00240_売掛で商品を卸すということは、代金相当のカネを貸すのと同じ

売掛で商品を卸すということは、代金相当のカネを貸すのと同じです。

身なりや話しぶりだけで、いきなり新規取引先に売掛で商品を販売するような、物を知らない、世間を知らないベンチャー企業を見受けることがありますが、これは、見ず知らずの人に担保もなしにカネを貸したのと同じくらいアホなものだったということです。

代金引換で売り渡すのであればリスクはないですが、掛で売る以上は、取引相手が信用に足るかどうか調査した上で、債権を適正に保全する方法を構築することが必要です。

掛で売ることはカネを貸すのと同じといいましたが、
「どうやって信用を調査するか」
には、資本主義社会という生態系の頂点に立つ、全ての企業の霊長とも言える、銀行のビヘイビアをベンチマークにするのが賢明です。

すなわち、売掛で商品を販売する先の信用調査は、銀行がカネを貸す時に行うことを参考にするのが手っとり早く確実な方法です。

銀行からカネを借りる時には、登記簿謄本をもってこい、印鑑証明もってこい、決算書もってこいなんて鬱陶しいことを言われます。

ですが、掛売を行う際は、この状況を彼我の立場を替えて再現すればいいだけです。

こちらの商品をどうしても掛(代金後払い)で欲するような相手に対しては、たとえ相手の会社が、立派そうで、金を持ってそうでも、登記簿謄本や決算書を要求すればいいだけです。

見ず知らずの人間に、商品代金相当のカネを無担保で貸すわけですから、そのくらい要求するのは不当とも思えません。

実務上経験するのは、そうやって、
「新規に大量の売掛を要求する」
という傲慢な企業の中には、登記簿謄本や信用調査会社のスコアや決算書等を要求したら、
「プライバシーの侵害だ」
「個人情報だろ(←いえいえ、法人情報ですが)」
「無礼だろ」
などと意味不明なことを言って騒ぎ出し、激怒して逆ギレするようなところもなくもありません。

しかし、後から調べると、会社の実体がなかったり、破産寸前だったり、ということがあり、あやうく取り込み詐欺に遭いそうになっていたところで、
「取引をしなくてよかった」
ということが判明する場合があります。

考えてみれば、上場・非上場、規模の大小を問わず、株式会社は、商業登記簿は法務局で世界にあまねく公開しておりますし、決算についても、会社法に基づき公告義務が課せられており、プライバシーもへったくれもありません。

公開が法律上義務づけられているものを、不合理にしぶるのは、存在しなかったり(私も実務上、「株式会社の名刺をもっているが、実は、そんな株式会社が存在しなかった」というコテコテの詐欺の被害にあった会社の事件を受けたことがあります)、見られたら即信用をなくすような相当ひどい内容が書かれている場合の可能性が高いです。

いずれにせよ、会って間もない相手に、いきなり、掛けで大量の商品をもってこい、というのは、かなり非常識な話で、話の筋だけで、眉にツバをべったりつけて、対応すべきであり、
「みかけの受注話に舞い上がって、取り込み詐欺の被害者になるような愚かな真似」
をすべきではありません。

参考:
00073_企業法務ケーススタディ(No.0027):商品売掛先に騙された!

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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