00924_企業法務ケーススタディ(No.0244):職務発明

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2010年3月号(2月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」十六の巻(第16回)「職務発明」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
脇甘グループ 小丸(コマル)科学株式会社 技術開発部長

職務発明:
コマル科学の一員が、取得した特許を携えて転職しようとしています。
そこで、相場以上の金額を提示して、その従業員から特許権を買い取ろうとしました。
ところが、相手は、
「職務発明に関わる特許権を会社に移転する規定はない。
いくらカネを積んでも特許は会社のものにならない」
と、いいます。
裁判を起こせば、特許は当社のものになるのでしょうか。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:特許法における企業従業員による発明に対する考え方
特許法は、特許を受ける権利を
「発明者」
に付与するとしています(特許法29条)。
法人が発明者となることはありません。
一方で、一定の要件を満たすような発明については、
「職務発明」
に該当するとし、企業等に相応のメリットが与えられることとしています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「職務発明」の概念と権利承継の定め
「職務発明」
という概念にあたるかどうかは、実質的に
「企業等の仕事として発明がなされた」
といえることが必要となります。
具体的な要件として、
1.企業等に雇用される従業員が
2.その業務の範囲内において行った発明で
3.現在または過去の職務に属する発明である必要があります(特許法35条1項)。
かつ、前もって職務発明規程等によって
「特許を受ける権利」

「特許権」
を承継させる旨が規定されていた場合、その企業等は当該発明を自分のモノにすることができるのです(特許法35条3項)。
あらかじめ権利承継の定めておかないと、通常の譲渡契約と同様に、発明者に権利移転をお願いすることになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:「発明者」は一体誰?
単に抽象的なアイディアを提供したにすぎなかったり、助言にとどまる場合であれば
「発明者」
とは認定されません。
すでに特許出願公開がなされていたときには、同様の発明は新規性がない等として拒絶されますから、特許権の移転登録請求等を検討することとなります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:権利が取れない場合は戦略で勝つ
特許の基幹技術だけでは事業として成立させることは困難です。
製品化し、商品として成熟したものにするまでには多くの技術課題を解決しなければなりません。
つまり、アイディアレベルの試作品と市場に出回る製品との間の大きなギャップを埋めるのもまた技術であり、そこには特許が生じる余地がたくさんあるわけです。
それら周辺技術について特許を取り尽くした場合には、基幹技術を独占する意味は喪失し、
「基幹技術の通常実施権」

「製品化・商品化のマイルストーン上にある応用技術や周辺技術についての独占権」
だけで、事実上当該分野における市場独占をすることが十分可能です。
企業側が、特許を自分のモノにできない場合は、このように外堀を埋めていく戦略を考えるべきです。

助言のポイント
1.まずは職務発明規程を見返そう。
2.従業員には何を研究しているのか日頃からノートにでもつけさせて、発明者が誰なのか、会社は常に把握し続けよう。
3.基幹技術の特許をおさえられても、まだ手段はある。製品化に至る周辺技術に何があるのか、想像力を働かせよう。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00923_企業法務ケーススタディ(No.0243):発明への資金協力

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2010年2月号(1月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」十五の巻(第15回)「発明への資金協力」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
某大学教授

発明への資金協力:
当社が企画提供と資金提供をし、大学教授が開発した発明が、成功しました。
これからその発明をつかってビジネスをしようとしていたところ、大学教授は
「発明したのは自分だ」
と主張し、弁理士も
「『特許を受ける権利』を譲り受ける契約を締結しないと、特許権の利益にあずかれない」
と、いいます。
企業が研究者に委託した技術発明の成果は、誰のものになるのでしょうか?

