00712_契約書のチェックの段取りと実務その9:印紙の貼付

契約書に貼付する印紙について述べます。

原則として、契約書には印紙税額一覧表に記載されたとおりの印紙を貼ることが義務づけられております。

「印紙税が賦課されるかどうか」
「賦課されるとしてどのくらい賦課されるか」
については、契約書の標題や名称ではなく、契約の具体的内容によって判定されます。

適正な収入印紙を貼付しておらず、これが発覚した場合、印紙税額の3倍に相当する額の過怠税が賦課されます(自主的に申し出た場合は、11.1倍)が、収入印紙の貼付漏れがあったとしても、契約書の証拠能力には一切影響がありません。  

すなわち、印紙税を払ったか払わなかったかという問題は税法上の問題にすぎず、契約上の問題や証拠適格の問題とはまったく関係ないのです。

運営管理コード:HLMGZ14-4

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00711_契約書のチェックの段取りと実務その8:あえて契約書を作らないケース

ところで、
「どのような取引のどのような立場であっても、事細かな取り決めを定めた分厚い契約書があったほうが安全だ」
というものではありません。

たとえば、「M&Aのセルサイド(売り手側)」にとっては、きっちりとした契約書は百害あって一利なしです

すなわち、M&Aのセルサイド(売り手側)にとって最も有利な法的立場は、
「現状有姿で、売り逃げる」こと
に尽きます。

M&Aの契約書のボリュームを増やすことに比例して、セルサイドは、売った後もさまざまな責任を負担させられることになりますので、ごつい契約書はあえて避けるべきなのです

要するに、会社内容が見掛けよりボロボロであろうが、見えざる債務や偶発的リスクが山のようにあろうが、保証なんか一切せず、
「発行する書類は代金の領収証だけで、その他の文書へのサインは一切拒否」
という状態こそが、セルサイドにとって功利的に最も正しい取引姿勢ということになります。

その他、コンサルティング契約におけるコンサルタント側や委託契約の受託者側は、
「自分の義務はあいまいにしておきながら、客の手数料支払義務はきっちり明確に書いておく」
ことが功利的に正しい行動です。

こうしておくことにより、
「適当な仕事をしておきながら、ギャラはがっつりいただく」
という当事者にとってオイシイ結果が転がり込むのです。  

以上のように、
「契約書が詳細であればあるほどベター」
とは限りませんので、契約書をつくるかつくらないか、つくるとしてどの程度の内容とするか、という点については、よく意味を理解して判断すべき必要があります。

運営管理コード:HLMGZ14-3

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00710_契約書のチェックの段取りと実務その7:契約書作成手順

契約書の内容は、大まかに分類すると、
1 本体部分
2 一般条項
にわかれます。

1 契約書本体部分

契約書本体部分において行うべきことは、取引内容の特定と明確化です。

すなわち、契約当事者が互いに約束した義務の内容を、六何の原則(4W2H)にしたがって文書化していくことになります。

六何の原則(4W2H)とは
「何時、誰が、何処で、何を、どのようにして、どれだけの量(あるいは金額)、どうすべきか=When, Who, Where, What, How and How much」
という形で特定し、明確にしていくことです。

とはいえ、とかく物事をあいまいにしたがる日本人の気質が災いして、このような本質かつ単純な文書化作業を怠るケースが散見されます。

たとえば、
「乙は、甲に対して、今後甲が指定する乙取扱商品について、甲が求める数量を、適宜の時価にて、追って協議する日時までに、甲指定の場所に送付する」
という契約書をみかけることがあります。

六何の原則(4W2H)に照らすと、前記条項においては取引の中核部分は一切明確になっておらず、ごたごた書いているものの、
「結局、何も決まっていない」
ということしか書いていないことがわかります。

この六何の原則に基づかず、曖昧な契約書の有害性は、
「日本昔話型文書」
は法務文書としては使えないという形でお話します。

日本昔話の出だしは、
昔々、あるところに、じっさまとばっさまがおった・・・・・
と始まります。

しかし、このような叙述の文書を示されても、事実を判断認定する側からすると、
昔々、って何時のことやねん!
あるところ、って、お前、それどこのことやねん!
じっさま、ばっさま、って名前なんやねん! 名乗らんかい! わからへんやろ!
とツッコミ満載で、認定の道具としての証拠の価値はゼロと言わざるを得ません。

実務でも、甲(甲の子会社あるいは関連会社を含む)と乙(乙の親会社を含む)とは、乙の求めに応じ、別途定める品質の、甲が販売あるいは取り扱う商品について、別途両者が定める価格で、別途定める納期で、別途定める方法において、売買契約を別途締結し、当該売買を行うみたいな、
「日本昔話型契約書」
を見ることがあります。

そして、その後、何の文書もなく、取引がなし崩し的に進んでいき、やれ品質がおかしい、納期が割れた、価格が高い、デリバリーの方法がいい加減で途中で半分壊れた、と訴訟になり、この
「日本昔話型契約書」
を唯一の証拠として、お互いが仁義なき訴訟を延々続ける、という光景を目にすることがあります。

このように、こういういい加減な契約書を前提に取引をはじめると、たいていが大きなトラブルに見舞われることになります。

契約本体部分がうまく記載できないとすれば、それは言葉の問題ではなく、
「まだまだ取引条件の詰めが甘い」
ということですので、契約書を書く以前の問題として、きっちりと中身を詰めることが必要です。

契約自由の原則の派生原則たる契約内容決定の自由の原則に基づき、
「契約内容をどのようなものにするか」
という点について決まりや法則はありませんが、解釈をめぐって紛争にならないよう確定された合意内容が適切に表現され、紛争が生じて司法救済を受ける際にスムーズに自らの主張が裁判所に理解されるよう、要件事実論(法的三段論法を意識して、法規という大前提の下、どのような小前提を主張することが、所要の法的効果をスムーズに導くのが有益か、という民事訴訟実務上の理論)を意識した記載とすることが求められます。

なお、一般的なビジネス契約書には下記の
「一般的なビジネス契約書に盛り込む内容」
に列記した内容を盛り込むことが多いようです。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

前述のとおり、契約自由の原則(契約内容決定の自由)が存在する関係で、ビジネス上のニーズに基づき創意工夫を凝らし、様々な権利義務や取引規律を作り出すことが可能です。

例えば、守秘義務契約、提携契約、継続的供給契約、代理店契約、フランチャイズ契約、技術ライセンス契約、技術指導契約、OEM契約、共同研究契約、開発委託契約、コンソーシアム契約、ジョイントベンチャー契約、経営委託などは、民商法には記載されていない契約(非典型契約)ですが、企業がビジネス上のニーズに基づいて創出し、普及するようになった契約モデルです。

