02002_経験と実績のある企業法務弁護士の価値と意味~企業法務における問題解決や課題解決の可能性は、本やネットに載っている知識の有無ではなく、修羅場をくぐった数に依拠する~

企業が事業を進める上で、法律的な問題に直面することは避けられません。

多くの問題はネットで調べたり、一般的な弁護士に相談することで解決できるかもしれません。

しかし、実際には、本当に重要な問題ほど本に載っていないことが多いのです。

特に大手企業や先端企業が直面する法律的な障害は、一般的な解決策では対処しきれない場合が多々あります。

では、そうした問題にどのように対応すればよいのでしょうか。

1 一般的な法律相談の限界

まず、一般的な法律相談の限界について考えてみましょう。

ネットで調べれば、通り一遍の法的対処法はだいたいわかりますし、一般的な弁護士に聞けば、大まかな答えは想像できるかもしれません。

しかし、そうした情報はあくまで一般論であり、個々の企業の具体的な状況に適したアドバイスではないことが多いのです。

特に、複雑なビジネス環境においては、法律問題も一筋縄ではいかないことが多く、一般的な解決策では十分ではない場合がほとんどです。

2 経験に基づくブレイクスルー

企業が直面する法律的な問題を解決するためには、経験に基づくブレイクスルーが必要です。

大手企業や先端企業は、過去に数多くの法律的な障害を乗り越えてきました。

その経験を持つ企業法務弁護士は、一般的な解決策ではなく、実際に効果を発揮する具体的な打開策を提供することができます。

例えば、ある企業が法的紛議に直面した場合、一般的な弁護士は法律の範囲内での対処法を提案するでしょう。

しかし、企業法務の経験豊かな弁護士は、過去の経験から得た知識を基に、訴訟を回避するための交渉術や、訴訟になってもあの手、この手、奥の手、寝技、小技、裏技を駆使しながら、より実践的なアドバイスと解決を提供することができます。

3 法務戦略の重要性

企業が成功するためには、法務戦略が欠かせません。

法律問題に対処するだけでなく、予防的な措置を講じることで、問題を未然に防ぐことが重要です。

企業法務弁護士は、企業のビジネスモデルや業界の特性を理解し、最適な法務戦略を策定することができます。

これにより、企業は法律的なリスクを最小限に抑えつつ、ビジネスの成長を促進することができます。

4 経験の価値

企業法務弁護士の価値は、その経験にあります。

一般的な法律知識だけでなく、実際のビジネス現場で培った経験に基づくアドバイスは、企業にとって非常に貴重です。

特に、大手企業や先端企業は、法律的な問題に対処するためのリソースを持っていますが、そのリソースを最大限に活用するためには、経験豊富な企業法務弁護士のサポートが不可欠です。

5 まとめ

企業が事業を進める上で直面する法律的な問題は、形式知や理論に基づく一般的な解決策では対処しきれないことが多いです。

大手企業や先端企業が成功を収めるためには、暗黙知や経験知に基づくブレイクスルーが必要です。

企業法務弁護士は、その経験を基に、実際に効果を発揮する具体的な打開策を提供し、企業の成功をサポートします。企業が法律的なリスクを最小限に抑えつつ、ビジネスの成長を促進するためには、企業法務弁護士のサポートが不可欠です。

以上のように、企業法務弁護士の価値は、その経験と実績にあります。

一般的な法律知識だけでなく、実際のビジネス現場で培った経験に基づくアドバイスは、企業にとって非常に貴重です。

企業が直面する法律的な問題を解決し、成功を収めるためには、経験豊富な企業法務弁護士のサポートが不可欠です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02001_顧問弁護士を持つことの意味と価値

当弁護士法人(弁護士法人畑中鐵丸法律事務所)を含め、多くの企業法務系法律事務所は、
「顧問弁護士サービス」
を提供しています。

このサービスの内容は、例えば、

1)法律相談(「法律相談」とは、可否検証・作業見積もり・予算見積もりに至る、「取組価値検証」「案件化」「案件着手環境整備」作業を意味します。なお、複雑な事案や混乱した状況の場合、DD〔状況調査〕やアセスメント〔情勢分析・評価〕、ゴールデザイン、戦略仮説構築など、「『取組価値検証』『案件化』『案件着手環境整備』という営みそのものが「案件」になる場合もあります)がサブスクベース(定額・利用無制限)で受けられたり、

