01214_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>特徴とポイント>労働組合との交渉・争議

企業側に課されている義務としては、
「誠実に交渉に応じること」
です。

「要求をのむこと」
ではありませんし、
「無駄な交渉だからといって、それを言葉に出して、相手を激怒させること」
でもありません。

巧言令色というかどうか別にして、客観的観察において
「誠実に交渉に応じる」
と評価されるべき態度を貫くことが重要です。

無論、話し合いの過程でお互いの妥協点が見つかれば幸いですが、そうでない限り、相手に媚びへつらい、無理に妥協することはありません。

団体交渉の過程で、労働組合側が
「企業側が団体交渉を拒否した、交渉に誠実に応じない、団体交渉をしたことや労働組合に加入したことによって差別や不利益を課した」
等と考えた場合、労働組合は労働委員会に
「企業側が違法行為をしているので、止めるように命令してくれ」
と申立てすることができます。

これは救済命令申立てといわれるもので、裁判そのものではありませんが、ほぼ裁判と同様の手続です。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP249TO249

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01213_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>特徴とポイント>労働者との民事紛争>裁判所での解決その3

4 労働審判

労働法務に関する紛争に関しては、以上みてきた訴訟や仮処分のほか、労働審判と呼ばれる手続があります。

これは、2006年4月から始まったまだ歴史の浅い制度です。

労働審判は、労働者個人と使用者の労働関係の紛争について、裁判官だけでなく、労働審判員2名(1人は労働団体推薦、 1人は経営者団体推薦)を加えた3名で話を聞き、スピーデイーに労働紛争の解決を図る手続です。

「スピーディー」
のレベルですが、原則3回以内の期日ということになっています。

実際の運用は、事実関係の争いはほとんど第1回で決着がついてしまうくらいの審理促進が図られており、従来の労働訴訟や仮処分からすると考えられないくらいのスピードです。

手続の内容は
「訴訟と調停のハイブリッド型の手続」
といえるようなものです。

法廷での証人尋間ではなく、出席者に質問をする形で心証を形成していき、和解が図られたり、調停案が示されたりします。

フリートーキングだからといっても気を許すと大変なことになります。

すなわち、その場のソフトな雰囲気に騙されて、言わなくてもいいことや不利なことや誤解を招くことをベラベラしゃべると、それで裁判官や審判員の心証が形成されてしまうので、企業側の弁護士としても注意が必要です。

調停案というのは裁判所が
「こんな感じで解決したらいかがでしょうか」
という一種のお節介には変わりありませんし、“蹴飛ばす自由”もあるにはあるのですが、簡易裁判所の調停とは違い、慎重な対応が必要です。

というのは、調停案を拒否した場合、今度は調停案とほぼ同内容の
「審判」
が出されることになり、これを覆すのは非常な困難が伴うからです。

すなわち、
「審判なんて、ろくに人の話も聞かずに、素人の審判員が、適当に書いたもの。オレにはきちんとした裁判を受ける権利がある」
ということで、審判に異議を出して通常訴訟に移行することもできるのですが、よほどの事情がない限り、通常訴訟においても
「審判」
という公的判断が尊重されます。

無論、労働審判の段階では出していなかった隠し玉のような決定的証拠を出したり、審判の席上述べた内容を変更することも不可能ではありませんが、
「そんな重要な証拠をなぜ審判段階で出さずに取っておいたの?」
「審判の席上で述べた発言をなんで急に変更するの?」
という疑念を惹起するだけで、証拠が提出できなかった理由や、事実と違う発言をしたことについてきちんと説明できない限り、審判変更の事情として掛酌させることは難しいといえます。

以上のとおり、労働審判においては手を抜くことなく第1回期日までにきっちりとした準備をし、裁判官(労働審判官)・審判員につき有利な心証を得られるように適正な対応をすべきですし、提示された調停案も安易に蹴飛ばすのは控え、真摯に対応すべきです。

