00384_手付倍返しをすれば、何時でも、契約をキャンセルできるか?

売買契約は、当事者の
「売る」「買う」
という意思の合致によって成立します(民法555条)。

そして、いったん契約が成立すると、当事者は、契約に拘束され、一方的に解約等をすることは原則としてできません。

もちろん、相手方に契約条項の違反等があり、それにより当事者が契約に拘束され続けることが不当だと思われるような場合には、解除や損害賠償といった手段が用意されていることはご存じのとおりですが、あとから考えたら不利だから
「やっぱヤンペ! ノーカン、ノーカン!」
なんてことはできません。

他方、
「オイシイ取引があるが、最終的に契約するかどうかちょっと考えたいので、しばし、ホールドしておきたい」
というときに、ツバを付けておく趣旨で、手付金が交付される場合があります。

この
「手付金」
ですが、よりよい条件での契約を締結できるよう、自由な取引を保護する趣旨で、
「売り主は、受け取った手付金の倍返しをすれば負担なく契約を解約できる(買い主は、差し入れた手付金を放棄すれば負担なく契約を解約できる)」
ことを意味し、
「解約手付」
と呼ばれます。

しかし、このような手付金の交付がなされていた場合、
「わずかなカネで、何カ月であれ、何年であれ、気の向くまま解除が認められる」
というのでは、そんな不安定な関係を強いられる相手方としてはタマったもんじゃありません。

契約から引き渡しまでに一定の時間と手間が必要な取引を考えてみれば、ある程度履行の準備をした後は、
「他との取引のチャンスはもう考えず、相手のためだけに履行を完了しよう」
という信頼関係が構築されます。

いくら手付金のやり取りがなされているからといって、自由に解約が認められるべきとは考えられません。

そこで、民法557条1項は
「買い主が売り主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは」
解除できるとしております。

すなわち、この反対解釈から、
「いくら手付が打たれているからといっても、一度、相手方が履行に着手したら、手付を使った解除はできない」
というルールが導かれるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00383_取締役をクビにする場合の具体的手法

会社の従業員を会社の都合で一方的に解雇することは労働契約法をはじめとする法令等により禁じられており、解雇にはそれを正当化するような合理的な理由が必要です。

同様に、いくら
「会社役員」
といっても、取締役だって会社から報酬を支給されているわけですから、合理的な理由もなく一方的に辞めさせること(解任)はできないように思われます。

ですが、実は、従業員と取締役とでは、会社との関係に本質的な違いが存在します。

会社と従業員の関係は雇用関係と呼ばれ、要するに
「強い使用者(会社)と弱い労働者」
というモデルで捉えられます。

そのため、
「弱い立場の労働者」
を守るべく、労働基準法や労働契約法等が従業員を厚く保護するわけです。

これに対し、会社と取締役の関係は、簡単に言ってしまえば
「経営のプロ(取締役)とカネに不自由していない出資者(株主、つまり会社の所有者)」
という対等の地位にある当事者同士が想定されており、雇用ではなく委任に準じた関係であるとされています(会社法330条参照)。

従って、原則として取締役には労働基準法等の適用はなく、
「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる」(民法651条1項)
との原則に倣い、会社法339条1項も、取締役について
「いつでも、株主総会の決議によって解任することができる」
と規定しています。

つまり、100%株主は株主総会を開いて、いつでも自由に不愉快な取締役(もちろん、代表取締役を含みます)を解任できるというわけです。

ただし、
「対等な当事者間の契約」
といえども、一方の当事者の気まぐれで無闇に契約を解消されては、やられた側にとってはたまったものではありません。そこで、会社法339条2項は、解任に
「正当な理由」
がない場合には、会社は解任した取締役に対して
「解任によって生じた損害」
を賠償しなければならない旨を規定しました。

これは、株主に解任の自由を保障する一方で、取締役の任期に対する期待を保護し、両者の利益の調和を図ったものです。

したがって、
「解任によって生じた損害」
とは、取締役が解任されなければ在任中及び任期満了時に得られた利益の額であり、簡単にいえば
「任期満了までの役員報酬」
を意味します。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00382_「残業代を減らすための代替休暇」制度の効用

労働基準法の労働時間に関する規定として、
1 1カ月の時間外労働の時間が60時間を超えた場合の割増賃金率を50%以上とすること(ややこしいのですが、「通常の割増賃金」と割増率と取り扱いが異なるので「上乗せ割増賃金」といいます)
2 「上乗せ割増賃金」部分を休暇に振り替える代替休暇制度
3 有給休暇を「時間」で取得する制度
等が定められています。