契約書作成法務は、
「契約自由の原則からくる当事者の意思を契約書の形に残しておく」
ことの重要性に基づくことはもちろん、契約書を重視するグローバル・スタンダードに伍していく必要性からも重視されており、ジャパニーズ・クラシカル・スタイルではなく、アングロサクソン・スタイルに基づく合理的で明快な表現による紛争に強い体質のものが求められていることにも留意が必要です。

2 一般条項部分

契約書においては、取引毎に異なる取引条件を記載した部分のほか、どのような契約においても通常記載されるべき項目というものがあり、これは一般条項部分といわれます。

一般条項部分とは、具体的には、解除条項や賠償条項や管轄条項といったものであり、その内容がほぼ定型化されています。

したがって、1の契約書本体部分と違い、一般条項はいろんな書式やサンプルから拝借してしまえばある程度形を整えることが可能であり、“見た目の言語の難しさ”にビビりさえしなければ、誰でもできる作業です。

一見難しそうに見える契約書ですが、以上のとおり、通常の国語能力・文書能力で十分対応できるものです。

とはいえ、取引価額が高額な契約や、聞いたことのないような契約や複雑な契約については専門家の助言を得た方がいいかもしれません。

運営管理コード:CLBP85TO86・HLMGZ14-2

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00709_契約書のチェックの段取りと実務その6:契約書作成のルール

契約書というと、甲とか乙とか古めかしい言葉がいきなり出てきて、全体的に漢字や文語調の言い回しが多く、高度で専門的な言語能力がないと作成できないのではないか、という印象がお持ちの方も少なくないと思います。

ですが、結論を言いますと、契約書のつくり方や言い回しには特段の決まりがあるわけではありません。

強いて言えば、
「約束の内容が明確に記載してあり、読んで何が書いてあるかわかる程度の文書であれば、何でもOK」
という極めてユルいルールがあるだけです。

契約は口頭でも成立するものです。

その意味では、契約“書”は、契約成立の絶対条件でもなんでもなく、
「あってもなくてもいいが、あったら、後からモメるのを防げる」
という任意の証拠に過ぎません。

ですから、
証拠として使える程度のことが書いてさえあれば問題ない、
といえるのです。

したがって、
「甲、乙、丙」でなくて「A、B、C」でも問題ありませんし、
すべて平仮名で書いても大丈夫ですし、
丸文字を使ってギャル語丸出しの契約書もOKです(ただ、「約束の内容が明確に記載してあり、読んで何が書いてあるかわかる程度の文書」である必要はあります)。

契約書に用いる紙も、コピー紙である必要はなく、わら半紙でも、紙ナプキンでも大丈夫(新聞紙にマジックで書くとさすがに書いてある内容が判りませんので問題があります)。

実際、暴力団関係者とモメ事が起こった場合、暴力団関係者から
「ファミレスで書かせた紙ナプキンの示談書や念書」
といった文書が提出されたりします。

このように、契約書は、甲でも乙でもAでもBでも同じであり、漢字を使おうが丸文字を使おうが関係なく、わら半紙に書こうがトイレットペーパーやティッシュペーパーに書こうが構わないのですが、裁判になったときに証拠として機能するものですから、この点を意識しておく必要があります。

すなわち、裁判官が読んで理解・認識することが前提になっておりますので、
「契約書の体裁にルールはない」
といっても、裁判官が妙な印象を抱くような契約書を作った場合、せっかく作った証拠が機能しなくなる危険はあります。

例えば、
わら半紙に丸文字でギャル語全開のM&A契約書や、
1億円の損害賠償債務を承認する紙ナプキンの念書
が証拠として出されても、裁判官の理解の範囲を超え、
「これは契約の証拠ではなく、タチの悪い冗談か何かだろう」
と判断される可能性があります。

その意味では、時間と手間の許す限り、取引価額に比例してきっちりとした内容の契約書をつくっておくべきことが推奨されます。

運営管理コード:HLMGZ14-1

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00708_契約書のチェックの段取りと実務その5:契約書を作成・チェックする前の必須の前提作業たる「契約内容の明確化と合理性の検証」の具体的手法

取引の交渉がまとまった、という段階において、改めて、当該交渉によってまとまったとされる
「約束内容」
の具体的内容を確認・明確化するとともに、その内容の合目的性や経済合理性等を精査しなければなりません。

そうでないと、できあがった契約書が、
狂った契約書、
馬鹿げた契約書、
不利な契約書、
何の目的かはっきりしない契約書、
意味が不明な契約書、
曖昧な契約書、
不明瞭な契約書、
となる危険性を除去できません。

営業部や経営企画等、取引交渉を行う事業部局が相応にしっかりしていれば、交渉の際に、条件を具体的に詰めますし、その段階で、異常な内容や不利な内容を排除したり折衝によって調整しますし、交渉結果は、明瞭かつ具体的に、タームシートといったものに記述されます。

中には、正式な契約に至る前に、タームシートレベルのものをとりまとめた、MOUやLOIといった形で、相互に文書確認をする場合があります。

このように契約交渉担当部署がしっかりしていれば、タームシートや交渉議事録やメモ、さらにはMOUやLOI等を参照しながら、これをさらに法的なストレスチェックをして、不安なことや、リスクの萌芽を、文書化して、加筆・上書きしていき、契約書の形でまとめていけば契約書完成に至ります。

他方で、契約交渉担当部署が、そのような堅実な実務に不慣れな場合や経験未熟な場合、契約書作成に前置すべき必須の前提手続きとして、法務サイドにおいて、
「当該交渉によってまとまったとされる約束内容の具体的内容を確認・明確化するとともに、その内容の合目的性や経済合理性の検証結果を示せ」
「そういうものが決まっていないのであれば、法務作業以前の問題故、ビジネスサイドにおいて、再度、詰めの交渉をやり直せ」
と前置プロセスの完遂を求めて、事案を突き返すべき必要が出来します。

この際、契約書作成依頼や契約書校正依頼が法務部に持ち込まれる際、これら法務作業のキックオフ前提として、
「交渉によってまとまったとされる約束内容の具体的内容を確認・明確化するとともに、その内容の合目的性や経済合理性の検証結果」
を文書で報告ないし連絡させる、というプロトコルを確立することが、その後の業務をスムーズにしたり、あるいは、交渉段階の漏れ抜けやミスやエラーを防止したりする上で、効果的です。

