01916_主張立証における留意点

1 事実に関するファクトレポート

留意点1 5W2H形式で書き記す
留意点2 修飾語や副詞などの形容表現は一切厳禁(*)

(*)
「たくさん」「いっぱい」「非常に」「一生懸命」「がんばった」等、形容詞等を使うと、簡単でラクですが、裁判所では、事実を語っていない、ウソ、虚偽と同等に扱われます。
業務日報のように、客観的で端的で定量的な表現でレポートする必要があります。

2 上記を基礎づける痕跡

情報やデータを発掘・収集・想起し、これを時系列で整理

1、2は、裁判所において受容される程度の水準です。

これら2つについて、あますことなく準備できるかどうかが勝敗の分かれ目、といっても過言ではありません。

訴訟や仲裁で勝つ(思うような結果を得る)ようなタイプは、このレポートや証拠の準備に、相応の資源(時間・カネ・人員)を投入します。

わかりやすい言葉で言い換えると、
「負けたくなければ、死ぬ気で準備すること」
といえるでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01915_もめごとが起きたときの当事者の内面状況その2

もめごとが起こったとき、一番大きな問題となるのは
「当事者に強固なバイアスが働く」
ということです。

当事者の内面としては、
「◯◯の専門家」
に頼めば、何とかなるんじゃないか(と思いたい)、と考えがちです。

これが
「強固なバイアス」
というものです。

他方で、相談を受けた弁護士は、
「任せろ」
「何とかしてやる」
「正解を知っている」
「こうすれば大丈夫」
など無責任なことは、決して言いませんし、倫理上、言えません。

このようなことから、当事者の反発や心理的抵抗もあって、当事者と弁護士のチームエンゲージがなかなか進まないことが少なくありません。

弁護士として、経験論でいいますと、
「賢くて、成熟していて、誠実で、内罰的傾向があり(=外罰性が皆無で=人のせいにしない)、謙虚であって、(カネ・時間・人という)資源を動員する気概があるクライアント・当事者」
とチームエンゲージができるのであれば、当事者のいう
「思い通りの解決」
にいたらないまでも、
「大事を小事に、小事を無事に近いものにできる」
ことは可能です。

とはいえ、
「大事を小事に、小事を無事に近いものにできる」
ことに、 (それがいかに、大量の資源を動員させるほど難易度が高いことであるかを)理解し、 納得ができる当事者は、ほんのひとにぎりです。

なにしろ、
「(専門家に頼みさえすれば)思い通りの解決ができる」
というのも、当事者の内面にある、まったく都合のよい、身勝手なまでの
「強固なバイアス」
なのですから。

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01914_法律相談に出向く前にプロジェクトオーナーとなる相談者が理解しておくべきこと

法律相談に来られると、
「大事と認識していますか?」
と、問われると、
「当然です」
「大ごとだと思っているから、ここに相談に来たのです」
と、大抵の方は答えます。

ところで、多くの相談者は、左脳では、

・大事である=簡単にはいかない=専門家の動員も含めた相応の時間とコストとエネルギーがかかる

・正解や効果的な対処法がない=ありとあらゆる試行錯誤をやってみるほかなく、「専門家」に頼んだら、一瞬で解決するような安直な方法がない

ということは、理解しています。

他方で、右脳では、

・大事ではない(と思いたい)=簡単なこと=自分で何とかできるし、それほど、時間もコストもエネルギーもかからない

・探せば、どこかに、正解や安直な方法や、一瞬で都合よく解決できる専門家がいるはずと思いたい

というバイアスが働きます。

プロジェクトオーナーとなる相談者は、
「バイアスが働いている」
ことを踏まえたうえで、法律相談に出向くことが、解決への第一歩となります。

有事において、作戦行動に必要なのは、ファンタジーではなく、リアリティです。

プロジェクトオーナーの脳内がファンタジーであれば、作戦はまともに構築できませんし、機能もしないのです。

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01913_もめごとが起きたときの当事者の内面状況

かなりパニックになり、冷静な判断ができない状況に陥ります。

また、
「急がば近道」
の思考回路となっており、
「『急がば近道』が正常である」
という状況になります。

そして、
「特効薬」
「速攻で解決する方法」
を模索するあまり、冷静な状況認知・状況解釈・状況評価・課題整理・秩序だった選択肢抽出・合理的試行錯誤、というこの種の正解も定石もない事案対処において取るべきステップが、頭に入ってこない状況となります。

