02032_SNSで投稿した写真が勝手に使われているが、著作権侵害で訴えることはできるか(教えて!鐵丸先生Vol. 38)

<事例/質問>

SNSで、いろいろ写真を撮って投稿して、そこそこフォロワーがいます。

素人写真ですが、それなりに工夫をしており、自分としては味わいのある写真であり、だからこそ人気があると思っています。

最近、私の写真を勝手に使われたりすることがありますが、著作権侵害で訴えられますか。

ちなみに、©(マルシー)とかは特に付けていません。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

写真には著作権が成立します。

ただし、どんな写真でも著作権が成立するわけではありません。

著作権が認められるのは、
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
という定義に当てはまる場合です。

要するに、著作権法が保護するのはアイデアや技術ではなく、
「クリエイティブな表現」
なのです。

証明写真やメモ代わりの写真でも、その写真が
「カッケー! ヤベエ! チョーイケてる!」
というように、創作的でユニークな表現であれば、著作物として認められる可能性があります。

プロのカメラマンでなくても、素人でも、小学生でも、写真がクリエイティブであれば立派な著作物になります。

相談者の写真も工夫があり、味わい深いのであれば著作物となり得ます。

その場合、他人に無断で使用されたら著作権侵害の問題が発生します。

よく
「(C)(マルシー)」
が著作権を示すために必要だと思われがちですが、これは表示しなくても著作権には影響しません。

バンクシーやジャクソン・ポロックの絵にも
「(C)」
と書かれていませんし、逆に横山大観やダビンチの絵に
「(C)」
が書かれていたら驚きますよね。

ただし、著作権は簡単に侵害されることが多く、心理的障壁が低いのも事実です。

そのため、まずは著作権侵害が発生した場合、きちんと
「あなたの行為が私の権利を侵害しています」
と伝えることが大切です。

弁護士名義の手紙でも、内容証明郵便でも、メールでも構いません。何らかの形でメッセージを送ることで、侵害が明らかになります。

しかし、裁判まで進めるかどうかは慎重に考える必要があります。

賠償金の相場は低いため、裁判費用と時間を考えると割に合わないことが多いです。

そのため、一発かまして謝罪を求め、出典明記(クレジット)をしてもらう方が賢明かもしれません。

詳細は、以下をお聴きください。


※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組後半、41分14秒以降から開始されます

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02031_「企業法務弁護士、ビジネス弁護士になるためのイニシエーション(通過儀礼)」は、「小学校で学んだ常識」を完全に捨て去ること

1 「ビジネス」という非常識な世界、さらに非常識で良識が通用しない「企業法務」「ビジネス法務」の世界

「企業法務弁護士やビジネス弁護士としてのキャリアを歩む」ということは、
・「ビジネス」や「(ビジネスを組織ぐるみで展開する)企業」という非常識な世界を理解し、
・さらに、これを上回る、非常識で良識が通用しない「企業法務」「ビジネス法務」という特な空間で、熾烈な知的ゲームをする、
ということを意味します。

そして、これらの世界は、あなたが小学校で学んだ道徳や常識とはまったく異なる場所です。

というか、小学校の教育には、想像すら困難な世界です。

ここで求められるのは、既存のルールを超えた非常識な思考と感受性と行動です。

企業法務やビジネスの現場では、
「この世にはお金より大事なものがある」
とか
「真面目にやっていればお金は後からついてくる」
といった、
「陳腐な戯言や、(金儲けや喧嘩には)有害な寝言」
を捨て去り、全く別の常識や情緒や行動が求められます。

企業法務弁護士やビジネス弁護士が扱うことになるのは、
「(カネや財産や権利に狂ったように執着する)経済社会における、さらに、『(図体の大きいプレーヤーほど)やったもの勝ち』がまかり通り、『勝つためにはどのような手段でも取ることが当たり前』という、病理的な空間における、特異な現象」
です。