2)法律相談について優先的な予約が取れたり、

3)急ぎの場合、電話やメールやZOOMでの助言を受けれたり、

4)簡単なメールのやりとりや定型的な情報・書式提供など、「案件化」未満の軽微かつ細々としたサービスは顧問料の範囲で無償で対応してもらったり、

5)「案件化」する際、顧問先の信頼関係に基づく減額が適用され、事件対応の際に経済的利益を受けることができたり、

といった、各種ベネフィットを受けることが出来、この点において、純経済的な意義と価値が存在します。

ただ、顧問弁護士を持つことの意味は、それだけではありません。

それは、弁護士とすぐに繋がれる「安心感」、すなわちホットラインを構築することによる「不安の除去」があります。

例えば、現時点では法律面でのトラブルはなくても、今後何かあった場合にすぐに連絡取れる体制(ホットライン)を整えて、クライアントの安心感を高めることは、 クライアントの潜在的ニーズ(クライアントも普段意識しないニーズ)に応えるものとして、相当な意義と価値があります。

また、顧問弁護士を持っている場合、そうでない場合に比べて、解決の期待が格段に高まります。

法律的事件は、弁護士の介入が早ければ早いほど、解決の選択肢が広がります。

将棋の例で申し上げますと、「あと三手で詰む」という状況になってしまっては、藤井聡太棋士が介入しても絶対に勝てません。他方で、序盤戦や、中盤戦で、藤井棋士が介入・参戦すれば、いくらでも挽回可能です。

法的トラブルも同様で、法律専門家の早期介入が何より重要なのです。

以上の述べてきました、準経済的なサービス以外の「顧問弁護士サービスの意義と価値」を説明すると以下のようになります:

1 安心感の提供:
いつでも弁護士にアクセスできるホットラインの存在は、クライアントに大きな安心感を与えます。

2 迅速な対応:
法律問題が発生した際に迅速に対応できることで、問題の早期解決が可能になります。

3 見えていないリスクや課題の発見・定義化・特定・具体化・早期対処:
「見えない敵や討てない」
という軍事格言や、
「索敵」
という軍事活動があるように、ビジネス活動や法的紛議において、最大のリスクは、
「直面している課題やリスクが見えていない状況」
「課題やリスクをぼんやり、焦燥感や不安レベルでは感じているが、解像度が低いため、対処ができない状況」
です。
そのような、クライアントが漠然と感じているレベルの不安や焦燥感を、きちんと、ミエル化・カタチ化・言語化して、具体的なリスクや課題を迅速に提示できるのも、顧問弁護士のバリューです。
そして、そのことは、クライアントのビジネス活動に通暁している顧問弁護士との対話の中から発見・特定できるものであり、このような対話を可能する、深く、かつ恒常的な信頼関係を構築するのが法律顧問契約の役割です。

4 問題解決の選択肢の拡大:
そして、上記の見えていないリスクや課題の発見・定義化・特定・具体化は、早期対処、すなわち、コスパやタイパが圧倒的に高い対処行動につながります。
すなわち、早期の法的リスクの発見と、早期の法律専門家(しかも、クライアントのことをよく知る法的専門家)の介入により、問題解決の選択肢が広がり、最善・最適な解決策を見つけやすくなります。
このような、
「法的専門家の介入の時間と機会の前倒し」
に伴う
「打ち手の幅の広がり」
は、大事を小事に、小事を無事に近づけることを可能にします。

このように、顧問弁護士サービスはクライアントにとって、目に見えないながら、大きな価値を提供するものです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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02000_就業規則には普通解雇ができるとあるが中途採用社員を解雇できるか(教えて!鐵丸先生Vol. 44)

労働契約法16条は、
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用(らんよう)したものとして、無効とする」
と明文で規定しています。

この条文は、
「解雇権濫用法理」
と呼ばれる著名な判例法理が法律の明文となった(昇格した)ものです。

要すれば、
「解雇の権利は、形式上・字面上、企業側に認められてはいるものの、そう簡単に使うことはまかりならん。仮に、イージーに解雇の権利を振り回したら、濫用した、との理由で、一切その効力を認めてやらんからな。わかったな、覚悟しとけよ!」
という法理です。

