法務担当者が担うべき対処課題、すなわち、法務安全保障や事件対応や有事(存立危機事態)対処は、いずれも広い意味でのリスク管理(リスクマネジメント)と呼ばれる活動領域のものです。
リスク管理については、とにかく、何か動いたり、対応したりすることを考えがちですが、
「見えない敵は討てない」
という格言どおり、闇雲に走ったり動いたりしても無駄かつ無意味かつ無益であり、どんなリスクであれ、リスク管理の基本かつ重要な挙動は、リスクの発見と特定です。
例えば、
「病気の治療」
というプロジェクトを考えてみましょう。
病気に関わる多くの医者(外科医を除く)がやっているのは、病気を治すことではありません。
病気を治すのは、薬であり、薬剤師です。
医者がやっているのは、病気を発見し、特定する作業です。
患者が高熱を発している。
これに対して医者がまずやるべきは、効きそうな薬を適当に、手当り次第に投薬することではありません。
当該高熱が、
・風邪によるものなのか、
・エボラ出血熱か、
・インフルエンザか、
・新型コロナウィルスによるものか
・仮に、インフルエンザとして、何型か、
といったことを、課題として具体的に発見・抽出・特定することが何よりの先決課題です。
そして、
「病気を治すわけでもなく、病気を発見特定する程度のことしかできない医者」風情
が
「実際病気を治す薬剤師」
より大きな顔をしていることからも理解できますが、課題を発見・抽出・特定するのは、課題を処理するよりも、実は、非常に重要で高度な知的でリスペクトされるべき業務なのです。
企業内に常時在籍する法務担当者が、顧問弁護士等社外の法律専門家と決定に違うのは、この
「リスクの発見と特定」
においてもっとも近接する環境を保持している、ということです。
そして、
「法務リスクの発見と特定」
がリスク管理上重要であることは前述のとおりです。
法務担当者に期待されているのは、法務安全保障の責任者として、社内における法務リスクの迅速な発見と特定です。
そして、発見され、特定されたリスクについて、顧問弁護士等の社外資源を、効率的かつ迅速に調達動員して、適切な外注管理という
「法務活動」
を展開して、コスト・品質・納期・使い勝手の面で、最適なリスク処理を実現し、あるいは、社内の担当者として、この外注作業が効率化するように支援することです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
✓当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ:
✓当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ:
✓当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ:
企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所