法務部が行う文書管理業務(ドキュメンテーション)としては、
文書起案(ドラフティング)、
文書閲読(レビュー)
文書校正(リバイズ)
文書完成・印紙貼付・調印(ファイナライズ)
文書編綴(ファイリング)、
文書保管・管理、
文書開示要求への対処、
文書探索(マイニング)
文書利用・証拠提出・返還処理、
文書廃棄、
といった各作業を意味します。
「文書」
には、契約書や議事録といった重要文書や法定文書もあれば、社内の情報共有や意思決定のプロセスを示す内部文書等もあります。
文書管理、というと、頭を使わないルーティン的な意味合いで捉えられ、価値がなく、誰でもできる、陳腐な作業と思われがちです。
しかしながら、文書管理は、法務活動の中心といえるくらい決定的な重要性をもちます。
といいますのは、現代の法的紛争や闘争は、全て文書と書面の証拠によって展開される、
「筆談戦」
「文書作成競争」
という様相を呈しています。
他方で、文書の作成、閲読、管理といった文書のハンドリングにまつわる管理作業は、日本人のもっとも苦手な分野です。
結果、 多くの企業では、
- 内容デタラメ、体裁いい加減、5W2H欠如、肝心な要素が欠落した「日本昔話」型法務文書(「昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがいた」というような、何時のことか、何処のことか、氏名は何か、といった重要な要素がすべて欠落した、無価値で証明力のない文書)
- 保存期間適当といい加減な廃棄ルール
- 文書相互間に一貫性・合理的関連性欠如
- そもそも文書の中身は誰も気にしておらず、曖昧な記憶だけが頼りで事業や取引を運用
- 文書管理に、きちんとした資源(ヒト、モノ、カネ、ノウハウ)を動員せず、我流で適当に処理している
という惨状が横行します。
問題が起こる企業や破綻する企業は、文書作成の水準が致命的に低く、管理が壊滅的にできていません。
ちなみに、日本の組織や企業を含め、最高レベルの文書管理技術を誇っているのは、中央官庁役所であり、企業では銀行です。
銀行と役所には裁判で勝てない、などと言われますが、中央官庁や銀行が裁判でほぼ無敗の強さを誇っているのは、文書管理の精度・練度とは無縁ではありません。
そして、文書管理の精度・練度の背景には、官庁なり銀行が、文書管理という、一見陳腐で無価値な管理活動が、非常に意義と価値と有用性があり、組織の存続や事業継続に必須の前提を構成する重要タスクであり、相当な資源動員を行っても達成すべき課題と理解していることにあります。
官庁の人事配置戦略をいいますと、採用時点において国家公務員総合職首席の人間は、どのような部署に配属されるか、にあらわれています。
例えば、最強官庁といわれる財務省において、国家公務員総合職試験トップの新人が配置されるのは、主計局でも主税局でもありません。
この新人は、文書管理の中枢である、大事官房秘書課や文書課に配属されます。
要するに、財務省は、トップランクの新人を配置するほどの重要セクションが、文書管理業務を担う部署、ということであり、それほどまでに文書管理を重要視しているのです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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