例えば、
「契約内容の確認及び合目的性・合理性検証シート」
といった報告ないし連絡書式を整備し、
法務部に契約書作成や契約書校正といった法務サービスを法務部に発注する際、必ず、この
「合性検証シート」
にしかるべき記述をさせ、その上で、法務部に発注する、という方法です。

この
「契約内容の確認及び合目的性・合理性検証シート」
に記述させるべき内容は、前述の
「営業部や経営企画等、取引交渉を行う事業部局が相応にしっかりしていて、交渉の際に具体的に詰め切った取引条件が明瞭かつ具体的に記述されたタームシートや、当該取引によって実現されるべきゴールやメカニズムがリスクとともに検証された収益実現プロセスの資料」
に盛り込まれるべきものと同等のものです。

一例としては、

・案件名(社内コードネーム)
・責任者
・新規/既存(の変更や拡大)の別
・決裁者
・案件目的(カネを増やす、支出を減らす、時間を減らす、手間をへらす、安全保障、認知改善等)
・案件概要
・投資回収メカニズム
・投資回収上のリスク及び課題
・予算や動員資源の全容
・投資金額
・RFP(要求定義及び提案書及び関連資料)、見積書
・取引先の名称や概要
・取引先の詳細
・取引先の選定方法(他の候補先、相見積の有無、相見積の方法、選定の基準)
・選定理由
・交渉の経緯と議事録及び資料(タームシートやMOUやLOI等、交渉成果が整理されまとめられた成果物があれば、これを含む)
・投資による定量的メリット
・案件収益による投資回収期間と試算の方法・内容・根拠
・「合理的経済人たる金融資本家の冷静かつドライかつシビアの目線」を観察基準目線として評価した、当該投資の合理性・功利性・安全性・競争性・非代替性の評価・検証(合理的投資家が、投資案件として評価した場合の採算性・合理性等のストレス・テスト)
・上記に対する補足説明
・その他

といった事項に記入させ、この記入プロセスを通じて、契約内容を具体化させ、契約の合理性を確認検証させる、といった方法です。

企業によっては、このように、取引内容を具体化もせず、合理性も確認検証しないまま、契約書作成に突入し、取引をキックオフするところもありますが、できあがった内容は、どれほど立派で重厚な契約書であっても、所詮、いい加減で適当な内容の契約を表現したに過ぎず、法的な問題以前の、経済合理性を充足せず、取引が失敗する危険性を内包しているものと言わざるを得ません。

そうなると、取引の失敗や、ツメの甘さゆえのトラブルは、
「構造的にデタラメで、ツメの甘い、無内容」
な契約書を頼りに紛争になっても、勝てるどおりはありません。

取引のトラブルに遭遇して、「この契約書を証拠に裁判で戦って、勝訴したい」という話になりますが、当該証拠となるべき契約書が、「相応に難解で高級な言語で書かれた体裁の代物」であっても「構造的にデタラメで、ツメの甘い、無内容」なものを「高級な言語で表現しただけ」に過ぎず、このような貧弱な証拠を片手に訴訟を提起したところで、結果、壮大な無駄で無益で有害でミゼラブルな営みとなり、時間とカネと労力を費消しただけの結果に終わります。

このような悲喜劇に遭遇しないためにも、
「相応に難解で高級な言語で書かれた体裁の代物」
というだけで安心せず、
当該契約書が表現せんとしている取引の合理性もきっちり検証するべきです。

そんなことで、トラブルになるのか?
という声が聞こえてきそうですが、実際、
「相応に難解で高級な言語で書かれた体裁の代物」
に妙な安心を覚えて、取引内容の合理性を確認せず、結果、不合理極まりない取引にサインをしてしまって、大きなトラブルに遭遇して、債務超過に陥った東証一部上場企業(その後東証二部に降格し、現在は、また一部に昇格)があります。

このあたりの顛末は、

に記載しております。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00707_契約書のチェックの段取りと実務その4:契約書を作成・チェックする前の必須の前提作業

さて、取引交渉が一段落し、いよいよ契約書を作成する、という話になり、法務担当者なり弁護士として、契約書起案作業に入ろうとします。

あるいは、取引交渉がまとまり、先方が契約書を作成することになり、送られてきた契約書を、法務担当者なり弁護士として、契約書の査読なり評価なり校正なりをするという段階になりました。

では、そのまま契約書起案や契約書レビュー等作業に突入していいのでしょうか?

いえ、契約書という文書作成ないし校正作業をする前に行うべき必須の前置作業があります。

そもそも、契約書とは、端的にいえば、記録であり、証拠文書です。

ビデオや音声記録と同様、発生した事柄の正確な記録に過ぎません。

ビデオ作品に、知的で理性的で教養あふれるドキュメンタリーもあれば、お笑いやバラエティーや、はたまたAV(アダルトビデオ)といったものまであり、品位の高低や内容の充実度や作品のクオリティといったものは、撮影に使用されたビデオ機材や撮影者の品性や媒体のスペックはまったく無関係であり、
「記録された対象事象の内容」
に完全に依存します。

要するに、狂った内容や馬鹿げた内容や低劣な事象が発生し、これをビデオ動画映像に収めた場合、どんなに高級なビデオカメラを使って、どんなに品性高潔な撮影者を使っても、出来上がった動画作品は、当然ながら、狂った内容や馬鹿げた内容や低劣な内容となります。

漫才や、バラエティのドッキリ現場や、男女の性交シーンを、皇室報道専属のカメラマンが、普段皇室関係報道に使うビデオ機材を用いて撮影したからといって、その作品が、知的で品位高潔で教養あふれた奥ゆかしく雅なものになるわけではありません。

要するに、
契約書は、契約当事者の約束した内容を、正確に文書として記述するものですが、肝心の
「約束した内容」自体が、
狂った内容、
馬鹿げた内容、
不利な内容、
何の目的かはっきりしない内容、
意味が不明な内容、
曖昧な内容、
不明瞭な内容、
であれば、これを、記録ないし証拠文書として、正確性を期して契約書として成文を得ても、やはり、できあがった契約書は、
狂った契約書、
馬鹿げた契約書、
不利な契約書、
何の目的かはっきりしない契約書、
意味が不明な契約書、
曖昧な契約書、
不明瞭な契約書、
とならざるを得ません。

その意味では、取引の交渉がまとまった、という段階において、改めて、当該交渉によってまとまったとされる
「約束内容」
の具体的内容を確認・明確化するとともに、その内容の合目的性や経済合理性等を精査しなければなりません。

すなわち、
「当該交渉によってまとまったとされる『約束内容』」なるもの
を確認・検証し、
狂った内容ではないか?
馬鹿げた内容ではないか?
不利な内容ではないか?
何の目的かはっきりしない内容ではないか?
意味が不明な内容ではないか?
曖昧な内容ではないか?
不明瞭な内容ではないか?
というストレステスト(耐性チェック)をして、合意内容の基本構造と基本内容を明確にしておくべき必要があります。

このような、確認・検証プロセスを経由せず、深く考えず、法務担当者や弁護士に、適当に丸投げしてしまうと、狂った内容を正確に文書化した契約書や、不利な内容を正確に文書化した契約書となって出現し、そのまま企業リスクに直結して、やがて大きなトラブルに見舞われることになりかねません。

実際、そのようなトラブルが発生し、倒産の危機に瀕した日本屈指の大企業の例が存在します。

電機メーカー東芝は、7125億円もの損失を原子力事業全体で発生させ、2016年4~12月期の最終赤字は4999億円となり、同年12月末時点で自己資本が1912億円のマイナスという、債務超過の状況に陥りました。

この惨事のグラウンド・ゼロ(根源的起点)は、
意思決定者(経営陣)が機能的非識字状態に陥っていたことと、
にもかかわらず、
「日本語の翻訳」
「日本語の意味翻訳」
「日本語の機能的解釈」
を行うことなく、機能的非識字状態のまま契約に突入した、
さらには、当該取引において、一体どのような契約内容を実現しようとしたかを確認・検証しておらず、狂った契約内容をそのまま調印・締結処理を進めてしまった、
というあまりに未熟で愚かで情けない失敗にあります。

東芝傘下のウェスティングハウスは、2015年末に買原発の建設会社、米CB&Iストーン・アンド・ウェブスターを買収した際、買収直後に、ある価格契約を締結しました。

複雑な契約を要約すると、
「工事で生じた追加コストを発注者の電力会社ではなくWH側が負担する」
というものでした。

原発は安全基準が厳しくなり工事日程が長期化し、追加コストは労務費で4200億円、資材費で2000億円になりました。

しかし、問題は担当者以外の経営陣が詳細な契約内容を認識していなかったことにあり(機能的非識字状態)、さらにいえば、この
「価格契約」
が極めて不利で合理性がない契約、すなわち狂った内容であったにもかかわらず、契約締結処理を敢行したことにありました。

原子力担当の執行役常務、H(57)らは
「米CB&Iは上場企業だったし、提示された資料を信じるしかなかった」
と悔しさをにじませた、とされます。

「提示された資料を信じるしかなかった」
という弁解ですが、いかにも他に選択肢がなかったという他律的で外罰的な言い訳をしていますが、別に、アタマに銃を突きつけられて契約を點せられたわけではありません。

自らが自らの責任でやらかしたアホなミスであり、自己責任、因果応報、自業自得の帰結であり責任逃れのしようがない、愚かな考えと愚かな行動の結果です。

要するに、取引構造的に、
狂った内容で、
馬鹿げた内容で、
不利な内容
ともいうべき契約であったにもかかわらず、このような取引の構造については壊滅的に無知な状態のまま、
「みかけだけはしっかりとした重厚な契約書」
の外観だけを信頼して、調印・締結処理をしました。

「外観だけは、重厚で、多くの条項が記載された契約書」の中身は、
狂った内容で、
馬鹿げた内容で、
不利な内容
を正確無比に表現しただけであり、外観がどんなに素晴らしくとも、
狂った内容で、
馬鹿げた内容で、
不利な内容
であることに変わりありません。

しかしながら、
「漫才や、バラエティのドッキリ現場や、男女の性交シーンであっても、皇室報道専属のカメラマンが、普段皇室関係報道に使うビデオ機材を用いて撮影して、菊の御紋が入った宮内庁御用達仕様のDVDに記録格納すれば、その作品が、突然、知的で品位高潔で教養あふれた奥ゆかしく雅なものに変異するはずだ」
などと信じたのか、見掛け倒しに惑わされ、ろくに検証もせず、
狂った内容で、
馬鹿げた内容で、
不利な内容
がきっちり盛り込まれた契約書にサインし、我が国屈指の大企業を倒産の危機に陥れてしまった。

これが一連のトラブルの真相です。

(以上、出典は、日経新聞2017年2月21日付記事 「もう会社が成り立たない」東芝4度目の危機 (迫真)

契約書を作成したり調印・締結処理する以前に、
当該交渉によってまとまった
「約束の内容」
を精査し、
狂った内容ではないか?
馬鹿げた内容ではないか?
不利な内容ではないか?
何の目的かはっきりしない内容ではないか?
意味が不明な内容ではないか?
曖昧な内容ではないか?
不明瞭な内容ではないか?
というストレステスト(耐性チェック)をして、合意内容の基本構造と基本内容を明確にしておくべき必要があり、しっかりと、
「ビジネス面での合理性」
「ビジネス面での目的合理性や経済合理性」
の検証や確認をすべきである、

という教訓を確認するには、大きな意義と価値ある事例として、紹介させていただきます。

いずれにせよ、
契約書を作成したり校正したり、という作業、すなわち、合意された約束内容を正確かつ完全無比な記録として文書化する、という記録作成作業を行う前に、一体、どのような内容を記録作成しようとしているのか、
大部にわたる重厚長大な契約書を時間と労力とコストをかけて作成したが、これによって表現した内容は、
「1万円札を5万円で買う」
「仕事を受注したが、その受注条件は、『追加コストが、労務費で4200億円かかろうが、資材費で2000億円かかろうが、その挙げ句、最終的には親会社が債務超過になるようなものであっても、これをすべて負担してでも、喜んで受注させていただき、感涙に咽びつつ、ありがたく仕事をさせていただく』などという壊滅的に不利で愚かなもの」
といった、あまりにアホすぎて呆れるより笑うほかないような失敗をしないためにも、この
契約書を作成・チェックする前の必須の前提作業としての、
「ビジネス面での合理性」「ビジネス面での目的合理性や経済合理性」
をしっかりと遂行しておきべきです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00706_契約書のチェックの段取りと実務その3:「契約書」はなくとも「契約」は成立するにもかかわらず、なぜ時間やコストやエネルギーを費消して契約「書」を作るのか?

「法律上、契約の成立に契約書が不要である」
といいながら、他方で、取引社会では、せっせと契約書を作ります。

スピードと効率が極限にまで尊重されるビジネス世界で、なぜ、このように、あってもなくてもいい
「契約書」
にこだわり、一生懸命作り続けるのはなぜなのでしょうか?

契約書は、契約を成立させるために絶対、不可欠の条件ではありませんが、まったく意味がなく、あってもなくてもいいという無益なものではなく、やはり作ったら作ったなりの価値や効果は発揮します。

すなわち、契約書を作れば、作っていない場合と比べて、
「契約が存在したことや、契約の具体的内容を示す“証拠”」
としての意味をもちます。

すなわち、
「契約書」
というのは、取引当事者間において強制されるものではなく、
「それほど不安だというなら、どうぞご自由に証拠でも作っておかれたらいかがですか。ご自由に。ただ、作っておいたら、言った言わない、そんな話は聞いてない、と揉めた場合には役に立つかもしれません」
という程度のものにすぎません。

そんな
「言った言わない、話が違う」
ということなんて、普通の認知と記憶と常識があれば、起こり得ない、と言われそうです。

確かに、1000円貸した貸さない、とか、
「その本、私もう読んじゃったのがあって、メリカリで売ろうと思っていたから、500円で譲ってあげる」
みたいな話であれば、
「言った言わない、話が違う」
なんてことは生じ得ません。

お互い譲り合えばいいだけですから。

しかし、億単位、あるいは数十億円単位の話となれば、別です。

億単位、あるいは数十億円単位の話は、常識を超えた話です。

そんな常識を超えた話にトラブルが発生し、
そこは1つ常識的に、
ここはお互い譲り合って穏便に、
まあまあ、相身互いで、円満に行きましょう、
といって、納得するはずがありません。

だって、常識を超えた額の話ですから。

常識が通用しないスケールの話ですから。

ちょっと勘違い、食い違い、想定外、思惑違いがあったので、
ちょっとタンマ、
ちょいノーカン、
そこは許して、
譲って、
という話のサイズが、数億円、数十億円のロスやダメージの容認となります。

そんなことをにっこり笑って許容するなんてしびれるくらいのアホは、ビジネス社会では生きていけません。

たとえ、しっかり認知していて、はっきり記憶していて、ただ、契約書がなかった、あるいは契約書の記載があいまいだった、という事情があって、相手の言っている内容が事実としても記憶としても間違いなく常識的で正当な内容であっても、
「契約書みてもそんなことは書いていない。書いていない以上、認めるわけにはいかない」
と突っ張るのが、責任ある企業の経営者としての態度です。

すなわち、
「言った言わない、話が違う」
ということなんて、普通の認知と記憶と常識があれば、起こり得ない、
というのは、1000円、1万円の話であればそのとおりですが、ビジネスや企業間のやりとりにおいては、些細な勘違い、食い違い、想定外、思惑違いであっても、契約書や確認した文書がなければ、すぐさま、
「言った言わない、話が違う」
のケンカに発展し、常識も情緒もへったくれも通用しないトラブルに発展することは日常茶飯事なのです。

すなわち、法によって強制されるものではないが、
「多少の時間とエネルギーとコストを負担してもなお、『言った、言わない』といった類の無益な紛争を起こしたくない」
と考える取引当事者が、“紛争予防のための自衛手段”として、相互に合意内容を証拠化しておく。

これが契約書なのです。

1 大きな額の取引で、
2 合意内容を書面化するだけの時間的余裕がある、

といった類の契約について、なるべく証拠を残しておこうという発想が働くのは当然であり、だから、ビジネスの世界においては、一定のボリュームの取引をする際に必ず契約書がついて回るのです。

例えば
「1つ100円のコンビニのおにぎりを購入する契約」
で契約書を作らないのは、1の観点において、
「さほど大きな額の取引ではなく、万が一、『言った、言わない』のトラブルが仮にあったとしても大事にならないから」
という説明が可能です。

「シャケのおにぎりと思って買ったところ、梅干しのおにぎりだった」
というトラブルが発生しても、お店で事情を説明して交換してもらうか、それもダメなら我慢して食べればいいだけの話ですし、そんなトラブルを防止するために逐一契約書を作っていたら小売りの世界で労務倒産が続出し、社会機能が停止します。

同様に、証券取引や為替取引や商品先物取引において契約書を作らずに取引を遂行するのは、2の観点において、合意内容を書面化するだけの時間的余裕がないから、という理由によるものです。

ですが、実際は、株式や商品先物の取引の現場では
「言った、言わない」
「無断で売却した」
「そんな話は聞いていない」
というトラブルはよく発生します。

要するに、迅速さを要求される取引において契約書を作らないというのは、
「時間を取るか安全を取るか、という局面において、安全を犠牲にした」
という価値判断の問題といえます。

「契約書を作る余裕はないが、多額の取引で、言った内容どおりの取引がおこなわれているかどうか不安だ」
というのであれば、相手方の同意を得て取引の際の会話をICレコーダーで録音しておくのも1つの方法です。

「契約書」
といっても単なる証拠に過ぎませんし、証拠という意味においては、会話録音も十分機能を果たしますから。

運営管理コード:HLMGZ13-3

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00705_契約書のチェックの段取りと実務その2:巨額の取引でも口約束で行われることがある

例えば、コンビニエンスストアに行っておにぎり1個を100円で買いにいったとしましょう。

その際、
「売主を甲、買主を乙とし、売主は、買主に対して、本日、別紙明細・仕様にかかるおにぎり1個を100円にて売渡す。・・・」
という契約書を持参していき、
「この契約書に逐一署名押印しないと、まともな契約処理とはいえず、コンプライアンス的に問題であるので、おにぎり売買取引はすべきでないし、できない」
などと言い出した人間がいたとしましょう。

この人間の言い方はまったく間違っていませんが、こんなことを逐一やっていたら、それこそ日本経済がマヒしてしまいます。

100円のおにぎりの例は少し極端ですが、1,000万円の取引であろうが、1億円の取引であろうが、やはり、
「契約書」
などといったご大層な紙切れなどなくとも
「契約」
は立派に成立するのです。

実際、テレビ番組やテレビコマーシャル制作委託取引の現場などは、紙切れ1枚なく、数千万円単位の取引が日常的に行われているようです(2009年2月25日に総務省から公表された「放送コンテンツの製作取引適性化に関するガイドライン」等をみますと、『どんなに巨額の取引でも口約束で済ませる』というテレビ業界におけるある種、いい加減ともいえる慣行を伺わせる記述がみられます)。

