00238_知的財産権のデフォルトルール:権利は、誰のもの? 作った人? カネを出したスポンサー?

大工さんに家を造ってもらった場合、お金を払えば、当然ながら、出来上がった家は施主の所有となります。

「出来上がった家の所有権は代金支払と同時に施主に移転する」
みたいなアホな条項を逐一契約書に記載する必要もありませんし、そんな当たり前なことが契約書に書かれていないことを盾にとって、大工さんが、
「施主がこの家の所有者だなんてどこにも書いていない。オレは、この家を造ったんだから、この家の所有者だ。たとえカネを払った施主といえども、施主は借家人としてこの家を事実上使えるにすぎない」
なんてことを言い出したら、それこそ大問題ですし、法律上もこんな暴論は認められませんが、知的財産権の世界では、大工さんの言い分が正しいとされる場合があります。

すなわち、カネを払って開発を委託したケースにおいて、契約上開発成果物に生じた権利の帰属が明記されていないと、当該権利は、カネを払った人間ではなく、開発した業者の所有に帰すことになります。

無論、カネを払った側は少なくとも開発成果を使うくらいは許されそうです。

しかし、契約書に明記していない以上、開発成果に関する権利は業者の所有物として、業者が特許を取得しようが、その特許を委託者のライバル企業に売り渡そうが、法律上は許されることになります。

「そんなアホな」
と言われそうですが、知的財産権制度は
「知恵を出した人間が知的財産権者である」
という建前で構築されており、カネやインフラを提供した奴は部外者という扱いです。

契約で権利者として扱うことを取り決めがない限り、少なくとも知的財産権の世界ではカネを出した人間は
「お呼びでない」
ことになります。

知的財産権はカネを出した人間ではなく創った人間のモノ。

この(資本主義社会の常識から考えると)異常で狂った取扱が、デフォルトルールです。

参考:
00072_企業法務ケーススタディ(No.0026):開発委託契約書はよく読むべし

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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