00269_事業承継を行うべき3つの課題クリアポイント

事業承継のポイントの1つめは、誰に承継させるかという問題です。

かつては、事業承継といえば、身内に承継させるのが相場でしたが、最近では、番頭さん格の役員への承継(MBO)や、事業をそのまま第三者に譲り渡す(M&A)ことも検討されるようになってきました。

ポイントの2つめは、会社法の活用です。

会社法は、非常に使い勝手のいい事業承継のツールといえます。

例えば、議決権制限株式、無議決権株式、黄金株を活用することにより、個々の承継ニーズに応じた企業オーナーシップをカスタムメイドで設計・運用できます。 

ポイントの3つめは、税務課題と相続問題への配慮です。

事業承継で厄介なのは、当面の承継が効果的に抑止できたとしても、株式譲渡や特殊な株式発行に絡んで非常な税負担が発生したり、オーナーの死後に親族と後継者の間で
「血で血を洗う相続紛争」
が生じたりするので、注意が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00268_事業承継を行う必要性と、乗り越えるべき様々な課題

最近、事業承継がクローズアップされてきたのは、戦後創業された数多くの中小企業の後継問題が原因といわれています。

戦後、団塊の世代が多くの中小企業を創業しましたが、間もなくこの世代の経営者が大量かつ同時にリタイヤ期を迎えます。

大抵の中小企業の経営者は、後継のことを考えずに最後まで現場に踏みとどまって、がむしゃらに猛進されますが、いざ脳梗塞や心筋梗塞でブッ倒れたときや死んだときには、相続人や株主の利害対立が先鋭化し、求心力を失った会社組織が、無残に崩壊することになります。

また、事業承継をした途端、後継者が無謀な経営方針を取り始め、元オーナーの制止を聞かず暴走するケースもあります。

事業承継は、このようなドロドロとした人間ドラマに加え、税の問題、会社法の問題、相続の問題が複雑に絡むのです。

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00267_並行輸入品の修理を持ち込まれた正規ディーラーとして、修理拒否して「安く並行輸入品を買った小賢しい消費者」に意地悪する場合のエクスキューズテクニック

公正取引委員会としては、並行輸入を保護する観点から、
「並行輸入品を排除しようとする正規代理店」
サイドを厳しく取締まろうとしております。

そして、そのひとつの表れとして、公正取引委員会は
「正規代理店が並行輸入品をメンテナンス拒否など差別的に取り扱う場合、独占禁止法上違法となり得る」
などとしています。

すなわち、公正取引委員会が作成する流通取引慣行ガイドラインには、
「総代理店以外の者では並行輸入品の修理が著しく困難である場合において、正規品でないことのみを理由として修理拒否することは、正規品の価格維持のために行われている不公正な取引であり、一般指定15条に定める競争者に対する取引妨害として、違法」
であるという趣旨のことが書かれています(第3部第3―2(6))。

正規ディーラーにとっては噴飯ものの話ですが、並行輸入品ユーザーの修理要求は、公正取引委員会の示す独禁法運用に則ったものであり、十分な法的根拠があり、原則として、正規ディーラーは、修理拒否して
「安く並行輸入品を買った小賢しい消費者」
に意地悪することはできない、ということになります。

とはいえ、原則には常に例外があるように、前記の公正取引委員会のルールにも例外があります。

公正取引委員会としても
「合理的理由があれば、正規代理店が並行輸入品の修理を拒否し得る」
としています。

具体的には、
「代理店の社内資源の制約上、自社販売品の修理対応だけで手いっぱいで、並行輸入品の修理の対応は現実問題としては困難である」
あるいは
「メーカーは、修理部品や修理マニュアルを海外ユーザー向けにも提供しており、並行輸入業者や個人ユーザーがこれらを入手して修理することは、面倒くさいが、困難というほどではない」
から
「修理を拒否するのは合理的理由に基づくもので独禁法違反ではない」
というロジックが成り立つような状況の整備が絶対不可能、というわけではありません。