運営管理コード:CLBP248TO249

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01212_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>特徴とポイント>労働者との民事紛争>裁判所での解決その2

2 労働仮処分

労働者が、解雇を争い、職場復帰を裁判で求める場合、通常は、まず仮処分を申立てることになります。その内容は、賃金の仮払いであったり、労働者の地位を仮に定める内容を求めます。

というのは、もちろん、いきなり本案訴訟(本裁判)を実施しても全く差し支えないのですが、訴訟を提起したとしても勝訴するまでの間、会社からは一切賃金が支払われませんので、訴訟解決までの約1年ないし2年間(解雇が相当だったか否かということについて言い分を整理し、証拠を提出し、関係者の話を聞き等していると1年や2年すぐに経過します)、無収入で過ごさなければならなくなります。

そこで、
「本裁判では多分勝つと思うが、その間無収入だと飢え死にしてしまうので、会社に暫定的に賃金を支払うように命令してくれ」
という申立てをすることが認められており、これがこの労働仮処分といわれるものです。

この仮処分という手続ですが、
「迅速に暫定的な命令を出す」
という本来の目的との関係、
「訴訟と同じレベルの主張と立証まで必要とせず、疎明(適当な話と証拠)で発令する」
という建前があります。

しかし、実際には、安易にポンポンと仮処分命令が発令されるわけではありませんし、企業側の言い分も十分聞いた上での判断となります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

仮処分は暫定的命令とはいえ、いったんこれが発令されると本裁判で覆すのは困難になりますので、企業側としても、手を抜かずしっかりと解雇を正当づける主張や証拠をきっちり提出して行くべきです。

仮処分発令の上では、

(1)労働者の言い分に理由が認められる
(2)本裁判前に暫定的に賃金支払を認めるべき必要性がある

という2つの要件が必要となります。

理由面でもきっちり争うべきですが、必要性に関しても労働者の生活状況を厳しく追及すべきです。

例えば、すでにアルバイト等をしていて他に収入があるのであれば、
「必要性なし」
という形で発令を阻止することも有効な防御方法です。

また、発令がやむをえない場合であっても、その期間について極力短期とし、必要性について何度もチェックできる形にもっていくべきです。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

なお、仮処分段階であっても、裁判所が和解を勧める場合がありますし、仮処分の審理を担当する裁判所の勧める和解は、調停等とは違い
「言うことを聞かないと、一方に不利な判断をする権限」
を背景にしたものなので、無視して強気でいると敗訴という形でしっぺ返しが来る可能性があります。

決定権を有する裁判所の勧める和解については裁判所が形成しつつある心証に意を払いながら、適正に対応すべきです。

3 本案訴訟

本案訴訟は、通常の民事訴訟と同じです。

ただ、労働裁判の特色を申しますと、裁判所(東京地方裁判所や大阪地方裁判所)によっては労働専門部が設置されているところがあり、当該部の裁判官は高度な専門性を有しており、審理のスピードが早く、企業側の不当な引き延ばし戦略に対しては厳しい態度を取る場合があるので、注意が必要です。

運営管理コード:CLBP246TO248

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01211_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>特徴とポイント>労働者との民事紛争>裁判所での解決その1

労働者が裁判所に訴え出て、司法権の行使、すなわち、
「解雇に理由があるのかないのか」
「労働者に非違行為があるとして、解雇という処分が相当か否か」
という点についてシロクロつけてもらいましょう、という争いが展開されることになります。

とはいえ、裁判所での解決を求めるといっても、通常の訴訟手続以外に、いろいろとメニューがあります。

解雇を争うのは労働者側ですので、
「裁判所での解決におけるどのメニューを選択するか」
は労働者側にイニシアチブがあり、企業側としては、各手続の性質にあわせて適切に応訴対応していくことになります。