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:特許権を取得できるのは誰か
特許法29条は、特許権を取得できる者を
「発明者」
に限っています。
単なる補助者、助言者、資金の提供者などは発明者にあたらない、としています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「発明者」に関する裁判例
東京地裁平成14年8月27日判決では、実際に研究開発を行った者へ指示を与えていた者について、
「それ自体が発明と呼べる程度に具体化したものではなく、課題解決の方向性を大筋で示すものにすぎない。
したがって、原告が上記着想を得たからといって、本件発明の成立に創作的な後見をしたということはできず、原告を共同発明者と認めることはできない」
という判断を下しました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:「発明者」でない者による出願
「研究テーマの設定」
「資金の提供」
をしただけでは、
「発明者」
には当たりません。
そして、発明者ではない者を特許出願願書に記載すると、冒認として出願は拒絶されることになります(特許法49条7号)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:「特許を受ける権利」
特許法33条は、発明者が有する権利のうち
「特許を受ける権利」
については、第三者に譲渡できることを定めています。
「特許を受ける権利」
を有する者が特許の出願を行い、特許庁がその発明にお墨付きを与えてくれれば、特許権を受けることができます。
研究者に資金協力を行う場合には、事前に発明者となる者と契約を締結しておくか、発明後に発明者にお願いをして、
「特許を受ける権利」
の全部または一部を譲渡してもらうことが必要となります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点5:「共同出願」
落としどころとしては、
「特許を受ける権利」
の一部を譲渡してもらい、発明者と一緒に共同出願することが考えられます。
注意しなければならないのは、特許法38条は
「特許を受ける権利の共有者全員による出願」
でなければ特許出願できないことを定めており、共有者全員でなされなかった出願は、拒絶されてしまいます(49条2号)し、万が一、特許登録できたしても無効事由となります(123条1項2号)。
したがって、共同出願についても、発明者となる者と事前に契約を締結しておくことが必要です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点6:「不実施補償」
特許を受ける権利を共有した場合には特許権を共有することになるのですが、共有者が有するのは自分で特許を実施する権利だけです。
説例の場合だと、当社は特許権実施により大きな収益を上げられますが、経営資源をもたない教授は、特許権を共有したところでまったく意味がありません。
打開策として、
「共有者の一部(教授)が特許権の不実施を約束する代わりに、他の共有者(脇甘商事)が、一定額の補償をする」(不実施補償)
措置を申し出る方法もあり得ます。
不実施補償には
「適正に権利化され、かつ事業化されたことを条件とする」
など条件を付しておくことが必要です。

助言のポイント
1.研究委託を行う際には、必ず書面で契約をしよう。
2.「資金を提供しただけ」「研究テーマを指定しただけ」では「発明者」になれず、特許も出願できない。事前に、実際に研究開発を行う者から「特許を受ける権利」を全部譲渡してもらう契約を締結しておくこと。
3.「特許を受ける権利」を共有している場合は、共有者全員による出願が必要。特別な事情がないかぎり「特許を受ける権利」は丸ごと自分のものにしておこう。
4.研究者側が要求する「不実施補償」には「特許権が成立し、かつ、当該特許権が適正に事業化できた場合に限り補償する」との条件をつけよう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00922_企業法務ケーススタディ(No.0242):退任取締役の競業行為

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2010年1月号(12月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」十四の巻(第14回)「退任取締役の競業行為」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
脇甘商事株式会社 元専務取締役 六本木(むほんぎ)

退任取締役の競業行為:
臨時株主総会でクビにした元専務取締役が、ソフトウェア開発会社を設立し、当社のお得意様相手に当社の主力商品と同じ種類のソフトを販売しはじめました。
そこで、取締役の競業避止義務に違反を理由に事業の即刻中止と損害賠償を請求する通知を出そうとしましたが、
「取締役の競業避止義務は、あくまでも在任中の取締役が負うべき義務であって、退任後の取締役についてそのまま当てはまる話ではない」
と、法務部長がいいました。
あきらめかけたところ、元専務取締役が在任中に署名押印した書類がでてきました。
「私、六本木は、貴社取締役在任中はもちろん、退任後も50年間、貴社の取り扱っているすべての業種について、いかなる場所であるとを問わず、次の行為を行わないことを誓約します。
1.社と競業する会社の役員となること
1.貴社と競業する会社を設立すること
1.貴社と競業する事業を個人で行うこと」
これで、相手は、もう反論の余地はないでしょう。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:退任取締役の職業選択の自由
株式会社の取締役は、会社との間で委任関係に立ち(会社法330条)、会社に対して“善良な管理者の注意義務(善管注意義務)”(民法644条)および忠実義務(会社法355条)を負っています。
その上で、会社法356条1項1号は、会社の利益を擁護すべき取締役が、会社の利益を犠牲にして自己や第三者の利益を図ることを防止しています。
もっとも、取締役の競業避止義務は、条文上も
「取締役が」
と明記されているように、退任後の取締役にもそのまま適用されるというものではなく、退任取締役の競業は自由であるというのが原則です。
会社側の
「会社の業務で獲得したノウハウや情報を利用して、会社と競業する行為を行うことは許さない」
という要求に対立するものとして、会社を辞めた者にも
「これまでの人生で身につけたスキルや経験を、自分自身の価値として、他の場所でも活用したい」
という要求が存在するわけですが、法は、後者、つまり退任取締役の
「職業選択の自由(憲法22条1項)」
を前者の会社側の要求よりも重視しているのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:退任取締役の競業禁止特約
取締役在任中に、退職後の
「競業禁止特約」
を締結しておくという方法があります。
注意しなくてはならないのは、特約が退任取締役の
「職業選択の自由」
という憲法上の強力な権利を制約するものであるということです。
以下の諸要素を考慮して必要性・相当性を判断した上で
「退任取締役の生存等を脅かし、職業選択の自由を不当に拘束するもの」
と認められる場合、公序良俗に反するものとして無効とされてしまうのです。
1.取締役の社内での地位・業務内容
2.当該会社の営業秘密・得意先維持等の必要性
3.地域・期間・業種などの制限条件
4.経済的補償等の代償措置の有無

