01542_The Uniform ●●● Actとは

我が国では、
「The Uniform ●●● Act」
は、
「統一●●●法」等
と訳されることがありますが、定訳とは言えませんし、米国の法制度に関する理解に照らしますと、適切な訳語ではありません。

なぜなら、
「The Uniform ●●● Act」
は、いわゆる
「法律」そのもの
ではなく、
「各州が、州法を制定するにあたって模範あるいは参考とすることを期待されている“モデル(見本)としての規範”」
だからです。

こうした
「モデル規範」
は、米国内において州ごとの法律・制度が大きく異なってしまうことを可及的に防止するために作成されています。

したがって、この種のモデル法に関するレスポンスとしては、
「確か、統一●●●法では、●●●は禁じられていたと思う。詳しくは、現在の当該州の法改正の状況を調べないと何ともいえない」
といったニュアンスのレスポンスとなります。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01541_depositionについて

「deposition」
は、
「証言録取」
などと訳されますが、 我が国では、完全に一致する制度はありません。

法廷以外の場所(例えば弁護士事務所など)において、宣誓させる権限のある者の前で、質問に対して答えさせる方法で証人から証言を得て、それを書面化したものです。

通常、原告側・被告側の双方の代理人(弁護士)が質問を行います。

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01540_ビジネスにおいて重視すべきは、「現」のつくもの。現場、現物、現金、現実。

生き残る企業の経営者たちは、例外なく徹底したリアリストです。

彼らは、自分の見たいと思う現実、すなわち自分の主観を排除して、物事を客観的に観察し、徹底して現実に即したジャッジをします。

そして、そんな経営者たちが最も大事にするものは、
「現」
のつくものです。

現実、現場、現物、現金。

生き残る企業の経営者たちはこれらを決しておろそかにしません。

他方、倒産するような企業の特徴は、これとまったく逆です。

つまらない現実よりも、根拠のない、壮大な計画が大好きで、いつもこれに振り回されています。

また、遠くて汚くて細かい話ばかりの現場は大嫌いで、綺麗な机の上で遠大で抽象的な話をしたがります。

現物を直接手にして右から左に動かす取引は、たとえそれなりに儲かっていても、手間がかかり、利益も少ないと言っては突然放棄してしまい、ネットビジネスや人工知能や仮想通貨や太陽光やデリバティブや海外進出やM&Aのような、実感のないビジネスで大きく儲けることを夢見ます。

さらに、現金と債権は常に同じと考えており、ろくに信用管理・債権管理をせず、商品やサービスを提供し、請求書を送っただけで、現金を手にしたのと同じと考えています。

言うまでもなく、
「現」
を大事にせず、地に足のつかない話を追いかけるような方々はすべからく失敗し、最後には、時間も労力も無駄にし、財産をなくします。

ビジネスをやったことのない多くの方は、
「お金持ちやリーダーというのは、綺麗なオフィスの高価な机の上で、大所高所の議論をし、適当な指示を伝えるだけだ」
などと勝手な想像をしておられるかもしれません。

しかし、実際には、優秀なリーダーになればなるほど、常に正確な情報を大量に収集し、これらを緻密に整理し、自分の主観を交えず外部の専門家の意見を得て客観的に分析・検証し、現場に出向き、最前線に立ち、末端に至るまで事細かな指示を出し、経過や進捗を頻繁にチェックするものです。

いずれにせよ、地に足のつかない話に踊らされるような知的水準に問題のある経営陣が経営する会社というのは長期的に見て淘汰されます。

本業が痛んでいるにもかかわらず、起死回生の策などと称した、現実味のない話が出てきて、浮ついているような会社などは、その多くが近い将来倒産するか、倒産の危機に陥る可能性が高いものと推定されます。

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01539_ビジネスは、一歩先を行け。二歩先は行くな。

「およそ、身の丈にあわない話にクビを突っ込む経営者」
というのは、地味な努力が大嫌いで、
「どこかに、『カンタンに状況が改善できる、皆が驚くような、斬新な方法』があるのではないか」
と夢想しているようです。

