有事の際、総大将(プロジェクトオーナー)は依頼者です。
状況判断権限および最終責任は、総大将(プロジェクトオーナー)である依頼者にあります。
一般的に、有事の素人(軍事におけるシビリアン)である依頼者は、有事のプロ(軍事におけるミリタリー)である弁護士の
「状況に対する認知、評価、解釈、展開予測」
を異議なく採用します。
たとえ、それが、依頼者にとって、どれほど、非常識で、不愉快で、自分の感性に反するとしても。
たとえ、依頼者が、どれほど、独自の
「状況に対する認知、評価、解釈、展開予測」
を強くもっているとしても。
ところが、依頼者によっては、最終責任は自分にあるからと、独自の
「状況に対する認知、評価、解釈、展開予測」
を採用する人がいます。
このような場合、弁護士は、その依頼者独自の
「状況に対する認知、評価、解釈、展開予測」
に拘束されることになります。
たとえ、それが正しくなくても、合理的でないがために認識がくるくる変わろうとも、
「やっぱり弁護士の言う通りでした」
とあとから(時間差で)作戦構築前提が一致したとしても、
「状況判断権限及び最終責任は依頼者にある」
からです。
弁護士は、たかが傭兵に過ぎないのです。
シビリアン・コントロールという鉄則は、弁護士が対処する作戦にも当てはまります。
ミリタリー(軍事の専門家)がどれほど助言を与え、状況認知の観察手法を披瀝しても、シビリアン(素人)が、
「あなたの見方や展開予測は間違っている」
と一蹴すれば、それが所与とせざるを得ないのです。
・闘争方針策定のための状況認知・状況評価・展開予測の誤り
・闘争方針構築がフォアキャスティング手法(行き当りばったりの出たとこ勝負)で冷静さ、緻密さに欠ける
・闘争資源としての資金の問題
・闘争資金捻出以前の収支状況の問題
これらは、弁護士に違和感があって、やりにくさを感じることの一例です。
問題を因数分解して、問題毎に冷静に分析して、状況を認知し、冷静に評価・分析し(傍目八目といいますが、外部の客観的な視点をもつ第三者の評価や解釈等について謙虚に耳を傾け)、合理的に展開予測を行い、現実的なゴールを設定し、ゴールから逆算したバックキャスティング方式で取り組む、という推奨されるべき対処から大きく逸脱すると、どのように戦うか以前の問題として、負け戦になりかねません。
依頼者は、総大将(プロジェクトオーナー)であっても有事の素人(軍事におけるシビリアン)であることを自覚することが、状況改善の肝といえましょう。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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