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:備えあれば憂いなし
取締役の在任中に、自社の業務の特徴(得意先維持の必要性等)や当該取締役の地位や担当業務等を十分に考慮・検討し、その上で、競業を禁止する地域や相当業務等を十分に考慮・検討し、その上で、競業を禁止する期間、業種あるいは経済的補償等を合理的に設定し、当該取締役の職業選択の自由に対する過度の制約とならない、有効な
「退任後の競業禁止特約」
を締結するようにしましょう(その際には、退任後の秘密保持義務なども併せて文書化しておくことが有効です)。

助言のポイント
1.取締役の競業避止義務は、退任後にもそのまま継続されるものではなく、退任取締役をも拘束するには、「退任後の競業禁止特約」が必要。
2.退任取締役の職業選択の自由は、憲法22条1項に保障される強力な権利。これを過度に制約する「退任後の競業禁止特約」は、公序良俗に反するとして無効とされるものであると心得よう。
3.「退任後の競業禁止特約」は、(1)取締役の社内での地位・業務内容、(2)当該会社の営業秘密・得意先維持等の必要性、(3)地域・期間・業種などの制限条件、(4)経済的補償等の代償措置の有無等の諸要素を考慮して、合理的なものにとどめること。
4.「今の良好な関係がいつまでも続くはず」という甘い見通しは、後に退任取締役との泥沼の戦いを引き起こす原因。「備えあれば憂いなし」こそ企業法務の神髄であると心得よう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00921_企業法務ケーススタディ(No.0241):善管注意義務とビジネス・ジャッジメント・ルール

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年12月号(11月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」十三の巻(第13回)「善管注意義務とビジネス・ジャッジメント・ルール」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
脇甘どつぼトレーディング株式会社 社長 脇甘 抜蹴(わきあま ぬける、脇甘満寿留の弟)

相手方:
ドツボインベスターズ証券会社

善管注意義務とビジネス・ジャッジメント・ルール:
ドツボインベスターズ証券との合弁で設立した脇甘どつぼトレーディング社の社長が、ドツボインベスターズ証券会社に厳しい経営責任追及を受けました。
脇甘どつぼトレーディング社長は、業績が悪化した会社のためを思って一発勝負をかけようと、会社の全財産を証拠金として商品先物の信用取引を行ったところ、大損し、相手方に刑事告訴されました。
それを聞いた法務部長は、
「そもそも会社の経営において損得は日常茶飯事のはず、そんなことで逮捕されていたら世の中の社長はいくらクビがあっても足りません。
虚偽告訴で逆に訴えるべきです」
と、主張します。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:取締役の経営責任
会社法は、取締役に対し
「法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」(会社法355条)
義務を課しています。
さらに、株主が会社に対し取締役の責任を追及するよう求めることができる旨の規定を設けたり(会社法847条)、
「役員等(経営陣等)がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者(株主等)に生じた損害を賠償する責任を負う」(会社法429条1項)
旨の規定を設けるなどして、株主を手厚く保護しています。
もちろん、法文上、取締役が株主等に対し直接の責任を負担するのは
「悪意又は重大な過失があったとき」
に限定されますが、これでは、日本中から取締役のなり手がいなくなってしまいます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:ビジネス・ジャッジメントルール
「株主のために大きな利益を実現するためにはリスクテイクしなければならないが、失敗したら必ず株主に対する責任をとらなければならないとするのはあまりに酷」
といったジレンマを解消すべく考案されたのが
「ビジネス・ジャッジメントルール(経営判断の原則)」
です。
「取締役が業務執行に関する意思決定の際に適切な情報収集と適切な意思決定プロセスを経たと判断されるときには、当該業務執行が法令の範囲内である限り、結果として会社に損害が発生したとしても善管注意義務違反に問わない」
とする法理原則です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:会社財産を危うくする罪
あまり知られていないことですが、会社法は取締役等が
「株式会社の目的の範囲外において、投機取引のために株式会社の財産を処分した」
場合には、実際に
「会社の財産」
に損害が生じたか否かを問わず、
「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」(会社法963条)
旨の極めて厳しい規定を設けています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:法令違反行為に経営裁量が働く余地はない
いかにビジネス・ジャッジメント・ルールがあるといっても、法令違反行為には経営裁量が働く余地はなく、免責が一切なされません。
したがって、取締役等が、投機取引を実施する際に為替取引や商品先物取引の複数の信頼性ある専門家の意見といった適切な情報を収集し、かつ取締役会決議といった適切な意思決定プロセスを経ていたとしても、明確な法令違反を構成する以上、ビジネス・ジャッジメント・ルールが働く余地はなく、これに関与した取締役が罪を免れることは、ほぼ不可能であるということになります。
本設例の場合、
「会社財産を危うくする罪」
の構成要件に該当しかねませんので、相手方との間で早急に示談を進め、平身低頭誠意をつくして和解をし、刑事告訴を取り下げてもらうようにすべき案件です。