しかし、そもそもこういう考えが間違っているものと思われます。

時計で有名なセイコーを創業した服部金太郎氏は、かつてこう言ったそうです。

「すべて商人は、世間より一歩先に進む必要がある」
「ただし、一歩だけでよい。何歩も先に進みすぎると、世間とあまり離れて予言者に近くなってしまう」
「商人が予言者になってはいけない」
と。

一流の商売人は、一流のリアリストであるべき、ということでしょうか。

企業が服部金太郎の戒めとは真逆の方向を歩むとき、すなわち、企業がそのスケールにふさわしくない大きな話をするとき、企業は大きな失敗を犯す危険性を内包している、と考えられます。

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01538_国際進出の難しさ

「ご臨終になりそうな企業が一発逆転を狙うと称して手を出して大やけどを負ってしまう」
というストーリーにおいて、登場するお約束のプロジェクトが、国際進出です。

古くは豊臣秀吉の朝鮮出兵、また、時代が近くなると、満州で一旗上げる話や、ハワイやブラジルへの移民話、さらには、バブル期のロックフェラーセンターやハリウッドの映画会社買収話など、日本人は、国際進出というものを安易に考えすぎる気質があるようで、毎度毎度バカな失敗を繰り返してしまいます。

国際進出は、情報収集も情報分析も国内では考えられないくらい難しく負荷がかかるものです。

これはあくまで感覚ですが、国際進出して成功するには、国内で成功するより20倍難しいといえると思います。

「国内で成功し尽くした会社が、国内での市場開拓より20倍のリスクがあることを想定し、周到で綿密な計画と、十分な予算と人員と、信頼できるアドバイザーを整え、撤退見極めのメルクマール(基準)を明確に設定して、海外進出する」
というのであればまともな事業判断といえます。

しかし、国内で低迷している会社が、
「新聞で読んだが、中国ではチャンスがある」
「週刊ホニャララでやっていたが、今は、ベトナム進出がトレンドらしいぞ」
「BSのビジネスニュースでは、ミャンマーが熱い、と言っていたぞ」
という程度のアバウトな考えで、適当に海外進出して成功する可能性はほぼゼロに近いといえます。

こういう知的水準に問題のある会社が、中途半端に国際進出もどきをおっぱじめても、儲かるのは、現地のコーディネーターやコンサルティング会社や現地士業(会計士や弁護士)や旅行関連企業(航空会社やホテル)だけで、たいていはお金と時間と労力の無駄に終わってしまいます。

フィージビリティスタディ段階で自らの無能を悟り、進出をあきらめれてくれれば、損害は軽微なもので済みます。

しかし、頭の悪い人間ほど自らの無能を知らないもので、実際は、多くの中小企業が、
実に「テキトーなノリ」で、
いきなり、現地法人を作ってしまいます。

現地法人を作るということは、現地の言語に基づき、現地の会計基準と現地の法律にしたがった法的書類と会計書類と税務申告が必要ということを意味しています。

しかも、この煩雑でコストのかかる手続きは、会社を解散して清算するまで、未来永劫続きます。

これだけですでに莫大な費用と手間とエネルギーを消耗しますが、投下した多額の投資を回収するには、相当大きなボリュームの売り上げを立てる必要があります。

無論、ルイ・ヴィトンやエルメスやブルガリなど、すでに世界的ブランドとして知名度を確立している商品であれば、
「進出後短期間に相当大きなボリュームの売り上げを立てる」
ということも合理的に期待できます。

しかしながら、
「『日本国内ですら知名度がなく、誰も買ってくれないような商品』しか作っていないような企業が、言語も文化も違う国の市場でいきなり知名度を獲得し、バカ売れして大成功する」
というのはまず不可能です。

結局、日本ですらロクに知名度がない中小企業が、現地コーディネーターの口車に乗せられて現地法人を作った場合、結構な額をスってしまい、現地法人を~年で解散・清算する、ということが多いようです。