引用開始==================>
まず、持つべきは、未知の課題や未達成の成功に対する「謙虚な姿勢」です。
正解もなく、あるいは正解も定石も不明な課題です。
「こうやれっばいい」
「こうすべきだ」
「正解はこれだ」
「絶対このやり方がいい」
とこの世の誰も断言できることができない課題です。
なぜなら
「正解もなく、あるいは正解も定石も不明な課題」
だからです。
「 正解もなく、あるいは正解も定石も不明な課題」
について、
「正解を知っている」
「定石を知っている」
と言い出す人間は、壊滅的なバカか、邪悪な詐欺師です。
未知の課題や未達成の成功に対する
「謙虚な姿勢」
というのは、正解を探す努力や、
「正解や定石を知っている」
と称する人間を探す努力を、勇気をもって放棄することも含みます。
そうしないと、この種のバカに振り回されたり、詐欺師に騙されたりして、多くのカネや時間やエネルギーを喪失することになります。
次に正しいチームビルディングです。
プロジェクト・オーナー(動員資源を拠出し、最終的に結果の成否を負担する人間である、決裁者)、
企画設計者、
プロジェクト・マネージャー(企画遂行責任者)、
企画遂行者、
バイアス補正やゲーム・チェンジのための外部知的資源
といった、明確な役割をもち、スキルと責任を有する者により組成されたチームを作り上げることです。
そして、これらチームが、前記の
「 正解もなく、あるいは正解も定石も不明な課題」の
「謙虚な姿勢」
をもって、科学的・合理的プロセスを踏みながら、取り組むことです。
すなわち、
状況や環境や相場観を冷静かつ客観的に認識・評価し、
現実的なゴールを設定し、
ゴール(TO BE)とスタート(現状、AS IS)のギャップ(差分)を埋めるために必要な課題を抽出し、
課題を乗り越えるために必要な対策・方法論・対処行動上の選択肢のすべてを抽出し、
これにプロコン評価(長短所分析)を加え、
プロジェクトを遂行していく、という合理的な取り組み方です。
当然ながら、一発でゴールが達成されることは稀です。何度も試行錯誤をすることになります。
その際、効率的で検証可能な試行錯誤をすべきです。
すなわち、
抽出された「課題を乗り越えるために必要な対策・方法論・対処行動上の選択肢」を試行していく場合の先後を整序し、
試行の状況を記録し、
失敗した場合に正しく振り返りと柔軟なゲーム・チェンジをしていく、
という合理的試行錯誤です。
<==================引用終了

ちなみに、
「正解も定石もない事案対処」
において、もっともやってはいけないことは、
「正解」
を探したり、
「正解を知っていると称する(言葉のみならず、態度で示す者を含む)」
人間を探すような、愚考をやめ、目を覚まして、合理的な試行錯誤を構築し、実施することです

引用開始==================>
訴訟や紛争事案対処というプロジェクトの特徴は、
・正解が存在しない
・独裁的かつ絶対的権力を握る裁判官がすべてを決定しその感受性が左右する
・しかも当該裁判官の感受性自体は不透明でボラティリティーが高く、制御不可能
というものです。
「正解が存在しないプロジェクト」
で、もし、
「私は正解を知っている」
「私は正解を知っている専門家を紹介できる」
「私のやり方でやれば、絶対うまくいく」
ということを言う人間がいるとすれば、
それは、
・状況をわかっていない、経験未熟なバカか、
・うまく行かないことをわかっていながら「オレにカネを払えばうまく解決できる」などというウソを眉一つ動かすことなく平然とつくことのできる邪悪な詐欺師、
のいずれかです。
そもそも
「絶対的正解が存在しないプロジェクト」
と定義された事件や事案については、
「正解」
を探求したり、
「正解を知っている人間」
を探求したりするという営み自体、すべてムダであり無意味です。
だって、
「絶対的正解が存在しないプロジェクト」
と定義された以上、
「正解」
とか
「正解を知っている人間」
とかは、
「素数の約数」
と同様、世界中駆けずり回ったって絶対見つかりっこありませんから(定義上自明です)。
とはいえ、こういう
「正解」がない事件や事案
であっても、
「現実解」や「最善解」
なら想定・設定可能なはずです。
「正解」
がない事件や事案 に立ち向かう際にやるべきことは、正解を探すことでも、正解を知っている人間を探すことではなく、まず、
・とっとと、正解を探すことや、正解を知っている人間を探すことを諦めること
と、
・現実解や最善解(ひょっとしたら、クライアント・プロジェクトオーナーにとって腹が立つような内容かもしれませんが)を想定・設定すること
です。
次に、この現実的ゴールともいうべき、現実解や最善解を目指すための具体的なチーム・アップをすること、すなわち、
・プロセスを設計・構築・実施するための協働体制を描けるか
・それと、感受性や思考や行動が予測困難なカウンターパート(相手方)である敵と裁判所という想定外要因が不可避的に介在するため、ゲームチェンジ(試行錯誤)も含めて、柔軟な資源動員の合意を形成できるか
という点において、親和性・同調性を内包した継続的な関係構築を行い、(おそらく相当長期にわたることになる)事件や事案を協働できるチーム・ビルディングを行うべきです。
<==================引用終了