これらの案件遂行には、常識的な解決策では太刀打ちできない、異常な状況が日常的に発生するのです。

2 非常識な金額と規模

企業法務弁護士やビジネス弁護士が扱う訴額やディールサイズは、常識を超えた規模になります。

数億円、数十億円、場合によっては数百億円規模の案件が飛び交う世界です。

これほどの金額が動く場面では、常識的な思考では到底理解できない戦略や駆け引きが繰り広げられます。

というか、
「面の皮が厚くないと、大企業の経営や、大きな事業や国際事業などやっていけない」
というのが現実です。

企業社会においては、各プレイヤーが自社の利益を最大化するために、あらゆる手段を駆使します。

交渉の裏で行われる策略や情報戦は、まさに
「何でもあり」
「やったもん勝ち」
のグロテスクな世界です。

このような状況では、小学校で学んだ
「損得を考えず、正しいことをする」
という道徳的な観念は、まったく通用しません。

「生き馬の目を抜く」
ことが普通に求められ、ボーっとしていると全てを取り上げられる、殺伐とした社会です。

3 ルール軽視、結果が全て、何でもありの総力戦

非常識なカネや権利や財産の奪い合いの状況では、
「ルール軽視、結果が全て、何でもあり」
の総力戦が展開されます。

ここでは、あの手、この手を駆使して、相手を出し抜くことが普通に行われます。

自分がやるやらないは別として、相手は、平然と、あの手、この手のみならず、奥の手、禁じ手、寝技、小技、裏技、反則技・・・これらすべてを駆使してきますし、そういうことを想定し、対処構築しておくことが求められるのです。

このような環境で成功するためには、柔軟な思考と合目的的行動が必要です。

例えば、契約書の一文をどう解釈するかによって、数億円、数十億円、さらには数百億円の利害得失が変わることもあります。

そのため、常に先を見据え、相手の一手先を読む力が求められるのです。

4 トラブルと想定外の連続

ビジネス活動や企業活動においては、トラブルや想定外の事態が日常的に発生します。

これらの問題に対処するためには、迅速かつ的確な対応が求められます。

また、予測不可能な事態に備えて、常に複数のシナリオを用意しておくことも重要です。

取引や、契約交渉より、さらにシビアなやりとりになる裁判外交渉や、訴訟といった、ビジネス法務や企業法務に関する事柄においては、さらに高い頻度で重篤な想定外が発生します。

問題が起きることを予想し、問題に対処するためのリソース(時間やお金のほか、認識の冗長性や、精神的な余裕を含む)を確保し、冷静かつ的確に対処し、大事を小事に、小事を無事に近づけるような行動が求められるのです。

5 非常識なプレイヤーとの戦い

企業法務弁護士やビジネス弁護士としての仕事は、非常識なロジックとルールで戦うプレイヤー相手に行われます。

これらのプレイヤーは、平然と非常識な打ち手を使い、相手を圧倒しようとします。

このような環境で成功するためには、相手の思考や行動を先読みし、それに対抗するための戦略を練ることが重要です。

常に相手の一手先を読み、それに対抗するための準備を怠らないことが重要です。

6 新たな「常識」のインストール

企業法務弁護士やビジネス弁護士として活動するためには、小学校で学んだ常識を捨て去り、新たな常識を確立することが必要です。

この新たな常識とは、非常識な状況に対応するための柔軟な思考と常識に囚われない果断な決断と行動力です。

そして、これをモノにするためには、マキャベリの頭脳とゴリアテの巨体を持つ圧倒的な強さを誇る相手と、シビれるような勝負の舞台に立ち、修羅場を何度もくぐり、クライアントに罵倒されることを含めた屈辱を噛み締めつつ、死なない程度のかすり傷をいくつも負いながら、体で覚えておくほかありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02030_事業立ち上げに成功したらIPO(株式公開)をすすめられた(教えて!鐵丸先生Vol. 37)