突如、このような解雇に関する規制が登場したわけではなく、昭和の時代からすでに確立していたルールが、平成15年の労基法改正で一旦同法にとりこまれ、その後、労働契約法の条文となったわけです。

要するに、昭和の時代から一貫してこのルールを前提に解雇規制を行ってきた、ということなのです。

この条文の基礎となった最高裁判決「高知放送事件」(最高裁昭和52年1月31日判決)では、次のような事情のあった事件についてすら、解雇が無効とされました。

ラジオ放送のアナウンサーが、
1 宿直勤務で寝過ごし、午前6時からの10分間のニュース番組を放送することができなかった。
2 その2週間後、再度寝過ごし、午前6時からの10分間のニュース番組を、5分間放送できなかった。
3 2回目の寝過ごしの際、上司から求められた事故報告書に、事実と異なる内容を記載した。

このように、経営者目線で
「こんなにヒドイ労働者はいない!  給料ドロボーどころか、周りにとっても迷惑千万極まりない!」
というような場合であっても、
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」
には、解雇は無効とされます。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/56149

「教えて!鐵丸先生」は、42分10秒~ です

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01999_辞めた従業員が「残業代を払え、(拒否したら)裁判する」と言ってきた(教えて!鐵丸先生Vol. 43)

「労働事件については当然企業側の言い分をしっかり聞いてくれるはず」
という思い込みをもつ経営者は少なくありません。

裁判官一般でいえば、割と保守的で権威や体制にシンパシーある行動をとる方が多い、とみて差し支えないと思われます。

また、裁判官は、多数の事件を抱え、労働時間や残業などといった概念すら吹き飛ぶほどの仕事漬けの毎日です。

友人関係では、行政官庁や一流企業に勤めたりしているような人間も状況は同じで、サービス残業など当たり前のカルチャーで過ごしており、割と企業寄りのブラックな考え方に馴染みやすい、とも思われます。

ところが、裁判所は労使問題において、
「常に、当然企業側に立つ」
とは言い難い、独特の哲学と価値観と思想を有しているような節があります。

私の経験上の認識によれば、裁判所には
「会社の得手勝手な解雇は許さないし、従業員に対して約束したカネはきっちり払わせる。他方で、従業員サイドにおいては、会社に人生丸ごと面倒みてもらっているようなものだから、配置転換や勤務地や出向についてガタガタ文句をいったり、些細なことをパワハラとかイジメとかいって騒ぐな」
という考えがあるようにみえます。

実際、未払残業代請求事件が労働審判や労働訴訟は、企業側が惨敗するケースが多く、ほとんどのケースで企業側の弁解は採用されず、払ってこなかった残業代を、耳をそろえ利息をつけさらには付加金というおまけまでつけて払わされています。

これは一体どういうことでしょう。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/54775

「教えて!鐵丸先生」は、31分10秒~ です

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01998_M&Aの「DD」「デューデリ」って何? (教えて!鐵丸先生Vol. 41)

「DD」「デューデリ」
とは、正式名称デュー・ディリジェンス(Due diligence)と呼ばれるもので、M&A実務の世界では、
「買収対象である企業の調査」
とほぼ同義のものとして使われています。

「買い手は常に注意せよ」という法格言がありますが、
「買い物に失敗したら、すべて買い手が悪い。買主の不注意がすべての原因」
というルールが極めてシンプルかつ劇的に作用するのが、M&A取引です。

デューディリジェンスに決まりはありません。

範囲、程度、対象、予算、動員資源たるプロフェショナル、かけるべき時間やコストやエネルギー等、特にこれといった決まりはなく、広汎な冗長性を持っています。

もちろん、デューディリジェンスをしない自由もあります。

ところで、M&Aは、たいてい急ぎますし、急かされます。

売る方はなるべく瑕疵や欠陥や粗が見つかる前に売り逃げしたいでしょうし、買う側も厳しい競り合いになるので早くまとめたい、という双方の思惑もあって、尋常じゃないスピードでまとめる“買い物(しかも、対象はあいまで、かつ高額な買い物)”となります。

