02089_企業法務ケーススタディ:脱税と向き合う_税務署からの通知無視の代償_経営者の判断力が試される

<事例/質問>

あるプロジェクトをすすめていました。

私は経営者ですが、別途プロジェクトオーナーがいます。

さて、税務署から
「お尋ね」

「確認のための通知」
が届きました。

このことを、プロジェクトオーナーに相談すべきか、あるいは、顧問弁護士に相談すべきか、悩んでいるうちに時間が経ち、結果的に、税務署からの通知を無視し続けることになりました。

すると、ある日突然、税務署の査察調査を受けることになりました。

その後、調査結果通知書が届きましたが、今度は、資金繰りで悩み、修正申告を先延ばしにしているうちに、税務署から告発通知書が届きました。

どうやら、私は脱税したとして国税局に告発され、事件が刑事事件として捜査機関に引き継がれたようです。

これにより、捜査機関から取り調べを受けることになりそうです。

私は、顧問弁護士にもこのことを言わずに、知り合いから紹介された別の弁護士に助けを求めました。

でも、やはり、どうにもならなくて、元の顧問弁護士に、依頼しなおそうかと思います。

<鐵丸先生の回答/コメント/アドバイス/指南>

脱税したとして、当局からの査察が入ったという
「事件」
そのものは、ひとつの大きなリスクです。

さらに重要なのは、
「事件後の対応」
で判断を誤ることがリスクです。

この2つのリスクを理解した上で、どのように対処するか、よく考える必要があります。

たとえば、リスクの1つとして、次のような分岐例があります。

================

どのような態度で査察対応し、どのような調書に署名をするか?

================

(1)従順対応説
なんでも言うことを聞いて、やってもいないことを
「やった」
と認めたり、あるいは指南役に唆されたにもかかわらず、すべて自分の意思で行ったことにして、調書に署名する方法。
この方法では、一時的に波風を立てずに済む可能性がありますが、不利な調書が後々利用され、結果的に現状を悪化させるリスクがあります。

(2)正直対応説
やったことは認めるが、やっていないことについては毅然と否定する方法。
不当な虚偽事実の署名を強制されたら、抵抗することによって、告発を見送り、あるいは告発されても、起訴・不起訴で戦える環境を作った方がいい、という方法。
短期的には困難を伴うかもしれませんが、長期的には争える環境を整えることができます。

弁護士としては、
「(2)正直対応説」
を推奨します。

この分岐点で、
「(2)正直対応説」
をプロジェクトオーナーに示唆し、プロジェクトオーナーに判断の前提を整え、プロコン分析を提供し、しっかりとしたジャッジをしてもらうことが、経営者のプロとして正しい姿かと思います。

そして、この分析を支援し、判断の前提を整えるのが弁護士の役割でもあります。

仮に、
「(1)従順対応説」
のみしか提供せずに、あたかも、それが唯一かつ最善の方法であるかのように評価する弁護士がいるとしたら、それは
「ろくでもない弁護士」
と言わざるを得ません。

最後に、このような出来事に対処する上で、重要なポイントを挙げておきます。

(A) 状況に変化があれば、「必ず相談する」という約束を守ること
状況は刻一刻と変わります。
そのたびに信頼できる弁護士に相談することが大切です。
自分だけで判断し行動するのは、リスクを高める原因となります。
信頼できる弁護士とのコミュニケーションが鍵となります。

(B) 顧問弁護士との長期多岐な信頼関係を維持すること
本来信頼すべき弁護士に事実を隠し、別の弁護士に相談する行動は、事態を複雑化させ、最適な判断を妨げる原因になります。
依頼し直すことを検討しているのであれば、最初から率直に相談しておくほうが、スムーズかつ適切な対応が可能だったはずです。

専門家との連携を密にしながら、ご自身のすすむべき道を考え、選択してください。

それが、経営者のプロとしての姿勢です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02088_企業法務ケーススタディ:英文契約書チェック:重要な2つのレベル

<事例/質問>

英文契約書に関してアドバイスをください。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

英文契約の場合、
1 言葉が通じないケース
2 話が通じないケース、
3 言葉も通じてないし、話も通じてないケース
が考えられます。

特に、中小企業には、3のケースが圧倒的に多いです。

ということで、前提ですが、

レベル1:言葉が通じているか、の問題

ア)契約書を、御社の誰かが、責任をもって、読んで、理解している。
イ)契約書が送られてきたが、誰も契約書を読んでいないし、今後もきちんと読むつもりはない(画像認識はしても、字義や意味をしっかり認識する、という作業は放棄する)

のいずれでしょうか?

レベル2:話が通じているか、の問題

A)(こちらとして思い描いている)ビジネスモデル・取引条件が明確に認識され、理解されている
B)(こちらとして思い描いている)ビジネスモデル・取引条件は曖昧な状態であり、あるいは共有・理解に至っている。むしろ、相手から出てきたものをみて、こちらとしての取引条件を考えていく。

契約書のチェックやアドバイスとは、
「レベル1のア)」

「レベル2のA)」
を前提として、その齟齬を認識・把握した上で、こちらの思い描くビジネスモデルを契約書に反映させることを言います。

もし、
「レベル1がイ)」
で、
「レベル2がB)」
ということであれば、まずは、和訳して、相手が何を言っているかを把握することが重要な前提です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02087_企業法務ケーススタディ:根拠なき批判への法的対応:事実確認と証拠の重要性

<事例/質問>

先日掲載されたWEB記事において、弊社製品に対して根拠なく批判的なコメントが掲載されました。

大手量販店の販売員を名乗る人物がインタビューに答える形で、弊社製品品質について、事実無根の批判を展開しています。

記事はWEBサイトの掲載のみならず、雑誌紙面においても同様の記載があるようです。

弊社としては、
・ 出版社に対して、今後このような記事を載せないように牽制したい
・(可能であれば)謝罪等を引き出し、それを対外的に(卸・販売店・消費者に対して)公表できるようにしたい
・  WEBサイト等で、記事に抗議/否定するコメントを掲載し、そのコメントを卸・販売店にも通達したい
と考えています。

これについて、法務的観点でどのように対処すべきでしょうか。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

「弊社製品に対して根拠なく批判的なコメントが掲載されました。」
についてですが、
この
「根拠なく」
という点は正しいのでしょうか?

たとえば、
「畑中鐵丸は山口組の司忍の息子である」
「畑中鐵丸の母は、金正日の元愛人である」
「畑中鐵丸は、強盗と放火の前科がある」
いずれも、事実無根ですので、徹底的に争うことは可能です。

ですが、
「畑中鐵丸はスケベである」
「畑中鐵丸は下品である」
「畑中鐵丸はテニスが下手である」
「畑中鐵丸は嫌われ者である」
といった話ですと、身に覚えがなくはない話であり、
「事実無根だ!」
と争っても、逆に、事実に根拠があることが示されてしまいます。

この種の問題解決の起点となるのは、書かれたことがムカつくかどうか、ではなく、事実です。

それと、争いになった場合、事実には証拠が必要です。

言い争いにおいて、証拠のない主張は、寝言ですから。

以上を前提に、打ち合わせの時間を取りましょうか。

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02086_契約書確認の「緊急対応」が生むリスクと課題

契約書確認は、ビジネスの現場で頻繁に求められる業務です。

しかし、時には驚くほどのスピード感を持って対応を求められることがあります。

この
「緊急対応」
には、実は見えないリスクや課題があります。

緊急契約書確認で起きるリスクや課題

1 表現やロジックの不備がある

クライアントから示される契約書は、表現が不明確でロジックに欠陥や不備があるケースが、多く見受けられます。

2 新規作成に近い作業負担

そのため、
「言いたいことは分かるが、それを明確に表現するには相当行間を埋めなければならない」
という状況となります。
結果として、事実上の新規作成扱いとなり、当事務所指定のタイムチャージやドキュメンテーションチャージ(ラッシュチャージ込み)を頂戴することになります。

