2010年12月末から2011年1月にかけて社会問題化した、いわゆる
「共同クーポンビジネスと提携した宅配おせち料理事件」
があります。
これは、
「2万円」
という定価実績が全くないおせち料理を、共同クーポンシステム運営会社のインターネット上の広告を通じ、
「定価2万円のところを1万円で特別販売」
と銘打って予約販売したところ、運営会社側の
「ここは一挙に知名度をあげましょう。大量のクーポンを発行して集客するので、ガンガン作って売ってください」
という要請を受け、その結果、対応しきれない大量注文を受けてしまったため、告知していた高級食材が調達できず、国産鴨肉をフランス産鴨と偽り、鹿児島の豚肉をイベリコ豚と偽ったりして、広告とはほど遠い内容のおせち料理を作り、販売してしまったという事件です。
当初大晦日までには届けられるはずのおせちが届いたのは正月を過ぎてから、といったトラブルが発生し、また、
「届いたおせちの中には、調理後の保管状態に問題があったせいか、相当痛んでいたものも混じっていた」
ということもネット上で取り上げられこともあって、大きな事件に発展していきました。
この事件は、年末年始という目立った話題のない時期において、インターネット上の掲示板やブログなどを通じて広まり、海外メディアにも取り上げられるなど、センセーショナルなニュースとなり、おせちを販売した企業に加え、クーポンを提供する形で協力していた立場の共同クーポンシステム運営会社の企業価値は、短期間に、かつ劇的に破壊されていきました。
この事件は、単に、広告内容とは違うおせち料理が届いた、という出来事に留まらず、以後、消費者庁や保健所による調査を誘発し、またおせち販売会社の代表者が辞任を迫られるなど、企業法務に関する様々な問題が同時多発的に発生し、当事者たる企業に対応不能な混乱をもたらす結果となりました。
このように、企業がインターネット上のトラブルに遭遇した場合、企業活動に関連して同時かつ多発的に発生する各企業法務課題(前述の共同クーポン提供によるおせち料理宅配にまつわるトラブル事例の場合、モノの製造における品質偽装の問題、モノの品質管理の問題、営業における表示の問題、契約上の問題として詐欺や錯誤の問題、さらには定期行為としての解除の問題等)を効果的に予測して、的確に課題対応して、危機の拡散を防ぐことが必要になります。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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