あと、証券取引や為替取引や商品先物取引等というのも、基本的に口頭だけで何千万円単位、何億円単位の取引が行われます。

「後場に入ったら、すぐに手持ちの買いポジション解消して。早く。早く。早く~~~~」
なんて現場で、悠長に
「甲及び乙は、本日、・・・・」
という契約書を作成して調印していたら、それこそ取引機会を逸して大損することになります。

運営管理コード:HLMGZ13-2

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00704_契約書のチェックの段取りと実務その1:「契約書」はなくとも「契約」は成立する

法務部においては、
「契約書のチェック」
という業務カテゴリーが非常に重要なものと考えられています。

しかしながら、
「契約書のチェック」
とは、一体、何を目的として、どのような段取りで、どのようにすすめていけばいいのか、法務担当者も、あるいは、顧問弁護士も今ひとつ理解されないまま、すすめられているような実情があるような気がします。

ここでは、
「契約書のチェック」
という極めて多義的で曖昧で内容不明な業務について、目的や段取りや進め方を解説していきます。

ここで、契約書とは、そもそも、どのような目的で作成され、どのような価値と意義があり、作らなかったり、中途半端なものを作った場合にどのようなリスクやダメージが想定されるのか、ということを始めに明らかにしておきたいと思います。

まず、
「契約」

「契約書」
のことについてお話ししたいと思いますが、
「契約と契約書」
なんて言い方をすると、
「何をややこしいこと言うてんねん。そんなもん、“ファミリーレストラン”と“ファミレス”みたいなもんで、言い方変えとるだけで、同じもんやろー!」
というツッコミが返ってきそうです。

ですが、法律上、
「契約」と「契約書」は、まったく別物として区別
されるのです。

まず、
「契約『書』」
はなくとも、
「契約」そのもの
は問題なく成立します。

そもそも
「契約『書』」
なんて意味不明で難解な漢字がたくさん書いてある紙切れなどなくたって、当事者間できちんと意思表示が取り交わされていれば、契約は成立するものです。

すなわち、
「契約『書』」などというご大層な紙切れ
を逐一作成しなくとも、
電子メールでおこなったものであれ、
口頭で行おこなったものであれ、
「何を、いくらで、取引する」
ということが明確にされている限り、原則として
「契約」は法律上有効に成立
するのです。

民法上、
「取引を円滑・活発にする上では、当事者の意思こそが尊重されるべきである。当事者が互いに納得したのであれば、方式や手続などおかまいなしに取引を成立させるべきだ。当事者間に。“お上”ないし“当局”が介入し、あれこれ無駄で煩瑣な方式や手続を強制するのは自由主義経済の発展を阻害する」
という考え方の下、
「契約成立における意思主義の原則」
というドクトリンが採用されております。

意志主義の帰結として、
「契約当事者同士が、適切に取引上の意思表示を取り交わして取引が成立したのであれば、契約目的物の交付や契約書面などといった別途のプロセスや手続がなくとも、契約は完全かつ有効に成立する」
とされるのです。

無論、
「契約『書』という文書がなくとも契約は成立する」
という原則にも例外はあります。

例えば、
「約束手形の振出」等
というのは、
「手形」という紙切れ
が絶対的なものとして要求され、手形もなく支払いを約束するは、法的な意味での手形行為として成立しえません。

また、保証契約には書面あるいは電子データという要式が必要となったのと、遺言については遺言書という要式書面が必要となりました。

ですが、このように一定の方式が要求される契約は極めて隈定されており、法律上の原則論としては、
「契約書がなくとも契約は問題なく成立する」
という取扱が取引一般において貫徹されています。

運営管理コード:HLMGZ13-1

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

00703_海外ビジネスを初めて展開するが、取引や手続きが不案内で不安この上ない。他方、自社に海外ビジネス経験者や海外法務ができる者がおらず、支援を求めたい。具体的に何が問題で、これらをどういう手順で、どんな支援を求めて不安解消していくべきか?

海外ビジネス未経験の企業が新しく海外に進出する場合、
「海外ビジネスを初めて展開するが、取引や手続きが不案内で不安この上ないが、他方、自社に海外ビジネス経験者や海外法務ができる者がおらず、支援を求めたい。具体的に何が問題で、これらをどういう手順で、どんな支援を求めて不安解消していくべきか?」
というかなり曖昧で何が不安かすら特定できない漠たるニーズが発生する場合があります。

まず、この不安には、いくつか不安の種別やレベルが観念できるので、こちらから整理してみましょう。

海外ビジネスにおける不安の正体を具体的に分類しますと、

1 コトバが通じるか不安
2 話が通じているか不安(話が理解できない、わからない、法的云々以前に、経済合理性、目的合理性を判断できない)

3 法的トラップがないか不安

の3段階の不安があり、それぞれの不安が、リスクアセスメントという対処課題上の対象事項となります。

1 コトバが通じないことの不安

まず、コトバが通じる通じないの不安は、信頼できる翻訳業者に翻訳を依頼すれば解消できます。

なお、翻訳業者が信頼できなかったり、取引相手が行った翻訳や取引相手が手配した翻訳は、間違いやトラップが仕込まれている可能性があります。

また、国によっては、高い費用にかかわらずいい加減で適当な人間が適当に処理する、ということもあります。

この点、普通の日本人が行う仕事の品質で考えると、大きな失敗をします。

日本人の仕事の品質や出来栄えや費用対効果は、世界でみても突出していて、このことは、翻訳であれ、コンサルティングであれ、法務サービスであれ、事情は変わりません。

信頼できない翻訳については、バックチェックをすることも含め、きっちり不安の根源を解消しておく必要があります。

2 話が通じないことの不安(話が理解できない、わからない、法的云々以前に、経済合理性、目的合理性を判断できない)