このため、どんなに眼力のあるプロが鑑定しても、間違いや見逃しや漏れや抜けの1つや2つ、10や20、100や1000は普通に出てしまいます。

その際、さんざん急がされた担当者(プロジェクトマネージャー)が、あとから、スポンサーやプロジェクトオーナーから
「責任とれ」
などと詰め寄られたら、たまったもんじゃありません。

そこで、デューディリジェンスというプロセスを差し挟むことによって、仮にあとから
「間違いや見逃しや漏れや抜けの1つや2つ、100や1000は出てしまった」
としても、
「自分は自分なりに相当な注意を尽くした(デューディリジェンスを果たした)んだから、多少の間違いは勘弁してよ」
という、なんとも志の低い、見苦しい責任逃れのための言い訳(デューディリジェンスの抗弁)を機能させて、営みを前にすすめていくということになるのです。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/53095

「教えて!鐵丸先生」は、 32分35秒~ です

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01997_M&Aって何? (教えて!鐵丸先生Vol. 41)

M&Aは、チョーわかりやすく言うと、企業そのものを取引対象とする売買、すなわち
「買い物」
の一種ということです。

企業が普通に買い物をする場合、ヒト、モノ、カネ、ノウハウといった形で、個別経営資源毎にバラバラで調達します。

他方で、
「これをいちいちやっていると面倒くさくてしょうがない。ヒト・モノ・カネ・ノウハウが統合的にシステマチックに合体して動いている、人格そのものを取引しちゃった方がいいんじゃね?」
ということで、
「企業まるごと買っちゃえ」
という趣で形成されてきたビジネス分野です。

M&Aのどこがどう問題か、といいますと、
「企業の価値がはっきりわからない」
ということにつきます。

普通の取引をする際は、土地であれ、車であれ、機械であれ、だいたい相場というか時価というか、値段というものは
「世田谷のこの駅の近くにあるこの住宅地のこの土地であれば、だいたい坪これくらい」
「レクサスのこの型式の3年落ちの車輌であれば、だいたいこのくらい」
「このコピー機はだいたいこんなもの
といった具合に想像がつきます。

値段がわからず、お互い値段をめぐって七転八倒するような厳しい交渉を延々する、なんてことはありません。

ヒトも同様です。

「こういう学歴・経歴で、こういう職歴のヒトなら、だいたい年俸これくらい」
ってことは、ある程度わかります。

ノウハウやソフトも同様です。

無論、ヒトやノウハウ等については、多少、一義的でないこともありますが、それでも、共通のモノサシがなく、お互い言っていることが噛み合わず、長期間かけて交渉するということは稀です。

ところが、同じ買い物であっても、買う対象が
「企業」
という一種の
「仮想人格を有する有機的組織」
となると、なかなかそういうわけにはまいりません。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/51861

「教えて!鐵丸先生」は、 31分55秒~ です

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01996_動画コンテンツ制作において著作権侵害で訴えられないためには(教えて!鐵丸先生Vol. 40)

著作権はあくまで表現媒体や表現行為を保護するものであり、
「アイデアや筋書きそのもの」
は保護の対象ではありません。

例えば、畑中鐵丸という作家が
「アンドロメダ銀河からやってきた、愛と平和の弁護士」
というSFロマン小説を書いたとします(かなりつまらなそう)。

この
「アンドロメダ銀河からやってきた、愛と平和の弁護士」
を原作として、映画化のオファーがきたとしますが、提示された映画化のライセンス料が10万ドルポッチだったので、拒否したとします。

断られた映画会社が、話の筋はほぼ同じながら、キャラクターや設定が全く違う、
「大マゼラン星雲からやってきた、自由と正義の税理士」
という映画を作ってきた場合、これが
「翻案」
に該当するか否か問題になります。