助言のポイント
1.株主が拠出した財産のプロとして運用し、利益の適正な実現を付託された取締役には、経営のプロとして高度な管理責任(忠実義務や善管注意義務)が課せられていることを心得よう。
2.取締役等の責任を広く免責・軽減する法理(ビジネス・ジャッジメントルール)があるといっても、これが適用されるのは、あくまで法令の範囲内の行為に限定されている。
3.すなわち、法令違反行為には一切経営裁量が認められないと認識しよう。したがって、たとえ会社のためを思った行為であっても、いささかなりとも法に触れる行為が含まれれば、問答無用で責任追及されることになる。
4.為替取引や商品先物取引といった投機取引を会社の目的の範囲外において行う場合、刑事罰が課せられるリスクがあることに注意しよう。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸
著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00920_企業法務ケーススタディ(No.0240):不動産取引と登記

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年11月号(10月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」十二の巻(第12回)「不動産取引と登記」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
水差(ミズサシ)商事
望主(モチヌシ)建設株式会社
佐岸(サギシ)物産

不動産取引と登記
時価の3割 で入手したビルとその敷地について、
「真の所有者(モチヌシ建設)より所有権を譲り受けたから」
と、ミズサシ商事が、当社に対し、真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続と建物の明渡しを求めてきました。
当社としては、登記簿謄本でサギシ物産が所有者であることを確認してから、サギシ物産から当該ビルと敷地を買いましたし、登記簿謄本上は、モチヌシ建設はサギシ物産に売却しているはずですし、現在の所有者は当社です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:不動産取引と公示の原則
不動産とは
「土地及びその定着物」(民法86条1項)
をいい、簡単にいえば、土地と建物のことをいいます。
わが国では、建物と土地は別個の不動産とされており、それぞれが独立して取引の対象とされています。
不動産取引において、土地・建物の所有権の移転は
「その登記をしなければ、第三者に対抗することができない」(民法177条)
というルールを設けています(「公示の原則」といいます)が、その大前提として、
「正当な所有権移転の事実」
が必要です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:不動産取引と公信の原則
登記だけがあったところで、
「正当な所有権移転の事実」
があったことにはなりません。
わが国の登記制度では、
「所有権移転の登記の存在から、所有権移転の事実が存在するものと誤信してしまった買主は、救済してあげるべき」
という
「公信の原則」
を採用しておらず、登記官も形式的な審査権限しか持っていません。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:正当な所有権の移転を受けるために
登記に公信力がないわが国における不動産取引においては、売主が正当な所有権移転を受けているかどうかを確認することが大変重要です。
現在の制度では、これを確認するための画一的な基準や確実な方法が存在しません。
そこで、不動産会社や各種の専門家は、売主や売買目的不動産に関してなるべく多くの情報を収集・検討し、正当に所有権移転を受けることができる安全な取引であるかどうかについて、できる限り慎重な判断をしようとしているわけです。
不動産取引の際には、登記簿の記載だけに依拠せず、事前に現地を視察・調査することはもちろんのこと、固定資産税納税者をチェックし、テナントに賃貸借契約における賃貸名義人を確認し、場合によっては売主の前の所有者に確認をとるなどし、さらには信頼できる不動産業者(宅地建物取引業登録業者)を仲介させて慎重に取引を進める必要があります。
その上で、少しでも不審な点、不自然な点が発見された場合には、さらに慎重な調査を実施して、登記簿の記載と実体の権利関係に齟齬がないかを疑ってみるべきであるといえます。