きっちりした翻訳文が入手され、和文に修正された内容をみても、例えば、

====================>引用開始
第二十七条の二第二項から第六項まで、第二十七条の三(第一項後段及び第二項第二号を除く。)、第二十七条の四、第二十七条の五(各号列記以外の部分に限る。第五項及び次条第五項において同じ。)、第二十七条の六から第二十七条の九まで(第二十七条の八第六項、第十項及び第十二項を除く。)、第二十七条の十一から第二十七条の十五まで(第二十七条の十一第四項並びに第二十七条の十三第三項及び第四項第一号を除く。)、第二十七条の十七、第二十七条の十八、第二十七条の二十一第一項及び前条(第二項を除く。)の規定は、前項の規定により公開買付けによる買付け等を行う場合について準用する。この場合において、これらの規定(第二十七条の三第四項及び第二十七条の十一第一項ただし書を除く。)中「株券等」とあるのは「上場株券等」と、第二十七条の二第六項中「売付け等(売付けその他の有償の譲渡をいう。以下この章において同じ。)」とあるのは「売付け等」と、第二十七条の三第二項中「次に」とあるのは「第一号及び第三号に」と、同項第一号中「買付け等の期間(前項後段の規定により公告において明示した内容を含む。)」とあるのは「買付け等の期間」と、同条第三項中「公開買付者、その特別関係者(第二十七条の二第七項に規定する特別関係者をいう。以下この節において同じ。)その他政令で定める関係者」とあるのは「公開買付者その他政令で定める関係者」と、同条第四項前段中「当該公開買付けに係る株券等の発行者(当該公開買付届出書を提出した日において、既に当該発行者の株券等に係る公開買付届出書の提出をしている者がある場合には、当該提出をしている者を含む。)に送付するとともに、当該公開買付けに係る株券等が次の各号に掲げる株券等に該当する場合には、当該各号に掲げる株券等の区分に応じ、当該各号に定める者」とあるのは「次の各号に掲げる当該公開買付けに係る上場株券等の区分に応じ、当該各号に定める者に送付するとともに、当該公開買付届出書を提出した日において、既に当該公開買付者が発行者である株券等に係る公開買付届出書の提出をしている者がある場合には、当該提出をしている者」と、同項各号中「株券等」とあるのは「上場株券等」と、第二十七条の五ただし書中「次に掲げる」とあるのは「政令で定める」と、第二十七条の六第一項第一号中「買付け等の価格の引下げ(公開買付開始公告及び公開買付届出書において公開買付期間中に対象者(第二十七条の十第一項に規定する対象者をいう。)が株式の分割その他の政令で定める行為を行つたときは内閣府令で定める基準に従い買付け等の価格の引下げを行うことがある旨の条件を付した場合に行うものを除く。)」とあるのは「買付け等の価格の引下げ」と、同条第二項中「買付条件等の変更の内容(第二十七条の十第三項の規定により買付け等の期間が延長された場合における当該買付け等の期間の延長を除く。)」とあるのは「買付条件等の変更の内容」と、第二十七条の八第二項中「買付条件等の変更(第二十七条の十第三項の規定による買付け等の期間の延長を除く。)」とあるのは「買付条件等の変更」と、第二十七条の十一第一項ただし書中「公開買付者が公開買付開始公告及び公開買付届出書において公開買付けに係る株券等の発行者若しくはその子会社(会社法第二条第三号に規定する子会社をいう。)の業務若しくは財産に関する重要な変更その他の公開買付けの目的の達成に重大な支障となる事情(政令で定めるものに限る。)が生じたときは公開買付けの撤回等をすることがある旨の条件を付した場合又は公開買付者に関し破産手続開始の決定その他の政令で定める重要な事情の変更が生じた」とあるのは「当該公開買付けにより当該上場株券等の買付け等を行うことが他の法に違反することとなる場合又は他の法に違反することとなるおそれがある事情として政令で定める事情が生じた」と、第二十七条の十三第四項中「次に掲げる条件を付した場合(第二号の条件を付す場合にあつては、当該公開買付けの後における公開買付者の所有に係る株券等の株券等所有割合(第二十七条の二第八項に規定する株券等所有割合をいい、当該公開買付者に同条第一項第一号に規定する特別関係者がある場合にあつては、当該特別関係者の所有に係る株券等の同条第八項に規定する株券等所有割合を加算したものをいう。)が政令で定める割合を下回る場合に限る。)」とあるのは「第二号に掲げる条件を付した場合」と、第二十七条の十四第一項中「、意見表明報告書及び対質問回答報告書(これらの」とあるのは「(その」と、同条第三項中「並びに第二十七条の十第九項(同条第十項において準用する場合を含む。)及び第十三項(同条第十四項において準用する場合を含む。)の規定」とあるのは「の規定」と、同条第五項第一号中「第二十七条の八第三項」とあるのは「第二十七条の二十二の二第二項において準用する第二十七条の八第三項」と、同項第二号中「第二十七条の十第八項若しくは第十二項又は前条第三項」とあるのは「第二十七条の二十二の二第七項」と、第二十七条の十五第一項中「、公開買付報告書、意見表明報告書又は対質問回答報告書」とあるのは「又は公開買付報告書」と、同条第二項中「公開買付者等及び対象者」とあるのは「公開買付者等」と、前条第一項中「若しくは第二十七条の二第一項本文の規定により公開買付けによつて株券等の買付け等を行うべきであると認められる者若しくはこれらの特別関係者」とあるのは「若しくは第二十七条の二十二の二第一項本文の規定により公開買付けによつて上場株券等の買付け等を行うべきであると認められる者」と、同条第三項中「前二項」とあるのは「第二十七条の二十二の二第二項において準用する第一項」と読み替えるものとする。
<====================引用終了

といった日本語が出てきたら、この言語のカタマリを目にした時に頭の中に投影される認識風景は、

「象形文字」の画像検索結果

といったものとなり、
「なんだ、これ。日本語で書いてあるが、日本語の文章ではないだろ。暗号か呪文か? まだ般若心経の方が、なんとなくだが意味はわかるが、この不気味で奇っ怪な呪文か暗号は何なんだ・・・・」
という機能的非識字の状況に陥ります。

この場合、機能的非識字の状態に陥っているわけですから、知ったかぶりのままやり過ごしたところで、何日経過しても、何ヶ月経過しても、何年経過しても、不安が払拭されず、却って不安が増殖するだけです。

機能的非識字を解消し、不安をなくすためには、
「日本語の翻訳」「日本語の意味翻訳」「日本語の機能的解釈」
といった作業が必要になります。

これは、法律に長けた経験豊かな法務担当者が必要となります。

このような人材が不在であれば、適切な弁護士に外注して、
「日本語の翻訳」「日本語の意味翻訳」「日本語の機能的解釈」
を支援してもらうべきです。

弁護士というと、後述の
「法的トラップの発見と特定と解消手段の構築」
だけ行うイメージがあります。

しかし、特に、海外法務を支援する企業法務系法律事務所で中堅中小企業やベンチャー企業に理解と配慮のあるところでは、
「法律に長けた経験豊かな法務担当者」
を配備せずに海外ビジネスを始めるという企業に対する
「臨時法務部機能提供サービス」
といった形で、この種の
「日本語の意味翻訳」
を支援することもあります。

ちなみに、この
「日本語の翻訳」「日本語の意味翻訳」「日本語の機能的解釈」
を軽視し、
「不安を解消しないまま、巨額の海外ビジネスを進め、その結果、倒産の危機に瀕する」
という
「歴史に燦然と残る大しくじりをやらかした、日本を代表する大企業」
があります。

