01889_民事訴訟における展開推移の予測

訴訟における展開推移の予測をする上で、裁判官の認定傾向を推察することもあります。

たとえば、当方が取り得るべき選択肢を4つ挙げるとします。

1 当事者の関係性はすべて書かれたもの通り:
  契約書で書かれた内容が全てであり、契約書に書かれなかった内容は一切事実として認めない

2 「書かれたもの」は主であるが、従たるものとして「発生状況」をふまえて、当事者の関係性を見直し:
  契約書で書かれた内容が全てであるが、その後の状況を踏まえつつ、ただ、「言語的な意味や解釈範囲の制約の中で」という限定はつくものの、可及的に、個別の契約条項を発生事実に即した再定義してくれたり、発生現実と辻褄が合うように解釈を修正してくれる

3 「発生状況」こそが重要であり、「書かれたもの」はあくまで従たるものとして参考にしつつ、当事者の関係性を見直す:
  契約書で書かれた内容は尊重するものの、その後の状況こそを重視し、「言語的な意味や解釈範囲の制約」を越えて、個別の契約条項を発生事実に即して再定義してくれたり、発生現実と辻褄が合うように解釈を修正してくれる

4 契約書は一切無視して、「発生状況」を観察して、ゼロから関係性を見直す:
  契約書は単なる紙切れとして全く無視して、発生現実から当事者の関係性を構築する

という認定帰結の選択肢として整理するならば、

1が50%~60%
2が25%~30%
3が10%~15%
4が5~15%

という感じで、約3000人に裁判官の認定傾向を推察するのです。

もちろん、現実にアンケートを取ったわけではありませんし、あくまでも弁護士の主観なので、適当といえば適当ですが、ほぼ東大卒・司法試験早期合格が多数を占める裁判官の心証や感受性を、同じプロファイルの弁護士が経験を踏まえて推測したものは、相応に意味があると思うのです。

そのうえで、現実的作戦目標を定義し、これに向けてプレゼンを準備し、展開するということになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01888_訴訟を提起する側の怒り

訴訟を提起するために、相談者が自身の体験した事実をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化するにあたって、

あいつは臭い
あいつはむかつく
あいつはひどいやつだ
あいつは昔悪かった
あいつはこんなせこいやつだ

と、訴状に書くよう弁護士に依頼したとしても、弁護士としては、依頼者の気持ちはわかるが、ストーリーを混線させる要素は、できるだけ取り除く方向で訴状の構築を諫言します。

なぜなら、依頼者のいう、

あいつはこんなせこい
あいつは臭い
あいつはむかつく
あいつはひどいやつだ
あいつは昔悪かった
あいつはこんなせこいやつだ

は、すべてノイズであり、裁判所に心証形成上の負荷をかけるだけだからです。

アナロジーを使って説明を試みますと、裁判所は、食の細い食通ないし評論家であり、不要なものまで配膳すると、星を下げるのです。

ということで、依頼者のいうことは、有害なノイズになるだけであり、裁判官から
「原告は、本人も代理人も、揃いも揃って、裁判というゲームをよくわかっとらんアホだ」
という冷ややかな視線を浴びることになります。

弁護士は、さほど自己評価を高めたいという気もなく、お客様(依頼者)が不利を承知で満足されるのであれば、それも仕事としてやりますが、依頼者にとっては、裁判官から見下されるのは、あまりよろしくないのではないだろうか、と思うところです。

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01887_訴訟に必要な3つの要素

1 スジ(法的ロジック:テクニカルエレメント)
2 スワリ(経済的社会的実質的妥当性:アーティスティックインプレッション)
3 ブツ(証拠)

これら3つが揃って初めて
「争点が出揃った」
といえます。

訴訟を起こす側となっても、訴訟に起こされる側となっても、これら3つを揃えなければならない、ということです。

裁判所は、3つのアングルから、状況評価していくこととなります。

戦略的視点でいうと、状況に応じて、

1 巧緻か
2 拙速か

を見極めながら、訴訟に対応していくこととなります。

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01886_「パワハラされたので企業相手に訴訟を起こしたい」という法律相談を行った方への、「戦争遂行意思(困難な戦いに挑み、戦い抜く覚悟)」を確認するメールのサンプル

【相談者】様

【相談者】様において、「相手方社長からのパワハラを理由として、相手方社長及び相手方会社に対する訴訟を提起することを検討する」という状況をお伺いしました。

当職として、もちろん、訴訟事件として受任し、同事件を遂行していく所存です。

ただ、その前提として、プロフェッショナルとして行うべきインフォームドコンセントの一環として、「訴訟」という営みの過酷な面もお伝えしておかなければなりません。

すなわち、もし、【相談者】様において 「弁護士に依頼しておいたら、後は、弁護士に任せっきりで、勝手に勝訴判決なり賠償金が転がり込んでくる」という安易なお気持ちであれば、その先にあるのは、惨敗と地獄だけである、という厳然たる事実です。