3 情報不足を補うための補完

意図や目的や背景についてしっかりとしたカウンセリングを前提としたものではないため、現時点での極めて曖昧で不明箇所の多い前提意図を、弁護士側が忖度し、推測や想像力で補完することとなります。

「リスクを極力抑制しながらクライアントの意図に沿ったもの」
を提供することが求められる弁護士側は、時間とリソースを大きく費消することとなります(他の業務は後回しになります)。

4 現場での修正が前提となる

以上のような状況で作成された契約書(事実上の新規作成扱いとなる)は、当然のことながら、クライアントの現実的なビジネスゴールや、相手方との交渉関係まで把握できるものではなく、実際の使用にあたっては、現場の責任者の適宜の修正等を前提とするものとなります(言わずもがなですが、クライアントには、最初に了解を得ます)。

契約書を「正しく使う責任」

弁護士が作成する契約書は、依頼時点での条件や背景に最適化された
「逸品」
です。

以下は実際に起きた事件です。

あるクライアントが、過去に、特定の状況と特定のゴールにのみ最適化されたものとして当方より提供した契約書を、当方に了解なく、新しい事案において書式として援用し、しかも、全く違った状況や全く違ったゴールであるにもかかわらず、援用した担当者において、所要の修正を図らずそのまま流用しました。

結果、契約相手から
「これを作った法律家はビジネスを知らない。こんな一方的な契約書は、この取引に見合っていない」
と、言われたクライアント(オーナー経営者)からクレームが当方に寄せられる、という事態となりました。

契約書は「ビジネスを守る盾」

契約書は単なる法律に基づく文書ではなく、
「クライアントの意図や目的や背景についてしっかりとしたカウンセリングを前提」
とし、 意図を言語化し、リスクを排除しつつ、目的を達成するために作られた
「盾(特定の状況と特定のゴールにのみ最適化されたもの)」
です。

ビジネスを大きく実現している経営者は、契約書確認に関わるプロセスにおいて、弁護士に時間的な余裕を与え、
「盾(特定の状況と特定のゴールにのみ最適化されたもの)」
を効果的に活用しています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02085_弁護士にされる相談のタイプ

弁護士の元には、様々な内容の相談が寄せられますが、大きく2つのタイプに分類できます。

1 質問や依頼内容が明確で、具体的な場合
2 何を相談すればよいのか、自分でも分からないため、一緒に整理してほしい場合

2のケースでは、弁護士がクライアントとディスカッションを重ねながら問題を整理する必要がありますが、このプロセスがスムーズに進むとは限りません。両者の認識がすれ違うこともあります。

目的と行動のズレが解決すべき課題

「何を相談すればよいか分からない」
という相談では、クライアントの目的と行動が食い違うことがよくあります。

例えば、ビジネスの場面で、目的は、
「こちらの提供する手間を最小化し、最短の期限で、もっとも多額の現金を手にする」と言う一方で、現実の行動は、
「伝統や因習を尊重し、モラルや方式にしたがって、スマートかつエレガントに、契約書を締結してくれ」
というように、目的と行動がズレてしまうケースは少なくありません。

前提が狂った相談になりがち

目的と行動がズレると、相談もズレた形になりがちです。

「伝統や因習を尊重し、モラルや方式にしたがって、スマートかつエレガントに、契約書を締結したいので、そのために、弁護士に助力を求めたいが、助力を求めるべき内容がわからないので、何を助力したいかを相談したい」
というように前提が狂った相談になってしまうのです。

弁護士としては、状況を正したいと考え、クライアントに啓蒙的なアドバイスを試みようとしますが、裏目に出ることがあります。

結果、クライアントの中には、
「そんなことわかっている。失礼にもほどがある」
と不快感を示す方もおり、双方の認識がさらにすれ違ってしまうこともあります。

弁護士としてできること

弁護士としてはクライアントの指示を待つしかありません。

「提供する手間を最小限に、最短の期限で、限界の現金を手に入れる」
という目標を達成するための不可欠のプロセスとして、
「必要最小限の取引デザインがすでになされていて、その表現面をお手伝いする上で、具体的な指示をクライアントから与えられることを前提に行動する。そのため、クライアントの指示を待つ」
と伝えるしかない、現実的な対応となる場合もあるのです。