<事例/質問>

「御社の事業は素晴らしい。極めて有望だ。上場も夢ではない。あなたはIPO(株式公開)に興味はないか? 私はこれまで何社もの上場を支援してきた。私に出資させて、私の仲間も役員に入れ、一緒に上場の夢を実現しないか」
という話が浮上して、出資をしてもらう話が進んでいます。

正直申し上げて、上場とかIPOとか言われてもピンと来ていませんが、でも、とんでもなく金持ちになれる、という話は聞いたことがあるので、やってみたいと考えています。

何か、気にしておくべきことはありますか。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

事業が順調に進むと、高級スーツに高価なネクタイを締めたIPOコンサルタントや公認会計士が近寄ってくることがあります。

「私は上場のプロだ。私が株主になれば、上場間違いなし」
と、
「上場のプロ」
を自称する高いスーツを着て、ゴツい時計をつけ、ピカピカの靴を履いた、知能が高そうなおじさん(筆者の通称「上場おじさん」)の 自信たっぷりの様子に幻惑され 、
「資本政策だの、ショートレビューだの、主幹事選定だの、強制監査だの、遡及監査だの、直前期だの、開示だの、内部統制だの、ブックビルディングだの、有報だの、ロックアップだの、Ⅱの分だの、実質基準だの・・・・」
とまるで、般若心経のような難解な用語を並べ、また、そのような呪文のような専門用語を華麗に操る
「上場おじさん」
の立ち居振る舞いにすっかり魅了されてしまい、出資を受け入れ、役員に迎え入れてしまうことがあります。

しかし、実際には本業が混乱するほどの管理課題を突きつけられ、その対応のために大量の予算を費やし、資金が枯渇し、上場を断念するという話もあります。

まるで、裏口入学で小学校や幼稚園のお受験を頼んだのに、数千万円かけて不合格になるようなものです。

上場を目指すなら、他人に頼るのではなく、自分自身で上場のルールやゲームのロジックを学び、不足するリソースを外部から適正価格で調達し、外注を管理するべきです。

また、上場の目的が脚光を浴びることや知名度を上げること、目立つことなどであれば、上場ステータスに意味があります。

しかし、金持ちになるという目的では、上場は必ずしも最適な方法ではありません。

IPOには夢と現実のギャップがあります。

マーク・ザッカーバーグ氏がフェイスブックのIPOで巨額の資産を得たと言われますが、それは
「持ち株数×株価」
で計算されたもので、現金ではありません。

上場時に創業オーナーが持ち株を多く売ることは難しく、せいぜい換金できるのは5〜10%程度です。

大量に売ろうとすると、証券会社や投資家から圧力がかかり、断念せざるを得ません。

なぜ多く売れないのかというと、大量の持ち株売却は経営から手を引く意思や自社の成長性に悲観的と見なされ、株価に悪影響を与えるからです。

市場は創業オーナーの動向に敏感に反応し、真偽不明な噂でも株価を動かします。

逆に、5~10%程度なら問題にならないという経験則があります。

上場企業になると、経営者の報酬や交際費も厳しくチェックされます。

上場・非上場を合わせた社長の平均年収は3000万円程度で、ベンチャー企業の場合は2000万円前後とされています。

上場企業の経営者でも数億円の役員報酬を得るのは例外で(あの、カルロス・ゴーン氏でも、高額報酬を開示するを遠慮して、それが有価証券報告書虚偽記載罪を犯す遠因となりました)、上場企業の社長の平均年収も2000~3000万円の範囲です。

非上場時は自由だった報酬額や交際費も、上場後は株主や投資家からの厳しい説明責任が求められます。

上場企業は株主のものであり、経営者の自由は制約されるのです。

上場企業になる、つまりパブリックカンパニーになるというのは、こういうことです。

それでいて手元に残るのは、売るに売れないバーチャルな株資産と1~2億円程度のキャッシュ。

正直、割が合わないと思います。

年収が2000万円、3000万円でも、上場企業の経営者になれば付き合いも広がるので、カツカツの範囲でしょう。

「上場する意味がない」
と感じるなら、IPOよりバイアウトを考えるべきです。

バイアウトなら持ち株を全て現金化でき、確実にキャッシュリッチになります。

例えば、時価総額が20億円の場合、全株を売却してその額をまるまる現金化できます。

見ず知らずの他人からの出資を受け入れるかどうか、もう一度よく考えてください。

詳細は、以下をお聴きください。


※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組後半、40分14秒以降から開始されます

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02029_出資と融資の違い(教えて!鐵丸先生Vol. 36)