このような合理的理由に基づき、高潔かつエレガントに、心の底から、悔しく残念がって修理拒否をし、意図したわけではないにせよ、
「安く並行輸入品を買った小賢しい消費者」
には、結果的に、意地悪い対応になっちゃう状況が出来しました、ということで、何とかエクスキューズの外形が整えられそうです。

とはいえ、公取委とモメるのは必至であり、思い切って価格を下げるとか、正規品ユーザーならではの付属サービス特典を強化する(オーナークラブのサービス内容の充実)とか、商売面でガチンコ勝負し、価格競争・品質競争に勝利し、並行輸入業者をビジネス面で正々堂々と駆逐することを考えるべきかと思います。

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00266_国際ビジネス展開秩序を混乱させる「並行輸入」を巡る、「メーカー・正規ディーラー」VS「公取委・業者・消費者」の仁義なき抗争の構図

海外商品を輸入・販売する場合、一般的には、メーカーの現地法人や、メーカーと正規の販売契約を結んだ代理店によって、輸入・販売されます。

しかし、商品の内外価格差が大きい場合、本ケースのように他の業者や個人輸入代行等が海外から商品を直接輸入し販売するという方法が取られることがあります。

これは、複数の輸入ルートが並行することから、並行輸入といわれます。

並行輸入品は、その安い価格の代償として、返品や購入後のメンテナンスなど、アフターケアが不十分な場合があることはよく知られていますし、並行輸入品を買っておいて、正規代理店に持ち込んで修理を依頼しようなんて、随分図太い話です。

しかしながら、公正取引委員会としては、
「並行輸入品は価格競争を促進させる効果を有する」
との思想を有しており、その意味では並行輸入を保護するスタンスを取っております。

要するに、メーカー及び正規代理店としては、きちんと秩序だった国際展開をしたいし、各国の価格についても、地域の実情に応じて、最適な価格で販売したい、という経済的狙いをもっており、並行輸入を行う業者は、単なる秩序撹乱者として、
「邪魔で面倒な奴ら。消えてなくなっちまえ」
と思い、あの手この手奥の手使いながら、並行輸入業者や、並行輸入品を買った連中に嫌がらせをしようとします。

他方で、独禁法の規制当局である公取委は、
「どんな形にせよ、価格と品質の競争が激しくなれば、市場と消費者にとってはプラスであり、この競争の邪魔をするメーカーと正規ディーラーの方が不届き千万」
という感覚です。

ここで、並行輸入をめぐり、
「メーカー・正規代理店 VS 公取委・並行輸入業者・並行輸入品を買った消費者」
というタッグによる仁義なきデスマッチが展開される、という構図が浮かび上がってくるのです。

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00265_敵対的買収の対抗手段としての第三者割当増資

買収防衛策としては、今や新株予約権や種類株を使った非常に複雑なものが当たり前となっていますが、2000年代前半ころまでは、買収防衛策(買収対抗策)といえば第三者割当増資が最もメジャーな手段でした。

すなわち、決して裏切らないお友達に株式を大量に発行し、敵対的買収者の持ち株比率を下げるという手法です。

実際、敵対的買収のターゲットとなった企業が、ドンパチの最中に、敵対的買収者の株式保有割合を薄めるため、露骨な増資を行い、裁判沙汰になったケースがいくつもありましたが、こういう裁判例の蓄積により
「主要目的ルール」
というものが確立しました。

曰く、現経営陣が敵対的買収者の持株比率の低下と支配権維持を主要な目的とした増資はアウト、資金調達が主要な目的である場合はセーフ、というルールです。

主要目的ルールを前提とすれば、
「会社に具体的資金需要があり、その調達方法として増資を実施し、その反射的な効果として、乗っ取り屋さんの思惑が外れるような支配比率の変化が生じた」
というシナリオであれば、乗っ取り屋さんを追い払うことは可能ということになります。

他方、具体的資金需要がなかったにもかかわらず、有事の真っ最中に、降って湧いたように新しい事業計画や具体的資金需要をアピールしても、世間からも裁判所からも
「でっち上げ」
と思われてしまい、増資は差し止められます。