もちろん、当職は、代理人弁護士として訴訟のプロセスのすべての面において大きな役割を果たしますが、ただ、あくまで「代理人」です。

訴訟の主体としての地位、プロジェクトオーナーとしての立場、戦争遂行責任は、【相談者】様御本人が担う、という事実には変わりありません。

したがって、本件を訴訟提起して、訴訟遂行する上では、 「訴訟の主体、プロジェクトオーナー及び戦争遂行責任者」たる【相談者】様において、「訴訟を起こし、遂行する覚悟」「戦争遂行意思(困難な戦いに挑み、戦い抜く覚悟)」をお持ちいただくべき必要がありますし、当職として、同覚悟ないし意思を確認しておくべき必要があります。

訴訟に際しては、

1【相談者】様として、相手方会社及び相手方社長に対して、被害者対加害者として、完全な対決姿勢で臨む決意があること

2【相談者】様として、本件を、今後数年かかるかもしれない「一大プロジェクト」として、全精力をかけて取り組む決意があること

3【相談者】様として、相手方会社及び相手方社長を見限り、これらに依存せず、これからの人生を、別の仕事や別の会社をみつけて、そこで働く覚悟があること

4【相談者】様として、本件について、解決を得て、相手方から一定の解決金を引き出すまで、当弁護士法人の活動費用の一部(標準費用より減額し、そのバランスとして成功報酬を高めに設定する形で協力することは可能です)をご負担いただくご意思があること

5【相談者】様として、事件までの数年間のパワハラ事象について、記憶の彼方に存在する過去の事柄を、想起し、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化する膨大な作業が発生するが、これを、「仕事」として、あるいは「仕事」以上に真摯に取り組む覚悟があること

6【相談者】様において、相手方から解決金等金銭を引き出すことに成功した場合、着手金や月額稼働費用とは別に、【○○】%の報酬金(税別)を支払っていただくこと

の「全て」に、無条件かつ積極的にご同意いただくことが、絶対的な必要条件となります。

以上は、かなり過酷な条件となるかもしれませんが、これから大きな戦争を仕掛けて、途中で投げ出すことなく、遂行するわけですから、ある意味、当然の事柄です。

従業員を数百人近く抱える相応の規模の企業とそのトップ相手に、喧嘩をしかけるわけですから、上記程度の覚悟がなければ、喧嘩にすらならず、やってすぐ引っ込めるという無様な状況をさらけ出すだけです。

かなり長い期間の熾烈な喧嘩を戦い抜く覚悟も決意もなく、単に、
「弁護士に任せれば、後はほっといても何とか助けてくれる」
という安易なお気持ちですと、まったく上手くいきません。

どのくらい大変な仕事になるか、というと、相手方を訴えて、裁判所に引きずり出して、喧嘩を始める際、まったく何も情報がない裁判官に、こちらの味方になってもらうような、周到にして緻密なプレゼンテーションが必要になります。

それには、これまでの異常で病理的な経緯を、あたかも、
「新作ノンフィクション小説」
を書き上げて、資料と一緒に提出して読んでもらう必要があるのです。

すなわち、過去の状況のミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化が必須の前提となります。

訴訟というプロジェクトは、「ノンフィクション小説作品を上梓するプロジェクト」と同様の大仕事です。

そのような一大プロジェクトにプロジェクトオーナーとしてエンゲージする覚悟と決意があって、はじめて成立する話となります。

また、それだけ努力して、結果は期待できるか、というと、これまた保証の限りではありません(相手も、それこそ、さらに大きな予算と資源をかけて、まったく反対の「ノンフィクション小説」を書き上げてぶつけてきますので、熾烈なプレゼン合戦になるわけです。普通に考えて、相手の方が、金も人員も資源も余裕もあるので、相手の方が圧倒的に有利ですので、純戦略的には勝ち目はこちらの方が少ないです)

ですので、当弁護士法人としては、【相談者】様に対して、
「経済合理的に考えて、やらないと損だし、やるべき」
というタイプの案件ではなく、
「損得だけを考えるなら、損することもありうる。ただ、損得ではなく、泣き寝入りはしたくないし、自分の尊厳をかけて、死にものぐるいで戦うし、損しても悔いはない」
というタイプの案件であり、後者の認識と覚悟と決意があれば、ご助力することも検討の俎上に乗せることが可能です。