2の代替休暇制度についてですが、前提として、そもそも、雇用者が、1日8時間、週40時間を超える労働をさせる場合、労働基準法36条に基づいた、いわゆる時間外労働に関する労使協定を締結しなければなりません。

そして、当該時間外労働分については、従来、25%以上の割増賃金を支払うものとされていました(「通常の割増賃金」)。

ところが、労働基準法上、1カ月の時間外労働の合計が60時間を超える場合、雇用者は、当該60時間を超える部分について、50%以上の割増賃金を支払わなければならないこととなりました(「上乗せ割増賃金」)。

整理しますと、1カ月の時間外労働について、
60時間を超えない分は25%以上の割増賃金を、
60時間を超える部分については「さらに」25%以上を「上乗せ」した割増賃金(合計50%以上)を
支払わなければならないこととされました(ただし、一定の資本金額に満たない中小企業には「当分の間」は適用されないこととされております〔労働基準法138条〕が、2023年4月から中小企業にも適用される予定です)。

なお
「上乗せ割増賃金」部分
に関し、支払いに代えて休暇を付与する、という制度が法定されています。

なお、これは、グッタリするほど長時間勤務した労働者に休暇を与え、リフレッシュさせるという労働者のための制度ですので、
「上乗せ」分
を休暇とするかどうかは、労働者の意向を踏まえることが必要となります。

すなわち、実施する上では、あらかじめ、労使協定をもって
「幾らの割増賃金」

「何日の休暇」
とするかなど、その換算率などを定め、その上で、就業規則に休暇の種類のひとつとして規定しなければなりません。

以上のとおり、残業代の割増率は、60時間を超えたあたりから一挙にハネ上がることになりましたので、繁閑の差が激しい業態の企業では、
「バカ高くなった残業代を、カネの代わりに休暇で払いたい」
というニーズが少なくありません。

もっとも、この代替休暇制度は、あくまで
「上乗せ割増賃金」部分を休暇に代える制度
であり、
「通常の割増賃金」
は、原則どおり、カネで精算しなければなりませんので、この点、十分注意してください。

割増賃金をもらうか、その分を休暇とするかは、あくまで労働者の選択によるものなので、無理強いはできません。

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00381_「超安売り品をおとりに、客寄せを企図するセールス」のリスク

事業者は自らの販売計画に従って、商品を販売し、これに付随して広告を出すことができることは当然です。

自らの商品をどのように売ったら利益が出るのかを決定する自由がありますから、ある商品については赤字になろうとも、これを誘因として顧客を多く呼び込み、店全体として儲けようという仕組みが非難されることは原則としてありません(もちろん不当廉売等に至る規模での安売りは独占禁止法上規制され得ます)。

しかし景品表示法(以下では「景表法」といいますが、正式には、不当景品類及び不当表示防止法といいます)では、商品の性能や価格を示す
「表示」
に着目して規制がされています。

現代において
「広告」
が有する顧客誘因力の大きさを否定することは誰もできないでしょう。

広告媒体については新聞の折り込みチラシからテレビ、インターネットとさまざまですが、これらに載っている情報は、消費者による商品選択に多大な影響を及ぼします。

そのような広告に、品質や価格等に関する不当な表示などが表示されると、良質廉価なものを選ぼうとする消費者の適正な選択に悪影響を与える一方、そのような広告が許されると、商品力や販売努力など公正な競争を頑張る企業も減少し、結果的に、公正な競争が阻害されることになります。

そこで、独占禁止法の特例法として景表法が制定されました。

このように不当な広告により顧客を誘引することを規制する一態様として、景表法には
「おとり広告」
の禁止が定められています。

正確にいえば、具体的に何が
「おとり広告」
に該当するのかについては、景表法は、同法第4条1項3号によって公正取引委員会の指定に委ねており、これを受けた公正取引委員会が
「おとり広告に関する表示」
を告示しています。

具体的には、同告示第2号の
「取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示」
が問題になります。

行政によりこれに該当すると認定されると、定期的に広告の仕方について報告をさせられたり、立ち入り検査が行われたり、さらには差し止め等の措置命令が出される可能性もあり、当該措置命令に違反したときには刑事罰も定められています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00380_賃貸借契約の大家が破産した場合、敷金が消失するリスクと、賃借人の対抗策

債務者が債務を支払えなくなると、力のある債権者が強引に取り立てをして財産を持ち去ったり、債務者と仲の良い債権者だけが弁済してもらったりするなど、不公平な処理が発生しがちです。

