01667_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(10)_「外注管理部署としての法務部」として実装すべき外注心得

外注は恥でもないし、役に立ちます。

外注すると決めたら、自分たちがやるべきことだけに集中し、外注できること、外注すべきことは、とことん外注しましょう。

ただ、気をつけなければならないのは、
「(外注管理という営みを前提とする)外注」

「丸投げ」
は違います。

では、
「(外注管理という営みを前提とする)外注」
を仕事として全うするためには、どういう心得をもち、どんなことに注意をしておくべきでしょうか?

・ 不安になりましょう。
・ 危険を感じましょう。
・ 危険を感じたら、危険を発見し、具体化・特定化しましょう。
・ 具体化・特定化された危険は、適切な対応力あるプロに任されば、どんな危険でも、必ず、何らかの対応可能です。
・ 経験もないのに、「オレはできる。オレがこの危険を処理して、会社を救ったスーパーヒーローとして、皆の喝采を浴びてやる」という考えは危険です。
・「社会人の仕事」と「学生の勉強や試験」との最大の違いは、社会人が仕事を進める場合、学生の勉強や試験と違って「カンニングや替え玉受験やレポート代筆等がすべてOK」という点です。
・すなわち、学生時代においては、勉強や調べ物や宿題やレポートはすべて自力でやり遂げるべきものであり、「家庭教師にカネを払って代わりにやってもらう」などということは言語道断であり、また、試験でカンニングしたり、替え玉に受験させたりするのは、犯罪行為とされます。
しかしながら、社会人が仕事を進める上では、「『自分たちだけでやり遂げる』ことにこだわり、ロクに知識もない素人が何ヶ月かけてグズグズ議論する」という方が給料の無駄であり、会社にとって有害です。
・むしろ、迅速かつ適価にて、外部のプロから必要な資源を調達することこそが仕事のあり方として求められます。

法務部や総務部に配属される方は、どちらかというと生真面目な試験秀才タイプが多く、
「“仕事”と“お勉強”の違いがわかっておらず、法務リスク管理という純ビジネス課題を学究課題と勘違いし、時間がかかっても自力で調査する」
という無駄で非効率な方向性に向かいがちです。

無論、自力で正しい解決に辿りつければいいのですが、情報や経験の不足から、方向性を誤り、
「時間をかけた挙句、仕切りをミスって、会社に大きな迷惑を被らせる」
という悲惨なチョンボをしでかすこともままあります。

この点、
00679_法務外注の基本思想:「社会人の仕事」と「学生の勉強や試験」との最大の違いは、社会人が仕事を進める場合、学生の勉強や試験と違って「カンニングや替え玉受験やレポート代筆等がすべてOK」という点
に、述べています。

・ 法務リスク管理というお仕事、すなわち、
「法令に関する専門的知見に基づき、発見特定されたリスクをうまいこと処理して、大事にならないように仕切る」
という課題処理は、要するに、
「弁護士その他の専門家という“外注業者”をいかに上手に、適価で使い倒すか」
という点がポイントになります。
無論、最終的な社内ジャッジをする際には法務部等の社員プロパーの仕事になるとしても、ジャッジに至るまでの大部分の情報は外注処理で賄えば足りる話です。

・  バカもハサミも弁護士も使いようです。
「学生時代の勉強のように、カンニングや替え玉受験なしで、自力でなんとかしなければ」
と考えて無駄なストレスを抱え込むことなく、外注業者をうまく使いこなすことにより、ラクに、楽しくこなせる仕事にすることができるのです。

・ そのためには、予算と要員配置の権限をもっている経営者とうまくコミュニケーションしましょう。
法務リタラシーを改善してあげましょう。

なお経営者に法務上の提言を行い、法務リテラシー改善し、必要な法務プロジェクト実施に向けた資源動員意思決定を誘導するに際して、機能的非識字状態にある経営陣に対して、法的に高度な概念をそのままぶつけたりすることは、
「象形文字」
とか、誰も理解できないどこか遠くの国の部族のコトバを、咀嚼をせず、そのまま披瀝するのと同様に、経営陣の忌避と反感を買うだけです。

経営者に法務プレゼンをする際、プレイン・ランゲージ(平たい言葉)で、咀嚼して、会話の水準を思いっきり下げて、優しく誘導して差し上げましょう。

さらに、その種のリタラシー改善や役員の方々にうまいこと説明をしてこの課題を前に進めたい、というときには、手伝ってくれる弁護士(プロジェクト実施にもっていける、話のうまい弁護士)を常に複数リソースとして確保しておきましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです