01869_予防法務_ビジネスにおける情報発信その2

ビジネスにおける情報発信は、
「言いたいことを言う」
から、発信するのではありません
し、
「SNS戦略」
をすすめるためには、

・(SNSであろうがその他の媒体であろうが、金と時間と労力をかけて発信すべき)メッセージの単純化・平準化・標準化(言いたいことを、小学校5年生でもわかるようにシンプルに磨き上げる)
・メッセージの対象の選定
・メッセージを伝達させる媒体の選定
・メッセージのミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化
・メッセージの効果検証
・さらなるゲームチェンジや試行錯誤(や撤退見極め)

という営みをPDCA(合理的試行錯誤)で推し進めることが必要です。

中小と呼ばれる規模の企業においては、
「そのようなPDCAを遂行する能力と経験と責任を負担し得る担当者」
が、不在であるのが実情です。

上場企業であっても、この種のタスクを責任をもってこなせる人材に不足し、後手後手に回っているところも実に数多く、非常な難題と考えます。

企業の規模の大小問わず、
「SNS戦略」
は、正解がなく、定石もなく、ゲームのルールやロジックも帰納的に発見せねばならず、試行錯誤の連続で現実解を見つけ出す営みであり、
「トップがフルエンゲージしないと、進まない(トップがフルエンゲージしても進まない)」
ので、奮闘、あるいは奮闘しても成果が出ないことは、やむなし、でしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01868_予防法務_ビジネスにおける情報発信

ビジネスにおける情報発信は、
「言いたいことを言う」
から、発信するのではありません。

ベネフィットがあるから、
あるいは
リスクやダメージを避けるために、
発信します。

そのためには、まず、
状況を認知し、
状況を評価し、
展開予測を考え、
目的を設定し、
課題を発見し、
課題を克服するための手段をいくつか創出し、
手段それぞれの功利分析を考える必要があります。

そして、決定した暫定的手段の実践として、
行動=情報発信
が行われます。

ですから、情報発信をカタチ化したメッセージは、
目的から逆算し、展開予測上想定されるリスクも受容し、構築されたものである、という作戦計画があるはずです。

1 メッセージをどのような目的を達成しようとして書くのか?
2 そもそもどのような意味と展開予測を企図するのか?
3 「展開予測上想定されるリスク」としてどんなことを想定するか?

一定の作戦価値を内包した作戦目的があり、その整合性を、外部視点からの評価を受けるために、弁護士を利用することもあり得ましょう。

ただし、その場合は、
「一定の作戦価値を内包した作戦目的」
を前提として、弁護士に示す必要があります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01867_ 法務相談の費用

弁護士は、日常的に、
「事件」
という言葉を使いますが、それは、
「案件・プロジェクト・弁護士業務」
と同義です。

「法律相談」
とは、弁護士が、事件として対応する必要があるかないかを見極め、対応する必要が有る場合に、その成否蓋然性と動員予算(見積もり)を推定して、提示するのが目的です。

ですから、相談者が法律相談に1回行ったからといって、抱えている問題や相談事が、一度にスパっと解決・解消するわけではありません。

しかも
「無料」
と銘打つ法律相談は、
「1回の相談時間は30分程度」
などと時間を制限しています。

相談時間を有効につかおうとするならば、医者でいうところの問診票にあたるようなものを相談者自身があらかじめ用意しておくと良いでしょう(何も用意せずに相談に行くと、大抵の場合、抱えている問題や相談事のサワリだけで持ち時間はすぐになくなってしまいます)。

さて、法律相談を経て、抱えている問題や相談事が法的に解決しなければならないような場合、相談者が求めれば、弁護士は事件受任を前提に(「事件着手」に移行する方向で)、見積もりを提示します。

弁護士によって違いはあるでしょうが、著者のいう弁護士報酬とは、次の4つを指します。

1 着手金
事案に着手するに際して予め申し受ける金額です。
資料収集・整理及び事案内容のミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化を遂行するための費用(*)。

2 リテーナーフィー(事件管理料)
事件継続中に各種状況の報連相(ご報告、ご連絡ないしご相談)を行いあるいはクライアントからの不安や質問に対処するための費用です。
尚、相談時において、終期を明確に定義することは困難です。