1 簡易裁判所での調停

まず、簡便な話し合いの方法として、労働者側が簡易裁判所における調停を申立てる場合があります。

調停というのは、裁判所のテーブルで行われるものの、
「話し合い」
には変わりなく、内容に不服であれば無理に和解に応じる必要はありません。

すなわち、調停は、簡易裁判所の調停室で行われ、調停委員という斡旋者(弁護士であったり、半ばボランティアのおじさん、おばさんであったりします。

言うなれば、落語に出てくる「ご隠居さん」のような存在です)を通じて、話し合いが可能かどうかについて検討が行われます。

ちょっとしたボタンの掛け違い程度の紛争であれば、調停で解決をみることもありますが、
「クビを切って路頭に迷わせやがって、このボンクラ社長!」
「そっちこそなんだ、デキねえくせに、この不良社員」
という趣の熾烈な紛争になってしまっている事件の場合、裁判所の調停室で調停委員がいろいろお節介を焼いてくれようが、全く埒があかず、無駄に時間だけが流れる、という展開もありえます。

調停委員は、金色のバッジをつけて裁判所の中で訳知り顔をして悠然としていらっしゃるものの、紛争となっている事項についてシロクロつける権限があるわけではなく、やっていることは
「ただのお節介」
と変わりありません。

不合理なことをいわれたら、直ちに席を蹴って帰ってきても全く問題はありません。

このように応じる必要がないにもかかわらず、その場の雰囲気にのまれてしまい、調停委員の剣幕に押されて不服な和解を受諾してしまったら、後から和解内容を争うことはできなくなります。

したがって、雰囲気や調停委員の剣幕に押されることなく、
「不服があれば、調停委員だろうが、誰だろうが、一切話に応じない」
というスタンスを堅持することが重要です。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP244TO246

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01210_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>特徴とポイント>労働者との民事紛争>労働組合の介入

企業と一労働者との民事問題に労働組合が介入してくる場合もあります。

これは、労働組合という
「労働紛争のプロ」
が、団体交渉開始を通知して、労働紛争に介入し、労働者の団結を背景に、要求貫徹に向けてアグレッシブに交渉をしてくることを意味します。

この点、
「労働組合による団体交渉というのは、労働者が結束して賃上げとか職場環境改善とかを問題とするのであって、一不良社員のクビを切ったという個人的な問題を交渉するのは筋違いではないか」
と疑間をもつ方もいるかもしれませんが、現在の労働組合法の解釈上、労働組合が組合員個人の解雇や配転を団体交渉の議題とすることは認められています。

解雇理由の有無や解雇の相当性等の問題は、最終的には事実認定権と法律解釈権を有する裁判所で判断しないことには埒があかない話ですし、団体交渉にて大人数で声を張り上げたほうの主張が正しいというわけではありません。

その意味では、
「裁判所で判断してもらうから、君たちとは交渉しても無駄」
という考えも一理あるのですが、労働組合法上、企業は法的義務として
「労働組合との団体交渉に誠実に応じる」
義務を負います。

逆の言い方をすれば、企業が不当に団体交渉を拒否したりすると、不当労働行為になり、労働委員会に呼ばれて、謝罪を求められたりする場合があります。

また、不当労働行為に対する労働組合のカウンターアタックとして、争議行為が展開されることがあります。

争議行為といっても、独立系労組に駆け込んだ解雇した従業員一人が
「ストライキするから、明日から仕事には来ません」
と言ったところで、
「もともとデキないからクビを切った従業員がストライキしたところでも痛くもかゆくもない」
と考えられる経営者もいると思います。

しかし、実際には、労働組合に属する他の組合員が、赤い鉢巻をして、プラカードと赤旗を立てて、ビラを撒いて、シュプレヒコールをあげる、などということも起こりえます。

メーカーや卸売業などであれば、外で騒がれても問題ないかもしれませんが、ホテルやレストランや宝石店や美容室などであれば、非常に恥ずかしい話になりますし、顧客にも迷惑がかかり、信用問題につながりかねません。

ですので、
「どうせ裁判所でしか解決できないから」
という理由で不誠実な対応をしていると、大きなトラブルに発展することもありますので、注意が必要です。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP242TO244