ちなみに、2010年前後には
「大進出ブーム」
だった中国ですが、2015年になってから、もっともホットといわれたビジネステーマは、
「撤退戦略」
すなわち
「いかに、中国から、事業撤退を行うか」
だそうです。

国際的に展開したいのであれば、何も現地法人を作って、いきなり拠点を作って遮二無二進出する必要などありません。

自らは日本国内に拠点を置いた状態で、現地のチャンネルを有する現地企業と販売先や代理店として契約し、そこと緊密に提携しながら、市場にチャレンジすれば、リスクもコストも労力も少なくて済むはずです。

ところが、
「自分が国内において地味で広がりのない事業をやっている」
ということに強いコンプレックスをもっている中小企業の社長の方々は、
「国際事業」
「海外進出」
「現地法人」
というキーワードに弱く、意味なく無駄なことをしがちです。

また、海外事業の経験がない素人ほど、
「海外で事業を行えば、どんなバカでも大成功するはずだ」
という根拠のない妄想を抱き、
「地道な経営改革より見た目な派手なバクチで会社を劇的に改善できるのではないか」
と甘い夢を見がちなのです。

こういう背景もあり、
「マルドメ(丸でドメスティック)な事業を、ド根性と勢いで立ち上げたが、海外経験なく、総じて視野が狭いタイプの社長」
が、国内においてなすべき課題が山のようにあるにもかかわらず、海外に異常な期待を抱き、コーディネーターやコンサルティング会社などの口車に乗せられ、海外進出話にオーバーコミットしてしまい、結果、会社を重篤な危機に陥れてしまうのです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01537_企業経営においては「起死回生の一発逆転」というのは皆無に等しい

スポーツもののドラマやヒーロー物を見ていると、主人公が起死回生の秘策を編み出し、土壇場で一発逆転を行うシーンが見られます。

しかし、これはあくまで虚構の世界の話であって、ビジネスの世界ではこのような起死回生の一発逆転劇というのはあり得ません。

破綻間近の企業が無理をして行うその種のプロジェクトは、経験値の無さがわざわいし、ほぼすべてて、無残に失敗し、かえって死期を早める結果になります。

というのは、事業というのは、一朝一夕に立ち上がるものではなく、
「発案→企画→試作品の完成→商品化にこぎつけ→営業の成功→取引成約→代金回収」
という長期間の地味のプロセス(しかも各プロセスにおいてそれぞれ相当な試行錯誤があること)によって成立するものだからです。

このような地味で面倒なプロセスを嫌って、楽に結果を求めようとすると、かえって、足元をすくわれ、より損害が広がってしまいます。

事業はゴルフというスポーツに似ており、ボギーやダボ(ダブルボギー)しか出せないプレーヤーが最終ホールでいきなりバーディーやパーを連発することはありえません。

逆に、実力のない者がバーディーを無理に狙うと、逆にダブルパーやそれ以上に悲惨なスコアでホールアウトするのと同様です。

すなわち、パっとしない企業がいきなり
「国際進出だ」
「大型提携だ」
と騒ぐのは、
「それまでボギーすらとれていないゴルファーが、たまたまティーショットがそこそこいいところに飛んだと言ってはしゃぎ、それまでまともに当たったことのないロングアイアンを振り回す」
のと全く同じ状況で、より悲惨な結果が予測されるのです。

運営管理コード:YVKSF197TO199

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01536_企業において「妙な外来語」が飛び交うとき、その企業は危険な兆候に陥っている_4_節税商品、節税スキームあるいは会計スキーム

最後に、妙な外来語や専門用語や突如企業に舞い込むケースとして、節税商品あるいは節税スキームというものも想定されます。

数年前、興行用の映画フィルムを使った節税商品など、民事組合のパススルーシステム(組合の損金を直接自己の損金として計上できる)を利用して、
「損金を買う」仕組の商品
が流行ったことがあります。

映画フィルム以外では、飛行機や船を使ったリース事業を行う組合を作り、やはりパススルー制と組み合わせて損金計上するような商品(レバレッジド・リースと呼ばれます)もありました。

