00997_企業法務ケーススタディ(No.0317):脇甘グループにスキャンダル発生! 早速、週刊誌の取材が・・・

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2016年8月号(7月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」八十九の巻(第89回)「脇甘グループにスキャンダル発生! 早速、週刊誌の取材が・・・」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
写真週刊誌

脇甘グループにスキャンダル発生! 早速、週刊誌の取材が・・・
週刊誌が取材と称するFAXを送ってきましたが、社長は法務部長に、
「誤解されたなら、誤解されたこと自体を恥じ入るべき。
世間をお騒がせしたとしたら、それも含めてトップたる脇甘の不徳の致すところと考え、遺憾に存じますとか何とか書いておけ。
それと、過去の話については、すべて認めて謝っとけ。
相手も立派な報道機関、惻隠の情もあるじゃろ。
あとは、自ずと理解される」
と、誠心誠意対応するように言いつけました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:つまらない真実より、刺激的でワクワクさせる「ストーリー」が独り歩きする危険
事件や醜聞などを報道するとき、十分確認されていない内容を、あたかも確実な事実であるかのような装いをもって報道をしたり、編集の過程で誇張して報道したりすることを通じて、報道対象となった者の名誉や声望、社会的・経済的信用等を破壊してしまうような
「報道被害」
という事象が、近年、浮上してきました。
報道には、
「国民の知る権利に奉仕する、高い社会的役割と意義」
という光の面もありますが、
「ときに暴走し、被害者を作り出し、被害者の生活や社会的地位を根底から破壊する」
という
「暴力的な側面、ダークサイド 」
もあり得る、ということを理解しておくべきです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「見立て取材手法」による報道被害の実例
厚生労働省の女性局長らが関与したとして起訴され、後に無罪となり、逆に、捜査担当検事らが罪に問われる、という特異な経緯で有名になった
「郵便不正事件」
に関する取材、報道の在り方では、裁判では、記事内容の真実性に加え、
「記事が真実でなかったのであれば、この誤報について、担当記者としてどのような取材を行って、当該記事に記載された事実を真実と誤信するに至ったのか」
という部分が争点となりました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:「見立て取材によって、おもしろおかしく事実を歪曲されそうな危険」は早めに察知し、迅速・適切に対応すべき
前述の原告勝訴は、多大な時間とエネルギーとコストをかけ、また、報道機関との熾烈な法廷闘争の末、ようやく手にできた結果に過ぎません。
時間やエネルギーをかけることができず、あるいは法廷闘争に失敗し、誤解されたたまま報道被害が回復できず、世間から見放され醜聞まみれとなって社会的生命が失われた方も少なからず実在します。
上場企業ともなると、当該企業に関わる利害関係者は実に幅広く、たとえ誤解に基づくものであれ、一時的なものであれ、経済的信用や社会的信用に悪影響が出ると、その損害は、想像を絶するほど広範に拡大していきます。

助言のポイント
1.企業の経済的信用や社会的信用や社会的信用は、一度破壊されると、回復に多大な時間と労力が必要となるし、回復できない場合もある。レピュテーション・マネジメントを甘く、軽く、見ることのないように。
2.「天網恢恢疎にして漏らさず。誤解は、やがて解ける」といった楽観的な考えは禁物。たとえ、誤解であっても、関係ない過去の不祥事も援用され、バッシングが始まる危険もある。「醜聞」は発見されるだけでなく、創作されたり、誇張されたり、歪曲されたりして、制御不能になるタイプのものもあるから、注意しよう。
3.「見立て取材」の放置や適当な対応は禁物。誤解は糺し、無関係な話の援用は牽制をかけ、時間的冗長性を確保し、相手のストーリーに嵌められないよう、徹底して防御しよう。
4.あまりに酷い誤解がばらまかれそうであれば、フォーマルなリリース文を作って、「対抗言論」として、きちんと反論し、反撃しておくこと。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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