調達・製造法務において、調達対象たる
「モノ」
に関し、一定のスペック・品質・性能等を調達先に保証させる場合があります。
例えば、工作部品を購入するにあたって一定の強度や耐性を保証させたり、食品材料の購入にあたり特定の原産地で産出されたことを保証させたり、添加物が適法なものであることを保証させたり、という取扱いです。
その際、一定の保証条項や禁止条項を契約書に記載するだけでは、いざ損害賠償の段になった場合、被害者たる委託者側において契約違反によって生じた損害立証の負担を負わなければなりません。
特に、消費者向け商品等を外部から調達して販売する事業で、販売品に表示上の偽装があった場合、報道機関対策、謝罪広告、リコール対策、株価の急落等、販売した企業に大きな損害が発生するにもかかわらず、調達先に賠償請求するに際して、損害の発生及び額を逐一立証する手間を取らされることはいかにも不公平です。
もちろん、契約違反の事実が立証されても、損害についての立証に失敗すれば所定の賠償がなされないこともあります。
2008年9月12日、中部電力は、浜岡原発5号機(静岡県御前崎市)のタービン事故に関して、同原発の運転を停止していた期間の電力を補うために割高な火力発電所を稼働させたことなどで生じた
「逸失利益」
等合計418億円の賠償を求めて、タービン製造元の日立製作所を被告として、東京地方裁判所に提訴しました。
一般に原発建設では
「逸失利益」
の規定は契約に盛り込んでいなかったところ、このようなあいまいな契約規定が火種になって、協議不調に陥り、最終的に訴訟沙汰にまで発展しました。
このような事態を防ぐための工夫として、損害賠償の予定や違約罰条項を盛り込むことが推奨されます。
違約金条項を設けた場合、債権者は債務不履行の事実さえ証明すれば、損害の発生及び損害額の証明は基本的に不要となります。
さらに言いますと、契約違反に対する厳格な制裁を具体的に定めておくと、調達先は高額のペナルティを忌避するべく、より級密に品質やスペックの管理を自主的に行い、結果として偽装事故発生が抑止されるという効果も期待できます。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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