各国家が主権としての司法権をそれぞれ固有のものとして専有していますので、ある国家の司法機関の判決といっても、当該国家の内部では強制力を有するものの、他の国においては一切強制力をもちえない、ということになります。
例えば、日本の裁判所で、国の人間に対する民事上の債権について請求認容判決を得ても、その判決を用いて、別の国に存在する相手方の財産に対して強制執行をすることは、当然には認められません。
このような状況もあり、万が一国際取引において法的紛争が生じた場合、
・どの国の法律を用いて、
・どの国の司法機関で争い、
・仮に当方の国の判決を得たとして相手方の国でそれが執行できるか、
等、複雑で難解な紛争課題が多数出てくることになるのです。
以上のとおり、国際取引は量的・質的拡大する傾向にあるものの、一旦これが紛争に至ると、解決のための環境ないしインフラは実に貧弱であり、法務上の課題は山積している、というのが国際法務の現状です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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