どれも
「机上の」税務理論
としてはよく考えられていて、一見すると、効果的な節税ができそうです。

しかし、こういう
「実体の希薄な商品を使った、税務行政にケンカを売るような強引な損金処理」
を、日本最大の暴力団ともいいうる税務当局が笑って受け入れてくれるほど世間は甘くありません。

案の定、どれも、みかじめ料ならぬ税金を不当に過少に収めてやり過ごそうとする不逞の所為について、税務当局と大モメにモメ、裁判所を巻き込む大喧嘩に発展しています。

結論を言いますと、飛行機や船を用いたレバレッジド・リースは事業実体ありということで損金計上が認められ、最高裁もこれを容認しました。

映画フィルム債の方は、フィルムが事業のために用いられているような実体がないということで、最高裁は税務署の更正処分と過少申告加算税賦課処分を認める判断をしています。

こういう裁判所の判断だけを短絡的に見ると、
「飛行機と船はOKで、節税できたからいいじゃないか」
なんて簡単に考えてしまいそうです。

しかしながら、税務署とのトラブルに巻き込まれた(最高裁までもつれこんだわけですから、事件に投入された時間やエネルギーや弁護士費用などはハンパなものではないでしょう)、という点では、飛行機や船のリース事業に参加した場合であっても相当シビアなリスクにさらされた、と見るべきです。

商品を売る側は、いかにも
「節税プランは完璧です」
ということを、セールストークで謳います。

ですが、売る側の金融機関は、売った後に顧客がどんな税務トラブルを抱えたとしても、
「損金計上できると判断するか、損金計上できると判断するとして、実際損金計上するかどうかなどは、すべて自己責任だから、関知しない」
という態度を取るものです(もちろん、同情はしてくれたり、紛争対策のための税理士や弁護士を紹介してくれることはあっても、決して手数料を返したりはしてくれません)。

「いい話にはウラがある」
という警句は、実に的を得たものです。

たとえ、
「売り込む側が、仕立てのいいスーツを着て、高価なネクタイをぶら下げ、学歴が高く、名の通った金融機関に勤めている」
という事情があっても、セールストークを鵜呑みにするととんでもないトラブルに巻き込まれる可能性があるのです。

外来語や専門用語が散りばめられ、横文字で大層な商品名が書いてあったとしても、会社が購入するのは、シンプルに言えば
「税務当局とのケンカの種」
に過ぎません。

フツーに商売するのですら困難な時代に、税務当局と大喧嘩して、企業がまともに生き残れるほど甘くはありません。

一般的に申し上げて、節税にエネルギーを使う企業は、健全な成長・発展してきちんと納税する企業との比較において、短命と言えます。

企業が節税商品に手を出すのは、方向性としても、実際問題としても大きなリスクがあり、企業生命を危うくするものと考えられます。

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01535_企業において「妙な外来語」が飛び交うとき、その企業は危険な兆候に陥っている_3_余剰資金運用話

このほか、企業において妙な外来語が飛び交う状況と言えば、その会社が、妙な余剰資金運用をしようとしているときも考えられます。

「デリバティブ」
「クーポンスワップ」
「ヘッジ取引」
「モーゲージ債」
「ハイイールドボンド」
「サブプライムローン」
「SPC」
などといった耳慣れないコトバを社長や財務担当者が口にするようになったとき、会社が多額な損失を被りそうになっているか、あるいはすでに被っているときです。

金融機関は、非常に優秀な方が多く、いろいろな金融商品を開発し、提供してくれます。

無論、中には、緻密な理論を構築して、安全で高収益を生むような商品もありますが、全ての商品がまともであるという保証はありません。

デリバティブ、ヘッジ取引、ホニャララ債、ホニャララ投資スキームなどなど、言葉はいろいろありますが、いずれも元本が保証されず、値動きの仕組みがなかなか理解できず、しかも投機性が高い商品であり、あえていうなら、過激なバクチです。

