01184_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ2)>経営政策・法務戦略構築フェーズ>非公開の中小企業における会社法活用

創業社長が一代で大きくしてきた非公開の中小企業等では、創業社長が引退した後、承継に非常に苦労するなどといわれています。

他方、会社法は、非公開会社に柔軟な統治形態を認めており、
「後継問題に頭を痛めるオーナー企業のワンマン社長」
にとっては、会社法の規定を柔軟に活用して、承継対策に利用することが可能です。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01183_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ2)>経営政策・法務戦略構築フェーズ>機関設計の自由

会社法は、株式会社が、どのような形態で意思決定や業務遂行を行うか(会社において意思決定や決定された意思内容を遂行する者や会議体のことを「機関」といいます)について、会社の自由な設計に委ねています(機関設計の自由化)。

会社法で認められている株式会社において採用可能な機関形態は、39種類あるといわれています。

今後、機関設計の自由化を戦略的に活用する例が数多く出てくるものと思われます。

ここで、注目されるのは、
「会社法が、取締役1人と株主総会のみという機関形態の株式会社を認めた」
ということです。

すなわち、
「株主1人、株主総会1人、取締役1人」
というかつての有限会社のような、極めて簡素な企業組織であっても、 トヨタやソニーと同じく
「株式会社」
という名の下に企業活動ができるようになったということです。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

旧商法時代、中小企業において、
「有限会社では、零細色が出てしまい、世間体が悪い」
という理由で、零細法人が、規模粉飾をして、株式会社に組織替えすることがよく行われました。

当時の株式会社の役員の法定員数として、
「取締役3名、監査役1名の計4名」が必要であったため、員数合わせのため、中小企業等で取締役名義の貸し借りがよく行われていました。

なお、このような名目取締役であっても、会社が倒産した場合、代表取締役に連座させられ、債権者から善管注意義務違反に基づく厳しい責任追及がなされることがあり、実際訴訟等でも名目取締役の責任の有無が争われました。

このように旧商法時代の法的制約から員数合わせのための名目取締役を選任していた株式会社も、会社法が施行された現在では、定款変更により取締役会非設置・監査役非設置会社に移行すれば、取締役1名の株式会社として存続できることになりました。

したがって、上記のような理由で旧商法時代から取締役として名前を貸与している中小企業経営者は、名義貸しを継続する必要が乏しくなったと思われます。

委員会設置会社において設置される委員会とは、表のとおりです。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

委員会を設置するメリットは、監督と執行を分離した体制を採用したことで対外的にガバナンスが健全な企業であることがアピールできる点にあります。

とはいえ、監督と執行の分離は、経営が健全化される反面、監督と執行が一体となる場合に比して効率性は阻害される危険もあり、採用にあたっては、メリット及びデメリットを慎重に比較検討する必要があります。

この問題は、意思決定者をいかにして定めるのかという企業の統治体制に関するものです。

公開会社かつ大会社が要求されるガバナンス体制は、監査役会設置会社若しくは委員会設置会社でいずれも会計監査人も必置であると会社法上定められています。

このような会社では、ガバナンス体制が重厚長大なものとなり、意思決定については迅速さよりも慎重さが求められているということができます。

企業の経営が毎年順調に展開され、経営に関して大きな問題がないなどというときには、ワンマン社長に無茶をされることもなく、適切な体制であると考えられます。

しかし、大きく業態を変えることを指向していたり、経営危機から脱出するためにドラステイックな改革が必要な場合等には適しているとは考えられません。

ガバナンス体制は意思決定のスピードに直結します。

現に、例えばビクターとケンウッドが経営統合した際には、子会社である事業会社の取締役会を廃止することで意思決定のスピードアップを試みています。

運営管理コード:CLBP189TO191

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01182_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ2)>経営政策・法務戦略構築フェーズ>法人形態の選択における戦略

資本を募って、組織を作り、営利活動をする場合、株式会社を設立するというのが最も一般的な方法です。

しかし、有限責任や法人格や二重課税の防止という点を併せ考えるのであれば、株式会社以外のビジネス組織を検討することが有益となる場合があります。

すなわち、新規のビジネスを単独であるいは他の企業等と共同して開始する場合にどのような組織形態を選択すべきかという点は、法的な利害をふまえて、多様な選択肢の中から最も有利な形態を採用すべきです。