そこで、破産制度は、債務者の経済的破綻を債権者の間で公平に分担させるため、裁判所が
「コイツは債務を支払えないから、破産手続きを開始させて、残った財産を皆で公平に分配しよう」
と宣言した場合には、各債権者は、その債権額に応じて、債務者に残った財産から平等に弁済を受けることとしています。

例えば、債務者である大家の総債務額が100万円、敷金債権が10万円だとして、大家の手元に残った財産が1万円とします。

この場合、敷金債権は総債務額の10%しかありませんから、債務者の手元に残った1万円の10%である、1千円しか分配されないことになります。

このように、敷金を人質に取られていながら、賃料を従来どおり支払っても、敷金は一部しか帰ってこないのです。

これでは、大家が破産した場合には、賃料を支払わない方が利口にもみえますが、賃料の不払いを行うことは、破産管財人から、賃料不払いを理由として、賃貸借契約を解除されるリスクを伴います。

そこで、賃貸借契約を解除されないように、
「店子が負担する賃料債務と、店子が持つ敷金返還請求権とを相殺して、賃料を支払ったことにすればよい」
とも考えられます。

しかし、この点については、
「店子が建物を明け渡した後で、その時点で大家が店子に対して有している債権額を敷金から引き、なお残額がある場合に、ようやく敷金返還請求権が店子に発生する」
との最高裁判例があるので、建物を引き渡す前の段階で賃料と相殺をすることはできません。

これは、大家の破産という非常時でも同じです。

このような法律の仕組みを見ると、店子は踏んだり蹴ったりのようです。

しかし、破産法は店子の権利を保護する規定をきちんと設けています。

破産法70条は、
「店子が賃料を支払う場合には、敷金返還請求権の額を上限として、支払額の寄託を請求できる」
と規定しています。

例えば、店子が3600万円の敷金を大家に預けている場合には、毎月の賃料300万円を破産管財人に支払うたびに、支払う額について破産管財人に対して供託を要求でき、それを合計12か月間行うことができるということです。

これによって、店子が建物を明け渡して敷金返還請求権を取得した際には、店子は、破産管財人が供託していた額について、優先的に支払を受けることができます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00379_「借主の地位が強くなる借地借家法を潜脱しつつ、商売の場所を提供したい場合」のテクニック

落語で出てくる大家と店子の諍いのように
「この野郎、店子の分際で大家に楯突きやがって! ええい、うるせえ! 店あげてどっか行きやがれ」
なんて形で借家人の事情を無視して大家の都合だけで借家契約がいきなり解除されると、借家人が住む所を失い、町はたちまち浮浪者が増え、社会不安が増大します。

こういう事態を防止するため、社会政策立法として借地借家法が定められており、かつ司法解釈としても借家人を保護する解釈姿勢が長年積み重ねられてきた結果、現在においては、
「貸したら最後、譲渡したのも同じ」
といわれるほど、借家人の立場は強化されてきました。

すなわち、借家契約が一度締結されると、原則として、借家人側が出ていかない限り、契約は半永久的に更新されていき、借地借家法により強力に保護された借家人を追い出そうとしても、大家側は、多大な立ち退き料を支払う必要が出てくるのです。

このような解釈は、一般住宅に限ったものではありません。

商業施設における物件賃貸借についても、当然に借地借家法が適用され、プロパティオーナー側は、いったん物件賃貸契約を締結したら最後、
「こちらの都合だけで自由に解除できない」
という極めて大きな不利益を被ることになるのです。

例えばワゴン販売をさせるという契約は、スーパーやデパート等の経営者からすると、時機に応じて業者を代えたいこともあるでしょうし、売り場のリニューアル等の都合で営業場所を変更させたいというニーズもあるでしょう。

そういった場合、ワゴン業者との契約に借地借家法を適用させず、いつでも気ままに契約を解除できるような方法はないのでしょうか。

そもそも、借家契約(賃貸借契約)とは、
1 ある物を特定した上でこれを独立した立場で使用収益させ、
2 当該使用収益の対価として賃料を支払うこと、
の2つを本質的要素としています。

逆に考えれば、ワゴン業者を独立の占有主体ではなく、単に
「商品販売を実施する代理業務を行っているにすぎない者」
と解釈されるような工夫を事前にしておけば、スーパーとワゴン業者との契約関係については賃貸借契約の本質的要素のうち1を欠くものと扱われ、借地借家法の適用を排除し、ワゴン業者の適宜追い出しや、営業場所の変更が可能になってくる、ということになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00378_期間終了後、高額な値上げの受諾か退去を迫られる、借主にとってあまりに過酷な定期賃貸借契約