バクチというのは、客が必ず損し、胴元が必ず儲かるようになっています。

これらの投機的商品も、投資家がよほど値動きを注視し、勝ち逃げするタイミングを見ていない限り、ケツの毛まで抜かれる仕組みになっています。

そして、参加者がどんなにつらい目に遭っても、商品を紹介したり、商品を設計したり、商品を運用しているような人間(バクチでいうと、「胴元」や「合力」)は必ず儲かるようになっているのも特徴です。

リーマンショックのちょっと前から、大学が資産運用に色気を見せ始めるようになりました。

ただその結果と言えば惨憺たるもので、一時、K澤大学は億円の損失、K応大学は億円の損失、I知大学、じゃなかった、もとい、A知大学、N山大学、J智大学も軒並み億円程度の損失を出していたそうです(いずれも2009年3月期。週刊ダイヤモンド2009年月日号「大学総力ワイド特集」参照)。

他にも数十億円の単位で損失を出している大学が多数あったそうですが、その中でも、K歯科大学では、損失問題から刑事事件にまで発展しました。

同校では、人事権を掌握する理事が、その権力を背景に、実体のない投資先に巨額の投資をし、業務上横領などで逮捕されています。

経営陣が逮捕されるという異常事態から、年間億円の補助金も打ち切られかねないという状況に陥った、との報道もありました。

そこら辺の社長よりはるかに頭のいい人が集まっている大学ですらこの状態ですから、一般の社長さんがやってうまく行くはずがありません。

実際、日本経済新聞(2011年3月5日朝刊)では、
「全国銀行協会為替デリバティブ(金融派生商品)で多額の損失を抱えた中小企業を救済するため、同協会が運営する紛争解決機関の処理能力を大幅に拡充する。『デリバティブ専門小委員会』を立ち上げ、月間で60件取り扱える体制を整備する。金融庁の調査では、2万社近い中小企業がデリバティブ取引で損失を抱えている」
などと報道されました。

また、少し前の話になりますが、東証一部に株券を上場している世界的大企業である某乳酸菌飲料大手企業(仮に、Y社といいます)においても、財務担当副社長がP債なる実体の希薄な投機的な投資商品に手を出し、1998年3月期には1000億円以上の損失を出しました(その後、株主が当時の経営陣にY社に対して533億円の賠償を求める株主代表訴訟を提起する事件に発展し、当時の元副社長に67億円の支払いを命じる判決が確定)。

「経営者が稼いだ金でバクチにのめり込むと会社が傾く」
というのは昔からよくある話です。

時代が変わり、使われる言葉が
「博徒用語」
から
「難解な外来語や専門用語」
になり、賭場に誘い込む人間の素性も
「見るからにヤクザ者」
という風体の者から、
「高いスーツに高いネクタイをした品のよさそうな金融機関のエリートバンカー」
になりました。

しかし、
「『実業を前提とせず、ラクに金儲けをしたい』という人間の心理を利用し、参加者を地獄に陥れる」
という本質に関していえば、両者に大きな差異は見いだせません。

いずれにせよ、健全な会社は、資金が余ったら、ひたすら事業に対する投資を行うべきです。

儲かったからといって、金にあかせてバクチにうつつを抜かす企業は早々に傾くことになるのはある意味必定といえます。

運営管理コード:YVKSF185TO192

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01534_企業において「妙な外来語」が飛び交うとき、その企業は危険な兆候に陥っている_2_M&A話

まず、パターンとしてあるのが、M&A話です。

やぼったいマルドメ(まるでドメスティック)企業の社長が、突如、
「デューディリ(デューディリジェンス)」
「DIPファイナンス」
「プレゼントバリュー」
「DCF」
「EBITDA」
「EBITDAマルチプル」
「シナジー」
「PMI(ポストマージャーインテグレーション)」
なんて言葉を使い出しはじめます。

