長らく訴訟弁護士の間で語り継がれている書面作成原則として著名なものに、
「10頁の原則」
というものが存在します。
裁判所への提出書面というと難解な長文というイメージがあるかもしれませんが、実際には
「裁判官をウンザリさせず、言い分を適切に理解してもらうための、適度な分量」
というのが存在します。
この
「適度な文書ボリューム」
とは、おおむね裁判所提出用の推奨書式に基づき作成された書面で10頁と言われています。
ちなみにこの
「裁判所提出用の推奨書式」
にいう
「1頁」
とは、
A4横書き・12ポイントの文字で37文字×26行=962文字
を指します。
事件の当事者からすると言いたい事は山ほどあるのでしょうが、通常の訴訟であればだいたい10頁(だいたい1万文字)もあれば相当な情報量になるはずです。
逆に10頁以上の書面書くと裁判官が読んでくれない(読んだとしても、ポイントを絞りきれず、認識が希薄になる)可能性が出てきます。
実際、筆者が体験したある事件で、事件の引き延ばしを図る相手方が300頁にわたる書面を提出し
「これに反論してみろ」
と威嚇的に要求してきたことがありましたが、この事件の裁判長は
「ま、過ぎたるは及ばざるが如し、等といいますから、あまり量が多いと、私たちが理解できないことがありますよ」
と笑いながら相手方代理人を窘(たしな)めていました(なかなかユーモアセンスのある裁判官です)。
むろん、高度な専門性をもつ医療訴訟や知的財産権訴訟、複雑な会計上の議論等を含む商事紛争は、10頁に収めるのは不可能ですし、当然例外もあります。
とはいえ、裁判所に提出する文書は、簡にして要を得た体裁とし、どんなに複雑な事象説明でも、提出書面1通につき、10頁以内に収めることが推奨されます。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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