企業を誹謗中傷する書込みがなされた場合、多くの企業は、即座に当該書込みを削除できる方法を検討するものと思われます。
しかしながら、書込みを保存しているサーバなどに侵入し(ハッキングし)て、当該書込みを削除するという違法な方法を除き、書込みを即座に削除する司法手続は存在しません。
そこで、鈍速な司法手続によらず、かつ違法な手段にもよらずに、即座に、しかも容易に削除する方法を探すべく、多くの企業は、インターネットなどを用いて、書込みを削除できる方法を考えるものと思われます。
実際に、インターネットを利用し、
「ネット」「誹謗中傷」「書込み」「削除」
などといったキーワードを組み合わせて検索すれば、時事ニュースの記事などを除き、
「誹謗中傷書込みを直ちに削除します!」
「誹謗中傷対策は○○○へ」
「風評被害対策サービス」
「ネット書込み削除は任せてください」
といったウェブサイトが相当数ヒットします。
もちろん、これらウェブサイトを運営する民間会社が提供するサービスも、中には安価でコストパフォーマンスが良いものもあり、これらのサービスを利用することで、実際に書込みの削除に成功した企業もたくさんありますし、これらのサービスの利用を否定するものでは決してありません。
ここで、1つ問題提起をするならば、書込みの削除に成功したことをもって
「インターネットを利用した攻撃」
に対する抜本的解決に至ったと判断することができるかどうかです。
書込みの原因となった事実関係(すなわち、書込み対象となった企業関係者にまつわる事実関係)が変わらず、さらには、書込みを行った者が野放しのままである以上、
「高い匿名性」
という特徴を有する
「インターネットを利用した攻撃」
においては、同様の書込みは何度も継続することが想定されますし、そもそも、
「次はどの掲示板に書込まれるか」
等といったことは皆目検討もつきませんので、その場合はまた1から上記プロセスをやり直すということになります。
そこで、
「インターネットを利用した攻撃」
への対応策を策定する際の基本姿勢としては、このようなネットトラブルの特性を見越した戦略的対応を構築する必要があります。
具体的には、事前の防衛策として、
1 ビジネスの設計・企画段階における戦略的対応(実験的なコンシューマー製品を提供する際、OEM提供にするなどして、誹謗中傷に晒されないポジショニングによる事業展開を構築するなどの対応)
2 ビジネスの構築・運営段階における戦略的対応(セールスクレームが想定されるような営業を展開する事業においては、総販売代理店に営業を全て委託する形の事業構築を行い、クレームを受けるリスクを回避するといった対応)
事後の対応策として、
1 書込みを行った者の特定
2 効果的な手続の選択
3 書込みの原因となった事実関係(すなわち、書込み対象となった企業関係者にまつわる事実関係)の改善・除去(例えば、クレームの対象となった欠陥箇所を改善し、これをプレスリリースしてネットトラブルの根本原因を解消する対応)
といった形で適切な解決策を構築していくことになります。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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