00291_IT関連サービスの販売への、特定商取引法上の「電話勧誘販売」規制の適否

商品を販売したり何かしらのサービスを提供することを目的として、電話で消費者を勧誘して、その後の手続きはすべて郵便で済ませてしまう取引を
「電話勧誘販売」
といいます。

電話勧誘販売は、買主が直接お店に行って何かを選ぶのと異なり、不意に電話で勧誘を受けることから簡単に購入を決定してしまったり、周囲に人がいないことから強引に商品の販売等を迫る業者等がいたりすることから、消費者を保護するために、特定商取引法という法律によって、事業者には一定の義務が課されています。

例えば、事業者は勧誘に先立って勧誘の電話であること等を告げなければなりませんし、契約等を締結しない意思を表示した者に対する勧誘の継続や再勧誘を禁止したり、契約内容を反映した書面の交付を義務づけたりしています。

そして最も大きな規制は、クーリングオフの規定を設けなければならない、ということです。

つまり、電話勧誘販売を行う事業者は、消費者から契約から8日以内に契約の解除を申し込まれた場合、無条件でこれに応じなければならないのです。

もちろん特商法には規制適用業種が決められています。

例えば、プロバイダ業務は
「通信事業」
に該当しますが、通信事業については、特定商取引法は適用外となっています。

これは、通信事業を行うための電気通信事業者としての登録プロセスが要求されることと関係しています。

すなわち、プロバイダ業については、商売を始めるにあたって
「電気通信事業者として登録した」
と言っているとおり、国が事業者をいったんチェックしていることから、
「(国からお墨付きを受けた)通信事業なら、無茶苦茶する奴はおらんやろう」
と思われることから、
「重ねて特定商取引法の適用までは不要」
と考えられているから、そんな理由のようです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00290_「外国でいつのまにか訴訟を起こされて敗訴したケース」でも、諦めず、しぶとく粘ってみると、「意外と何とかなる」可能性があること

民事訴訟法118条は、同条に規定する1号ないし4号の要件を満たす場合にのみ、外国裁判所の確定判決が効力を有すると規定しています。

そして、同条2号前段は、外国裁判所の確定判決が効力を有するための要件として、
「敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く)を受けたこと」
を規定しています。

したがって、外国裁判所の確定判決は、そのまま日本でも有効となるというわけではなく、同条1号ないし4号に規定された要件を満たした場合にのみ、日本で有効となり、執行される可能性が出てくるのです。

では、
「訴訟の開始に必要な呼出し」(同条2号前段)
とは、どういったものをいうのでしょうか。

日本国内で外国の訴状を受け取る場合として想定されるのは、
1 外国の原告やその代理人から直接訴状が郵送もしくは持参されて届く場合
もしくは
2 日本の裁判所を通じて訴状が届く場合
です。

このうち、
「訴訟の開始に必要な呼出し」
があったと認められるのは、2の場合のみです。

香港で行われた訴訟の原告から私的に依頼された弁護士が、日本に在住する被告に訴訟書類を直接交付したケースにおいて、最高裁判決(平成10年4月28日)は、
「香港在住の当事者から私的に依頼を受けた者がわが国でした直接交付の方法による送達は、民事訴訟法118条2号所定の要件を満たさない」
と判断しました。

すなわち、最高裁判所は、
1 外国の原告やその代理人から直接訴状が郵送もしくは持参されて届いた場合
には、
「訴訟の開始に必要な呼出し」
があったとは認めないわけです。

こういう状況ですと、
「外国でいつのまにか訴訟を起こされて敗訴したケース」
で、諦めず、しぶとく粘ってみると、アウエー戦で負けても、ホームである日本でのリターンマッチで一から争えることも期待でき、その意味で、意外と何とかなる可能性がある、ともいえます。

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00289_「破産」を申し立てると、実際どんなことが行われるのか

裁判所に破産を申し立てる際、2種類のギャラ(弁護士費用)が必要になります。

申立を代理してくれる弁護士に対する費用と、裁判所に納める費用である予納金と呼ばれるものです。

この予納金は、
「管財人」
という裁判所が選ぶ別の弁護士のギャラになります。

管財人というのは、文字通り、破産者の財産を管理する人間です。

子どもならともかく、認知が正常に機能しているいい大人は、自分の財産くらい自分で自由に管理していいはずですが、破産手続きを申し立てると、破産者の財産の管理処分権が剥奪され、管財人にすべて握られてしまいます。

管財人といっても、在野の弁護士ですから、最初にギャランティもらわないと動けない、というわけです。

破産管財人は、債権債務を調査し、財産をすべて現金化してしまい、遺産の形見分けのように、カネを債権者に債権額に応じて配り終えて、仕事終了です。

破産者が財産隠しをしたりせず、
「良い子」
で手続きに協力していると、最後に、ご褒美として、借金をチャラにしてくれ(この徳政令のような措置を「免責」といいます)ます。

