00567_訴訟弁護士として、「対裁判所外交(渉外活動)」展開上、注意すべきポイント2:早めの心証形成に協力

裁判官には早めに事件の全体像をみせてあげることが重要です。

裁判官は時間がありません。

弁護士が忙しいといっても、長時間かけて晩飯を食ったり、銀座でクラブ活動をしたり、ヨットに乗ったり、ゴルフに行ったりする程度には時間的余裕があるものですが、裁判官の忙しさは殺人的です(実際、忙しさで病んでしまい、自殺者が出たりもします)。

そんな、掛け値なしに
「死ぬほど」忙しい裁判官
に、
「ある種、どうでもいい、ロクでもないトラブルの話」
を聞いてもらうのですから、よほど要領よく話をしないと、話の全体をわかってもらう前にうんざりされてしまいます。

時間に追われる裁判官は、少しでも早く事件の全体像を把握したがっています。

そして、一度把握した事件の全体像は、よほどのことがない限り、修正したりしません(事件の全体像をコロコロ変えると時間の無駄につながりますから)。

ですので、事件は後半ではなく、初動段階が勝負です。

この段階で、いかに裁判官に効率的に事件の全体像を示すかが、勝負のポイントになります。

弁護士さんによっては、事件の初動段階では素っ気ない主張しかせず、最終段階であーだこーだ議論を展開する、
「差し馬」みたいな方
がいますが、後半でがんばっても裁判官はすでに心証が形成されてしまっているので、ほとんど読んでいない(あるいは逆に粗探しの材料を提供するだけ)という状況になっている場合がほとんどなので、後半巻き返すという戦略は定石からかなり外れます。

要するに裁判官は、
「食の細い食通」
みたいなもので、前菜で料理の腕が判断されるので、前菜で手を抜くと、メインやデザートでいかに美味しい料理を作っても星がもらえない、ということになります。

いずれにせよ訴訟は
「先行逃げきり」
の戦略が重要で、裁判官が早めに事件の全体像がつかめるように初動段階で充実した主張を展開することが遂行上必須です。

とはいえ、きちんと調べた上で主張しないと、依頼者のいい加減な話を鵜呑みにして客観証拠を精査せずに風呂敷を広げるのも危険です。

依頼者の話がころころ変わったり、相手が提出した客観証拠との矛盾を露呈したり、釈明に窮したりすると、挽回が不可能な状況に陥ります。

また、高度な戦略になりますが、相手方に好きなように言いたいだけ言わせて、後半、山のように相手の主張と矛盾する客観証拠を提出してそこで心証を逆転させた方が効果的な場合もあります。

このように例外もありますが、裁判官によっては、こういう弁護士にとって小気味のいい逆転劇も、時間の浪費でありうんざりであると感じる人もいると思われます。

ですので、あらゆる訴訟上の戦略は、お客様である裁判官の事実把握の負荷を少しでも軽減してあげる、という
「顧客第一(Customer First)」
の発想が重要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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