01881_紛議になったら

交渉セオリーとしては、
「条件を先に切り出したほうが不利」
です。

参照リテラシーとしてhttps://9546.jp/2019/10/23/00676_%E4%BA%A4%E6%B8%89%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%8C%E6%9D%A1%E4%BB%B6%E3%82%92%E5%85%88%E3%81%AB%E8%A8%80%E3%81%84%E5%87%BA%E3%81%99%E3%80%8D%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AE%E8%87%B4/

なお、
「条件を先に切り出す方が損」
というのは、相手方・当方どちらにも当てはまるわけであって、当方から仕掛けるのは戦理に反します。

したがって、
・両睨み状況で放置する
・相手方がしびれを切らして、交渉条件を切り出すのを待つ(なお、仮に条件を切り出しても、いきなり受諾するのはNGです。その後の交渉手法は、上記サイトで教示しています)
・相手方が、資源動員を決意して、訴訟に打って出るなら出るで、判例を使って応戦する(→といっても、訴訟を提起するには、あまりに動員資源負担が過酷で、しかも、裁判例の存在によって、勝率と期待値が逓減しているので、冷静に考えたらコスパがどんどん悪化しているので、感情ではなく勘定で思考するなら、訴訟提起という作戦展開は非常に厳しい、ということになります。なお、この点も、下記サイトを、攻守ところを変えてお読みください。相手方が勘定面でのジレンマにさらされている状況を想定いただければ、正しく俯瞰的観察ができましょう)

https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO2843037022032018000000

なお、訴訟となれば、やりとりは裁判所が閲覧しますから、ジェントルでエレガントな書き方をする必要があります。

心証形成に影響しかねないので、気をつけましょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01880_紛議にいたるまでにすべきこと

紛議にいたる原因のひとつとして、相手方の事務知性・事務能力の欠如がある場合があります。

それは、相談者が発注し、相手方が受注した仕事内容の技術や完成レベル・完遂レベル等の能力とは別次元のスキルセットとして、の話です。

事務知性や事務能力というのは、
・想定外の事態を、平時として軽視・楽観視しない
・想定外(=すなわち自分の都合や常識では図りし得ない事態)の事態を、自分の都合や常識で判断しない
・想定外の事態に接したら、決定判断できる人間との、報連相を絶やさず、自己判断・自己実施をしない
というプロトコルを構築し、実践するリテラシーとスキルを指します。

「このくらいいいじゃないか」
「このくらい普通だよ」
「このくらいでガタガタ言うのはおかしい?」
と、相手が言うのであれば、それらはすべて、幼稚で自分勝手で甘えた言い方であり、紛争状況においては、すべからく不利に作用します。

また、これに加え、事態をさらに混乱させることがあります。

それは、相談者自身が、
「発注したのは自分だから」
「長年の付き合いだから」
などという理由で、相手方に同調し、(意識・無意識関係なく)相手方を庇おうとするるメンタリティがある場合です。

本来なら、相手方を加害者として認定し、その不備を責め、責任を追及するところです。

ところが、責任を追及するのに及び腰になってしまう、でも、モヤモヤはとまらないし、明らかに紛議になるほどオカシイ・・・、と悩みに悩んで、時間がたってから、弁護士に相談するのです。

「弁護士に相談するほど、の事態である」
と思うのであれば、まずは、相談者自身が、事態そのもの、そして、事態を招いた原因を冷静に認知、評価、解釈することが肝要です。

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01879_民事裁判では、証拠の信用性・重要性と結論との相関性は別概念

民事裁判では、何でも証拠になります。

ただ、信用性と、重要性と、結論との相関性は、別概念です。

相手に酷いことを書き送ってしまった、としても、内容にもよりますし、一般的な言い方としてはあまり気にしなくてもいいでしょう。

たとえば、口が悪くて、メール等で
「あいつ死んだほうがいい」
と書くとします。

これが証拠になる、というなら、それこそ、書いた人は、今頃刑務所で服役するか死刑になっていなければなりません。

幸い、この国は、そのような制度運用にはなりません。

ただ、あまり気が置けない相手に不用意なことは言わない方がいい、ということではありましょうが。

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01878_「開業プロフェッショナル(開業医、経営弁護士等)の人生設計」について_その3_税務課題の対処

開業したばかりの個人事業主や開業プロフェッショナル(開業医、士業等)にとって、税務課題は、面倒で厄介なもの、と感じるかもしれません(もちろん、税理士の方は除きます)。