以上をふまえて、ご検討ください。

その上で、受任をお望みの場合、すべての状況認識と覚悟と決意の下に、明確に依頼したい旨のメッセージを、○月○日までに当職宛メールでご送信ください。

その場合、本格的な事件相談を開始し、また、費用見積もり設計を行うなど、活動のための環境整備を開始します。

以上のような明確なメッセージが上記期限内になければ、本件は、少なくとも、上記のような前提と条件において、当弁護士法人に依頼する意思はないものと判断し、前回の相談セッションのみにて一切のエンゲージが終了したものとして取り扱わせていただきます。

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
代表社員・弁護士 畑中鐵丸

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01885_法律相談後に証拠(メール)を弁護士に渡す方法

法律相談後に入手した書類を弁護士に渡す方法について書きましたが、今回は、証拠(メール)を弁護士に渡す方法について、です。

メールはどの担当者からでしょうか?
メールはどの担当者宛でしょうか?
メールは概ねどういう内容が書いてありますか?

上記が推知できるようなタイトルにすることです。

同様のメールが飛び交っていることもあるでしょうし、弁護士が、大量のメールから証拠となり得るメールを特定することは容易ではありません。

また、証拠とするには、その程度の記載がないと、雑な印象を与えかねません。

時間的資源・人的資源を少しでも効率よく、と考えるのであれば、メールタイトルから、誰から誰に対して何が起こっているのか推知するような名前をつけることを推奨します。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01884_裁判所の出す和解のサインを読み解くには

裁判官は常に
「ジェントルでエレガントで、何を言っているのかさっぱりわからない言い方」
をします。

「東大卒の知的で穏やかな紳士だけにしかわからない、奥歯にものの挟まった言い方」
というものが、世の中には存在します。

だからこそ、和解のチャンスや和解のサインを見逃すのです。

要するに、和解について、裁判所の出すサインはわかりにくいものです。

ポーカーの手を読むのと同じで、熟練が必要です。

熟練には、理論も経験も必要です。

ちなみに、理論を学ぶのに、我々弁護士は、平均して3万時間(旧司法試験においては、合格平均年齢が30歳でそこから2年かけて司法研修を終え、はじめて弁護士バッジをもらえます。大学専門課程が20歳から開始と仮定して12年間、平均して1日7時間の法律の勉強が必要です。7時間✕365日✕12年)ほど費やします。

とはいえ、理論という形式知だけでは使い物にならず、弁護士は、経験を通じて、各種暗黙知も備わってこそ、初めて仕事ができるのです。

要するに、理論なき経験は無価値です。

同様に、経験なき理論も無価値です。

「法律を分かったような気になって、一般人が矮小な経験値を基礎に、常識という偏見を形成して、それを一般論として、どのような場合にも当てはめる」
という愚考・愚行を目にすることがありますが、本物とまがい物では、やはり、違うのです。

守株待兎(しゅしゅたいと)の故事成語と同様、経験をいきなり普遍化するのは極めて危険です。

理論的背景がなければ、普遍性はないのです。

一般人が裁判所の出すサインを簡単に読めるようであれば、弁護士の価値は皆無なのですから。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01883_破産申立を弁護士に依頼するということ

すでに倒産状態に入っており、また、破産の決意をしたならば、財布のお金は、1円2円を含めて、一切合切、債権者の所有物となります。

もちろん、生活を送る上での、平均的支出は許されますが、度を越した支出は、免責(徳政令として借金チャラにしてくれる制度)否認(徳政令が発令なし)になる危険が生じます。

まず、この認識を明確に持ち、破産申立を依頼した弁護士に協力をしなければなりません。

依頼された弁護士は、依頼者の代理人ではありますが、公的責任をも負担する(債権者全員のために財産散逸を防止し、管財人に引き継ぐ)立場でもあります。

この公的責任を果たすことに対する恩恵(ご褒美)として、破産者には、免責により借金棒引きがなされる、というのが制度の運用です。

破産者においては、破産申立を弁護士に依頼したから、もう安心とばかりに、気をゆるめるのはご法度です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01882_検索と商標権侵害について

たとえば、商標登録している自社の製品やサービスを検索すると、なぜか、自社ではなく他社の製品の広告が出てくるとします。

これは、商標権を侵害されていることになるのでしょうか。

他社製品の広告が出るようになってから、自社製品・サービスの売り上げがどんどん下がってきている現実を前にすると、何とかしなければならないことは確かです。

しかし、相手方に文句をつけたところで、
「あなたのブランドをパクっているわけではない、検索のロジックで仕方がないじゃないか」
と、言い逃れされそうです。

要するに、全体から観察すると、紛らわしいことではあるが、商標権の侵害とまではいえないような場合、泣き寝入りするしかないのでしょうか。

訴訟を起こし、裁判所に
「具体的文言や態様を見て、それが商標的使用にあたるのか」
を判断してもらう方法もありましょうが、時間・カネとのトレードオフ課題となります。