3 成功報酬
事件の成功を得た場合に発生する金額です。
ただし、相談段階で見積もった作業負荷が、(弁護士の)把握し得ない相談者の事情の発生に伴い、想定外に増大した場合、別途の費用が発生し得ることもあります。

4 実費
資料収集等に要す通信費、印紙代、印刷費、交通費など。

(*)資料収集・整理については、費用を低く抑えようとするならば、相談者において準備することを推奨します。時間・費用とトレードオフとなります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01866_顧問契約とは

かかりつけ医をもつようなイメージです。

今後、法律相談ないし各種ビジネスや社会経済生活上の課題や不安が生じた場合に、問題解決に至るまでの時間とコストが節約でき、また、いざというときには、課題対処を支援してくれる用心棒がいてくれる安心感を提供するものです。

顧問契約の有無による対応の差を説明すると、よりわかりやすいでしょうか。

1 顧問契約がない場合

・各種ビジネスや社会経済生活上発生する、「明確な事件や事案や課題や相談事」に至らない、単なる不安やストレスや違和感の段階では、なかなか気軽に相談することが困難
・かつ、相談が遅れた場合、解決が困難になる場合が生じる
・相談実施までにアポイントや申込みが必要で、また、弁護士は顧問先を優先するので、アポイントが入らない場合がある
・カルテに相当するものが整備されていないので、自身の状況を逐一説明しなければならないので、無駄な時間が生じる
・相談の中で、弁護士が関与すべき事案であっても、医師のように応召義務がないため、弁護士は、多忙や、割に合わないなどを理由に、事案受任を拒否する自由をもつ
・事件終了した場合、通常、事件終了後しばらくは不安定な状況が続くが、事件が終了後は、接点や関係がなくなるため、弁護士としてはケアしない。特に、再発防止や同種リスク、さらには、派生事件については、弁護士として対応する義務や責任を負わない

2 顧問契約がある場合

・単なる事業や生活設計を含め、各種ビジネスや社会経済生活における現況や将来的な方向性を共有しておける
・各種ビジネスや社会経済生活上発生する、「明確な事件や事案や課題や相談事」に至らない、単なる不安やストレスや違和感の段階でも気軽に相談できる
・異変や事件に至らない、不安や違和感段階で、すぐに相談に対応しているので、着手が早く、先手を打て、結果、解決のスピードと期待成果が改善できる
・カルテに相当するもの(顧問先ファイル)を整備しており、アップデート情報は別として、自身の状況を毎回逐一説明する必要がなく、相談開始の初速が圧倒的に早くなる
・医師のように応召義務がないことには変わりないが、弁護士としては、日常構築された信頼関係に応えるため、顧客継続価値を維持・改善するため、多忙であっても、あるいは、割に合わない事案であっても、受任し、あるいは、受任困難でも、極力最善解を模索する努力を行う
・事件受任の際にも、顧問料に応じて、通常費用から減額プランを提示される
・事件終了した場合、通常、事件終了後しばらくは不安定な状況が続くが、事件が終了後も、顧問契約に基づき、弁護士にケアを求められる。特に、再発防止や同種リスクの相談が可能となり、派生事件についても、相談対応・受任対応を求められる

なお、特定事件の受任に伴う、キックオフフィー、リテーナーフィー(事件管理料)、成功報酬金は、顧問費用とは別になります。

最後に、プライバシーの問題について、懸念する方もいるようですが、弁護士には、法律上の守秘義務があり、秘密漏洩は処罰対象あるいは業務上の懲戒処分の対象となります。

もとより、この職業についたときから、秘密は墓の中まで持っていくことは職業倫理として堅持しています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01865_ネットトラブル対策法務_掲示板書き込みの証拠保全その2

掲示板書き込みの証拠については、公証役場で手続きを実践し保全しておくことを推奨します。

手続きのための事務資源がにあれば、下記を参照にすすめましょう。

事務資源がなければ、別途有償で、弁護士が事務提供することは可能です。

(C)弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所 /出典:企業ネットトラブル対策バイブル 弘文堂

(C)弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所 /出典:企業ネットトラブル対策バイブル 弘文堂