で、優秀な企業法務弁護士と契約している一部の賢い企業は、こういう点を踏まえ、各種ディスクローズの際に、検討している事業計画や当該計画に資金が必要なことや、さらには資金調達方法としてエクイティ・ファイナンスも視野に入れていることを、
「ほら吹き」
と言われない程度にアピールすることを実施しています。 

つまり、こういうことを常日頃からアピールしておけば、いざ乗っ取り屋がやって来たときも
「前から言っていたとおり、ビジネスにカネが必要になったので、増資をしただけですが、何か問題でも?」
という形で、実質は買収防衛目的の大量の増資を実施することが可能となる、というわけです。

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00264_債務株式化(デット・エクイティ・スワップ)の利点と具体的手法

会社のバランスシートをみると、右側(貸方)には、上段に負債、下段に資本の項目が並んでいます。

法律的にみると、負債は返さなければならない借金で、資本は返さなくてもいい出資金ということで、顕著な違いがあります。

しかしながら、
「会社の運転資金の調達先はどこか」
という観察においては、負債であれ、資本であれ、調達先が債権者か株主かというだけであり、どちらも似たようなもの、ということになります。

今から10年前ほどから、負債でクビが回らなくなりはじめた企業や、負債が大きくなり過ぎて資本とのバランスが悪くなった企業において、負債を資本に振り替えることにより、企業再建に活用したり、企業が健全にみえるようなお化粧直しの方法として、債務株式化という手法が検討されはじめました。

債務(デット)を株式(エクィティ)に交換する(スワップ)という意味で、デット・エクィティ・スワップとかDES(デス)なんて言い方をされます。

債務株式化は、
「大手企業の再建の際に金融機関の支援策として使われるような大規模で難しい手法」
として考えられてきましたが、簡単に実施できます。

最近では、中小企業においても、金融機関や取引先に対してバランスシートの見栄えをよくするための財務改善の手法としてよく用いられます。

債務株式化の手法、債権者が債権を元手として出資して増資する手続になります。

オーナー社長に対する未払役員報酬が1000万円になっていたとします。
会社がこの1000万円を社長に返済し、他方、オーナー社長は返してもらった1000万円で会社の株式を買います。

現金がいってかえっての話になるので、実際には、お金を一切動かさずに処理をする。

この結果、会社としては借金が減り、資本が増え、自己資本比率が改善する。 

簡単に言うと、こういう話になります。

ただ、実際には、債権の評価をどうする、債務免除益が出てこないか等、もっぱら税務面での検証が必要になりますので、税理士の先生も交えて実施を検討することになります。

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00263_法人格否認の法理

実質的に個人商店のような会社で、法人格と個人とを使い分けて責任逃れするようなケースがあります。

「オーナーと法人は別人だから、オレには関係ない」
「A法人とB法人は別人だから、こっちの法人はそんな義務知らねえ」
などの詭弁を弄する輩が出てきて、不都合・不公平な事態が生じます。

こういうことから、あまりにひどい場合は、
「法人格が全くの形骸に過ぎない場合、またはそれが法の適用を回避するために濫用されるが如き場合においては、法人格を認めることは、法人格なるものの本来の目的に照らして許すべからずものというべきであり、法人格を否認すべき」(最高裁昭和44年判決)
等とされます。

「法人格を弄ぶスットコドッコイ野郎に対しては、法人だろうが個人だろうが関係なく義務や責任を負わせるべし」
という粋な計らいは、法人格否認の法理と言われ、法律家の世界では非常にメジャーな法理です。 

しかしながら、このような伝家の宝刀がブンブン振り回されると法人格概念が崩壊するということも懸念され、最近では、この法理の安易な使用を制限する動きも出てきています。

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00262_「LLC(ないしLLP)」なる法人に多額のカネを預けるリスク