<事例/質問>

事業に出資してもいい、という方が出てきましたが、出資というのを実はよくわかっていません。

借金とどう違うのですか?

どう考えたらいいですか。

基本的なところを教えてください。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

出資と融資の違いについて説明します。

基本的に、出資は融資とは異なり、出してもらったお金を返す必要がありません。

そのため、返済のプレッシャーがないという点ではメリットがあります。

しかし、出資を受けるということは、今まで1人でやってきた会社に、投資家が参加することを意味します。

投資家は出資したお金の回収を求めるため、会社の業績を上げることや経営管理をしっかり行うことが求められます。

年に1度の株主総会を開催し、取締役の行動にも目を光らせる必要があります。

役員報酬や経費の使い方にも口出しされる可能性があり、最悪の場合、特別背任で刑事告訴されることもあります。

これは、一人暮らしで快適に生活しているところに、突然知らない人が転がり込んでくるようなものです。

出資を受けることで、自分の自由が制約されることを覚悟しなければなりません。

そうまでして出資を受ける必要があるのか、融資ではだめなのか、あるいは営業支援や業務提携といった他の方法が良いのかをよく考えるべきです。

出資であれ、融資であれ、他人を巻き込むとトラブルの元になることが多いです。

うまくいかなければ関係が悪化し、うまくいきすぎても分配で揉めて関係が悪化します。

私たちは、
「みんな仲良く、民主的に」
と教育されてきましたが、ビジネスにおいては、
「独り占め、独裁」
がもっともスピーディーで効率的です。

これは、
「責任ある経営やリーダーシップ」
と言い換えることもできますが、実質的には
「独裁的で非民主的」
な運営が理想とされています。

ビジネスと軍事作戦はよく似ています。

「風林火山」
のように、速く、静かに、火の如く攻め、山の如く動かずという行動原理がビジネスの基本です。

これを実現するには、
「独裁かつ非民主的な体制」
が最適です。

生きるか死ぬかの戦争を勝ち抜くためには、いわば日本の首相のようではなく、ロシアの大統領のような強いリーダーシップが必要です。

本当に事業資金が必要であれば、まず融資を検討すべきです。

まともな事業計画であれば、銀行が貸してくれます。

銀行が貸してくれないということは、事業計画が甘いか不合理だからです。

その場合は、事業計画を見直すべきです。家族や友人に頼るのは避けるべきです。

「資金が十分にある」
「銀行が貸してくれる」
という場合は、無理に出資者を迎え入れる必要はありません。

慎重に判断し、自分の事業に最適な資金調達方法を選びましょう。

詳細は、以下をお聴きください。


※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組後半、40分55秒以降から開始されます

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02028_「プロのビジネス弁護士の本源的能力」は、「課題を発見し、課題を仕事にし、仕事をカネに変える力」