耳の痛い話を受け入れるクライアントほど、前に進むのがはやいことは、言うまでもありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02084_クライアントの特徴と成功への基本戦略

当事務所に相談されるクライアントの多くは、以下のような特徴(全てまたは一部)を抱えています。

・経験・知識の不足:法律やトラブルに対するリテラシーがほぼ皆無。
・不用意な信頼:状況や相手を深く検証せずに信頼してしまう傾向。
・資源不足:手兵が少ない、軍資金も不足している。
・逆境に置かれた環境:世間の逆風が強く、状況はほぼ「ゲームセット」。
・過去への執着:プロジェクトオーナーが過去に執着し、報復感情が強い。
・ICT活用不足:情報共有に必要なICTインフラを活用できていない。

また、これまで関与していた専門家が機能していなかったり、裏切りが発生していたり​​、目的軸が混乱している場合も少なくありません。

まずは
「正しい環境把握」

「目的整理」
が、解決への始まりとなります。

ショック療法の実施

厳しい状況を打開するため、クライアントにはショック療法的なアプローチを用いて、現状の厳しさを深く理解していただきながら、目的を整理するプロセスを進めます。

過去の出来事や報復感情に囚われていて、過去の出来事や報復感情に引きずられ、現実的な目標設定に移行しきれていない可能性があるからです。

効率的なプロジェクト運用の必要性

資源状況が不足している、ということは、たとえるなら、
「火縄銃と農兵一人で現代アメリカ海兵隊の精鋭部隊と戦うようなもの」
です。

厳しい戦闘を強いられる状況は容易に想像できましょう。

「2秒でゲームセット」
となる危険性が否定できないのです。

そのため、プロジェクトの規模を現実のものに縮小し、リソースを最適化した運用が必要となります。

重要な心得:無知な友軍は、賢い敵軍より危険

軍事の常識である
「無知な友軍は、賢い敵軍よりも危険」
という教訓は、問題解決の現場でも例外ではありません。

そのためにも、正しい状況把握と目的整理が、問題解決には不可欠です。

遅れを取り戻す覚悟

あちこちの弁護士事務所を相談して回り、当事務所を訪れるまでに月間を費やしているケースも少なくありません。

「せめて2カ月前に当事務所へ相談をいただいていれば」
と思うことも少なくありません。

しかし、過去のロスを嘆いても始まりません。

クライアントには、以下の点を徹底することが求められます。

1 環境を正確に把握する
2 目的を整理し、優先順位を明確にする
3 無駄を排除し、効率的な運用を続ける

厳しい状況を踏まえながら、当事務所はあらゆる手段
「あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技」
を総動員し、クライアントを全力でサポートします。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02083_弁護士の役割と責任範囲を再確認する

プロジェクトにおける弁護士のスタンスについて、明確にしておくべき重要なポイントがいくつかあります。

本来、弁護士の役割は、依頼者がデザインしたゴール(時間、完成、予算の各軸)を達成するための具体化と実施を支援するものであり、そのゴールデザインを依頼者側が社内で調整・合意することが前提です。

しかし、依頼者側からゴールデザインや社内調整のすべてを弁護士に丸投げするようなスタンスは、現実的には珍しいものの、実際に少なからず存在する事例でもあります。

特に、社内調整が未了である状況で、別の関係者からの情緒的な反発や理解不足に起因する問題が顕在化した場合、それらをプロジェクト担当者が弁護士に押し付けるような事例も見受けられます。