企業に持ち込まれる余剰資金運用案件について、出資の方向で話が進んでいくと、時折、契約相手として、BVI(ブリティッシュ・バージン・アイランド)やらケイマン諸島に籍を置く、LLCやらLLPといった名称の、なんだかよくわからない法人が登場します。

状況としては、案件を持ち込む金融マン(たいていは、いい大学を出て、バカ高いスーツを着て、バカ高い靴を履いて、バカ高いネクタイをクビからぶら下げて、堂々としているが物腰が柔らかく、話し方がジェントルな、エリート然とした金融マン )は、タックスヘイブンがどったらこったら、登録規制や開示規制がどったらこったら、ヘッジファンドとして活動するにはオフショア環境が最適云々と長々しい割に、理解困難な話をします。

上記説明をどこまで理解しているかどうかわかりませんが、その結果、企業や団体の資金管理責任者は、この
「ファンド」
に結構な大金を注ぎ込まことになります。

この
「ファンド」
の組織形態が、LLCとかLLPと呼ばれるものであることが多いのです。

もちろん、うまく運用されて、たくさんの利息やら配当やらがくっついて、大きく成長して戻ってくればいいのですが、たまに、預けたお金が雲散霧消して、大きな事件やトラブルに発展します。

代表的な事件としては、
「AIJ投資顧問事件」
で、運送会社や建設会社、電気工事会社など中小企業の厚生年金基金を高利回りで運用するなどと称し、2011年9月末時点で、124の企業年金(アドバンテストや安川電機といった大企業の企業年金も含まれていたようです)から1984億円の資産の運用を受託していましたが。

しかし、実際は、2003年に年金の運用を開始した時点で預かった資金の半分を失っており、2008年には損失が500億円にまで膨れ上がり、その後は、粉飾決算して、損失を隠し続けて資金集めをしていました。

結局、関係者は詐欺で告訴され、投資顧問会社も子会社の証券会社も破産し、預けたお金は消失しました。

このとき、顧客への説明として
「ケイマン籍の子会社を通じ日経225オプションの売り戦略を主力としている」
とのセールストークでだったようです。

この
「ケイマン籍の子会社」
の実体や背景等については、当初、年金基金の代理人や破産管財人も回収を企図して相当調査したものと思われますが、その後も具体的な回収成果については報道もなく、最終的に7%程度になったと言われる債権者配当割合等を考えると、雲散霧消してしまったと思われます。

「ケイマン籍の子会社」
は、千数百億円もの金銭を預かっていたようですが、こんな無責任なことをやって、タダで済むものなのでしょうか。

担当者とか責任者とかそういった関係者が出てきて説明してもよさそうですが、事件としては、
「消失」「消えた」
と、なんとも頼りない結末になっているようです。

お金がドライアイスのように
「消える」
わけはないのであって、バクチで消えたのか、盗んだのか、飲んだり食ったりして使ったのか(1千億円以上も飲み食いしたら痛風を発症するかもしれず、生命や健康をリスクにさらす行為ですが、できなくはありません)、ミサイルを買ったりロケットを飛ばしたりといった尋常じゃない無駄遣いをしたのか等、何らかの背景事実が存在するはずです。加えて、盗むといっても、現金でもっていくとしたら、1400億円だと、1万円札で14トンになりますし、ドルでもそのレベルのボリューム感なので、まずあり得ないので、おそらく、振込送金をしているはずで、振込送金をたどっていけば、お金の流れは相当程度解明できるはずです。

ですが、
「消失」
というのは、なんとも不可解で、納得できない説明であり、逆に言えば、
「カネを預けた先の民間企業相手に債権者や利害関係人として調査を求める」
という非常に当たり前なことを要求しただけにもかかわらず、ものすごい障害に遭遇し、事実上断念したのであろう、と推測されるところです。

ただ、これは構造上、当初から想定されているリスクが実現しただけ、とも言えます。

これは、LLCとかLLPという横文字の本質的意味を読み解けば簡単に説明できる話です。

LLCとは、Limited Liability Corporation(有限責任会社)の略であり、LLPとはLimite Liability Partnership(有限責任組合)の略です。