年収が億単位もあるにもかかわらず、白色申告で通している方もいると仄聞しますが、一般論としては、青色申告の各種メリットと、税務署にいかがわしい目でみられないようにするためには、多少手間がかかっても青色申告がよいです。

帳簿作成は、言わば、ビジネス活動(金儲け)というプレー(営み)についての、スコアをつける活動と考えればイメージがもてると思います。

このスコアをつける手法は、
「複式簿記」
という、ルネサンス期に発明された、少し変わったスコア記入方法で、手入力で行うと、相当面倒ですが、これはもはや過去の話です。

平成になって会計ソフトが登場し、誰でもできるようになり、令和の時代になると、これがさらに洗練されたほか、外注サービス等もたくさん登場しました。

もちろん、毎日、自力で帳簿を付けるということも可能ですが、そんな時間や労力があれば商売に振り向けた方が生産的です。

年商1億未満程度であれば、帳簿作成代行もしてくれる税理士や仕訳入力代行業者にしてしまえ、という割り切りもあるでしょう。

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01877_「開業プロフェッショナル(開業医、経営弁護士等)の人生設計」について_その2

法人化するか個人開業とするかは、手段や手法の議論であって、ゴールデザインによって変わってきます。

たとえば、医療法人化を検討する場合、

・税務対策(個人・一般法人と比べて税金が優遇されている)
・分院や介護施設など複数の施設を展開の可能性
・承継対策(持ち分のない医療法人の資産は相続財産には含まれない)
・対外的信用度

といった、いくつかのファクターによって決定されます。

それは、一義的な正解があるわけではなく、是非の問題ではなく、選択の問題です。

1つ言えるとするなら、法人化すると、確実に面倒が増えます。

開業を検討する医師をターゲットにしたコンサルタントが、クライアントである医師が自己を必要以上に大きく見せることにこだわるようなタイプとみるや、
「医療法人の方が、対外的信用を獲得しやすい」
などといって舞い上がらせ、コストと手間がかかる医療法人化を勧めることがあるかもしれません。

この場合、登記に関する事務、社員総会議事録や理事会議事録作成に関する事務等、個人開業には生じ得ない雑務が発生しますが、これらはすべてコンサルタントの仕事になります。

また、理事の員数合わせのため、当該コンサルタントやその息のかかった人間が理事に入り込んできて、当然、理事報酬等の形で財政的にマイナスが生じるほか、経営に干渉される危険が増大します。

このように、世の中には、医療法人化のダークサイドも、確実に存在します。

繰り返しになりますが、医療法人化にはメリットもありますが、トレードオフ課題もあることを忘れてはなりません。

慌てず、あるいは、慌てさせられず、冷静に考え、選択するべきです。

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01876_訴訟と時間軸の関係

有事になると、相手方は、戦争になるくらいの勢いで全集中で争うでしょう。

もちろん、こちらも、争います。

あの手、この手、奥の手、禁じ手(といっても、当方は相手方の出方の検討に用いるのみで実施は控えますが)、寝技、小技、反則技(といっても、当方は相手方の出方の検討に用いるのみで実施は控えますが)を繰り出し、総力戦で争います。

しかし、争うといっても、結局、互いに論戦をしても埒が明きません。

そうなると、相手は、訴訟を提起して打開するほか、選択肢がなくなります。

訴訟を提起するためには、自身の状況をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化した形で訴状としてまとめ上げ、さらに、これに客観的痕跡(証拠)を整理・添付するなど膨大な事務資源・管理資源の費消が必要となり、相当な時間とコストと労力が必要となります。

当然、訴訟提起するまで、一定の時間的冗長性が生じますが、応訴側は、応訴側の主張とスタンスを堅持して、応訴側の論理にしたがって行動すればいいだけです。

訴訟になった場合ですが、短くても8ヶ月、下手をすれば、年単位でかかります。

しかも、裁判といっても、白黒をつけることを最優先課題として意識されているわけではありません。

判決は、下策とされ、和解交渉が失敗あるいは不可能な場合の、嫌悪・忌避すべき最後の手段であり、裁判官は、何度も、何度も、何度も、双方に和解を提案し、和解成立に尽力します。

「判決を書くのが面倒」
「手っ取り早く解決件数を稼ぎたい」
という卑近な事情もあるのでしょうが、判決を書いたところで、どちらかが控訴したら紛争が解決せず、貴重な国家資源をつまらない争いのために費消させられ、さらには、控訴された挙げ句、原判決が取り消されたら、自身の体面や出世にも関わります。