プロのビジネス弁護士としてやっていくには、法律の知識も勿論必要ですが、それだけでは全く足りません。

「プロのビジネス弁護士が実装しておくべき真の能力」
とは、
・課題を発見し、
・課題を仕事に変え、さらに
・その仕事を金に変える力
です。

この能力がなければ、弁護士はただの
「法律に詳しい物知り」
「クイズ法律王」
に過ぎません。

1 課題を発見できる能力

(1)洞察力と観察力

弁護士の重要な能力の1つは
「課題を発見する力」
です。

これは、クライアントが気づいていない潜在的な問題を見つけ出す能力を意味します。

洞察力と観察力と想像力と経験知がここで求められます。

例えば、企業の幹部が
「我々は法的に問題ない」
と自信満々に言っている場合、その裏に潜むリスクを見抜く目を持つことが重要です。

(2)リサーチと情報収集、そして「問題の本質」の見極めと効果的なプレゼン

問題を正確に把握するためには、徹底したリサーチと情報収集が不可欠です。

弁護士は、法的な先例や関連する法律文献、クライアントの過去の事例などを調査します。

しかし、それだけでは不十分です。

真の価値ある法的助言は、本に載っていませんし、載っていてもわかりにくく、本質から遠い表現でしか書いていません。

これをしびれるくらい、わかりやすく、効果的に
「刺さる」、
インパクトがあり、コンパクトな表現でプレゼンする必要があります。

これには、教養、哲学、想像力、経験、何より修羅場をくぐった経験に基づくホンモノの経験知が必要です。

これにより、クライアントに対して効果的な助言を行うことができ、クライアントが認識や理解をしていない(あるいは認識や理解を拒絶する場合もあり)課題やその現実的重みや重篤性や緊急性を共有できます。

2 課題を仕事に変える能力

(1)問題の定義と目標設定

発見した課題を実際の仕事に変えるためには、まずその問題を明確に定義(さらに言えば発見・創出)し、解決のための具体的な目標を設定する必要があります。

この段階では、問題を細分化し、優先順位をつけることが重要です。

(2)戦略の策定

課題を解決するための具体的な戦略を策定します。

ここでは、問題の原因を分析し、最適な解決策を見出すための創造的なアプローチが求められます。

また、戦略の実行に必要なリソース(予算を当然含みます)の確保や、実行計画の詳細なスケジュールを作成することも重要です。

3 仕事を遂行する能力

(1)実行力と調整力

課題を仕事に変えた後は、それを確実に遂行するための実行力と調整力が求められます。

プロジェクトの進捗管理、チームの調整、クライアントとのコミュニケーションなど、多岐にわたるタスクを効率的に管理する能力が必要です。

(2)問題解決と柔軟性

プロジェクトの遂行中には、予期せぬ問題や障害が必ず発生します。

その際に迅速に対応し、柔軟に計画を修正する能力が求められます。

臨機応変な対応力と問題解決能力が試されます。

4 仕事を金に変える能力

(1)価値の提供と交渉力

遂行した仕事を金銭的な価値に変えるためには、自らの提供する価値を正しく評価し、それに見合った報酬をクライアントに請求する交渉力が必要です。

自信を持って自らの価値を主張し、適正な報酬を得ることが求められます。

(2)継続的な関係構築

仕事を一度金に変えるだけでなく、継続的な関係を築くことで、安定した収入源を確保することが重要です。

クライアントとの信頼関係を深め、リピートビジネスを獲得するためのフォローアップが求められます。

5 まとめ

弁護士の本源的能力は、単なる法律知識にとどまりません。

課題を発見し、それを仕事に変え、遂行し、最終的に金に変える力が必要です。

これができなければ、ただの法律に詳しいだけの物知りで終わってしまいます。

真のプロフェッショナルとして成功するためには、常にクライアントの期待を超える成果を出し、信頼を勝ち取ることが求められます。

弁護士としての成功は、法律の枠を超えた洞察力、戦略的思考、実行力、そしてビジネスセンスにかかっています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02027_出資とは何か?借金との違いと考え方の基本(教えて!鐵丸先生Vol. 35)

<事例/質問> 

事業に出資してもいい、という方が出てきましたが、出資というのを実はよくわかっていません。

借金とどう違うのですか?どう考えたらいいですか。基本的なところを教えてください。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