両者に共通する、このLimited Liability(有限責任)、響きとしてはなんだかカッコいいし、日本語の
「有限責任」
という言葉ないし概念も、かつて存在して聞き覚えのある
「有限会社」
等の言葉としては、ある程度馴染みのあるもので、それなりの、しっかりとした責任をイメージさせてくれます。

しかし、このLimited Liability(有限責任)とは、
「しっかりとした責任」
とは全く逆の実体を内包する概念であり、Limited Liability Corporation なりLimite Liability Partnership が、どれだけ関係者に迷惑をかけ損害を被らせようが、法人ないし組合の出資者は、出資した金額がなくなるだけで、それ以上一切の責任を負わない、という意味です。

とはいえ、1千数百億円もの金銭を預かるわけですから、さぞデッカイ出資金があって、会社の構えも立派で、従業員が何百人も働いているイメージを彷彿とさせてくれそうですが、実際は、資本金ないし出資金は1$とかそのくらいで、会社のオフィスはなく、従業員はおらず、私書箱の中でのみ存在する、ペーパーカンパニーというか幽霊法人がほとんどです。

Limited Liability Corporation なりLimite Liability Partnershipに出資したオーナーがやってきて
「今回の事件ではいろいろご迷惑をおけけしました。いろいろ紆余曲折あってお預かりした大事な1千数百億円(※1千数百円ではない)を消失させてしまいました。責任を痛感し、出資金全額をもって有限責任を果たします」
といっても、資本金ないし出資金の1$を放棄するだけ。

要するに、Limited Liability(有限責任)という御大層な形容詞ですが、一般的な言葉に翻訳すると、No Liability(無責任)という意味です。

年金基金の担当者が、大事な虎の子を預けた先は、遠い遠い異国の離れ小島にある、
「No Liability Coporation(無責任会社)やNo Liability Partnership(無責任組合)」
ということです。

これを、預かった会社ないし法人から観察すると、
「どこか遠い国のお金持から、1千数百億円(※1千数百円ではない)ものお金が振り込まれて、どんなに好き勝手やってお金が全額なくなっても、弁償するのは1$」
という状況です。

この状況で、
「食い物にするな」
という方が不自然であり、無理筋でしょう。

もし、今後、
「いい大学を出て、バカ高いスーツを着て、バカ高い靴を履いて、バカ高いネクタイをクビからぶら下げて、堂々としているが物腰が柔らかく、話し方がジェントルな、エリート然とした金融マン」
がやってきて、自信満々、
「タックスヘイブンがどったらこったら、登録規制や開示規制がどったらこったら、ヘッジファンドとして活動するにはオフショア環境が最適云々」
と長々しい割に、理解困難な前置きとともに、預けただけでものすごい配当や利回りが得られるような
「よだれが5リットルくらい出る、おいしい話」
を提案してきた状況に遭遇したとしましょう。

その際、提案された資料に、Limited Liability Corporation やLimite Liability Partnershipといった言葉が出てきたときには要注意です。

こういう場合、意識の上で、この
「Limited Liability Corporation やLimite Liability Partnershipといった言葉」

「No Liability Coporation(無責任会社)やNo Liability Partnership(無責任組合)」
と書換え、植木等が歌う無責任一代男(古っ!)を脳内で連続再生しながら、眉毛にツバをべったりつけて、話を聞くようにした方がいいでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00261_「法人格」による個人責任遮断効果

一般社会では、人というと、
ホモ・サピエンスとして分類される有機的生命体を指しますが、
「法人」
というのは、グループ(社団法人)や財産プール(財団法人)に過ぎず、現実には影も形もないものです。

すなわち、法律の世界では、生物としての実体も影も形もないものであっても、
「財産や負債を格納できる入れ物」
が存在し、そこに権利を移転したり義務を負担させられるのであれば、
「人」並に
扱うことに何ら問題はないとされます。

