森友学園問題に関する財務省の決裁文書改ざんが原因で自殺した財務省近畿財務局の元職員、赤木俊夫氏の妻が、国と同省理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官に損害賠償を求めた事件で、2021年12月15日、大阪地裁で国が、
「請求認諾」
という奇策を使って、約1億700万円の損害賠償責任を認め、訴訟を強制終了させてしまう、という事件が報道されました。
これにより、裁判は終結し、原告は、法廷で改ざんに関する証拠開示や当事者の証言を国側に求めることができなくなり、事実の解明は困難になる反面、国側は、事態を隠蔽して逃げ切ることに成功することが確定しました。
この
「請求認諾による訴訟の強制終了」
については、
という形で本サイトに手法として紹介しております。
また、具体的な戦術活用例として、
という仮想ケーススタディでも紹介しておりました。
かなりあざとい手法であり、どちらかというと、裏技、寝技、反則技、禁じ手に属するようなものですが、筆者としても、まさか国が使うとは思いませんでした。
そのくらい、国は追い詰められていた、ということだと思います。
訟務検事は、検察庁や裁判所からの出向者であり、財務省とはまったく別の哲学・価値観・美意識で動く存在ではありますが(検察官も裁判官も、独任官庁であり、単独で国家意思表明をし得る、いわば、国務大臣と同じ権限をもっているので、誰かの「お願い」を考慮することはあっても、誰かの「指示や命令」で動く存在とは異なります)、財務省として、拝んで、拝んで、拝み倒したか、司法予算の拡充とかのバーターで、アンフェアな汚れ仕事をしてもらったのかもしれません。
いずれにせよ、筆者としては、主に、
「不都合を隠し、組織を防衛するためなら、何でもあり」
という感じで手段を選ばない一般企業向けに、
「あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、裏技、反則技」
の一種として、紹介したものですが、まさか、天下の日本国政府がこんなあざとい手を踏襲するとは想定外でした。
筆者としては、日本という国家も随分柔軟になったというか、手段を選ばなくなったなぁ、と感慨深く報道を受け止めました。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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