01754_法定文書の法定保存年限管理

企業活動を展開する中で、実に様々な文書が発生します。

メモや走り書きの類から、定款や株主総会議事録のような重要文書まで、その重要性も様々ですが、管理上頭を悩ませるのは、保存期間の管理です。

もちろん、無限の保管スペースがあれば、文書という文書をすべからく管理しておけばいいのですが、企業活動から生じる尋常ではないボリュームの文書のすべてを管理するとなると、莫大な資源が必要になりますし、現実的ではありません。

また、スキャンをして、電子媒体の形で管理しておけばいいのでは? というアイデアも出てきそうです。

しかし、行政手続上の課題対処の文脈においては、法定保存年限が決められている文書は原本管理が原則であり、スキャンした電子データだけでは、法令に抵触するリスクが生じます。

また、司法手続上の課題対処の文脈においても、同様であり、裁判になった場合、証拠として提出する際、原本提示が求められます。

その意味では、行政手続上の課題対処の文脈においては法定保存年限を把握して当該年限管理をして各種法定文書を保存しておくべき必要があり、また、司法手続上の対処の文脈においては訴訟リスクが時効によって消え去るまで
「自らの立場を正当性を証明する文書」
については証拠となる原本を保存する必要があります。

1 法令で法定保存年限が定められている文書についての法令遵守上求められる文書保存年限管理

まず、行政対処上の文脈においては法定保存年限を把握して当該年限管理をして各種法定文書を保存しておくべき場合についてです。

1)企業統治に関わる法定保存文書の保存年限管理

企業統治に関わる法定保存文書の保存年限について言えば、定款や株主名簿等については、特段法律の定めはないものの、永年保存(永久保管)が求められるものと、解されているようです。

たまに、原始定款を紛失した、捨てた、という企業があり、上場する段階になって大慌てすることがあります。

何ともみっともない話であり、そんな管理がお粗末な会社を上場させていいのか、という問題はありますが、救済手法もあるにはあります。

2)労務マネジメント関係の法定保存文書の保存年限管理

労務マネジメント関係の法定保存文書の保存年限管理ですが、労働組合との協定書については、特段法律の定めはないものの、永年保存(永久保管)が求められるものと、解されているようです。

また、クロム酸等の空気中における濃度の定期測定記録についても、特定化学物質障害予防規則36条の2第3項により、30年間保存が義務付けられているほか、労働安全衛生上の文書保存期間は相当長期に及びます。

3)経理・税務関係の法定保存文書の保存年限管理

経理・税務関係の法定保存文書については、長いものでいえば、例えば、
(1)計算書類及び附属明細書(貸借対照表、損益計算書等)は、会社法435条により、作成したときから10年間保存が、
(2)会計帳簿及び事業に関する重要書類(総勘定元帳、各種補助簿等)については、会社法432条により、帳簿閉鎖から10年間保存が、
それぞれ義務付けられています。

3 訴訟リスクを前提とした文書の保存年限管理

訴訟リスクを前提とした文書の保存年限ですが、これは、時効と関連します。

民法改正によって、債権の消滅時効制度においては、消滅時効期間は、原則として主観的起算点(債権者が権利を行使することができることを知った時)から5年又は客観的起算点(権利を行使することができる時)から10年のいずれか早い方とされました。

また、不法行為の消滅時効は、最長で行為のときから20年とされています。

以上を前提とすると、取引関係文書については最低10年、対外的・社会的な影響を及ぼしうる企業活動の記録は最低20年は保存しておくべきことが推奨されます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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