M&Aという手段ないし方法は、まともな使われ方をする場合もありますが、現在においては、ほとんどの場合、倒産処理方法の1つとして機能しています。

ある企業が倒産しそうになっており、完全に死ぬ前にどこかに安値で引き取ってもらいたい。

「身売り」
というと聞こえが悪いし、社長や会長が納得しないし、話が進まない。

じゃあ、
「M&A」
というハイカラな言葉でごまかしてしまえ。

行き詰まっている企業にM&A話が出てくるとすれば、こんな状況が考えられます。

とはいえ、
「便所」
のことを
「お手洗い」
と言い換えたのと同様で、品のいい言葉を使ったからといって、便所で行う行為が、華麗で美しいものになるわけではありません。

いろいろ外来語でごまかそうとしても、やっていることの本質は、
「身売り」
を前提とした買いたたきと、買いたたきを前提とした実地調査です。

買いたたこうとしている側は、対象企業の社長が
「バカで舞い上がり易いタイプ」
であると見ると、華麗な言葉で、当該社長が調子に乗るようにし向けていきます。

そして、バカが舞い上がっている間に隙をついて、情報収集し、値踏みし、選択肢を巧妙に減らしていき、精神的に支配していきます。

そして、にっちもさっちもいかなくしてから、徹底的に買いたたき、身ぐるみ剥ぎにかかるのです。

見たこともない連中(たいていは偏差値が高そうで、いいスーツを着こなし、バカ高いネクタイをぶら下げている)がうろちょろして、書類をコピーしていき、社長がやたらとM&A用語を使いだすときは、
「M&A」
という名の
「身売り」
が進んでいると見ていいかと思います。

また、企業がM&A話をもちかけられている場合も問題です。

M&A(合併・買収)が、失敗例が相当数あることはあまり知られていません。

正確な調査をしたわけではありませんが、筆者の感覚では
「M&Aの失敗例は、芸能人の離婚率とだいたい同じ比率なのではないか(おそらく90%が失敗)」
と思います。

ちなみに、日経新聞(2011年4月28日朝刊)によると、世界の歴代金額上位3件は、いずれも買収成立から数年以内に数兆円単位の損失が生じている、とのことです。

また、同記事によると、特に、加工型製造業やサービス業といった川下産業の大型M&Aは、川上産業に比べて買収後の経営統合作業が複雑になる面があり、失敗する場合が多いそうです。

M&Aの成功のためには、
1 現実的な投資回収シナリオが機能する適正な買収価格あるいはこれを達成するためのハードな交渉、
2 PMI(ポストマージャーインテグレーション。M&A後の統合実務)による円滑な経営統合作業、
3 全体的な戦略の合理性、
のすべてが必要ですが、これらはいずれも日本企業の
「不得意中の不得意項目」
といえます。

なお、企業に持ちかけられるM&Aの中には、生きている企業ではなく、死にそうになっている企業の買収やこれを前提としたファイナンス(DIPファイナンス)という代物もあります。

DIPファイナンスの
「DIP」
とは、即ち経営再建中の会社、さらに具体的にいうと
「実質的に倒産状態にある会社」
のことをいいます。

これは、たとえていうなら、
「金持ちで若くて健康な人間」
と結婚するのではなく、
「赤貧にあえぎ、かつ今にも死にそうな病人」
との縁談話であり、しかもその縁談に多額の結納金(ファイナンス)を出すという話です。

したがって、DIPファイナンスなどという技法は、普通に考えておよそうまく行くとは期待できない代物です。

よほど人を見る目があれば格別、こういう話に踊らされている企業は後で大きなケガを負う羽目になりかねません。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01533_企業において「妙な外来語」が飛び交うとき、その企業は危険な兆候に陥っている_1_序

弁護士として、こういう光景に出くわすときがあります。

業種は国内で比較的地味な低成長産業分野で、社長も留学経験も国際ビジネス経験もないにもかかわらず、突如、妙な外来語を話し出し、また、それがとってつけたような話で、本質を理解しておらず、どこか地に足がついていないような印象を受ける。

そんなときは、企業はたいてい危険な徴候にある、と推察されます。

運営管理コード:YVKSF178TO178

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