01751_ネット上やSNS上に、自社商品やサービスに悪い評価を掲載されましたが、何か対抗策はありますか?

日本には表現の自由が保障されております(憲法21条)ので、見解や意見を表明することは自由です。

ネット上の悪評価も表明された見解ないし意見の1つであり、これも表現の自由として法的に保護されています。

他者を褒めるような表現であれば、何も、憲法でわざわざ人権で保障する意味は乏しいです。

むしろ、憲法で保障される意味があるのは、他者を貶す表現であり、自由に、悪口をいい、批判し、非難し、disるような社会体制を保障するところに、自由主義国家たる我が国の憲法の使命がある、という言い方もできます。

独裁者が専制的に支配する全体主義国家であれば、トップや政治体制を非難したり、悪口をいったり、貶したり、揶揄したりすることは許されません(トップや政治体制を褒めたり、持ち上げたりする自由はあるでしょうが)。

他方で、わが国では、首相は無能だ、あの大臣はバカだ、あの政党の党首は世間知らずだ、この内閣はいい加減総辞職した方が、あの不倫したゲス政治家は議員辞職するべきだ、ということを自由に表現できます。

そして、そのような、公然とトップや政治体制を非難し、批判し、貶し、disり、罵詈雑言を言い放つことが出来る、という表現環境そのものが、わが国の自由な政治体制を支えています。

以上からして、我が国の法的環境として、他者の悪口を言ったりするものであっても、表現行為として、原則として強く保障され、例外的に、他者の人権を明確かつ具体的に損害を与える場合に限定されて、当該表現行為が極稀に法的責任を生じる、というものとして整理されます。

したがって、
「悪い評価」
の内容や根拠やマナー、トーンにもよりますが、単に悪口を言われたからといって、すぐに法的問題として対処可能とは考えられず、むしろ、多くの場合、法的には許容範囲となります。

他方で、企業側も表現の自由を有しており、当該自由ないし権利に基づき対抗言論によって、事態を打開することは可能です。

すなわち、企業ホームページ等で適切な事実を公表し、反論を加える対抗言論という方法が費用、広報戦略の観点から適切です。

なお、対抗言論を行う場合には、泥試合にしないよう、格段の注意を払って、カウンターリリースプロジェクトを企画・構築・実践しなければなりません。

すなわち、
「素手で殴られたらナイフで応戦、ナイフで斬りかかれたら銃で応戦、銃には戦車で応戦、地上戦を挑まれたら空中戦で、空中戦を挑まれたら宇宙戦で」
というものであり、
「同じ土俵に立たず、高位の次元から、圧倒的なパワーで封殺する」
ということが肝要です。

ただ、明らかに虚偽の事実や、受忍限度を超えた誹謗中傷等があり、違法性が顕著な場合、プロバイダ責任法3条2項2号では一定の要件のもと、プロバイダ等に情報の送信を防止するための措置を認めています。

また、プロバイダ等は独自の規約を設けていて、通常規約に違反するコンテンツを削除する権利を明記しているので、当該規約を根拠とした削除要求が考えられます。

なお、プロバイダ等が削除要求に応じない場合には裁判によるほかありませんが、ネット上の権利侵害はログ(ネット上の書き込みの記録)の保存期間が3か月から6か月程度といわれており、ログの保全や開示の仮処分命令の申立てもあわせて行うことになります

裁判で書き込みの削除を請求することもでき、名誉を棄損するホームページやその記載の内容を削除する条理上の義務を認めた裁判例もあります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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