結局、訴訟は加害者側が圧倒的に有利になる、という日本の裁判制度の致命的欠陥に守られ、ゲームを有利に進められることになります。

裁判制度という
「被害者の救済システムとしては、あまりにポンコツなシステム(加害者にとっては非常に頼もしい防御的制度)」
のおかげで、また、被害者が負担しなければならない
「時間と労力とコストの壁」
によって、加害者サイドが守られることがあります。

もちろん、こちらが被害者であれば、その逆の状況に陥ります。

志の低い言い方になりますが、民事紛争の局面に限っては、
「モメても、決して、被害者側になるな。加害者になるように状況構築をせよ」
「なるんだったら、被告が有利」
「加害者、被告に九分の利あり」
「モメたら、理由はともかく、返還請求や原状回復を受ける立場を構築できるよう、とっとと事実や状況を動かせ」
というのが、戦理にかなった方法論となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01875_税務についての考え方

「税務については税理士が絶対に関与しなければならない」
のでしょうか。

税理士は、野球部でいえばスコア係です。

実は、申告納税は、スコアが完全な正確性を維持していなくても、可能です。

スコアを間違ったとしても、あとから修正すればいいだけです。

このスコア付けを意味する会計原理は、
「適正な期間損益計算」
ということをゴールとする体系です。

「適正」
とは
「正確無比」
とは異なる概念です。

会計業界においては、
「適正」
とは、
「適」当に
「正」確である
の意味である、
という俗説もあるくらいで、基礎資料が欠けていたり、正確無比なスコアが完成しないからといって、不眠症になるくらいにまで悩む話ではない、ということなのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01874_有事における始めの戦術課題

有事において重要な戦術課題とは、
「時間的冗長性を確保すること(時間資源を確保すること)」
です。

相手が
「まずは、説明をさせてくれ。話をしに行く」
と、連絡をしてきたとしても、
「言いたいことがあれば、文書でよこせ」
と、応答するだけです。

相手に気を使う必要など、ありません。

敵対者には、何一つ情報を与えるべきではなく、それには、距離を置くのが一番なのです。

このようして時間を確保しながらも、当方では、弁護士が代理人として介入すべく、プロジェクトとして立件する準備をすすめます(ストーリーを構築していきます)。

弁護士が代理人として介入するまでの対処指針としては、
・なるべくこちらは口頭で
・しかもこちらからは事務的なもの以外、何も話さない
・相手からのメッセージについては、筆談を要求すること
です。

戦略合理性のためには、この対処を指針とすることが、肝要なのです。

同じ状況対処をして戦略優位性を構築している極めて利口な組織が2つあります。

中央官庁と銀行です。

役所や銀行は、口頭であれやこれやと高圧的にメッセージを出してきます。

そして、認識や見解を照会しても
「上に聞かなければわからない」
と、平気ですっとぼけます。

そして、役者や銀行は、メッセージの内容については、決して文書にはしません(証拠に残るから)。

他方で、役者や銀行からは、
「こんな文書を出せ」
「これに印鑑を押せ」
と、すべてにおいて文書を徴求します。

このような功利的対応を、そのまま自身に置き換えてみることです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01873_交渉に失敗する人間がよく口にする言葉

「だろう」「べきだ」「はずだ」
という言葉は、交渉に失敗する人間がよく口にする言葉です。

「だろう」「べきだ」「はずだ」
は、身勝手な妄想の上に作戦計画前提を立脚することを端的に表す言葉であり、作戦立案上の知性の欠如を物語っています。

相手は、こちらからの提案に対し、
「若干ながらも汲み取ってくれる」
意思は、ないのですから。

まずは、
「だろう」「べきだ」「はずだ」
をつかっていないか、を振り返ることが肝要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01872_企業のトップとは

企業とは何でしょうか?

個人事業と何が違うのでしょうか?

これについては、

でお伝えしているとおりです。

企業のトップは、
「企業のメカニズムを理解し、持続可能な形で、組織を運営して、できる限り長く組織を存続させる」
というミッションを与えられ、それにふさわしい能力と責任感を実装する、ただ、それだけかと考えます。

もちろん、良識や常識を実装することは、人としてベターですが、企業のトップとしては、あくまで付加的実装要件です。

良識や常識があったところで、
「企業のメカニズム(組織ぐるみのカネ儲け)を理解し、持続可能な形で、組織を運営して、できる限り長く組織を存続させるにふさわしい能力と責任感」
が欠落していれば、企業のトップとしてはふさわしくありません。

トップは嫌われ者です。

逆に、好かれるトップは、舐められるトップであり、統治能力が疑われる、ということになります。

冷徹な論理ですが、明確にしておかないと、混乱し、勘違いしてしまうのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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