事業に出資してもいいという方が現れたものの、出資が何かよく分からないという方も多いでしょう。

借金とどう違うのか、基本的なところからお教えします。

まず、
「出資」
とは何かを理解するために、関連する用語を整理しましょう。

出資(投資)と融資という言葉があります。

これらの関係を理解することが重要です。

株式会社の経営を例に考えてみましょう。

株式会社は、外部から資金を調達し、その資金でヒト・モノ・チエという資源を組み合わせ、商品やサービスを提供し、営業活動によって利益を上げる仕組みの組織です。

株式会社がお金を調達する方法は大きく2つあります。

株主からの出資と、銀行などからの融資です。

株主が出資することは、株主の立場から見ると投資をするということになります。

融資とは借金のことであり、返済期限が設定されていて、期限までに金利を付けて返済する必要があります。

しかし、一度借りたお金は会社が自由に使えるため、基本的には債権者から経営に口出しされることはありません(返済が滞れば別ですが)。

一方で、出資や投資は返済不要のお金です。

「返さなくていいの?」
と思われるかもしれませんが、会社が存続する限り返済する必要はなく、会社が解散したときに残余財産を分配する際に返すことになります。

出資や投資をした株主には経営に対する権利が与えられます。

年に1度の株主総会で意見を述べたり、取締役を選ぶ投票ができるのです。

また、会社が利益を出した場合、その利益から配当を受けることができます。

まとめると、次のような選択肢があります:

  • 融資:返済が必要で、経営に口出しされない。借金して独立して自由に経営したい場合。
  • 出資:返済不要で、経営に口出しされる可能性あり。利益が出たら配当を分け合う。経営に参加してもらう代わりに資金を得る場合。

さらに、投資をすると経営に関与したり、配当を受けるだけでなく、株式公開によって大きなリターンを得るチャンスもあります。

これが
「出資」

「借金」
の基本的な違いであり、それぞれのメリットとデメリットです。

出資を受けるか、融資を受けるかの選択は、あなたの事業の目指す方向性や経営スタイルによって異なるでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02026_中小企業の海外でのM&A成功例について(教えて!鐵丸先生Vol. 34)

<事例/質問> 

中小企業の海外M&Aについて、知り合いの経営者が、皆ほとんど失敗している、と言っていますが、

逆に、成功しているところってどんなところなんでしょうか?

成功の秘訣のようなものはあるのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

「海外進出を任せるに足るリーダー(責任者)」
の有無が成功・失敗を分ける最大のポイントです。

このリーダーのスペックを議論する前提として、まずは彼らのタスクを明確にする必要があります。

「海外の国や人々や各団体と仲良くなって、国際交流する」
などといった活動とは真逆の、国内事業展開より数倍、数十倍困難な海外進出を経済的に成功させるためのタスクです。

以下に、私の実務経験を基に設計したタスクを示します。

1 現地の人間にナメられないような制度やカルチャーを現地法人に浸透させ、確立する。
2 強烈な強制力を持った圧倒的なオーラを醸し出し、徹底して高圧的な支配を実行する(とはいえ、支配的な要素は見せず、極めてジェントルかつエレガントに展開する)。
3 俗悪・無作法・怠惰を許さない、徹底した管理を行う。
4 客観的基準と合理的観察による厳しい能力評価を行い、論功行賞を明確に実施し、ルール違反者に対する厳しい懲罰を徹底する。
5 独占禁止法を無視する精神で、競争者の存在を否定し、新規参入を容赦なく阻止する形で市場を迅速かつ圧倒的に支配する(法令には細心の注意を払う)。
6 このような市場支配を大量の資金と物量を背景に、高圧的に、スピーディーに、SMART基準に従って効率的に行う。

もちろん、コンプライアンスは無視できませんので、諸外国の法令を含めてあらゆる法令に違反しないよう、細心の注意を払う必要があります。

「海外進出を任せることのできるリーダー(責任者)」
の人材イメージとしては以下のようになります。

1 海外進出を経済的に成功させるために必要な各タスクを、命を賭して完全に成し遂げる強靭な意志。
2 各タスクを一定の冗長性を確保しつつ、涼しい顔で平然とやり遂げる知識・経験・スキル。
3 成功時に得られる魅力的なインセンティブを設計し、臆面もなく要求する豪胆さと、それに対する健全な欲望。
4 声を発することなく、被支配者が自然とひれ伏す強烈なオーラ。
5 悪魔の手先のような性根。
6 遂行しているタスクの厳しさを全く感じさせず、常にジェントルかつエレガントに振る舞う典雅さ。

このリーダー像に、どこかで見覚えがあると感じるかもしれません。

それは、東京でたまに見かける
「日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらい、唖然とするくらい良い暮らしをしている、クソ忌々しい外資系企業の幹部」
の姿に似ていませんか?