電機メーカー東芝は、7125億円もの損失を原子力事業全体で発生させ、2016年4~12月期の最終赤字は4999億円となり、同年12月末時点で自己資本が1912億円のマイナスという、債務超過の状況に陥りました。

この惨事のグラウンド・ゼロ(根源的起点)は、
意思決定者(経営陣)が機能的非識字状態に陥っていたことと、
にもかかわらず、
「日本語の翻訳」「日本語の意味翻訳」「日本語の機能的解釈」
を行うことなく、機能的非識字状態のまま契約に突入した、
というあまりに未熟で愚かで情けない失敗にあります。

東芝傘下のウェスティングハウスは、2015年末に買原発の建設会社、米CB&Iストーン・アンド・ウェブスターを買収した際、買収直後に、ある価格契約を締結しました。

複雑な契約を要約すると、
「工事で生じた追加コストを発注者の電力会社ではなくWH側が負担する」
というものでした。

原発は安全基準が厳しくなり工事日程が長期化し、追加コストは労務費で4200億円、資材費で2000億円になりました。

しかし、問題は担当者以外の経営陣が詳細な契約内容を認識していなかったことにあり(機能的非識字状態)、にもかかわらず契約締結処理を敢行したことにありました。

原子力担当の執行役常務、H(57)らは
「米CB&Iは上場企業だったし、提示された資料を信じるしかなかった」
と悔しさをにじませた、とされます。

「提示された資料を信じるしかなかった」
という弁解ですが、いかにも他に選択肢がなかったという他律的で外罰的な言い訳をしていますが、別に、アタマに銃を突きつけられて契約を點せられたわけではありません。

自らが自らの責任でやらかしたアホなミスであり、自己責任、因果応報、自業自得の帰結であり責任逃れのしようがない、愚かな考えと愚かな行動の結果です。

(以上、出典は、日経新聞2017年2月21日付記事 「もう会社が成り立たない」東芝4度目の危機 (迫真)

提示された資料を信じず、不安に感じ、不安を放置せず、きっちりと理解できるまで、
「日本語の翻訳」「日本語の意味翻訳」「日本語の機能的解釈」
さえきっちり行ってさえいれば、こんな馬鹿げた事件は防げたところです。

にもかかわらず、これを漫然と怠ったことによる、歴然たる人災です。

なお、話を確認する、というプロセスについては、
「ビジネス面での合理性」「ビジネス面での目的合理性や経済合理性」
の検証や確認も含まれます。

こちらは、企業内部において、機能的非識字状態を克服した後、
話の内容の整合性(目的とする取引が文書として表現されているか)や、
話の内容の合理性(1万円札を3万円で購入するような不利でアホな内容となっていないか)
を確認・検証する必要があります。

そもそも、どういう目的でやっているのか、そんなプロセスが必要かどうか、目的とプロセスが整合しているか(=「無残に失敗した日本最大の失敗公共事業」である太平戦争のように、目的不明、プロセスむちゃくちゃ、目的とプロセスが完全矛盾、といった欠陥がないかどうか)については、
「法的チェック以前の段階の話」
です。

もし、この段階で危険や不安やリスクがあるなら、これを解消すべきであり、解消できないのであれば、サンクコストとの兼ね合いも視野に入れて、取引見合わせ、ビジネス撤退も考えるべきです。

いずれにせよ、コトバが通じてない状況を克服した後、話の筋や、目的整合性、ビジネス合理性をを把握し、検証する作業をしっかり行うことが推奨されます。

3 法的トラップがないか不安

最後に、法的トラップの有無についての確認作業に入ります。

これは、おそらく外部の弁護士に依頼して進めていくことが多いと思います。

ただ、弁護士は
「法的」トラップ
は確認できますが、
「ビジネス面での合理性」「ビジネス面での目的合理性や経済合理性」
は判断できません(指摘をしたり、任意の付加サービスとしてお節介を焼いてくれる場合もあるでしょうが、本質的な依頼事項から外れます)。

なお、法的トラップにも、お国柄や記述されざる運用といったものが含まれますので、経験のある弁護士や、経験から保守的考察ができる弁護士等を起用することが推奨されます。

4 全体の段取りや遂行実務の構築

法務担当者は、以上のプロセスの全体の段取りを考え、必要な資源を調達し、効率的に運用するマネジメントが求められます。

因数分解して、相応のスピードと合理性をもって事に当たれば、さほど難しいことではない、と考えられますし、開成高校2年生の平均的な成績の生徒にやらせても、十分できる程度の仕事です。

とはいえ、
「そんな面倒くさいことできないけど、カネがあるので、カネを払って済ませたい」
ということもあり得ます。

こういう場合、法律事務所等で対応人員を用意し、ホットラインを開設し、一次対応から最終対応処理まで一貫して引き受けてもらう、という外注手配による対応もありえます。

その場合のコストは、商社の法務部スタッフの給与をイメージした上で、そのようなスタッフをテンプスタッフとして、緊急に臨時雇用するような条件(緊急かつ臨時に手配することや、手配行為そのものについて、プレミアムが生じる)をイメージすればよいでしょう。

よほど人材難か、よほどカネが有り余っている企業でもない限り、検討にすら値しないオプションですが、法務体制が貧弱な企業にとっては、積極的検討に値する打開策です。

海外進出を試みる企業の中には、
「バカにするんじゃねえ。何が機能的非識字だ。字くらいよめらァ」
「ビジネスのことなどいちいち外の人間に聞かなくてもわかるわい」
「このくらいの契約書読めなくてどうする。オレでもできるわ」
と反発され、噛み付かれるところもありますが、実際、やってみると、
・できない、
・できるが、時間がかかりすぎてどうにも進まない、
・できないし、面倒だし、不安だが、不安は放置して乗り越えて、相手を信じて、楽観的にすすめてしまう(その結果、前記の東芝の悲劇の二の舞、三の舞を演じることになる)
という事態に直面することになったりします。

海外進出は、天下の(?)東芝ですら、大失敗して倒産の危機に見舞われるほど、困難であり、相応の体制整備が必要なものです。

したがって、冷静に自社の体制の状況(貧弱性)をみつめ、外部に支援を求めるか、海外進出自体を見直すことを考えるべきです(東芝も、機能的非識字のまま契約処理するような貧弱な経営陣体制であったのに、無謀にも海外進出したことで、倒産の危機に瀕したが、海外に出なければ倒産の危機に至ることもなかったと思われます)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所