「筋が同じ」
「結論や、そこに至る起承転結の構造が同じ」
というのは、これは著作権侵害の問題ではりません。

著作権法は、表現を保護するものであって、アイデアは保護しないからです。

別の言い方をすると、著作権法の世界では、アイデアはパクり放題、パクったもん勝ち、パクらないやつがバカ。

もちろん、著作権法以外では、違います。

特許法の世界では、アイデアそのものを保護しています。

特許法では、アイデアをパクるとアウトです。

ただ、特許権は、自然科学法則を利用した発明にしか適用されず、映画や文芸といった“ど文系”の世界には無関係の代物です。

その意味では、
「筋が同じ」
という点は問題なし。

あとは、表現手法です。

まあ、
「アンドロメダ星雲」

「大マゼラン星雲」に変わっただけ、
「税理士」

「弁護士」
に変わっただけ、なので、この点で、“翻案権侵害”になる可能性大です。

筋が違っても、表現として現れたものが類似であれば、著作権の問題が問われます。

他方で、『ライオンキング』と『ジャングル大帝』は、もうアウトプットベースで激似なので、問題になりました。

詳細は、以下をお聴きください。

https://audee.jp/voice/show/50150

「教えて!鐵丸先生」は、39分52秒~ です

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01995_出版権を得て出版した小説に筋書きが似たドラマが放映されたが著作権侵害?(教えて!鐵丸先生Vol. 39)

著作権は、あくまで表現媒体や表現行為を保護するものであり、
「アイデアや筋書きそのもの」
は、保護の対象ではありません。

単に、着想やヒントを得たりするような程度のものであれば権利侵害とはなりません。

既存著作物の題材となっている“歴史的または社会的事実や自然現象”について著作したとしても、そのこと自体が著作権侵害となることはありません。

この点について、
「パクった疑惑をかけられた後発コンテンツを観た者が、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得すること」
ができるか否か、を判断することになります。

後発コンテンツの改変の程度が甚だしく、既存の著作物の表現上の本質的特徴を直接感得できない程度まで至っている場合には、 “パクリ(翻案、二次的著作物)”ではなく、“全く新しいオリジナルコンテンツ”ということになります。

たとえば、
『隠し砦の三悪人』
という黒澤明監督の有名な映画があります。

~中略~

時間と空間とキャラクターを変えてみましょう。

「戦国時代の日本の秋月城」

「遠い昔の遠い銀河の宇宙空間に漂う惑星型攻撃要塞デス・スター」
に、
「悪辣で憎たらしいが強そうな城代」

「銀河皇帝パルパティーンの右腕であり、機械じみて冷酷非情で、無双の剣の使い手であるベイダー卿」
に、
「古武士の風情を漂わせた渋い老齢の元武将」

「銀河連邦元将軍のオビワン・ケノービ」
に、
「ひょろっと細長い従者その1」

「プロトコルドロイドC3po」
に、
「ずんぐりむっくりの従者その2」

「宇宙船や電子機器のオペレートのためのドロイドであるR2D2」
に、
「城の中に監禁されたお姫様」

「銀河連邦元老院議員にして、惑星ナブーの、気の強いレイア姫」
に、変えてみたらどうでしょうか?

詳細は、以下をお聴きください。

「教えて!鐵丸先生」は、37分16秒~ です

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01994_リスクマネジメントやリスク対応系プロジェクトについての検討ロジック

事件化となったときに、プロジェクトオーナーは、弁護士チームと、マネジメント遂行上の、思想、哲学、ロジックの共有が必要となります。

1 学校で教えられたことと、社会の現実は違います

学校:
・努力は尊い。
・結果が全てではない。
・努力はいつか報われる。
・失敗をおそれるな 次がある。

社会の現実:
・無駄な努力、無意味なガンバリ、というのは山程ある。
・目的から逆算した最小限の犠牲で十分。
・方向性を誤って空回りしていても、努力は無意味。

2 正しいプロジェクトの進め方

(1)正しい状況認識:
・自分のおかれた状況と現実と改善可能な範囲や相場観を知る。

(2)正しい目的を立てる:
・達成可能で現実的で損得勘定において意味ある目的を定める。
・未来の姿を具体的にイメージする。
・具体的であればあるほどいい。

(3)正しく課題をみつける:
・1の不安要素から10のネガティブな未来を予測し、イメージできる能力をもつ。
・プロジェクトマネジメント知性。
・細部の破綻に目をつぶり、異常値を見えないふりして、性善説や科学的合理性というバイアスを使って、全体を正常かつ健全に統合するのがモデル化して満足してしまう。
・仮説に反する有害な現実は、異常値や誤差やバグとして、シカトする。