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01912_信頼していた従業員が、経営者の指示を無視したり、陰で経営者の悪口を言いふらしていることが判明したとき

まず、経営者がすることは、その従業員を、
「信頼する仲間」
と認識するのではなく、
「敵」
と、認識の転換をはかることです。

敵を信じて、敵に依存すること自体、思考としてやめるべきです。

まず、最悪を想定しましょう。

当該従業員が、何をしてくるか、何ができるか。

これを、当該従業員の立場や情調・感受性や利害を想像しながら、イメージします。

当該従業員が、経営者を、死ぬほど憎んでいて、いなくなっちまえばいいのに、と思っても、むちゃくちゃな攻撃をすると、従業員として、自分にも返ってきます。

その意味では、経営者への攻撃も自ずと限界があり得る、ということになります。

要するに、
・あからさまに敵意むき出しな攻撃をすると、自分の(生活)基盤を破壊させることになるので、これはできないし、しない(だろう)
・あからさまでない、嫌がらせはできる(だろう)
・自分にメリットがなくても、経営者にとって損害が出たり、不快な思いをさせることができるのであれば、目立たなければ何でもやる
と、イメージするのです。

経営者が、
「話せばわかる」
と言わんばかりに、当該従業員と話すのはいいですが、敵と交渉するのですから、主導権を取られたら負けです。

「主導権を取る=目的や予定や条件を相手に先に言わせる」
です。

相手の意図、目的、予定、妥協条件といった、脳の中身を、先に言わせましょう。

それができれば、その場で即答せず、持ち帰りましょう。

時間や、応答の冗長性の確保、が最重要課題です。

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01911_簡素な特別慰労給付金確認書サンプル

以下、確認書起案の参考としていただく趣旨で、記しておきます。

特別慰労給付金 確認書

 ●● 御中

私、●●は平成・令和●年●月●日に●●を退社致します。

在籍中の公休、有休などに関する清算を行う趣旨で、特別慰労給付金として、下記の金額を受領いたしました。

金 *******円

平成・令和●年●月●日の私の退職日において、上記特別慰労給付金をもって私と貴●●との間の清算が終了し、以後の請求は一切致しませんので宜しくお願い致します。

私と貴●●との間において、退職日時点で、本書記載の外、一切債権債務関係及び法律関係が清算され存在しないことも本書により厳に確認申し上げます。

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01910_不安の思考ループ

楽観バイアス・正常性バイアスが克服でき、不安を感じることができたとしても、問題が正しく認知できない相談者が少なくありません。

メタ認知ができず、状況評価、状況解釈、展開予測がうまくできないと、以下のような思考秩序のもと、思考ループに陥りがちです。

不安を感じる

問題を認知しようとする(問題認知の際に、主観ないしバイアスが邪魔して正しく認知できないので、外部専門家を活用して、メタ認知支援を受け、問題認知にはトライし、問題がぼんやりわかり始める)

問題認知して、状況解釈や展開予測にトライする(やはり外部専門家の支援を得る)

(何も手を加えずに状況放置した場合の)残酷な結末や不愉快な帰結が判明する

他方で、そこから何らかの状況改善のための資源動員をした場合の現実的な展開予測(シミュレーション)をしてみるが、「一発逆転」的な希望する解決を得られることはなく、「大事が無事に」「損害軽減」「将来的な改善」という成果がせいぜいである、という想定が判明する

結局、「何もせずに(あるいは外部専門資源を投入せずに、素人が手軽な対処をして)悲惨な大事に至る」か、「さんざん資源動員(コストのかかる外部資源動員)をして、大事が小事になったり、損害が軽減される程度の成果しか得られない」か、という選択(現実)を突きつけられる

「一発逆転」による主観的に希望する成果を得られる余地がない、ということを知らされる

不愉快になる

問題の認知が間違っている(専門家によりメタ認知や状況解釈や展開予測が狂っている)、と考え始める。そんな悲惨な状況ではないし、そんな悲観的なことにはならないし、相手もそこまで悪くないだろうし、神様はいるし、正義は勝つし、どこかでうまいことやってくれるお手軽で都合のいい専門家がいてくれるやずだ、自分たちは幸運なはずだ、絶対うまくいく、助かる、というやや強引な認知転換を試みる