そして、そういった幹部によって経営されている外資系企業は、どの企業も順調に儲かっているのではないでしょうか。

このように説明すれば、帰納的に理解・納得いただけるのではないかと思います。

詳細は、以下をお聴きください。


※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組後半、40分30秒以降から開始されます

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02025_中小企業の海外M&Aについて(教えて!鐵丸先生Vol. 33)

<事例/質問> 

中小企業の海外M&Aについて、知り合いの経営者が、皆ほとんど失敗している、と言っています。失敗する原因のようなものって、あるのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

中小企業の海外M&Aについて、多くの経営者がほとんど失敗しているといえます。

では、失敗する原因は何なのでしょうか?

中小企業のほとんどが海外M&Aで成功していないのは、現実的な目的が具体的に明確に整理されていないことが主な原因です。

本音と建前が曖昧で、頭の中がカオスになっている企業や、
「国際進出をした国際的な企業の社長」
と見られたいという見栄で進出を自己目的化している企業は、確実に失敗します。

そもそも、なぜ中国やその他アジア各国に進出するのでしょうか?

その経済的意味はどこにあるのでしょうか?

ここでは倫理や道徳を捨て、純経済的に目的を考察します。

「生産拠点を日本からアジアにシフトすることを考える企業」
にとって、アジア進出のメリットは
「低賃金」
です。

つまり、
「現地の方を安い給料で雇える」
という理由で進出するのです。

だからこそ、
「最近は中国の人件費が高くなったからベトナムがいい」
「いや、ベトナムも高いから、ミャンマーやカンボジアだ」
といった話が出てくるのです。

要するに、生産拠点をシフトする形で中国に進出する企業は、中国が好きだとか、民間レベルの日中友好を進めたいとか、本場の中国料理が好きだとか、そういう動機ではなく、
「安くて豊富な労働力がある」
と考えて進出するのです。

だから、中国より安いところがあれば、経済的判断に基づいて進出先を変更するのです。

かつての植民地支配の時代、欧米列強は現地の労働力を廉価に活用できるという理由でアジアやアフリカ、中南米に生産活動を行いました。

現代の企業がアジアに進出する動機も、倫理や道徳を捨てて純経済的に考えれば、これと同様です。

また、別の企業は進出するアジアの国を、自社の商品を消費してくれる巨大市場とみて進出します。

この点でも、かつての欧米列強が文明レベルの低いと見なした現地人に対して価値ある商品・サービスを提供し、市場支配を目指したのと同様です。

現代の企業も、有利な競争環境を求めてアジアに進出します。

無論、企業はこんな
「時代錯誤も甚だしい下劣な言い方」
で動機を語ることはありません。

ジェントルでエレガントに響く進出目的(相互互恵による国際的な協調、対等なパートナーシップによる相互発展など)を掲げ、情報を偽装します。

「この種の韜晦をいけしゃあしゃあとカマし、実際の動機は植民地時代の欧米列強と同様のものを持ち、これをSMART基準に落とし込み、的確な指示を出し、目的を達成する」
企業は、まず間違いなく進出に成功します。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02024_企業が抱える解雇にまつわるトラブル(教えて!鐵丸先生Vol. 32)

<事例/質問> 

知り合いの社長が、労働者から訴えられて、裁判でも主張が受け入れてもらえなかったとぼやいていましたが、企業が労働問題で苦労するのは何か原因があるのでしょうか。

逆に、労働問題を起こさずに安全・安心に経営するコツってあるのでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

