あるドラマで、偽弁護士が
「特定商取引法の◯条」
と即答するシーンがありますが、これはあり得ません。

特定商取引法は司法試験科目に含まれていませんし、現実の弁護士がすらすら答えることはありません。

また、弁護士が法律大好きで勉強中毒というイメージも誤りです。

多くの弁護士は勉強が嫌いで、要領よく目先の利益を追求するちゃっかり者が多いです。

頻繁に改正がある法律の知識はアップデートされず、合格時点の知識で仕事をこなす弁護士も少なくありません。

ドラマで描かれない現実の場面として、ギャラの取り決めやギャラでの揉め事、失敗した弁護士が依頼者から詰め寄られる場面があります。

刑事事件では、被告が罪を認めて情状弁護に終始するケースが多く、逆転無罪のようなドラマチックな展開は稀です。

弁護士の重要な役割は、被告人の家族から資金を集めて被害者と示談を成立させ、被害者に寛大な処置を求める文書を作成してもらうことです。

こうした現実を理解しながら、ドラマを楽しんでください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02017_ネットでの誹謗中傷が拡散、事実も含まれているので裁判では負けるだろうし、カウンターリリースも炎上すると思う(教えて!鐵丸先生Vol. 25)

<事例/質問>

ネットで誹謗中傷されていますが、全くの事実無根ではなく、実際発生した事実であり、それが多少誇張されているだけで、書き込み内容は、ほぼ真実。

ただ、どんどん拡散して評判は最悪で、今年の採用にも悪影響が出始めている。

裁判して身の潔白を証明したいが、そもそも身が潔白どころか、真っ黒なので、裁判をしても負けて却って恥をかくだけだし、カウンターリリースをしようとしても嘘しか書けないし、嘘を書いたら却って炎上する。

何も出来ず、ただただ、会社の評判がだだ下がりするのを手をこまねいてみているだけなのでしょうか。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

ここで、ある銀行の例を紹介しましょう。

この銀行は、知り合いのリース会社を通じて反社会勢力にお金を貸していました。

この事実が発覚し、マスコミやネットで炎上、株価も暴落しました。銀行は裁判で身の潔白を証明しようとしましたが、日本の裁判には2つの欠点があります。

まず、時間がかかります。大事件となると2年以上かかり、その間に悪評が広がり銀行が倒産する可能性もあります。

また、どんなに高い弁護士を揃えても、銀行に有利な判決が出るとは限りません。

むしろ、裁判で身が真っ黒であることが証明されてしまいます。

こうした状況に対処するため、日本では新しい手法が考案されました。

それは、銀行が独自に
「裁判所」
を作る、つまり第三者委員会を設置するという方法です。

例えば
「あずさ地方銀行」
という裁判所を設け、ここで裁いてもらいます。

この委員会は銀行がスポンサーで運営され、裁判官も銀行に忖度しやすい環境です。裁判は迅速に進み、数ヶ月、場合によっては数週間で結果が出ます。

だから、第三者委員会の委員には東京高裁OBなどの弁護士がずらっと並んでいます。

第三者委員会は、スポンサー企業をクソミソに言いません。

非常に忖度してくれるし、まるでコールアンドレスポンスのように、
「ウチって無罪かな?」
と呼びかけると、
「無罪!」
「やっていない!」
と応じてくれる、そんな関係性があります。

ただ、シミ1つない全くの真っ白の美白、というと、クソ茶番であることがバレバレで却って炎上します。

そこで出てくる結論は、
「たしかに一部暴走分子が組織活動ではなく、個人として勝手に動いたが、これら心得違いした関係者・担当者は全て処分されており、問題は解消している、一過性のもので構造的なものではない、お金もしっかりきっちり返してもらっている、原因も、はるか以前の付き合いがダラダラ続いていただけで正式な絶縁をして原因レベルで解消しており、再発防止策もすでに構築済みである。その意味では、一時期、特定の担当者の暴走による一過性の特異な事件であったが、すでに過去のものとして解消しているし、今後再発することもない」
という
「限りなく白に近いライトグレー」
のような言い方をします。

事実無根ではなく、実際に非がある場合でも、このように対処する方法があります。

法的手法は日々進化しており、本やメディアでは教えてくれない対処法も存在します。

常に本質を把握し、状況に応じた対応策を考えることが重要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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