このような観点から、
「人の集まりであれ、財産プールであれ、ゼニさえ持たせられるのであれば『人』並みに扱い、取引社会に参加させてもいい」
というフィクションが構築され、法律上の人格をもつべきバーチャル人格というか観念上の人間として、
「法人」
という概念が出来上がりました。

法人でもっとも身近なのは株式会社です。

株式会社は営利追求目的で集まった株主のグループに過ぎませんが、法律上
「営利社団法人」
として、株主とは別個の
「人」
として扱われます。

一般の中小零細企業では、株式会社といっても、現実には株主はオトーチャンひとりだけで、個人事業と何ら変わりありません。

しかし、それでもやはり法律上オーナーの株主トーチャンとは
別「人」扱
となります。

たまに、事業資金を貸したり、掛売りする際、契約書に、契約相手として株式会社だけしか記載せず、オーナー社長を連帯保証人として併記しない、というケースを見受けます。

この契約相手の株式会社が、どんなに零細で、形だけの会社で、実体が個人商店と何ら変わらないものであっても、契約の責任を負担するのは、
「法律上の人格をもつべきバーチャル人格というか観念上の人間 」
としての株式会社だけであり、個人は、一切責任を負いません。

どんなに零細で、形だけの会社で、実体が個人商店と何ら変わらないものであっても、いやしくも
「株式会社」
という法人格を有する以上、
「ホモ・サピエンスないし有機的生命体としてのオーナー社長」
と、
「法律上の仮想人格たる株式会社」
とは、赤の他人です。

赤の他人が負担した借金を、何の根拠もなく、オーナー社長が負担する理由はありません。

したがって、
「株式会社」
という、
「実体も何にもないし、義理人情も道義も責任感も感じない、無機質な幽霊」
にカネを貸したり、掛売りしたりする際は、必ず、生身の人間であるオーナー社長を個人として、連帯保証人として
「法律上の首輪ないし足枷 」
をはめておくべきです。

金融資本主義社会という生態系の頂点に君臨する、経済社会におけるもっとも高い知能を備えた銀行は、この
「実体も何にもないし、義理人情も道義も責任感も感じない、無機質な幽霊」
にカネを貸す際は、必ず連帯保証人を入れさせます(連帯保証人を入れずにカネを貸して焦げ付いたら、担当者は背任を疑われます)。

こういう銀行のプレースタイルは、事業会社であっても、大いに真似るべきだと思います。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00260_企業内に「内部通報制度」を設けるべき本質的メリット(意義と価値)

公益通報者保護法は
「従業員が企業内の不正を発見すれば、どんな場合や状況にかかわらず、ベラベラしゃべってよく、解雇もされない」
ということを定めているわけではありません。

とくに、従業員のタレ込み先がマスコミの場合、通報を正当化するためのハードルは相当高くなります。

そして、内部通報制度を設置することにより、従業員による企業内不正の外部公表行為は相当抑止されます。

すなわち、公益通報者保護法上も、企業内部の自浄を高めるべく、
「社内不正の発見に際して、上司を通さず直接経営トップに通報するための仕組(内部通報制度)」
を設けた場合、従業員は、いきなり企業内不正を外部公表するのではなく、まずは企業内部の自浄に協力すべく、内部通報制度の利用をすべきことが原則として定められているからです。

こういう消極的意義のみならず、内部通報制度が適切に利用されることにより社内の風通しがよくなりますし、不正は確実に減少することは経験上明らかです。

「不正を外に漏らさないため(内々に処理するため)」
という消極的意義だけではなく、
「不正自体を減らし自浄により企業をよくするため」
という積極的価値があることからも、内部通報制度は、
「積極的に導入すべき、現代企業においては必須の内部統制インフラ」
と言えます。

※なお、弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所では、「内部統制監視センター(登録商標)」というサービスブランドで、「外部法律事務所によるネット受付型の内部通報受理窓口受託サービス」を提供しております。受け付けた通報内容の脅威レベルについて、重大性と対応の緊急性の2つの項目により判定し、フィードバックする仕組を兼ね備えたもので、各種企業に採用いただいております。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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