助言のポイント
1.「登記だけ移してしまえば安心」というのは大間違い。登記は、正当な所有権移転を受けてこそ意味があるものと思おう。
2.登記簿の記載だけで売主を正当な所有者であると信頼するのは非常に危険。わが国の登記制度においては、登記に公信力はない。
3.売主の所有権を100%確認する画一的な基準や方法は存在しない。なるべく多くの情報を収集・検討して、売主の所有権を可能な限り検証しよう。少しでも不審な点や不自然な点があれば、十分な調査を行おう。
4.お買い得物件ほど、信頼できる宅建業登録をしている不動産業者を仲介させよう。
5.安易に「不動産の所有権が取得できなくても、売買代金の返還や損害賠償を求めればよい」などと考えない。トラブルを起こすような会社からの債権回収は、まず不可能と心得よう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00919_企業法務ケーススタディ(No.0239):景品規制

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年10月号(9月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」十一の巻(第11回)「景品規制 」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
阿津(アツ)化粧品株式会社

景品規制:
ライバル企業が製品購入者全員にプレゼントをつけて販売を開始したため、当社の化粧品部門の売上が落ちました。
そこで、当社でも、購入者全員にプレゼントキャンペーンを企画することにしました。
景表法に違反しないよう、
「これまでの1年間に当社製品を25万円以上ご購入のお客様に限り、期間中にさらに当社製品をご購入いただくと、もれなく5万円の純金グッズをプレゼント」
と、商品価格(取引価額)の20%を超えないアイデアを出しました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:景表法とは
景表法は、その名のとおり、
「景品規制」

「表示規制(誇大広告や原産国の虚偽表示など、消費者に誤認される不当な表示に対する規制)」
の2つの規制により不当な顧客誘引を防止し、商品やサービスの、消費者による適正な選択の確保を図っています。
過剰な景品合戦がエスカレートすれば、企業は商品やサービスそのものを改善することに力を注がなくなる危険性があります。
また、消費者が景品の豪華さに惑わされ、本来の目的であったはずの商品やサービスの点で質の悪いものを購入させられたり、ひいては、優れた商品を提供していた企業が景品合戦に敗れて淘汰され、市場に質の悪い商品ばかりが出回る結果を招来しかねません。
こうした理由から、景表法は、結局は消費者の不利益へとつながる過大な景品類の提供を禁止しているのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:景品規制の4類型
「景品類」
は次の4類型に分類され、それぞれ異なる規制内容に服します。
1.一般懸賞:偶然性(くじ引き等)や競争の優劣等により、商品・サービスの利用者の一部に対し、景品を提供
2.共同懸賞:商店街や一定地域の同業者が共同で実施する懸賞
3.総付景品:一般消費者である商品・サービスの利用者や来店者に対し、もれなく景品を提供(原則として、事業者向けのものは除く)
4.オープン懸賞:誰でも応募できる懸賞
尚、1と2については
「最高額」

「景品総額」
の上限が定められ、3については
「最高額」
の上限のみ定められています。
4については、平成18年に規制が撤廃され、現在は上限額の定めはありません(規制緩和)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:総付景品に対する規制
総付景品の上限は、
「取引価額が1000円未満の場合は200円まで」
「取引価額が1000円以上の場合は取引価額の20%まで」
とされています。
「購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合は、当該購入額を取引価額とする」
のが原則ですが、購入額の多寡を問わずに景品を提供する場合など、この原則だけでは判断できないケースが少なくありません。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:総付景品に対する規制
景品規制違反行為の疑いがある場合、公取委は、資料の収集や関係者への事情聴取などの調査を開始し、違反行為が認められる場合は、事態の改善や違反行為の禁止を命ずる排除命令(景表法6条)がなされ、確定した排除命令に従わない場合、違反行為者に対して2年以下の懲役又は300万円以下の罰金、企業に対しても300万円以下の罰金が科されます。
景品規制に違反しても公取委の排除命令に素直に従えば罰金等が課されることはありませんが、キャンペーン撤回や排除命令の公表等があると企業の信用が大きく損なわれますので、景品規制も重要なコンプライアンス上の課題といえます。

助言のポイント
1.過大な景品の提供は景表法違反。「消費者が喜ぶ豪華な景品のどこが悪い!」と抗議しても、公取委には通じない。
2.景品規制には4つの類型があり、それぞれについて規制内容が異なる。まずは、どの類型に当てはまる景品なのかを確認しよう。
3.景品規制は、景品価格と取引価額の関係がポイント。取引価額は、過去の購入額でなく、当該景品提供により期待される新たな取引を基準に算定すること。
4.キャンペーンの撤回等は企業の信用を大きく毀損することになる。入念な事前検討を怠った見切り発車の景品キャンペーンはNG。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00918_企業法務ケーススタディ(No.0238):信用毀損行為

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年9月号(8月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」十の巻(第10回)「 信用毀損行為 」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
Mono-Money電工(「モノマネ電工」)