借り主の地位を強化しすぎてしまうと、不動産オーナーは、不動産を貸すということを躊躇するようになりますし、これが原因となり、かえって賃貸物件の円滑な供給を阻害することになりかねません。

そこで、借地借家法は、
「更新がないことを前提とした賃貸借契約制度(定期賃貸借契約制度)」
を設け、貸主、借り主の調整を図ることとしました。 

この結果、法律上、適式に定期賃貸借契約が締結された場合、借り主は、当然には賃貸借契約の更新を主張することができず、たとえ当該物件に愛着があっても、四の五の言わず出ていかなければならない、という過酷な帰結になります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00377_「不動産なんて、一度貸したら、自分の所有ではなくなる」と言われる賃貸借契約の特徴

賃貸借契約では、一定の期間が経過すれば、当然に、借りた物を返還しなければなりませんので、もし、借り主が、借りた物を気に入るなどして、一定の期間経過後も、同じ物を借り続けたいのであれば、再度、貸主と交渉し、新たな賃貸借契約を締結しなければなりません。

民法は、
「賃貸借の存続期間は、更新することができる(民法604条2項)」
と規定するのみで、いかに借主が同じ物を借り続けたいという希望を持っていたとしても、貸主が了解しない限り、当然には賃貸借契約が継続することはない、との立場を採用しております。

このように、民法上、借り主は、賃貸借契約を継続させるという点において、非常に弱い立場にあることは否めません。

ところが、立場の弱い借り主をそのまま放置することは社会政策上好ましくないという配慮から、不動産の借り主の立場を強化した借地借家法は、26条、28条において、建物賃貸借は更新されることを原則とし、かつ更新を拒絶するには貸主がその物を使用する必要がある場合や借り主に対し立退料を支払うという特殊事情(「正当の事由」)を必要としました。

このように、建物賃貸借契約の終了が原則として、借り主側の都合や腹積もりに委ねられることとなり、借り主の法的地位が著しく強化されるとともに、
「不動産なんて、一度貸したら、自分の所有ではなくなる」
とまで言われるようになったのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00376_ノーアクションレター制度

ビジネススキームが法令に違反するのかどうかが判断できないような状況であるにもかかわらず、これを確認する手段が一切存在しないとすれば、企業は法令違反を必要以上に恐れてしまい(萎縮効果)、積極的な経済活動が阻害されかねません。

こうした事態を回避するために、規制緩和政策の一環として、ノーアクションレター(法令適用事前確認手続)という制度が整備されました。

ノーアクションレターとは、
「具体的な事業内容を明らかにすることにより、当該事業が法令に違反するかどうかを事前に官庁に問い合わせることができる」
制度です。

企業は、違反するかどうかを確認したい法令と条文、具体的な事業の内容、自社の法令適合性に関する見解、連絡先などを記載した照会書を当該規制法令の所管官庁の担当窓口に提出することにより、多くの場合30日以内程度で、当該官庁からの回答を得ることができます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00375_新規事業立ち上げ時のリスク・アセスメントの手法

企業が新規事業を検討する際、
「いかに儲けるか」
という積極的な検討課題とともに、
「儲ける仕組が法律によって禁止されていないか」
という保守的な検討課題が必ずつきまといます。

「これって、なんか儲かりそう!」
という魅力的な事業であればあるほど、企業が行き過ぎた営利活動に突っ走らないように、必ず周到に規制の壁が用意されているものです。

このようなことから、新規事業の立ち上げに際しては、法令適合性を事前に調査する作業が非常に重要となります。

この作業において、企業は2つの問題にぶつかります。

ひとつは
「新規事業に関連する規制法令と該当条文を漏れなく全部ピックアップできるか」
という問題(法的リスクアセスメントの問題)、もうひとつは
「当該新規事業について、ピックアップした法令や条文に違反することがないかを正確に見極められるか」
という問題です(規制解釈の問題)。

法的リスクアセスメントは
「星の数ほど存在する法令から、特定の事業に関係するものを漏れなく抜き出す」
わけですから、これ自体相当大変です。

ところがさらにやっかいなのが、見つけ出した規制をどう解釈するかという問題です。

例えば、ショッピングカート機能を省略したネット通販システムを立ち上げようとした場合、
「意に反して契約の申込みをさせようとする行為」
に該当するか否かという判断をしなければなりませんが、必ずしも白黒がはっきりするわけではなく、極めて微妙な判断とならざるを得ません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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