ビジネスのスピードを考えると、結局、相手方に、商標権侵害でまったく責任追及できない、ということになるのでしょうか。

やはり、泣き寝入りするしかないのでしょうか。

知財実務家なら、戦略をもっています。

策がないわけでは、ありません。

1つは、「不法行為のビジネス版特則」とも呼ぶべき不正競争防止法であり、
1つは、一般不法行為です。

不正競争防止法は、他人の商品等表示として需要者に広く認識されているものを使用して営業主体の混同を生じさせる行為を不正競争行為としています(不正競争防止法2条2号)。

要するに、有名な商品やサービスにあやかって、紛らわしい商売を展開して、タダ乗りして不当に儲けるは違法、という考え方です。

もう1つは、一般不法行為ですが、これは、知財の正攻法でうまくいかないときに、プランBとして発動されるもので、知財実務家の間では有名な戦略オプションです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01881_紛議になったら

交渉セオリーとしては、
「条件を先に切り出したほうが不利」
です。

参照リテラシーとしてhttps://9546.jp/2019/10/23/00676_%E4%BA%A4%E6%B8%89%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%8C%E6%9D%A1%E4%BB%B6%E3%82%92%E5%85%88%E3%81%AB%E8%A8%80%E3%81%84%E5%87%BA%E3%81%99%E3%80%8D%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AE%E8%87%B4/

なお、
「条件を先に切り出す方が損」
というのは、相手方・当方どちらにも当てはまるわけであって、当方から仕掛けるのは戦理に反します。

したがって、
・両睨み状況で放置する
・相手方がしびれを切らして、交渉条件を切り出すのを待つ(なお、仮に条件を切り出しても、いきなり受諾するのはNGです。その後の交渉手法は、上記サイトで教示しています)
・相手方が、資源動員を決意して、訴訟に打って出るなら出るで、判例を使って応戦する(→といっても、訴訟を提起するには、あまりに動員資源負担が過酷で、しかも、裁判例の存在によって、勝率と期待値が逓減しているので、冷静に考えたらコスパがどんどん悪化しているので、感情ではなく勘定で思考するなら、訴訟提起という作戦展開は非常に厳しい、ということになります。なお、この点も、下記サイトを、攻守ところを変えてお読みください。相手方が勘定面でのジレンマにさらされている状況を想定いただければ、正しく俯瞰的観察ができましょう)

https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2843037022032018000000

なお、訴訟となれば、やりとりは裁判所が閲覧しますから、ジェントルでエレガントな書き方をする必要があります。

心証形成に影響しかねないので、気をつけましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01880_紛議にいたるまでにすべきこと

紛議にいたる原因のひとつとして、相手方の事務知性・事務能力の欠如がある場合があります。

それは、相談者が発注し、相手方が受注した仕事内容の技術や完成レベル・完遂レベル等の能力とは別次元のスキルセットとして、の話です。

事務知性や事務能力というのは、
・想定外の事態を、平時として軽視・楽観視しない
・想定外(=すなわち自分の都合や常識では図りし得ない事態)の事態を、自分の都合や常識で判断しない
・想定外の事態に接したら、決定判断できる人間との、報連相を絶やさず、自己判断・自己実施をしない
というプロトコルを構築し、実践するリテラシーとスキルを指します。

「このくらいいいじゃないか」
「このくらい普通だよ」
「このくらいでガタガタ言うのはおかしい?」
と、相手が言うのであれば、それらはすべて、幼稚で自分勝手で甘えた言い方であり、紛争状況においては、すべからく不利に作用します。

また、これに加え、事態をさらに混乱させることがあります。

それは、相談者自身が、
「発注したのは自分だから」
「長年の付き合いだから」
などという理由で、相手方に同調し、(意識・無意識関係なく)相手方を庇おうとするるメンタリティがある場合です。

本来なら、相手方を加害者として認定し、その不備を責め、責任を追及するところです。

ところが、責任を追及するのに及び腰になってしまう、でも、モヤモヤはとまらないし、明らかに紛議になるほどオカシイ・・・、と悩みに悩んで、時間がたってから、弁護士に相談するのです。

「弁護士に相談するほど、の事態である」
と思うのであれば、まずは、相談者自身が、事態そのもの、そして、事態を招いた原因を冷静に認知、評価、解釈することが肝要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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