信用毀損行為
当社は、特許権侵害という被害を受けました。
そこで、 相手先であるモノマネ電工に直接ではなく、 卸先の問屋や家電量販店、小売店相手に、特許権に基づく販売禁止等の仮処分を申し立てることとし、さらに、記者会見を行い
「モノマネ電工の電動鼻毛抜きは、特許侵害製品という理由で、わが社は仮処分を申し立てました!」
と発表しようと考えます。
そうすると、モノマネ電工の取引会社は、仮処分の決定が出る前に、商品取扱を自粛することでしょう。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:仮処分の申立てと信用毀損行為
「信用毀損行為」
は、不正競争防止法が制定された昭和9年(1934年)当時から規定されている、古典的な不正競争行為ですが、社会の仕組みが高度化複雑化するに伴って、巧みな手法が開発されるようになりました。
その1つが、
「競争相手の取引先(卸先の問屋や小売店)に対して嫌がらせの仮処分の申立てをし、競争相手の商品に法的なケチをつけた仮処分申立書を、合法的に送りつける」
というものです。
信用毀損行為とは異なるのは、仮処分という裁判手続の申立書類を法律に基づいて送達する方法を用いている点で、裁判例では、
「特許権侵害等を理由とする差止めの仮処分など仮の地位を定める仮処分の申立てに伴って、申立書の内容を相手方に知らしめることは、不正競争防止法2条1項14号所定の告知行為にはあたらない」、
さらに、信用毀損行為にはならない、とされています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:一般法たる民法を忘れるべからず
たしかに、裁判所は、信用毀損行為には当たらないとの判断をしていますが、他方で、その特許が無効な特許であるとの判断を行った上で、仮処分の申立人が行ったその他の行為を詳細に認定し、結論としては、仮処分を申し立てた行為と、その後に行った記者発表については民法上の不法行為が成立するとの結論を下し、仮処分申立人に対して、約2000万円という高額の損害賠償の支払いを命じています(知財高裁平成19年10月31日判決)。
なお、同判決においては、
「特許権を侵害していると仮処分の申立人が主張している業者相手ではなく、特許権侵害訴訟への対応能力に乏しい小売業者を相手に仮処分申立てを行った事実」
を重視し、
「競業者の信用を毀損して市場において優位に立つこと等を目的としていた」
ことを認定しています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:特許権を振り回すとヤブヘビになることもある
特許権を主張して侵害者相手に差止め・損害賠償請求等の訴訟を起こす場合、侵害者側から
「そんなインチキ特許は無効だ」
という抗弁が提出され、その結果、特許庁からお墨付きをもらったはずの特許権が無効と判断され、返り討ちにあう危険性もあります(注:特許法104法の3の抗弁、いわゆるキルビー抗弁)。

助言のポイント
1.特別法にばかり目を向けていると、民法などの一般法に足をすくわれることになる。
2.効果が強烈な法的手段を用いる場合、「ひょっとしたら、これってヤリすぎじゃないか」というバランス感覚を働かせ、リスクについて入念に調べること。
3.訴訟の提起(仮処分の申立てを含む)は「裁判を受ける権利」で保障されるが、権利の行使といえども、度が過ぎると、訴訟の提起自体が不法行為となることがある。

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00917_反社会的勢力の広がり(グレーゾーンカテゴリー)の理解とリスク認知

いわゆる
「反社会的勢力」
とは
「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」
を指します。

具体的には、
暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等
を指します。

しかし、今どき、この種の
「わかりやすい、ミエミエのヤーさん」
が企業に近づくと、警戒心満々で対応しますし、そんなドギツイ反社会的勢力にうかうかと絡まれるほど、一般の企業も、バカでも迂闊でもありません。

もちろん、反社会的勢力もバカではありません。

パンチパーマに、
サングラスに、
頬に傷があり、
華麗(?)な前科前歴のオンパレードで、
ドスの効いた巻き舌のいかつい関西弁で、
蛍光色のスーツに白いメッシュの革靴
なんて風体で、企業に接触するような愚かな真似はしません。

企業と最初に接点をもつのは、
ソフトで、
知的で、
エレガントで、
ジェントルで、
きちっとスーツを着て、
さらには、最近では学歴武装もきっちりしていて、
日本の有名大学や海外の有名大学卒業をしていたり、さらには、海外の著名企業の勤務歴もある、
といった経歴をもっているような、そこらへんのサラリーマンよりはるかに優秀で有能そうなビジネスマンです。