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01209_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>特徴とポイント>労働者との民事紛争>行政介入

労働法にまつわる民事紛争に、行政が介入してくることがあります。

すなわち、労働者が、労働基準監督署や労政事務所に相談し、紛争解決の斡旋等を依頼するというケースです。

純粋な民事の揉め事の場合、行政の介入は、言うなれば
「お節介」「大きなお世話」
の類のものですので、これに従っても結構ですが、従いたくなければ従う必要は全くありません。

とはいえ、紛争の性質が、純粋な民事問題だけでなく、残業代の未払いや労災事故隠しなどの取締法規違反が含まれる内容の場合、行政の介入を強硬にはねつけていると、違反事案としての調査が開始される場合があります。

労働者が企業との民事問題について行政に救済を求め、これに応じて行政が紛争介入してきた場合、単なる民事の揉め事におせっかいを焼いているだけ(例えば、解雇の理由の存否などは、三権分立システム上、司法権を行使する裁判所が判断するべきものであり、民事裁判権を有さない監督行政機関の出る幕ではない)なのか、それとも、民事問題を超えて取締法規違反の事態が生じていて行政側がこれを取り締まろうとしているのか、
「空気を読む」
ことが必要になります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP242TO242

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01208_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>特徴とポイント>労働者との民事紛争>当事者間の示談交渉

例えば、ある労働者に対して行った解雇の有効性が争われた場合、当該労働者あるいは代理人弁護士から解雇に異議を唱える内容証明による通知書等が発出されたことを契機に、民事紛争に発展する場合があります。

この種の事件の対応経験がある企業にとっては常識ですが、弁護士の内容証明通知に法的に特別の効力があるわけではなく、私信と同様に扱って差し支えありません。

一方的に賃金や慰謝料支払を求め、期限内に支払わなければ法的措置に出ることを仄めかす内容証明であっても、プラフである可能性が高く、あわてて解雇を撤回したり、支払等をするべきではありません。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

純粋な民事紛争だけであれば当事者の見解の相違は最終的に裁判で解決されるので、相手の一方的な要望やペースに惑わされず企業としての主張を適正に維持し、不要な示談に応じる必要は一切ありません。

しかし、問題となっている事項が、残業代不払等の取締法規違反が含まれる内容の場合、不用意な対応をすると、労働基準監督署の調査を招くおそれがあるので、紛争の法的性質に応じた適正な対応が必要になります。

運営管理コード:CLBP241TO242

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01207_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ4)>有事対応フェーズ>労働法務における有事シナリオ

労働法務分野における有事状況とは、民商事紛争法務として、個別労働契約を巡る民事問題と、労働組合との関係を巡る諸問題が存在します。

また、刑事・行政上の問題に関わる労働取締法規違反を巡る不祥事等対応法務(刑事・行政上の責任追及に対する防御活動)も存在します。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

個別労働契約を巡る民事問題の解決については、当該対象労働者個人との間の裁判外交渉、訴訟・調停・労働審判のほか、当該対象労働者が属する労働組合との団体交渉が申し入れられることがあります。

労働組合との関係を巡る諸問題については、労働委員会による救済命令の是非が争われ、さらに当該委員会の判断に不服があれば、高等裁判所において訴訟が行われます。

なお、労働取締法規の違反があった場合、監督権限を有する労働基準監督署が罰則を背景とする是正勧告を実施するほか、悪質な場合、刑事事件として送検することとなります。

このほか、経済的制裁・社会的制裁として、報道機関の報道による社会的信用の失墜、顧客・取引先の離反、資本市場からの制裁として株価下落・上場廃止・内部統制システム構築義務違反を巡る監査法人の意見不表明、株主総会における経営責任の追及や株主代表訴訟の提起等の状況も生じます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP239TO241

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01206_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>偽装請負