(4)正しい命令を企画・制作・デリバリする:
・命令は、受ける方より、発する方が大変。
・間違った命令を発すると、大きなロスやダメージが発生し、命令を行った者が罰せられる。
・また、デリバリも大事。
・あくまで到達主義。
・受け手が理解してナンボ。
・抽象的で、意味不明で、指示内容が一義的でない命令や、受け手が理解できない難解さや高尚さをもったものは、正しくない命令。

(5)正しく命令を実行する:
・命令の実行に大切なのは、結果指向・目的指向で、卑劣で非常識なものも含めて、合理的に準備を行ない、段取りを組む。あらゆる想定外を想定し、悲観的に考え、命令が達成できない場合の予備案(Bプラン)をもっておく。
・チームで命令を遂行する場合、インセンティブ設計(残念賞も)や、士気亢進システム(ゲームロジック)。

(6)命令の達成状況を確認する:
・何事も失敗や修正はつきもの。
・人は怠惰の誘惑から逃れられない。
・線表による達成状況の監視とペナルティーのシビアな運用等は必須。
・丸投げしたり、ブラックボックスを作ったままの遂行体制は不可。

( 7)正しく試行錯誤を行う:
・失敗や想定外が生じたら、修正力を働かせ、修正提案を命令発令者に意見具申する。
・意見具申なく、独断でのコミュニケーションは不可。

(8)正しく結末を総括する:
・目的全部達成、一部達成、修正された目的達成、失敗・諦め・撤退という結末を総括する。
・撤退見極めをせず、ずるずる泥沼に引きずり込まれないようにする。

3 ありがちなプロジェクトにおける失敗

(0)常識・憶測・思い込み:
・学校の先生やサラリーマンや専業主婦の親の教えてくれた常識で推し量る。
・迷ったら、常識という
「偏見のコレクション」
で、憶測し、思い込み、たくましく想像する。

(1)間違った状況認識:
・偏見等によって認知がゆがんでしまい、自分のおかれた状況が理解認識できない。
・不愉快な現実を直視しない。
・特に、失敗の原因が自身にある場合、自己保存のため、自分にウソをついて、あるいは事実を意図的に誤解し、自己の尊厳を守り、現実を受けいれない。
・改善不能ことや、達成が不可能なことを想像したり、現実的実務的な相場観を拒否し、テレビやドラマで見知ったファンタジーを前提にした身勝手な結末が劇的に達成されることを妄想する

(2)目的があいまい、不合理、意味不明:
・達成不可能で、非現実的な目的であったり、損得勘定ではなく、主観や感情(正義や嫉妬やコンプレックス解消や報復感情)を前提に、経済合理性のない目的を定める。
・完成予想図、成功時の未来の姿が具体的にイメージできておらず、曖昧。成功者や達成した経験者の話を聞かない。
・聞いても、自分に都合よく解釈する。

(3)課題がよくわかっていない。課題がないと信じている:
・不安要素や都合の悪い事象や障害は、無視する。
・見て見ぬふりをする。
・ネガティブで不愉快な未来を予測しない。
・細部の破綻に目をつぶり、異常値を見えないふりして、性善説や科学的合理性というバイアスを使って、全体を正常かつ健全に統合するのがモデル化して満足してしまう。
・仮説に反する有害な現実は、異常値や誤差やバグとして、シカトしてしまう。

(4)命令がデタラメで適当で理解不能:
・抽象的で、意味不明で、指示内容が一義的でない命令や、難解や高尚に書かれているが、何を期待し、何を義務付けられているか、さっぱりわからない正しくない命令が出されている。

(5)命令が正しく実行されていない:
・準備が不十分、段取りが粗い。
・チームで行う場合において、インセンティブ設計(残念賞も)がなく、やる気がでない。
・結果達成が可能性にとどまるにもかかわらず、ゲームロジックがなく、ルーティンとして遂行される雰囲気になっている。
・達成状況監視システムや体制もなく、丸投げされており、ブラックボックスがたくさんあり、何かやっている風ではあるが、何をやっているかわからない。
・楽観バイアスに侵されているため、命令が達成できない場合の予備案(Bプラン)が欠如している。

