有事になると、弁護士は、以下のように事項を因数分解し、戦略を練る準備をすすめていきます。
1 戦略立案環境
1)コミュニケーション環境
(1)電子メール
(2)携帯電話
(3)FAX
2)情報環境(状況認知・観察)
3)思考環境(論理則や経験則やリテラシーの実装)
(1)法的三段論法
・大前提:規範特定(法律にはこう書いてある)
・小前提:事実ないし状況の特定(5W2H、ハウマッチ、ハウメニーという量的な特定を含む)
・あてはめ:ズレを手当・修正することを含む
・結論
(2)捜査・行政・司法など権力の動かし方
・大前提として、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化をしないと、一切取り合わない
・次に問題となるのは、文書の中身と方向性
・・ロゴス(論理=法的三段論法)
・・パトス(情緒)
・・エトス(信頼=証拠、反論想定と反論処理)
(3)文明社会のルール
・他者を誹謗中傷するには、動かぬ証拠(エトス〔信頼=証拠、反論想定と反論処理〕)が絶対必要
・動かぬ証拠がないにも関わらず、他者を誹謗中傷すると、誹謗中傷した人間が犯罪者になる
・どんなにヒドイことをされても動かぬ証拠がなければ泣き寝入り
・動かぬ痕跡さえ残さなければ、やりたい放題が許容される
4)状況分析(状況の評価・解釈・展開予測)と作戦計画立案の検討・協議の場
2 具体的方法論
0)クライアントから相談された案件
・弁護士の見解
・その根拠1、2・・・
・さらに、「案件の手前」のミスやエラーや過ちをすべて、番号をふって、あんなやましいこと、こんなあくどいこと、という形で、整理して弁護士に伝える
→そこから、弁護士が法的三段論法を使って、どうやって攻撃できるかを検討
1)作戦目標(現実的で、相手方も納得可能な着地点・落とし所)
・パーフェクトゲーム(役所に転居届出を出すように、書類を出せば、すべて司法権力や捜査権力が思い通りに動いて処理してくれる)は不可能
・ゲームに完全に勝とうとすると、負けて生き地獄を見る
・ゲームに勝つには、勝てるゲームの姿をデザインする(ゴールデザイン=現実的な作戦目標・着地点=落とし所)
・現実的な作戦目標を目指して、勝ちにこだわるのではなく、(ゲームを楽しむぐらいの余裕をもって)プロセスを全うする
・現実的なゴールデザイン
2)方法論(対話と圧力を使いこなすことで、満足する結果に近づくか遠ざかるか、というところ)
・「対話と圧力を使いこなす」=そんなに簡単なものではない
・「対話」とは、他人と天気の話をするのではなく、ゲームとしての外交。誰をプレーヤーにして、どういうロジックでゲームをすすめるか、という知的な構築が必要。言いなりになるわけではなく、かといって、喧嘩するわけでもなく。バレるようなウソはつかないが、本当のことは決して言わない
・「圧力」とは、訴訟となるだろうが、勝つための訴訟と、圧力としての訴訟は違う。後者は、手数とスピードが勝負。形勢不利とみたら、とっととやめる。こういう訴訟スタイルを取れる弁護士は、1%以下。弁護士は、訴訟=勝つためにやる、じっくりやる、腰を据えてやる(勝つためにやっても、じっくりやっても、腰を据えてやっても負けるときは負ける)、という先入観に支配されている
3)対話環境の構築
(1)カウンターパート(対話窓口)の設営
・プレーヤーをどう性格付け(立ち位置)して、どういう目的を与えて、どう動いてもらうか?
・相手の見え方
・バイアスチェック・ストレステスト
(2)カウンターパート(対話窓口)からの情報発信デザイン
・一言一句事前に準備して、場合によってはリハーサルをして、交渉を制御する
・この営みをしかるべく、疎漏なく実施するには、弁護士とクライアント、双方の報・連・相(会議や連絡協議の場も必要)と、その前提としての管理資源、事務資源(状況のミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化を行う資源)、知的資源が必要
4)圧力手段の抽出と選択
圧力手段4種類
(1)刑事責任
(2)行政処分
(3)民事責任
(4)社会的責任
・相手の行いを「5W2Hの要素を含めて」整理して、証拠を添えて、メモにしてまとめる(いくつあってもいい)
・それから、上記の4つのうち、どれに使えるかを考える
・考えたら、圧力として実践する
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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