弁護士として対応可能な範囲

弁護士としての基本的なスタンスは以下の通りです。

・依頼者の要望が法的・経済合理的に可能であれば、できる限り対応する。

・依頼時点で、責任の範囲やプロジェクトの前提条件について具体的な合意が必要。

例えば、プロジェクト発足当初から
「プロジェクト責任者」
「プロジェクトオーナーとの対応窓口」
「社内調整責任者」
「代理人弁護士」
という複合的な役割を明確に依頼され、そのためのコストが承認されている場合には、異存はありません。

しかし、コスト面での抑制を求められる一方で、
「プロジェクト責任者」
兼「プロジェクトオーナーとの対応窓口」
兼「社内調整責任者」
兼「代理人弁護士」
というように、責任や役割範囲を大幅に拡大しようとする姿勢が見受けられた場合、弁護士としてのスタンスを見直す必要があります。

責任範囲の見直し提案

担当者からの発言内容に基づき、以下のような役割と責任範囲が弁護士に求められる場合、費用の再設計が不可避となります。

・要求定義(何をしたいか)やゴールデザイン(何ができるか、踏まえた上で、最終的に、何をすべきか、を発見・特定・具体化・設定する)マイルストン(中間目標、道程)の抽出
・プロジェクトオーナーとの調整
・社内反対勢力の情緒と無理解へのフォロー
・全体的なコミュニケーションフローの調整

これらを弁護士に任せる場合、依頼者側の負担は軽減されるかもしれませんが、弁護士としての負担と責任が大幅に増加するため、相応のコスト負担を依頼者には理解していただく必要があります。

経済合理性を考慮した提案

弁護士としてのスタンスは一貫しており、
「クライアント様からのご要望については、どのようなものであれ、法的・経済合理的に無理難題でなければ、あらゆる要望に対応する」
というものです。

ただし、以下のような条件は経済合理的に
「無理難題」
に該当します。

1.十分なコストを払わない
2.権限が曖昧で責任の所在が不明確
3.関係者が自由気ままに発言し、情緒が不安定
4.失敗時にはすべて弁護士に責任を押し付ける

これらの要素が揃っている場合、弁護士としての対応が困難となります。

そのため、依頼者と弁護士の間で責任範囲とコスト負担について再度の合意形成が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02082_ビジネスと法律問題、アプローチの違いを紐解く

ビジネスの現場では、
「正解」
が存在することが多く、その正解を見つけるためのルールや手順が整備されています。

たとえば、新商品の販売戦略を考えるとき、過去のデータや市場分析をもとに
「何をすべきか」
が具体的に見えてきます。

このように、正解に向けて効率的に資源を投入しながら進むのがビジネスプロセスの基本です。

一方で、法律問題には、そもそも
「正解」
がない場合が少なくありません。

紛争が起きたとき、
「どちらの主張が正しいのか」
を決めることができる明確な基準がないこともあります。

その結果、解決の糸口が見えないまま、時間や資金だけが浪費される
「手探り状態」
に陥りやすいのが法律問題の特徴です。

森で道に迷ったときに何が必要か?

法律問題を森の中で迷う状況にたとえると、正解が見えないなかで
「この道だろう」
と選んだ進路が間違っていることに気づくことがあります。

しかし、多くの人は
「今さら引き返すのはもったいない」
と考え、進むべき道が見えないまま、
「これで合っている」
と自分に言い聞かせて進み続けてしまいがちです。

このような状況では、正解にたどり着くどころか、事態がさらに悪化してしまうことも珍しくありません。

そうならないためには、進む方向を見直す勇気が必要です。

そして、
「現在の状況を冷静に理解し、まったく別の視点から問題を考える」
ことが重要です。

「発想次元の転換」とは?

この
「まったく別の視点」
を持ち込むのが弁護士の役割です。

戦いで行き詰まったときには次のような段階的なアプローチが必要です。

・素手の殴り合いが行き詰まれば、刃物を持ち出す。
・刃物での斬り合いで決着がつかなければ、飛び道具を使う。
・地上戦でにっちもさっちもいかないなら、空中戦に切り替える。
・空中戦でも進展がなければ、宇宙から全体を俯瞰して新たな戦略を考える。

法律問題においても、これと同じように、
「これまでのやり方」
を見直し、まったく新しい方法や視点を導入する必要があります。

このプロセスを私は
「発想次元の転換」
と呼びます。

なぜ「間違いを認める」のが難しいのか?

