オーナー経営者が、老いを意識したり病気になったりすると、
「事業承継」
を口にします。
ところが、ほとんどのオーナー経営者の言動をみるかぎり、本音は、
「事業承継」
ではなく、
「院政を敷くこと」
です。
「事業承継」
とは、
「会社の譲渡」や「経営の移管」
であり、
「院政を敷くこと」
とは異なります。
文字通り、手放した後の会社については、意識から追いやることが素直かつ自然です。
一方で、
「院政を敷くこと」
は
「経営を委ねるが、委ねた先が変なことや愚かなことをしないかきちんと見定める」
ことです。
たとえば、使っていた家や車を、中古市場で、売却した後、売主が、買主のところにやってきて、
「買主が家や車をどのように使っているか」
ということを確認し、逐一ダメ出しする、という事態を想定してください。
それは、
「譲渡」
ではなく、
「手放す気などサラサラなく、手元に置いているのと変わりない」
という話になります。
さて、一般論でいいますと、老いたり病気になったオーナー経営者は、
・経営権を保持する
↓
・院政を敷く
↓
・院政によるリモート支配をしつつ、後継候補を「自分のコピー」のように人格改造する
↓
・人格改造が終わっても、院政を続ける(裏切ったりすることがあるので、監視期間を置く)
↓
・たいてい、後継候補者に裏切られる
↓
・裏切られたら、また、別の後継候補の人格改造を始める
↓
・死ぬ3秒前まで院政を続ける
↓
・死んでから、ようやく院政をやめる(というか、続けられなくなって院政が終了する)
という営みをトライします。
そうこうするうちに、会社は劣化し、後継候補者が次々に脱落し、にっちもさっちもいかなくなり、会社を売りに出す(たいてい足元をみられて二束三文で買い叩かれる)ことになる、というのが、
「事業承継」
の本当の姿です。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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