展開予測や改善の営み(コスパが悪いし、自分の思い通りにならない)が気に入らないので、問題がなかった、問題が軽度で対処可能だ、と思い込もうとする

主観で思い込んで、一瞬、問題がなくなる

しかし、不安はなくならない

不安になる

最初に戻る

このようなループです。

この思考ループに陥ると、時間を浪費し、機会をなくし、最後はすべてをなくします。アナロジーとしては、下記のような事例がイメージできましょう。

CTスキャンで肺に真っ黒な影が映る

そういえば、調子が悪いし、何度も咳き込むし、血反吐が出る

不安になる

超高額のクリニックを勧められる

精密検査も超高額、手術や治療はさらに高額

「で、そんな高額な検査や高額な治療をやったら、完全に治るのか?」と質問する

「一定のステージまで進んだガンは治らない。ガンは絶対治らない。当院で『ガンの治療』と称しているのは、延命措置のこと。絶対死ぬが、死ぬ時期が、1ヶ月が半年、半年が1年になるのは、それなりの価値と意義がある。逆に言えばその程度の価値しかない。ただ、費用は超高額だ」と回答される

「高い金をかけて、調べて、体を弄った挙げ句、治らないし、せいぜい延命程度」という現実を理解する

不愉快になる

この医者はヤブだ、使えない、と思う

というより、そもそもガンではないし、ガンではない自分をガン呼ばわりする医者が狂っている、と思い込むことにする

そうすると、脳内から問題が消失して、なんだか元気が出てくる

その直後、咳き込む、血反吐が出る

CTスキャンの画像をみてみる

やっぱり肺が真っ黒

不安になる

このような事例において、
「一発逆転は可能です。信じる者は救われます。良き結果を信じて、私達と頑張りましょう」
という専門家がいたとします。

「ガンは治ります。末期でもステージ4でも治ると思います。いや、治るべきです。神様はいます。私にまかせてください。がんばります。治してみせます」
という医者がいたとします。

この専門家や医者は、バカか詐欺師のどちらかだと思いませんか?

末期ガンが治る、と心の底からそう考え、本気でいっているなら、その時点で、シビれるくらいのバカでしょう。

末期がんが治らない、という常識はわきまえていながらも、
「ガンは治るべきです。頑張って治しましょう」
なんて言うのは、詐欺師です。

仕事が欲しい、お金が欲しい、過酷な現実を見せたくない、夢をみさせてあげたい、気持ちよくさせてあげたい、希望をもたせたい、可哀想、つらそう・・・理由なんかどうでもいいです。

治らないガンを治ると誤信させて、治療費を頂戴して、治療という名のまやかしを行うのは、どんな理由があろうと、詐欺師です。

たとえ、資格ある医師が、治療行為とみえる営みをしていても、
「ガンが治る水」
「神の贈り物の霊水」
「聖人の恵みの聖水」
「ガン細胞を消すスーパー酵素」
を売り歩く怪しげな業者と、やっていることは変わりません。

結局のところ、現実は厳しい、ということです。

さて、誠意のある弁護士はどうするでしょう。

「状況認知選択課題」
「状況評価・解釈選択課題」
「展開予測選択課題」
「対処方針選択課題」
のいずれの選択課題においても、顧客が愚劣な選択(先延ばし、先送り、神頼み、性善説というコストのかからない妄想ともいえる選択)に固執する場合であっても、顧客の選択を最優先します。

顧客ファースト、という理念のもと、常に顧客の選択を尊重するのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01909_冷静な判断ができない状況に陥るとは(その2)推奨行動

「正解も定石もない事案対処」
において、もっともやってはいけないことは、
「正解」
を探したり、
「正解を知っていると称する(言葉のみならず、態度で示す者を含む)」
人間を探すような、愚考をやめ、目を覚まして、合理的な試行錯誤を構築し、実施することです。