(6)命令の達成状況は確認しない:
・失敗や修正は考えないし、性善説に立つので、まさか、部下や命令を受けた者がサボったり、手を抜いたり、不注意で漏れぬけやらかす、とは想像すらしない。
・線表による達成状況の監視とペナルティーのシビアな運用など、
「部下を信頼していないと思われる。やる気をそぐ」
という意味不明な理由で排除。
・丸投げし、ブラックボックスがあちこちに出来、何がどうなっているかすらわからず、ただただ、時間とコストとエネルギーを消耗していくが、その経過すら不明。

(7)試行錯誤を想定しない。一度やってダメなら、ジタバタしたり、あがいたりせず、潔く、あっさりと辞めたり、休んだりする:
・失敗や想定外が生じたら、それで思考停止に陥り、行動を停止し、神風や都合のいい天変地異や外的事象によって状況が改善することを夢想する。
・というか、悲惨な結果から目を背け、なるべく忘れるようにする。
・あるいは、プロジェクトが終了すると、報酬がもらえなくなったり、お払い箱になるので、独断で、コミュニケーションなく、勝手に目的を書き換え、別のことをはじめ、何か仕事をしている、という外形を作って、状況を引き延ばす。

(8)結末を総括したりしない:
・目的全部達成ならいいが、少しでも達成できなかったり、失敗・諦め・撤退という悲惨な結末となったら、とりあえず、総括せず、ずるずる続ける。
・その結果、泥沼に引きずり込まれても 、
「そのうち天佑がある」
という意味不明で身勝手な妄想で、事態打開を神に祈りつつ、損害を拡大する。

上記リテラシーを、腹落ちするまで、精読し、理解し、行動できるよう脳に染み込ませ、有害な常識をすべてこそげ落とすことを推奨します。

そして、プロジェクト遂行完了まで、
“懐疑し、信頼せず、脳をフル活用して、戦理にのっとって、効率的な試行錯誤を続ける”
覚悟を持つことです。

おそらく、
「読むのは簡単、理解もできる」
「言われてみればな~んだ」
という内容ですが、実践できる方は、0.001%くらいですし、この方々は、ほぼ、成功者ないし富裕層として、この社会で君臨しています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01993_企業間ディプロマシー

企業と企業との関係をどう構築するか。どのような関係性をデザインするか。

この問題を、筆者は、
「企業間ディプロマシー」
という造語で捉えています。

企業と企業の関係性は、国家間の関係性と同じく、外交課題として捉えうると考えます。

すなわち、企業間であれ、国家間であれ、組織と組織との間には

1)友好的に協調する
2)緊張感を以て警戒しつつ距離を取る
3)非暴力的な外交手法でゲームを展開する
4)暴力の応酬による闘争を展開する

と、様々な関係性がありうるところです。

具体的に言えば、企業間において

「1)友好的に協調する」
とは、業務提携等が想定されるが、度が過ぎれば違法なカルテル等にもなりうる関係性ですし、

「2)緊張感を以て警戒しつつ距離を取る」
とは、通常の関係性ですし、

「3)非暴力的な外交手法でゲームを展開する」
とは、市場において経済合理性にしたがってシェアを奪い合う健全な競争関係性ですし、

「4)暴力の応酬による闘争を展開する」
とは 、テロや破壊活動というわけではなく、合法的で洗練されたゲバルト(暴力)である、法と裁判システムと弁護士を用いて、相手に攻撃をしかけて戦争状態にと突入する関係性、

と整理可能です。

「日本企業社会はムラ社会で、業界競争より業界協調を好む」
「とかく、日本企業同士は、ガチンコ競争を避け、談合やカルテルをしがち」
という話を聞きます。

もちろん、業界によってはそのような悪弊が強く残っていますが、2000年以降、露骨なカルテルがなくなりはじめ、仁義なき競争関係にシフトしています。

無論、
「市場において経済合理性にしたがってシェアを奪い合う健全な競争関係」
が基本ですが、
「合法的で洗練されたゲバルト(暴力)である、法と裁判システムと弁護士を用いて、相手に攻撃をしかけて戦争状態にと突入する関係」
も多くみられるようになりました。

特に、成長し、シェアを伸ばす企業ほど、
「4)暴力の応酬による闘争を展開」
し、あるいは展開される状況を念頭におき、戦争遂行資源である法務や弁護士を即時起用できる体制を整えています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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