これまでみてきたように、法律は、
非常識な内容を含み、
「日本語を使いながら、およそ日本語の文章とは言えないほど壊滅的にユーザビリティが欠如し、呪文や暗号のような体裁の奇っ怪で不気味な文書(もんじょ)」
であり、おまけに公権的解釈が複数存在し、何を信じていいか皆目不明で、
しかも、この民主主義の世の中において、極めてレアな
「独裁権力を振り回す覇権的で絶対的な国家機関」
によって、自由気まま、奔放不羈なスタイルで、わりと適当に解釈されちゃう、
という
「げに恐ろしき」
ものです。
そして、そんな法律は、決して、弱きを助け、強きを挫くものなどではなく、デフォルト設定としては、
加害者や小狡い人間に優しく、被害者や無垢なカタギに過酷で、意外とワルでロックでパンクで反体制的なヒール、
といったシロモノであり、やはり、つくづく
「げに恐ろしきもの」
なのです。
すなわち、
「法律」
や
「契約」
に書いてないことは、何をやってもいい。
やってほしくないことややられたくないことは、
あらかじめ、ミエル化、カタチ化、具体化、特定化、文書化、フォーマル化をした上で、
「法律」として作って公布しておくか、
やられたくない・やってほしくない相手と「契約」という形で取り交わしておかないと、
やられたい放題にされても一切文句を言えない。
そういう、
「やってほしくないことややられたくないことは、あらかじめ、ミエル化、カタチ化、具体化、特定化、文書化、フォーマル化」
をせずに、カタギの常識を持ち出して、法律に常識的な配慮を期待しても、ダメ。
そういう場合、法律は、
「え? やってほしくないことややられたくないことがあったの? だったら、あらかじめ、ミエル化、カタチ化、具体化、特定化、文書化、フォーマル化して禁止したり制御したりしておかないと。え? そんなの無理? やっていないと? そりゃ、あんたがズボラこいたんだよ。ざ~~んねん。やられっぱなしもしゃないよ。自己責任、自業自得、因果応報ね。ドンマイ!」
と冷淡にあしらうだけです。
これは、別に、私(筆者)が、狷介で、悪趣味な、マイノリティ思考の嫌われ者だから(そういう一面があることは否定しませんが)、というわけではありません。
かなり前になりますが、こんな記事があります。
====================>引用開始
東京・丸の内の森綜合法律事務所(注:現・森・濱田松本法律事務所)。
18日、株式公開を控えたあるベンチャー企業の役員が集合した。
取締役会を開くためである。
顧問の小林啓文弁護士を交えて昼過ぎから深夜まで株式公開に向けた経営戦略を話し合った。
「自分から企業に出向くと拘束時間が長くなり、弁護士報酬の企業負担が重くなる」と小林弁護士。
顧問先企業のうち四社は法律事務所で取締役会を開く。
同弁護士の1時間あたりの報酬は平均4万5千円だ。
「小林弁護士はわが社の秘密兵器」。
ソフトバンクの孫正義社長もまた毎週1回、同弁護士と話し合う時間をとる。
不祥事への対応ではない。
経営戦略への助言を求めているのだ。
「私の仕事は経営者の夢を構想に置き換え、それを(実現可能な)計画におろすこと」。
小林弁護士の真骨頂は法律を積極的に武器として使う戦略法務だ。
「ビジネスモデル特許をとって競争相手を縛りつけよう」
「経済は常に法律に先行する。法律に書いていないことはやっていいことだ」。
過激にも聞こえるその発言に、企業経営者から「取締役に喝を入れてほしい」といった依頼が頻繁に舞い込んでいる。
以上、『第3部特権は誰のため(5)船団解体の兆し――競争に商機見いだす(司法経済は問う)』(日本経済新聞2000年1月31日朝刊) より
<====================引用終了
以上のとおり、天下(?)の森・濱田松本法律事務所のパートナーの著名な弁護士も、前記の前提見解に立って、サービスを提供されています。
結局、
「法律」という、
「加害者や小狡い人間に優しく、被害者や無垢なカタギに過酷で、意外とワルでロックでパンクで反体制的なヒール(悪役)」
に常識や理性や道徳や倫理を期待するのが土台無理な話です。
自衛策としては、
法をしっかり勉強し、あるいは
法をしっかり勉強した信頼できる弁護士をカネで雇い、
仕事やプロジェクトを進め上で生じるべきすべてのリスクを早期に発見・抽出・特定・具体化した上で、
「やってほしくないことややられたくないことを、あらかじめ、ミエル化、カタチ化、具体化、特定化、文書化、フォーマル化して、法律や取り決めや契約を作成するなり上書きして、リスクを制御する」
ということしかありません。
そんな資源動員ができるのは、一部の金持ちか企業であり、だからこそ、法は、常に、強きを助け、弱きを挫く、という残酷な帰結をもたらす現実となって無垢で無防備な一般庶民に襲いかかるのです。
こう考えても、やはり、
「げに恐ろしきは法律かな」
といえますね。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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