弁護士と、クライアントとの関係は、民主的な文民統制における、ミリタリー(軍人)と、シヴィリアン(政治家)の関係と同じです。
・ミリタリー(軍人。弁護士の暗喩)は、奉仕すべきシヴィリアン(政治家。クライアントの暗喩)に対して、判断の前提たる選択肢を抽出整理し、上程します。
・その際、各選択肢には、客観性を貫いた、怜悧なプロコン情報(長所短所情報)も付加します。
・最後に、選択するのは、シヴィリアン(政治家、クライアント)です。
・どんなに馬鹿げた、どんなに悲惨な結果が予知される、どんなに経済合理性なき選択であっても、ミリタリー(軍人、弁護士)は、選択には介入しません。
・なぜなら、結果を負担し、責任を負うのは、シヴィリアン(政治家、クライアント)だからです。
・選択ができるのは、失敗した場合に、誰にも八つ当たりできず、ただただ、その選択帰結を負担する、シヴィリアン(政治家、クライアント)だけだからです。
・ミリタリー(軍人、弁護士)は、シヴィリアン(政治家、クライアント)が決断した選択肢は、どんなに愚劣で不合理で不経済なものであっても、稼働環境(兵糧や資源)が続く限り、当該選択肢が、正解になるよう、努力をします。
・ただ、努力は、あくまで、ミリタリー(軍人、弁護士)が自己制御課題として、自らの営為でなしうる範囲に限定されます。
・他方で、作戦行動を行う上では、外部環境や、他者動向(相手方や裁判所)に依存する割合が大きく、神ならざるミリタリー(軍人、弁護士)では、他者の制御は、不可能です。
・ミリタリー(軍人、弁護士)は、稼働環境や外部環境の制約下で、倫理にしたがい、誠実に行動する限り、結果については一切無答責の立場です。
たとえば、09174のような労働事件の場合、弁護士が、クライアントに対し、
「経験則上の期待値をふまえた経済的合理性に基づく判断」
を助言はできても、クライアントから了承をもらわないことには、相手方に対し、勝手に、条件提示等は一切できません(クライアントとの関係では越権行為になりますし、相手方代理人との関係でも、不誠実な交渉したことで責任が発生しかねません)。
選択するのは、クライアントです。
なぜなら、結果を負担し、責任を負うのは、クライアントだからです。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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