01603_企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト(6)_海外進出に成功する企業の手法その2_「『海外進出』という難事を成し遂げるリーダー」が遂行すべきタスクデザイン

「海外進出に成功する企業」
は、まず、非常にシビアな功利的メンタリティーにもとづいて
「エゲツナイまでに経済合理性に適った進出目的」
を設定・構築し、次に、
「当該目的(それこそ、平等な国際社会や差別なき世界の実現を目指すようなヒューマニストが聞いたら、その場で卒倒しそうな、エグいまでに経済合理性を徹底した進出目的)をしびれるくらい、リアルに、明確に、理解したリーダー(責任者)」
を発掘・登用し、加えて、当該リーダー(責任者)に対して
「圧倒的な士気と責任感」
を抱かせるとともに、このような
「圧倒的な士気と責任感」
を支える
「鼻血が出るほど魅力的なインセンティブ」
を整備して、
徹底的に、情け容赦なく、目的を最短時間で無駄なく効率的に達成する活動を展開します。

このような
「目的優先、綺麗事や能書きは後回し」
ともいえる、リアリティスティックな行動スタイルが、進出成功の鍵となっているものと推察されます。

そのためには、
「非常にシビアな功利的メンタリティーに基づいて設定・構築された、エゲツナイまでに経済合理性に適った進出目的(それこそ、平等な国際社会や差別なき世界の実現を目指すようなヒューマニストが聞いたら、その場で卒倒しそうな、エグいまでに経済合理性を徹底した進出目的)をしびれるくらい、リアルに、明確に、理解したリーダー(責任者)」
という人材のスペックを明確にして、当該人材を発掘し、登用しなければなりません。

では、このような
「海外進出を任せるに足るリーダー(責任者)」
のスペックとは、どのようなものでしょうか。

まず、
「海外進出を任せるに足るリーダー(責任者)」
のスペックを議論する前提として、当該リーダー(責任者)をタスクデザインを明らかにする必要があります。

(「海外の国や人々や各団体と仲良くなって、国際交流する」などといった活動とは真逆の、)「国内事業展開より数倍、数十倍困難な海外進出を経済的に成功させる」
ためのタスクを、(4半世紀ほどにしかならない私の拙い実務家経験を基礎に)合理的に設計してみますと、

1 現地の人間になめられないような制度やカルチャーを現地法人に浸透させ、確立する
2 強烈な強制の契機をはらんだ圧倒的なオーラを醸し出し、徹底して高圧的な支配を実行する(とはいえ、植民地時代ではないので、支配的な要素はおくびにも出さないように努め、極めてジェントルかつエレガントに、スマートな形で実効的支配を展開する)
3 俗悪・無作法・怠惰を許さない、徹底した管理を敷く
4 客観的基準と合理的観察によるエゲつない能力差別を行ない、論功行賞を明確に実施し、ルール違反者に対する過酷な懲罰を徹底して行う
5 独禁法を愚弄する精神で、競争者の存在を否定し、あるいは新規参入の目を容赦なく摘む形で、市場を迅速かつ圧倒的に支配する(つもりで頑張る。実際は法令には触れないように細心の注意を払う)
6 このような市場支配(を目指した、法に触れない経済活動)を、大量のカネ、物量を背景に、高圧的に、スピーディーに、SMART基準にしたがって、効率性を徹底追求して行う

というものになろうかと考えられます(もちろん、コンプライアンスは無視ないし軽視できませんので、諸外国の法令を含めたあらゆる法令に違反ないし抵触しないよう、細心の注意を払うべきことは大前提となります)

初出:『筆鋒鋭利』No.100-2、「ポリスマガジン」誌、2015年12月号(2015年12月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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