営利活動を行うための企業組織を整理してみます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

「有限責任」
という言葉ですが、これは
「レバレッジを利かせた大きな事業を展開し、その際受けた融資に連帯保証等を差し入れない限り、失敗しても出資額以上に損はしない」
という意味です。

この理解の下では、
「有限責任」
という概念は、ビジネス構築上は
「無責任」
とほぼ同義に理解して差し支えありません。

すなわち、
「有限責任(=会社オーナー無責任)」
か否かということは、事業に伴う損害の回避において、きわめて重要な概念になります。

「パススルー課税」
とは、法人や組合等の企業組織の所得に対して課税せず、その構成員の所得に対して課税する取扱いを指し、構成員課税とも呼ばれます。

すなわち、法人の所得を個人に分配する場合、税務当局は、通常一旦法人が所得を計上した段階で法人税を課し、さらに法人所得を構成員に剰余金分配する際にも配当課税しますが(いわゆる二重課税)、パススルー課税が利用できる場合、個人の所得税の支払いのみで足りることになります。

「特定目的会社(Special Purpose Company、SPC)」
とは、原資産保有者から資産の譲渡を受け、株式や債券を発行するような特別の目的のために設立される会社で、資産流動化やオフバランス化等をする際に活用されます。

国内のみならず、タックスヘイブン国(イギリス領ケイマン諸島等)で設立され、日本に支店が設置されることもあります。

SPCが会計上の一定要件を満たせば、出資者等の子会社等に該当しないと推定する場合があり、オフバランス化が可能となります。

不動産流動化をする場合、原資産保有者のSPC出資比率が不動産時価の5%以下にしないと当該不動産売却を会計上の真実の売却(True Sale)があったとみなされないのですが、SPCの他の出資者に実体の希薄な会社(原資産保有者のペーパーカンパニー)を参加させる例があり、税務当局がこのような資産売却を否認することもあります。

法人形態の選択に関する戦略は、税効果等を重視して行われるものであり、 トップによる基本事項の策定であることがわかります。

経営トップは何らかの投資を行う際、当該投資によるリターンを最大化するためにどのようなビークルを用意すべきかを検討し、基本事項を策定することになりますが、この際には、税務上の知見のほか、法務スタッフや外部の専門家の意見を重視して、適切な判断が形成されるべきことになります。

運営管理コード:CLBP187TO188

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01181_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令管理>日本版SOX法>内部統制報告制度

株式公開企業等に2008年4月1日以後に開始する事業年度から適用される金融商品取引法上の新制度
「内部統制報告制度」
に基づく内部統制報告書の開示が2009年6月に初めてのピークを迎え、市場関係者等の注目を集めました。

この制度は、経営者が自社の内部統制の整備状況や有効性を評価し、公認会計士等の監査を経て届出・開示するもので、金融商品取引法が株式公開企業等に開示を求める報告書の1つです。

他の報告書の届出・開示の趣旨と同様、投資判断の明確化等を目的としています。

しかしながら、企業の経営環境が悪化する中、内部統制の整備等に要する費用負担が高まっていることも事実であり、企業の実務担当者からは、企業規模に応じた内部統制報告制度の簡素化を求める声もあがりました。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

このような要望や意見等をふまえ、2010年12月22日、金融庁企業会計審議会は、
「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂に関する意見書」
を公表しました。

これは、2008年4月に導入された内部統制報告制度を実際に運用した経験をふまえた企業等からの要望や意見等に基づき改訂されたものであり、主に、

1 監査人が、内部統制に対する企業の独自の創意工夫を理解するよう、
「経営者に対し、画一的にその手法等を強制することのないよう留意する」
ことを明記したり、

2 内部統制の効率的な運用方法を確立するために、
(1)内部統制評価方法の簡素化を図ったり、
(2)「開示すべき重要な不備(改訂前でいう「重要な欠陥」)」の判断基準の明確化を図ったり、
(3)株式公開企業等のうち、中堅。中小企業の場合の簡素化、

等が盛り込まれました。

このように、当初、鳴り物入りで始まった制度ですが、開始直後より、
「株式公開企業といっても、必ずしも大企業ばかりではないのだから、もっと、その企業の規模に見合った基準を明確化したり、簡素化を図るべきである」
といつた意見が相次いでおり、ようやく実情に見合う改訂に至ったという経緯があります。