企業が労働法でつまずく大きな原因は、企業が
「ヒト」

「モノ」
の区別を正しく理解していないことにあります。

昔、人類社会には奴隷制度がありました。

労働力を提供する
「奴隷」
と呼ばれる人たちは、人間としての権利や尊厳を持たず、
「モノ」
と同様に扱われていました。

例えば、仕事でパソコンという
「モノ」
を使います。

パソコンは手頃な値段で購入でき、情報処理を助けてくれます。

しかし、何年か経つと壊れたり、陳腐化したりして使えなくなります。

そのとき、私たちは使えなくなったパソコンをどうするでしょうか?

大事に保管し続けたり、保守料を払い続けたりはせず、速攻でゴミ箱に捨ててしまいます。

では、労働者はどうでしょうか?

労働者はモノとは違い、成長し続ける存在です。

しかし、時には健康を害したり、スキルの見直しが必要になったりすることもあります。

経営者はそうした状況の労働者をどうするのでしょうか?

多くの社長さんは
「速攻で解雇してポイ」
と言いたいでしょう。

また、実際にそうしている社長さんも少なくないと思われます。

なぜなら、
「日本では、10社中7~8社の企業が労働関連法規を無視して経営している」
という実態があるからです。

しかし、残念ながら、近代法治国家では
「ヒト」

「モノ」
は明確に区別されています。

パソコンでできるような廃棄物処理は、
「ヒト」
には一切許されません。

ヒトとモノの区別ができていない、古臭い人権感覚を持った企業トップが多いことが問題です。

そのため、
「日本では、10社中7~8社の企業が労働関連法規を無視して経営している」
実態が改善されず、厳然と存在しているのです。

詳細は、以下をお聴きください。


※「教えて!鐵丸先生」のコーナーは、番組後半、37分47秒以降から開始されます

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02023_労働問題を起こさずに安全・安心に経営するコツ(教えて!鐵丸先生Vol. 31)

<事例/質問> 

労働紛争が増えていると思いますし、知り合いの社長が、大変苦労した、と聞きました。

労働裁判ってやっぱり難しいのですか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

労働紛争が増えている昨今、労働裁判は本当に難しいものなのでしょうか?

企業の経営には、ヒト、モノ、カネ、チエといった経営資源が必要ですが、その中でも
「ヒト」
すなわち
「労働者」
という資源は非常に重要です。

しかし、経営者にとって最も知識が不足しているのが労働取引に関するルール、つまり労働関係法規です。

毎年発行される
「労働白書」
によれば、労働基準監督官が国内の事業所を調査した結果、労働基準法や労働安全衛生法などの違反率は毎年70%前後、業種によっては85%前後に達しています。

つまり、日本では10社中7~8社が労働関連法規を違反して経営しているという実態が浮かび上がってきます。

このため、労働問題は税務問題と並んで
「つつけば必ずホコリが出る」
法務課題の代表例です。

最近、政府の政策で増えた弁護士たちが労働者の代理人となり、企業を次々と訴えているのもその一因です。

企業が訴えられて弁護士の事務所に駆け込む際、最初に言われるのは、
「先生、こんなインチキ通るんですか!こんなの絶対おかしい。出るとこ出たら、絶対勝って下さい!」
というものです。

しかし、冷静に事実関係を確認し、関係法令や裁判例を示すと、多くの場合は企業側に非があることがわかります。

「出るとこ出た」
ら、かえって自分が恥を晒すことを理解していただくのです。

相談に来た当初は鼻息荒かった社長や人事責任者も、最終的にはしょんぼりして、
「なんとか和解でお願いします」
と蚊の泣くような声で言うようになります。

労働問題を防ぐためには、経営者として労働環境の改善と法令順守を徹底し、問題が深刻化する前に専門家に相談することが重要です。

労働者との信頼関係を築くことも大切であり、日頃からのコミュニケーションが鍵となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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