引用開始==================>
訴訟や紛争事案対処というプロジェクトの特徴は、
・正解が存在しない
・独裁的かつ絶対的権力を握る裁判官がすべてを決定しその感受性が左右する
・しかも当該裁判官の感受性自体は不透明でボラティリティーが高く、制御不可能
というものです。
「正解が存在しないプロジェクト」
で、もし、
「私は正解を知っている」
「私は正解を知っている専門家を紹介できる」
「私のやり方でやれば、絶対うまくいく」
ということを言う人間がいるとすれば、
それは、
・状況をわかっていない、経験未熟なバカか、
・うまく行かないことをわかっていながら「オレにカネを払えばうまく解決できる」などというウソを眉一つ動かすことなく平然とつくことのできる邪悪な詐欺師、
のいずれかです。
そもそも
「絶対的正解が存在しないプロジェクト」
と定義された事件や事案については、
「正解」
を探求したり、
「正解を知っている人間」
を探求したりするという営み自体、すべてムダであり無意味です。
〜〜中略〜〜
「正解」
がない事件や事案 に立ち向かう際にやるべきことは、正解を探すことでも、正解を知っている人間を探すことではなく、まず、
・とっとと、正解を探すことや、正解を知っている人間を探すことを諦めること
と、
・現実解や最善解(ひょっとしたら、クライアント・プロジェクトオーナーにとって腹が立つような内容かもしれませんが)を想定・設定すること
です。
次に、この現実的ゴールともいうべき、現実解や最善解を目指すための具体的なチーム・アップをすること、すなわち、
・プロセスを設計・構築・実施するための協働体制を描けるか
・それと、感受性や思考や行動が予測困難なカウンターパート(相手方)である敵と裁判所という想定外要因が不可避的に介在するため、ゲームチェンジ(試行錯誤)も含めて、柔軟な資源動員の合意を形成できるか
という点において、親和性・同調性を内包した継続的な関係構築を行い、(おそらく相当長期にわたることになる)事件や事案を協働できるチーム・ビルディングを行うべきです。


<==================引用終了

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01908_冷静な判断ができない状況に陥るとは

法律相談にて、弁護士から現実をきかされたとき、パニックになって冷静な判断ができない状況に陥る相談者が少なくありません。

また、
「急がば近道」
の思考回路となり、
「急がば近道が正常」
という状況になる相談者もいます。

「特効薬」
「速攻で解決する方法」
を模索するあまり、
「冷静な状況認知・状況解釈・状況評価・課題整理・秩序だった選択肢抽出・合理的試行錯誤」というこの種の
「正解も定石もない事案対処」
において取られるべきステップが、頭に入ってこない状況のようです。

引用開始==================>
まず、持つべきは、未知の課題や未達成の成功に対する「謙虚な姿勢」です。
正解もなく、あるいは正解も定石も不明な課題です。

「こうやれっばいい」「こうすべきだ」「正解はこれだ」「絶対このやり方がいい」
とこの世の誰も断言できることができない課題です。
なぜなら「正解もなく、あるいは正解も定石も不明な課題」だからです。
<==================引用終了

著者は、企業法務を取り扱っていますので、当然ながら、相談者の多くはオーナー経営者です。

日頃、会社経営のかじ取りをしているのですから、さまざまな難局は乗り越えてきていることは想像に難くありません。

それでも、
「正解も定石もない事案対処」
おいて取られるべきステップが、頭に入ってこないのは、

左脳では、
・大事である=簡単にはいかない=専門家の動員も含めた相応の時間とコストとエネルギーがかかる
・正解や効果的な対処法がない=ありとあらゆる試行錯誤をやってみるほかなく、「専門家」に頼んだら、一瞬で解決するような安直な方法がない
ということは、理解できる。

他方で、右脳では、
・大事ではない(と思いたい)=簡単なこと=自分で何とかできるし、それほど、時間もコストもエネルギーもかからない
・探せば、どこかに、正解や安直な方法や、一瞬で都合よく解決できる専門家がいるはず
と思いたい、というバイアスが働くからでしょう。

作戦行動に必要なのは、ファンタジーではなく、リアリティです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01907_パワハラを理由に社員を降格する場合

たとえば、パワハラ等が起きたことを理由に、従業員を降格させようという場合、会社側として、
「パワハラ等が起きた」
ことをリーガルマターとして捉え、将来の訴訟を予知して、訴訟における論争や立証まで視野に入れて、状況をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化 することが肝要です。

要するに、

1 「パワハラ等が起きた」という事実を、きちんと調査して、事実として確定済み
2 1をきちんと明確かつ具体的に、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化する
3 「パワハラ等を起こした」とされる従業員に告知聴聞の機会といった手続保障を与える
4 3において、当該従業員が認めている

1~4のようなものがなく、単に、一方的に、根拠もなく
「あいつはパワハラやった」
と言うだけ降格させると、
「理由なく降格している」
と争われる可能性があります。

言い換えると、
「降格が有効である」前提
が、容易に覆滅される危険を内包している、といえるのです。

たいていの企業は、 1~4のような手間や負荷を惜しみ、事態をリーガルマターではなく、ビジネスマターとして、甘く、軽く捉えて、乱暴な処分を一方的に行うことが多いです。

その当然の帰結として、多くの企業は、労働訴訟で負けて負けて、負けまくるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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