これで、晴れて、経済的に復活するわけです。

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00288_会社が破綻した場合における選択肢

まず会社が破綻した場合とは、
1 債務超過(大赤字で借金過多)になったり、
2 資金繰りが悪化した(財産はあってもカネが回らない)場合、
を指します。

大赤字で借金過多ではなくても、もっといえば、黒字で土地建物や在庫商品等の資産をたんまりもっていても、資金繰りが悪化して、倒産状態に至る場合もあります(いわゆる、黒字倒産)。

会社の経営が破綻した場合の選択としては、大きく分けて
A そのままお陀仏となって葬式を上げるのか(清算型)
B それとも病巣(負債)を切除してもう一度やり直すのか(再建型)
という選択肢があります。

そして、上記の方針を、どのような手続きを通じて実現するのか、すなわち、
a 裁判外での手続き(任意整理)でやるのか
b 裁判所を通じた手続き(法的整理)でやるのか
という選択肢があります。

例えば、負債額が10億円と大きく、債務返済を行いながら会社を再建することは現実的に難しいといえますし、交渉による取引先の債務免除も期待できません。

何より、手続全般に透明性・公平性も求められますので、裁判所を通じて行う清算型手続き、すなわち
「破産」
が最も適した方法といえます。

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00287_訴訟の勝敗は、人柄や印象や品位や常識や社会性ではなく、「文書」が全てを決する

一般の人が裁判でイメージするものといえば、サスペンスドラマでの刑事裁判で、検察官と弁護人がずらっと並んだ傍聴人をギャラリーに丁々発止のやりとりがあり、最後には、弁護人が鋭い反対尋問で証人を切り崩し、真実が明らかになり、正義が勝つ、といった内容です。

しかし、民事の事件の場合、ドラマの刑事裁判とは全く異なった様相を呈します。

まず、傍聴席は関係者が1人か2人いるだけで閑散としてますし、単純なケースの場合、尋問と言ってもせいぜい当事者本人2人を1時間前後で聞く程度。

尋問も丁々発止といった趣はなく、双方の弁護士が地味にダラダラと話を聞き、裁判官も眠気を押さえるのに必死と言った様子です。

というのは、民事では、文書がモノをいうからであり、こういう事件ではすでに勝敗が見えているからです。

民事訴訟法では
「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」(228条4項)
とされ、この文書を債務者側が
「この確認書に書いてある字は私の字で、押されている判子は私がもっている判子を押したものです」
といった趣旨の事実さえ認めれば、文書外でどんなにひどいやり取りや不公平な実体があっても、債務者側の敗訴は確定してしまいます。

債務者の人柄が良く、同情する余地があり、他方で、債権者が、どんなに非常識で、品性下劣で、社会性がなくても、です。

逆に、相手を追及するのに、文書がなければ、あれこれ事情を話したところで、訴訟実務では基本的に
「寝言」扱い
されるのです。

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00286_中小企業が大手企業と共同開発契約を行う場合の注意点

大きなメーカー同士における共同開発契約であれば、互いの法的武装力に格差はなく、不平等な契約になったり、騙したり、騙されたり、といったことはまず起こり得ないかと思われます。

問題は、大企業と中小企業との共同開発ケースのように、契約当事者間に格差がある場合です。

中小企業においては、
「雲の上の存在ともいうべき大企業と共同開発できることで舞い上がっており、この種の経験値もなく、法的武装力ないし法的武装センスは皆無」
という企業も少なくありません。

他方、大企業においては、アホな中小企業が舞い上がっていて脇が甘くなっている状況を完璧に見抜き、
「共同開発」
という美名の下、事実上の技術収奪を図るケースがあったりします。

例えば、共同開発契約において、
「共同開発の成果については共有とし、相互に通常実施が可能。共同開発の成果を実施する過程において必然的に利用すべきこととなる基礎技術については相互に無償で許諾」
などという条項を入れてしまえば、大手企業側は
「共同開発成果の実施」
という大義名分の下、中小企業側の開発技術を無償で利用できることになります。
こうなると、資本力に勝る大手企業は、技術優位性を喪失した中小企業など容易に駆逐することができようになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00285_共同開発契約の進め方

共同開発とは、複数以上の企業(主にメーカー)の間において、得意な技術分野を持ち合ったり、不得意な技術分野を補完しあい、あるいは既存技術を出し合って新たな技術を生み出す目的で行われる企業間の技術交流・人的交流をいいます。

共同開発の一般的な流れで言いますと、まず、NDA(non-disclosure agreement、守秘義務契約)を取り交わし、保秘を前提として非公開の技術情報を相互開示し、共同開発の是非を互いに検討します。