ただし、この
「発想次元の転換」
を当事者に受け入れてもらうのは簡単ではありません。

その最大の障壁となるのが
「プライド」
です。

自分の選択や判断が間違っていたと認めることは、多くの人にとって耐えがたいことです。

これは、独裁者に
「お前は裸だ」
と指摘するようなものです。

あるいは、中世のバチカンで
「地球は動いている」
と地動説を主張した科学者が火あぶりにされるようなもので、間違いを認めるのはそれほど辛く、時に激しい抵抗を伴うのです。

解決しない「付き添い」の選択肢

こうした当事者の抵抗を前にしたとき、別の選択肢もあります。

それが
「問題を解決せずに寄り添う」
というアプローチです。

私はこれを
「ベイビーシッティングサービス」
と呼んでいます。

この方法では、問題を根本的に解決することはできませんが、当事者の安心感を得るために付き添う役割を果たします。

しかし、これはあくまで当事者の感情に寄り添うだけのものであり、問題の本質を解決するものではありません。

状況の改善には繋がらないのが、この方法の限界です。

柔軟な解決策が求められる

法律問題はビジネスのように
「正解」
が明確に見えるものではありません。

そのため、正解がない中で柔軟に対応し、新しい道を切り開く発想が求められます。

このプロセスでは、
「あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技」
といった多様な戦略が必要です。

弁護士は、状況を冷静に見極め、当事者のプライドや固定観念に配慮しながら、柔軟かつ実効性のある解決策を提示する役割を担っています。

それこそが、法律問題における
「解決」
の道筋なのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02081_企業法務ケーススタディ:期限を盾にした交渉術の本質を見抜く

<事例/質問>

ある企業と業務提携をすすめてきましたが、資金面等で話の食い違いが生じ、紆余曲折の末、契約を解除することにしました。

仲介をしたコンサルタントが出向き、契約解除を目指し、交渉を行いました。

ところが、コンサルタントは、先方から以下のような質問を受けてきたうえに、
「先方は怒っている。先方の質問に答えることと、月曜までにカネを振り込めば、私が丸く収めましょう」
と、本社に連絡してきました。

この対応が本当に交渉に必要なのか、先生にご意見をいただきたいと考えています。

以下は、コンサルタントから提示された質問内容です。

1 ●●社に関して
・これまでの交渉の議事録
・問題対策の合意事項と課題
・こちらが示したM月末の契約解除の根拠

2 今後の●●社との交渉に向けて
・誰が事業責任者か
・誰が契約解除を条件にしたのか
・誰が交渉の期限を条件にしたのか
・誰の責任で何が交渉できるのか

以上の内容について、どう対応すべきか、アドバイスをお願いいたします。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

1 時間的冗長性の確保が最優先課題

コンサルタント氏の行動は、交渉でもビジネスでもなく、
「時間」
を人質にした対応です。

そして、当方を焦らせることによって、
「冷静に考え、対処する」
という機会を奪おうとしています。

人間も組織も、時間的冗長性を奪われ、冷静さを失われれば、一時的に、認知機能を喪失し、偏見が助長され、合理的で戦略的に対処する能力が低下します。

この状況は、
「オレオレ詐欺」
に見られる心理的な操作と本質的に同じです。

例えば、
「お母さん、息子さんが交通事故で人をはね、大変なことになっています。このままでは息子さんはエライことになります。いますぐ示談金を振り込めば何とかなるかもしれません。時間がないんです。月曜までなんです。早く早く」
という状況と酷似しています。

2 疑問点を整理する必要性

まず、以下の点について冷静に疑問を整理し、検討する必要があります。

・「月曜まで」の期限は絶対的なものなのか? 延長の可能性は?
・その期限が絶対で、最後の通告であれば、通常は書面で通告されるはずだが、その文書はあるのか?
・期限を徒過ないし遷延した場合のペナルティやリスクやダメージは、何なのか?

