02186_法的整理の可否は損益では決まらない。債務超過と資金繰りで決まる

「黒字だから法的整理は無理」。 それは誤りです。 法的整理の可否は、黒字かどうかの損益ではありません。 債務超過の有無と、資金が尽きる速度、この2点で決まります。 会計は、一定期間の成果を示す道具にすぎません。 法は、いま・この時点での支払能力と財産状態を問います。 軸が違う以上、PL(損益計算書)の数字がいくら整って...

02185_黒字=安全という誤解。PLとBSを突き合わせて判断せよ

「儲かっているから大丈夫」。 この言葉ほど、経営判断を鈍らせるものはありません。 PLが黒字でも、BSが痩せていれば会社は危険域にいます。 評価益や為替差益で一時的に数字が整っても、それは偶発的な要因の結果です 。 たとえ話をすれば、健康診断の前日にだけ暴飲暴食を控え、翌日からまた元の生活に戻るのと同じです。 検査値は...

02184_法的整理とは何か_禁じ手ではない、最後の正攻法

法的整理は「終わり」ではない 「法的整理」と聞いただけで、経営者の多くは顔をしかめます。 倒産、破綻、廃業。 頭の中がすぐに“終わり”のイメージで埋まってしまうからです。 しかし、これは誤解です。 法的整理の本質は「事業再生」であり、「破壊」ではありません。 裁判所の制度を使って債権関係を整理し、利害調整を公正に進める...

02182_黒字倒産という“幻想”_PLとBSを同じ机に置け

「先生、うちは儲かっています。黒字です・・・それでも倒産できますか?」 先日、ある経営者からそんな相談を受けました。 ふつうに聞けば意味不明です。 黒字なら安全、そう信じている人が大半でしょう。 ところが、この質問は珍しくない。 むしろ現場では、よく耳にします。 そもそも「黒字=安全」という前提が、幻想にすぎません。 ...

02181_方便は戦術その1_弁護士の“二面性”を読み誤るな

法務の現場では、あの手この手が飛び交います。 ときには奥の手、場合によっては反則技すれすれの演技や方便。 その代表例のひとつが、「弁護士の二面性」です。 今回は、一見すると「ずる賢い」ように見える弁護士の行動の裏側にある、プロとしての思考と戦術についてお話しします。 弁護士が「怒るフリ」をする理由 たとえば、取引先との...

02178_調整役はつらいよ:弁護士間の意思疎通_“火消し役”にあらず

依頼者にとっては“最強布陣”であるはずの複数弁護士による共同受任。 その調整役というと、「損な役回り」と思われがちですが、実のところ、“うま味”があるポジションでもあります。 依頼者との距離が近い弁護士がその役に就けば、関係者間の交通整理を通じて、案件の動線そのものを握ることができます。 全体を俯瞰する立場にもなりやす...

02174_見えないものをミエル化する知恵_ファミリービジネスにおける事業承継の「段取りと視点」

事業承継の現場には、法務だけでは語りきれない「感情のもつれ」がつきものです。 親子間のわだかまり。 兄弟姉妹の不公平感。 義理の家族との距離感。 たとえば、長男に会社を継がせると決めていた父親が、いざ引退の時期が近づいてくると、急に決断を先送りにしはじめる。 あるいは、会社を手伝ってきた長女が、いくら貢献しても「経営は...

02173_見えないものをミエル化する知恵_議事録に署名があっても、責任の所在は見えない

“うなずいていたから、理解していた”のは、本当か? たとえば、美術館の展示会で、音声ガイドを聞きながら歩いている人がいます。 黙ってうなずきながら、説明に耳を傾けている。 けれども、その人が展示内容を本当に理解しているかどうかは、外からは見えません。 「うなずいていたから、理解していたはず」とは、言い切れないのです。 ...

02154_「話せばわかる」は幻想。構造でトラブルを封じる法務技術──第三者を代理人に立てる

相手の理屈に勝つことではなく、話そのものを成立させない。 そんな“封じ方”が、企業法務には必要になる場面があります。 話すこと自体が、すでに罠 人と人とのトラブルというのは、理屈で解決するとは限りません。 相手が聞く耳を持っていれば、話せばわかるでしょう。 ところが世の中には、そもそも「話すこと」自体が罠、という場面が...

02145_ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化が、経営を守る_05法務の沈黙が、経営判断を狂わせる―議事録に“口を出さない”リスク

ある会社での話です。 経営会議の場で、役員のひとりがこう言いました。 「この案件、正式な契約はまだだけど、先に動いてしまおう」「一昨日、ゴルフに行ったんだけど、先方のトップ以下3名が了解してたから、大丈夫でしょ」 その場では、誰も強く反対せず、話は流れていきました。 法務担当者も出席していましたが、何も言いませんでした...