契約書の内容は、大まかに分類すると、
1 本体部分
2 一般条項
にわかれます。
1 契約書本体部分
契約書本体部分において行うべきことは、取引内容の特定と明確化です。
すなわち、契約当事者が互いに約束した義務の内容を、六何の原則(4W2H)にしたがって文書化していくことになります。
六何の原則(4W2H)とは
「何時、誰が、何処で、何を、どのようにして、どれだけの量(あるいは金額)、どうすべきか=When, Who, Where, What, How and How much」
という形で特定し、明確にしていくことです。
とはいえ、とかく物事をあいまいにしたがる日本人の気質が災いして、このような本質かつ単純な文書化作業を怠るケースが散見されます。
たとえば、
「乙は、甲に対して、今後甲が指定する乙取扱商品について、甲が求める数量を、適宜の時価にて、追って協議する日時までに、甲指定の場所に送付する」
という契約書をみかけることがあります。
六何の原則(4W2H)に照らすと、前記条項においては取引の中核部分は一切明確になっておらず、ごたごた書いているものの、
「結局、何も決まっていない」
ということしか書いていないことがわかります。
この六何の原則に基づかず、曖昧な契約書の有害性は、
「日本昔話型文書」
は法務文書としては使えないという形でお話します。
日本昔話の出だしは、
昔々、あるところに、じっさまとばっさまがおった・・・・・
と始まります。
しかし、このような叙述の文書を示されても、事実を判断認定する側からすると、
昔々、って何時のことやねん!
あるところ、って、お前、それどこのことやねん!
じっさま、ばっさま、って名前なんやねん! 名乗らんかい! わからへんやろ!
とツッコミ満載で、認定の道具としての証拠の価値はゼロと言わざるを得ません。
実務でも、甲(甲の子会社あるいは関連会社を含む)と乙(乙の親会社を含む)とは、乙の求めに応じ、別途定める品質の、甲が販売あるいは取り扱う商品について、別途両者が定める価格で、別途定める納期で、別途定める方法において、売買契約を別途締結し、当該売買を行うみたいな、
「日本昔話型契約書」
を見ることがあります。
そして、その後、何の文書もなく、取引がなし崩し的に進んでいき、やれ品質がおかしい、納期が割れた、価格が高い、デリバリーの方法がいい加減で途中で半分壊れた、と訴訟になり、この
「日本昔話型契約書」
を唯一の証拠として、お互いが仁義なき訴訟を延々続ける、という光景を目にすることがあります。
このように、こういういい加減な契約書を前提に取引をはじめると、たいていが大きなトラブルに見舞われることになります。
契約本体部分がうまく記載できないとすれば、それは言葉の問題ではなく、
「まだまだ取引条件の詰めが甘い」
ということですので、契約書を書く以前の問題として、きっちりと中身を詰めることが必要です。
契約自由の原則の派生原則たる契約内容決定の自由の原則に基づき、
「契約内容をどのようなものにするか」
という点について決まりや法則はありませんが、解釈をめぐって紛争にならないよう確定された合意内容が適切に表現され、紛争が生じて司法救済を受ける際にスムーズに自らの主張が裁判所に理解されるよう、要件事実論(法的三段論法を意識して、法規という大前提の下、どのような小前提を主張することが、所要の法的効果をスムーズに導くのが有益か、という民事訴訟実務上の理論)を意識した記載とすることが求められます。
なお、一般的なビジネス契約書には下記の
「一般的なビジネス契約書に盛り込む内容」
に列記した内容を盛り込むことが多いようです。
前述のとおり、契約自由の原則(契約内容決定の自由)が存在する関係で、ビジネス上のニーズに基づき創意工夫を凝らし、様々な権利義務や取引規律を作り出すことが可能です。
例えば、守秘義務契約、提携契約、継続的供給契約、代理店契約、フランチャイズ契約、技術ライセンス契約、技術指導契約、OEM契約、共同研究契約、開発委託契約、コンソーシアム契約、ジョイントベンチャー契約、経営委託などは、民商法には記載されていない契約(非典型契約)ですが、企業がビジネス上のニーズに基づいて創出し、普及するようになった契約モデルです。
契約書作成法務は、
「契約自由の原則からくる当事者の意思を契約書の形に残しておく」
ことの重要性に基づくことはもちろん、契約書を重視するグローバル・スタンダードに伍していく必要性からも重視されており、ジャパニーズ・クラシカル・スタイルではなく、アングロサクソン・スタイルに基づく合理的で明快な表現による紛争に強い体質のものが求められていることにも留意が必要です。
2 一般条項部分
契約書においては、取引毎に異なる取引条件を記載した部分のほか、どのような契約においても通常記載されるべき項目というものがあり、これは一般条項部分といわれます。
一般条項部分とは、具体的には、解除条項や賠償条項や管轄条項といったものであり、その内容がほぼ定型化されています。
したがって、1の契約書本体部分と違い、一般条項はいろんな書式やサンプルから拝借してしまえばある程度形を整えることが可能であり、“見た目の言語の難しさ”にビビりさえしなければ、誰でもできる作業です。
一見難しそうに見える契約書ですが、以上のとおり、通常の国語能力・文書能力で十分対応できるものです。
とはいえ、取引価額が高額な契約や、聞いたことのないような契約や複雑な契約については専門家の助言を得た方がいいかもしれません。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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