なお、金融庁(総務企画局)ではウエブサイト上に
内部統制報告制度に関するQ&A
を公表し、内部統制に関する基準の明確化・具体化を支援しています。

運営管理コード:CLBP182TO186

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01180_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令管理>日本版SOX法>混迷する「内部統制」その2

金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)について、無責任な議論や情報が飛び交い、また
「内部統制バブル」
ともいうべき現象に便乗して、規制対応上不必要な機器やソフトやコンサルティングが高額で売り込まれるような状況が発生したため、2008年3月、金融庁は
「内部統制報告に関する11の誤解」
を発表し、過剰な対応を抑止しています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01179_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令管理>日本版SOX法>混迷する「内部統制」その1

日本版SOX法と呼ばれるものの実体ですが、これは、金融商品取引法24条の4の4が、上場企業に対して、事業年度ごとに財務計算にかかる内部統制を評価した報告書(「当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書」)の提出を義務づけた規制のことです。

当該規制が施行された際には、書店のビジネス書のコーナーには、関係書物が氾濫していました。

施行当時、株式を公開する予定が全くないはずの中小企業の担当者も日本版SOX法の書物を大量に購入したなどという笑えない実情もあるくらい(株式を公開する予定のない中小企業には金融商品取引法に基づく内部統制報告書を作る義務はありませんし、作ったところで提出する先はありません)、
「日本版SOX法バブル」
ともいうべき様相を呈していました。

企業法務総論では、会社法に基づくコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)に、企業倫理概念が紛れ込んだことにより議論が非常に錯綜した状況を述べましたが、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)についても状況は同じです。

金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)システム構築に際しての参照規範としては、本来、金融商品取引法の該当箇所(日本版SOX法と呼ばれる規範部分)及び法令に関する公的解釈基準(金融庁企業会計審議会内部統制部会作成の内部統制の評価及び監査に関する基準等)で必要かつ十分なはずです。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

しかしながら、現在、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)システム構築にあたっては、上記公的規範に加え、
「米国SOX法」
「コーポレートガバナンス」
「コンプライアンス」
「ITガバナンス」
「企業倫理、
「CSR(企業の社会的責任)」
「SRI(社会的責任投資)」
「環境経営」
といった疑似概念・非法理的概念が次々と挿入された状態になっており、法律家、会計士、経営学者、経理倫理研究者、ITベンチャー、システム販売業者といった様々な者が、それぞれ独自の議論を展開しており、
「百家争鳴」
を通り越して、もはや
「Chaos(混迷)」
と評すべき状態になっています。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

このように、株式公開企業の金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)に関するシステム構築及び運用業務は、無秩序な議論と無意味な情報が溢れているため、適正な法務関連調査のための情報収集・整理が困難となっています。

無益な情報や議論に振り回されることなく、必要かつ十分にして適正な法務関連調査を遂行するためには、まずは公的な規範をしっかり読み込み、解釈オーソリテイーを握っている者を特定した上で、正しい情報のみを取捨選択してスタデイーしていくべきです。

金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制(財務統制)に関するシステム構築及び運用義務への正しい対処法を示すと以下のようになります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

運営管理コード:CLBP179TO182

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01178_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令管理>金融商品取引法

金融商品取引法に関するオーソドックスな書籍としては、
『金融商品取引法入門(第3版)』(近藤光男=黒沼悦郎=吉原和志著・商事法務)
『解説金融商品取引法(第3版)』(大崎貞和著・弘文堂)
『逐条解説・2010年金融商品取引法改正』(寺田達史=高橋洋明=矢原雅文=河野高伸=太田昌男著・商事法務)
等が挙げられます。

なお、気をつけるべき点は、金融商品取引法は行政取締法規であるので、
「理論上どう解釈されるべきか」
より
「監督行政機関がどう解釈しているか」
の方が決定的に重要であるということです。

すなわち、
「A先生がこう言っている」
「B教授がこう言っている」
「C弁護士がこう書いている」
と主張したところで、監督行政機関が当該解釈を採用しなければ、事実上・法律上の不利益が課せられてしまいます。

その意味では、金融商品取引法の法務関連調査にあたっては、理論書も重要ですが、監督行政機関(金融庁のほか、行政権限を行使する証券取引所を含む)のガイドラインや解釈動向を調査することの方がはるかに重要です。