とはいえ、そのようなキャリアや風体でも、実体は、反社会的勢力の潜航偵察部隊であり、裏ではがっちり反社会的勢力とつながっています。

名刺や肩書も、昭和の時代のフロント企業のような、
ホニャララ興業

チョメチョメ不動産
といった、反社臭い企業名ではありません。

ファイナンシャルコンサルタント
海外進出アドバイザー
海外資金運用アドバイザー
節税アドバイザー
セールスコンサルタント
ウェブマネージャー
IPOコンサルタント
ITコンサルタント
経営コンサルタント
M&Aアドバイザー
といった、いかにも知的でエレガントで、デキそうな肩書や資格で、企業に近づきます。

このような
「潜航偵察部隊」
たる反社会的勢力の関係者は、
「周辺者」
と言われます。

そして、企業としては、もっともリスク判断が鈍りやすい
「周辺者」
に対する警戒を鋭敏にしておくべき、ということになります。

「周辺者」
は以下のような属性分類がなされます。

1 共生者

(反社会的勢力の)共生者とは、暴力団等に利益を供与することにより、暴力団等の暴力、威力、情報力、資金力、組織力等を利用し自らの利益を図る者です。

具体的には、暴力団の資金を運用して報酬を得るトレーダーや、節税や脱税、さらには犯罪行為により得た資金をマネーロンダリングする事業者や専門家等を指します。

2 暴力団等の密接関係者

これは、暴力団員やその家族に関する行事(慶弔事や、忘年会や新年会等)に出席するなどして、暴力団員等と密接な関係を有していると認められる者です。

3 半グレ(準暴力団)

また、集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行っている集団として、半グレ(準暴力団)という組織も「周辺者」として挙げられます。

上記は、いずれも、暴力団員そのものではなく、一見すると、普通の社会人との区別は困難です。

したがって、普通に接点をもち、取引が進んだり、企業内の情報が共有され、深い関係をもつに至り、その後、企業の弱みや恥部や公にできない機密をも共有された段階で、抜き差しならない関係に至り、その後は、恐喝等の餌食になり、食い尽くされる、というシナリオにより企業有事(存立危機事態)に至ります。

その意味では、このような、一般の社会人と見分けがつかない、
「周辺者」
をこそ、警戒できるようリスク感度を向上改善しておくべきです。

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00916_企業法務ケーススタディ(No.0237):下請代金の減額

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年8月号(7月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」九の巻(第9回)「下請代金の減額」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
公正取引委員会(「公取委」)

下請代金の減額:
当社は、下請代金の減額を目論み、 一度発注したソフト制作の下請代金の10%を
「協力金」
「手数料」
「情報システム使用料」
などの名目で、下請した会社から徴収しようとしています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:下請法とは
下請法は、下請業者の迅速かつ効果的な保護を図るために作られた独禁法の特則で、公取委が所管官庁です。
公取委は、下請法違反の行為を発見した場合、違反行為を中止し下請業者が被った不利益を解消するよう必要な警告や勧告を行ったり、違反企業の公表を行ったりします。
そして、違反企業が下請法違反の勧告に従わなかった場合には、公取委により改めて独禁法上の
「優越的地位の濫用」
に当たるかどうかが調査され、違反が認められれば独禁法20条に基づく排除措置命令が下されます(確定した排除措置命令に従わない場合、刑事罰が課されます)。
下請法は、対象となる取引かどうかについては、
「委託内容の種類」

「資本金の大小」
という2つの条件を設けています。
親会社が資本金の少ない子会社を通して下請会社に発注を行っている場合でも、親会社の資本金を基準に判断される場合がありますので注意が必要です(「トンネル会社規制」)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:下請代金の減額は「弱い者イジメ」
下請法は、前述の2つの条件をいずれも満たす適用対象の下請取引について、発注会社がやってはいけない
「11の禁止」
を列挙し
「4つの義務」
を命じています。
そして、
「下請業者に責任がないのに、発注時に決められた下請代金を発注後に減額すること」

「11の禁止」
の1つとして、全面的に禁止しています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:「弱い者イジメ」にならないために
下請業者に発注を行う際には、適正な下請代金を支払うことを前提に、本当に必要な物品やサービスを吟味した発注書(3条書面)を作成すべきです。
その上で、下請業者に発注書の記載に反する欠陥等の責任があれば、代金減額を正々堂々と求めるべきです。

助言のポイント
1.下請法の適用がある取引なのか、事前にチェックすること。「4つの義務」と「11の禁止」に注意すること。
2.下請業者に責任がないのに発注後に下請代金を減額することは下請法違反。当事者間の合意といっても後づけのものは無関係。
3.「とりあえず曖昧でいい加減な発注書で」などという発想はアウト。適正な下請代金額を前提に、本当に必要な物品やサービスを吟味して、フェアな発注書を作成すること。
4.何でもかんでも、下請代金の減額がダメだということではない。下請事業者の責めに帰すべき事由があるのであれば、堂々と主張する。
5.発注後の下請代金減額だけでなく、発注時の買いたたきも規制対象になっているので注意すること。公取委への“告げ口”に対する報復措置は絶対にNG。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00915_企業法務ケーススタディ(No.0236):外国公務員への贈賄