コンサルタント氏は、提示された条件や期限について、根拠とデータを明確に示すべき立場にあります。

そうすることで、当方としても適切な判断を下すための資料が整います。

3 具体的な対応方針

当方としては、詳細がわかるまで、指一本動かす必要はなく、
「期限の遷延や、応答の拒否が、具体的にどのようなメカニズムで、どのような具体的な厄災を招くのか、わかるように、根拠と資料を添えて、(あとからすっとぼけたり、弁解を変遷させないよう)文書で説明せよ。
要求に応じないと決定したわけではないし、詳細が判明し、メリットないしダメージの予防に効果的であれば、合理的な対応として、提案に応じる可能性はあるが、現時点では、說明があまりに不確定であやふやなので、暫時留保せざるを得ない」
と言えばいいだけです。

4 結論

先方の主張内容が明らかになってから、その急所となっているところを崩して窮地に追い込めば、こちらが優勢に立ちますが、先方の主張内容が明らかになっていない段階で、急所もわからず、闇雲に、先方に乗り込んで、探偵ごっこするのは、愚策です。

有限で貴重な資源動員のあり方として、賛成できません。

それよりも、まずは
「時間的冗長性」
を確保し、先方に主導権を渡さず、冷静に交渉を進めるべきです。

また、十分な情報を得るまで行動を起こさないという毅然とした態度で臨むべきです。

コンサルタント氏には、文書での説明を求め、交渉のペースをこちらに引き寄せることで、後々の言い逃れや主張の妥協を防ぐことができ、その後の展開を有利に進められるでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02080_企業法務ケーススタディ:法務部人手不足対策、その適否を問う

事例/質問

会社では、
「事業全体のスマート化」
を推進する方針が示されており、社長からは
「業務のスリム化と余剰人員の活用を通じて業務の見直しを進めるように」
との指示を受けています。

しかし法務部では人手不足が深刻で、法務担当者が夜23時まで残業してもなお残務が増え続け、業務に支障が出始めています。

そのため、法務以外の部門からの異動による人員補填も検討しましたが、法務業務のスキル不足が懸念されるため断念し、取り急ぎとして人件費総額を増やさず、固定化リスクも抑えられる3カ月契約の派遣社員を雇うことにしました。

鐵丸先生の回答/コメント/アドバイス/指南

今回の対応が、
「業務のスリム化と余剰人員の活用による業務の見直し」
という方針に反していないか、確認が必要です。

特に、間接部門での新規採用が本当に必要かどうかを考えるべきです。

御社が目指す
「事業全体のスマート化」
に対して逆の判断になっているのではないかと懸念しています。

もちろん、その判断を踏まえた上で、あえて派遣社員を採用するのならば、それについて否定はしません。

しかし、理解されているとおり、人材には高いコストがかかります。

そのため、派遣社員の採用が場当たり的な対応になっていないかも見極めるべきです。

現状の業務量に応じて人を増やすのではなく、
「その業務がどういう役割を果たしているか、それは本当に意味があるか」
という観点から、根本的に検討することをお勧めします。

例えば、法務部門で行っている法律確認が既に外部の弁護士に委託されているならば、法務部での業務は実質
「文書管理」
といった作業に限られているのではないでしょうか?

それならば、派遣社員ではなく、アルバイトでも可能な業務範囲になっているかもしれません。

もしこのような状況であれば、法務部門を
「現状維持するため」
の採用は、特に慎重に検討が必要です。

社内の人の手不足を
「余剰業務の見直し」
と捉えてみてはいかがでしょうか。

今や、ホワイトカラー業務の多くがICTや外部委託で対応可能となり、スマホ1台で昭和時代のホワイトカラー20人分の生産性を発揮できるくらいの環境です。

まずは、今回の採用が本当に有効なのか、徹底的に
「合理性の検証」
を行うことが重要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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