偽装請負とは、実態は派遣であるにもかかわらず、表向きは
「請負」
と偽るアウトソーシングのことを指します。

派遣の場合、業務上の指揮命令権を派遣先企業が有する反面、安全配慮義務についても派遣先企業が負担し、また派遣元企業も労働者派遣法上の規制に服します。

派遣元企業が労働者を派遣することを依頼されても業務請負としておけば、派遣元企業は労働者派遣法上の規制から外れることとなり、また派遣先企業も安全配慮義務を負担しなくてすむようになります。

しかし、このように形式上派遣としておきながら、仕事上の指揮命令を派遣先企業が行うことになると(偽装請負)、指揮命令権と安全配慮義務の所在があいまいになり、労災事故が生じやすくなりますし、また、労災事故が生じても責任の所在があいまいになってしまいます。

偽装請負を巡る法務トラブルとしては、労災事故等が起きた場合、派遣先企業(請負業務発注企業)も派遣元企業(請負業務受託企業)と連座させられ、損害賠償債務を負担させられることになります。

加えて、違法な労働者派遣と判断された場合、労働者派遣法上の行政指導、さらには、職業安定法違反に基づく刑事罰を受けるリスクが生じます。

偽装問題に対する行政のスタンスについてですが、行政は、

・使用者・指揮命令監督者が「あいまい化」することによる労働災害発生率の増加(製造業における人身上の災害増加、情報サービス業による精神疾患の増加)
・規制緩和により新規参入業者が急増し競争激化する分野において過重労働が恒常化し、これが一般人を巻き込む事故につながっていること(特に、物流業)

を憂慮しており、これらの問題を改善するという観点から、年々規制発動を強化する方向にあると思われます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

偽装請負問題についての法務対応上のポイントですが、以上のような行政のスタンスを十分ふまえ、詳細な行政解釈をきちんとスタデイーした上で、指揮命令権の所在をはじめ、適正な請負となるよう契約内容や業務体制を厳しい日で見直すことが必要です。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP235TO238

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

01205_労働法務>経営資源としての「ヒト」の調達・活用に関する法務課題>労働法務(フェーズ3)>予防対策フェーズ>過労死・過労自殺・メンタルヘルス問題

過労死とは、企業の職務遂行の過程で積み重なった過労や精神的ストレスが原因となって発症した疾病や自殺により、従業員が死亡することをいいます。

特に、精神的ストレスで自殺した場合を過労自殺といい、企業側においてもこのような事態を防ぐべく従業員の精神的健康(メンタルヘルス)面を十分ケアすべきだ、などといわれることがあります。

古典的な理論によれば、
「雇用契約上、従業員は労働を提供し、企業がこれに対して所定の賃金を支払えば、契約関係としては特段問題ない」
ということになります。

しかし、企業側の義務は、所定の賃金を支払えば足りるというものに尽きるものではなく、従業員が安全に労務を提供できる環境を整備すべきことも含む、と考えられるようになりました。

すなわち、現代では企業には
「従業員に労務を提供させるにあたって、従業員の生命・健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務」(安全配慮義務)も有するものとされます。

労働法務の世界では、過労死や過労自殺を防ぐための企業側の措置(従業員のメンタルヘルスケアを含む)は、安全配慮義務の履行という形で議論されています(安全配慮義務を具体化したものとしては、労働安全衛生法がありますが、企業の義務は、同法の遵守に限定されるものではありません)。

過労死や過労自殺は、全体的に増加傾向にあるといわれています。

そして、従業員が過労死や過労自殺をした場合、当該結果が企業側の安全配慮義務の不履行によるべきものかどうか、という点で争われることになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

過労死や過労自殺においては、過酷な残業が背景になっていますが、労働基準法上違法とされる残業をさせているということは、死と業務命令の因呆関係の認定に直結しますので、企業の安全配慮としては、適正な労働時間管理がまずは大前提となります。

その上で、適切な健康管理、メンタルヘルスチェックのツールを会社内に設け、心身の健康面において疑いが生じた従業員に関しては、労働環境を調査し、必要な改善を行うべきこととなります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP233TO235

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所