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年6月号(5月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」八の巻(第8回)「外国公務員への贈賄」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
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相手方:
東京地方検察庁(「東京地検」)

外国公務員への贈賄
当社のフィリピンの現地法人が、病院建設工事受注をめぐり政府高官に贈賄したとの疑いで、東京地検から事情聴取を求められました。
「不正競争防止法で外国公務員への贈賄も犯罪と扱われており、発覚したらほぼ例外なく裁判になるようです」
と慌てふためく執高部長に対し、脇甘社長は、
「医療過疎地域の病院建設は公益的な事業で、儲けはほとんどなくボランティアみたいなもの。
法人格が違えば、関係ないだろうし、付届け先は政府ではなく、税金を使っている民間会社で、問題になどなるはずはない 」
と、いいます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:海外での贈賄行為が処罰されなかった時代
日本国内においては贈収賄は厳しく処罰されますが、海外での贈賄は日本で裁かれることはありません。
無論、当該進出国の贈収賄罪に抵触することはありますが、国によっては、実体法規の定めとは別に、汚職が行われても誰も問題にしないところも数多くありますし、捜査当局あるいは司法当局自体が賄賂で動く国すらあります。
そういうわけで、日本企業が海外において外国政府発注事業を獲得・推進するにあたって、政府高官に対する贈賄というものが多かれ少なかれ行われていたようです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:不正競争防止法による規制
1997年にOECDにより、
「外国公務員贈賄防止条約」
が締結され、海外の贈賄行為は本国でも違法とし、処罰等の措置を導入することが合意されました。
これを受け、日本でも、1998年に
「不正競争防止法」
が改正され(施行は1999年2月)、同法18条において、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して、営業上の不正の利益を得るための贈賄が禁止されました。
違反した場合、贈賄行為者には5年以下の懲役または500万円以下の罰金が(同法21条)、また企業自体についても3億円以下の罰金刑が課されるようになりました(同法22条、両罰規定)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:外国公務員等贈賄罪の構成要件
贈賄の相手は、外国公務員に限らず、政府関係機関や外国政府が出資した公的企業等も含まれます。
贈賄における要件は、儲かるかどうかは関係なく、また、営利を直接目的とするかどうかも関係ありません。
賄賂の内容は、カネや物品だけでなく、食事やゴルフも含まれます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:現地法人やコンサルタント等を用いた贈賄行為もアウト
法人格が異なる海外現地法人が賄賂の費用をすべて支出している場合は、無関係とも思われますが、不正競争防止法に定める罰則規定には、刑法総則が適用されますので、外国公務員への贈賄行為の成否を検討する場合、同法60条~65条までの共同正犯(共謀共同正犯を含む)、教唆、ほう助等も視野に入れなければなりません。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点5:外国公務員等贈賄罪を意識したコンプライアンス体制の構築
外国公務員等贈賄罪については非常に厳しいルールが存在し、また、実際、三井物産ODA利益供与事件(2002年に発覚し、立件は見送られたが、当時の社長及び会長が引責辞任)、電気工事大手の九電工の子会社によるフィリピン政府高官への利益供与事件(2007年に社員2人に有罪判決)、大手コンサルタントPCIによるベトナムホーチミン市公務員への贈賄事件(2009年1月に元幹部ない懲役2年の有罪判決)など、厳しい刑事責任、社会的責任を問われます。
経済産業省がまとめた外国公務員贈賄防止指針(注)が公表されており、コンプライアンス体制構築上、非常に参考になります。

助言のポイント
1.途上国の贈賄が許されたのは過去の話。現在では、厳しい処罰の対象になる。
2.見つからないと思ったら大間違い。税務調査が入って、支出経費が調べられると、簡単に露見することになる。最悪、所得隠しの追徴課税、両罰規定による罰金刑、信用失墜・社会的制裁のトリプルパンチが待っている。
3.「現地法人がやったから知らない」「社会的儀礼の範囲だ」「進出国では問題になっていない」という弁解は一切通用しない。
4.金融の利益、保証提供、親族の役員就任といった「巧妙な方法」もすべてアウト。「価格と品質による競争」以外の競争は基本的にNGと考えよう。
5.現地法人や営業現場に暴走させないためにも、経済産業省公表指針を使って、きっちりとしたコンプライアンス体制を作り上げよう。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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