共同開発がお互いの利益となるべきことが確認されれば、予算、人員、プロジェクト期間、開発ターゲット、成果物の取扱い、投資回収シナリオ等を決めていきます。

お互いの合意内容は、共同開発契約書として文書化し、取り交わすことになります。

共同開発契約の内容としては、開発段階の取り決めとして、開発費用、役割分担、既存技術の利用のルール等が、開発が成功した場合の取り決めとして、開発成果の帰属及び成果の利用・収益方法等が、それぞれ定められます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00284_会社法に定める「特別清算」を活用する場面

会社法には、清算と破産のハイブリッド型の手続が用意されています。

会社法510条には、
「債務超過(清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りない状態)の疑いがある」
場合には、特別清算手続が可能とされています。

この特別清算手続ですが、裁判所の監督はあるものの後見的な監督にとどまり、破産手続のように管財人が派遣されて会社運営権が取り上げられるものではなく、会社が選定した清算人により自主的に清算手続を進めることができます。

そして、債権者と自主的に話し合い、ネゴが成立すれば、裁判所のお墨付きを得て、スピーディーに清算手続が完了します。

特別清算のおいしいところは、この
「債権者とのネゴOK」
というところです。

ある債権者は債権をとっとと全部放棄して税務上償却してしまうことを考えるかもしれませんし、ある債権者は親会社との何らかの取引とバーターで一部放棄するかもしれませんし。

このようなさまざまな思惑を、清も濁も全部ひっくるめ、ネゴが成立すれば、債務超過会社でも
「破産」
ではなく、
「清算」
という形で会社を解体してしまえるのです。

すなわち、裁判所の監督を受けるので、外見上、透明性ある手続のように見えますし、対外的には、
「破産なんて、とんでもない。当社は、役割を終え、円満に清算したんですよ」
という取ってつけたような弁解も可能になります。

特別清算の過程で放棄・免除した債権も、無税償却(税負担のない債権の償却・貸し倒れ処理)の検討も可能となり、税務メリットも享受することも検討の俎上に乗ります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00283_債務超過会社を閉じ(廃業し)たいが、普通に解散・清算ができるのか?

かつて、上場企業の株式を買い集めた某ファンドのトップが
「土地やカネをため込んで株主に還元しないなら、とっとと解散して、株主に分配しろ」
と主張しましたが、会計上は永遠の生命を持つとされる会社といえども、法律上は株主の都合で何時でも解体することができます。

すなわち、株主が会社を解散することを決めれば、清算手続が開始され、負債をすべて弁済した後に残った財産(残余財産)が株式数に応じて山分けされ、会社は消滅します。

この清算手続には、裁判所の監督は行われず、通常の事業活動と同様、会社関係者のみで自主的に進めることができます。

しかし、このような清算手続(通常清算)を取れるのは、債務超過ではない会社に限られます。

債務超過会社や破綻会社の場合、債務弁済の過程で債権者間の不公平が生じる危険がありますので、裁判所が目を光らせる必要が生じます。

債務超過会社の破綻処理として一般的に考えられるのは、破産や民事再生ですが、裁判所から管財人や監督委員というお目付役が派遣され、強い監督や指導を受けなければならないほか、
「破産」

「民事再生」
というレッテルが貼られると、極めてネガティブなイメージが付きまとうことになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00282_口頭契約をドタキャンされた場合の対処法

口頭契約をドタキャンされたケースにおいて、大手企業に何らかの責任を負担してもらう方法を検討してみます。

まず、
「契約準備段階の過失」
という法理の活用です。

これは、契約締結に至らない交渉段階であっても、契約締結の見通しがなくなった段階で相手方に告知するなどの義務があり、これに違反したら、相手方の損害を賠償すべし、という法理で、民法の条文にはありませんが、学説上唱えられ、判例上形成され、一般化したドクトリンです。

民法を勉強する際に必ず学ぶもので、資格ある弁護士であれば、ほぼ間違いなく知っている理屈です。

また、大手企業の契約担当の行動に、契約締結が困難となった状況を故意に知らせなかった等、違法とされるべき行動があった場合には、使用者たる所属企業に使用者責任(民法715条)を追及するということも考えられます。

さらに、大手企業が株式会社である場合、当該企業は法律上
「商人(一般的意味の商売人という意味ではなく、法律上『ビジネスプロフェッショナル』として扱われるべき定義概念)」
とされますから、
「商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる」(商法512条)
という法定責任を活用した責任追及も考えられます。

最後に、こういった件は
「下請けイジメ事例」
とも考えられますので、下請代金支払遅延等防止法の活用も検討してみる価値があります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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