運営管理コード:CLBP177TO179

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01177_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令管理>会社法

1 会社法の基本書・体系書

『法律学講座双書 会社法(第15版)』(神田秀樹著・弘文堂)
が最もオーソドックスなものとして挙げられます。

ただ、この本についての難を言えば、饒舌を嫌い、無駄を一切省き、ソリッドな構成を追求したせいか、もう少し説明が欲しいと思われる箇所がいくつかあります。

このような場合には、
『会社法入門(第12版)』(前田庸著・有斐閣)
『株式会社法(第4版)』(江頭憲治郎著・有斐閣)
も併用することが推奨されます。

会社法の条文を解説した実務書としては、会社法のコンメンタールが刊行途上ということもあり、やや手薄感がありますが、参照書籍として
『立案担当者による新・会社法の解説』(別冊商事法務)
等の利用も推奨されます。

ただ、このあたりの調査になると、常時会社法を専門的に調べる必要がある会社でもない限り、会社法の基本的知識を有する顧問弁護士(契約法律事務所)に専門的助言を依頼した方が効率的で便利かと思われます。

2 会社法の調べ方・使い方

会社法は、会社の規模に応じた規制がなされており、会社法を調べたり使ったりする場合は、この点をよくふまえて行う必要があります。

すなわち、会社法は、
「単一の法律で、“商店街のパン屋さん・八百屋さん”から“国際的な自動車メーカーやメガバンク”までの様々な会社と当該会社をとりまく利害関係者との複雑な利害調整をする」
という、ある意味無茶なことをしようとしています。

会社法の精級なテキストは、一読しただけで何が書いてあるか全く不明で、弁護士等の専門家による翻訳がないと、猛スピードで展開するビジネス活動の現場で生起する問題解決の道具としては役に立ちません。

これは、パン屋や八百屋の経営を巡る下世話な内紛(その実態は、夫婦喧嘩であったり、親子喧嘩であったりするもの)と敵対的TOBの対抗手段としての新株予約権の発行の是非のような先端的な議論を同じ土俵で論じようとするからであると思われます。

すなわち、本来であれば、会社法は
「パン屋・八百屋用」

「国際的自動車メーカーやメガバンク用」
とで、それぞれテキストを分けて用意すべきであったと思われます。

参考までに、会社法をユーザーごとのニーズに併せて、使うべきポイントに分けて整理したものとして紹介しておきます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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以上のとおり、
「零細商店から国際企業まで広汎に取り扱う」
という特性ゆえ、会社法や会社法の体系書はあまりにも抽象的でつかみ所がなくそのままでは使えません。

企業法務に携わる者としては、会社法のこのような特性をふまえつつ、所属企業やクライアント企業の規模に応じ、効率的に課題や問題点を発見するスキルを身につけなければなりません。

それとともに、当該企業が直面する状況に応じた会社法の使い方を確立するなどして、
「使えない会社法」

「企業法務の現場で使える武器としての会社法」
にカスタマイズする必要があるといえます。

運営管理コード:CLBP176TO177

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01176_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境>刑事訴訟法

会社法金融商品取引法においては、多数の利害関係者の利害を規律する関係上、特定の規範については刑事罰の制裁を以て履行を強制しています。

現実に、会社法違反に関する事案の多くが刑事事件に発展しており、この点において、企業組織運営上の法務リスクとして、刑事裁判も視野に入れざるをえません。

したがって、企業組織運営法務の有事に対応する際には、刑事訴訟法の基本的理解も求められることがあります。

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01175_ガバナンス法務>企業の組織運営・内部統制に関する個別法務課題>ガバナンス法務(フェーズ1)>アセスメント・環境整備フェーズ>法令環境>金融商品取引法

株式公開等企業や有価証券を扱う企業については、金融商品取引法の規制にも服します。

金融商品取引法は、株式などの有価証券の売買等の取引の市場でのルールを定めていますが、金融商品そのものや金融商品の発行会社などに関する開示のルールや、インサイダー取引などの不正な取引を排除するための規制等が有名です。

金融商品取引法の企業組織運営法務に関わる分野としては、財務報告に係る内部統制報告書の提出の義務に関する規定(日本版SOX法と呼ばれます)が重要規範として作用します。

運営管理コード:CLBP174TO174

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