尚、繰り返しますが、このような保全手法をとっておかないと、消された書き込みは、なかった扱いになりますし、時間があまりに経過しすぎても、後日の改ざんを疑われます。

結局、この種の事務的準備をどこまで丹念にやるかが、相対的な戦略的優位性を蓄積することにつながります。

逆に言えば、このような事務的な準備をおろそかにして、いきなり、一発逆転を言い出しても、法律上は、怠慢な愚者の寝言として扱われるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01864_法律相談後に入手した書類を弁護士に渡す方法

弁護士相談を経たクライアントが、必要な書類を準備しなければならない場面があります。

書類によっては、弁護士が代理で取得することが可能なものもありますが、時間とカネという資源をできるだけ小さく・低く抑えたいのであれば、クライアント自身がそろえた方がいいでしょう。

さて、その書類ですが、一般的には、すでに手元にあってすぐに準備できるものから、入手するには手間と時間がかかるものまで、いろいろなものが含まれます。

用意するクライアントしては、すべて揃ってからまとめて弁護士に渡したほうがいい、ということを常識だと思う方もいるかもしれませんが、それは、法務相談の内容にもよりますし、クライアントが望むゴールの時期にもよります。

1つ言えるとするならば、そのようなことでさえも、自身の常識にとらわれずに、弁護士に確認をしたほうがいい、ということです。

たとえば、
「○○などは一度に送ったほうが五月雨式より良いと思いますがいかがしましょうか?」
と、問うクライアントに対し、弁護士が
「1回で、完璧なものを送っていただけるだけくらい、疎漏・不首尾がなく、要求事項を完璧にこなせる事務資源があれば、『一度に送ったほうが五月雨式より良い』と思います。
ですが、やり直しや追加等が発生することを考えれば、できたものから、送っていただき、パズルを完成させていった方が、時間と資源の節約になると思います。
とりあえず、一切合切送ってもらって、こちらで追加等を拝見させていただき、あり得べき追加や補充等をご指示申し上げていき、完成度を上げていく方がよいような気がします」
と、こたえる場合もあるのです。

要するに、
「揃ってからまとめて送ってください」
という場合もあれば、
「入手できたものから送ってください」
「スキャンしたもの(あるいは写メ撮ったもの)でいいから、まずは送ってください。原本は、持参(あるいは郵送)してください」
という場合もあるのです。

最後にもう1つ。

「『足らざるは過ぎたるに如かず(the more, the better)』という形で、できたものから送っていただいた方が、時間と労力の節約になり、プロジェクトの進捗に貢献すると思います」
「できたピースをどんどん埋め合わせて、逐次完成度を高めて、パズルを完成させる、という営みに近いので、五月雨式でいいので、入手できた情報からどんどん送り込んでいただければ幸いです(経験上、その方が、迅速かつ合理的です)」
などと、弁護士の文章は丁寧すぎるほどでしょうが、丁寧だからといって、おざなりにしたり、そのままにしていると、(弁護士の)時間を費消し、ひいては(弁護士費用という)カネを費消することになりかねません。

法務相談を短期で終わらせるクライアントは、皆一様に、弁護士が拙速に仕事できるよう、書類の準備ひとつとっても(質問の仕方も含め)立ち回りがうまいものです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01863_ネットトラブル対策法務_掲示板書き込みの証拠保全

掲示板書き込みの証拠保全は重要です。

保全手法をとっておかないと、消された書き込みは、なかった扱いになりますし、時間があまりに経過しすぎても、後日の改善を疑われます。

結局、この種の事務的準備をどこまで丹念にやるかが、相対的な戦略的優位性を蓄積することにつながります。

この種の事務的準備は、地道な作業ですし、直接、売り上げにつながるわけでもありません。

丹念に行うためには、カネも時間も費消します。

とはいえ、準備をおろそかにして、いきなり、一発逆転をと、訴訟を言い出しても、法律上は、怠慢な愚者の寝言として扱われるので、軽く考えるべきではありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01862_有事における心得

有事は、苛酷です。

弁護士は、問題を因数分解して論理的に整理して対処する知的資源ですが、
「良かろう・高かろう」
です。

有事において、弁護士を使うか使わないか、あるいは、使うのであれば、どのように・どこまで使うのかは、トレードオフによる価値判断となります。

弁護士としては、クライアントから救済を求められ、しかるべき稼働環境が整えば(カネを払い、敬意を払ってもらう〔素人では困難な問題であることの自覚をもち、頭を下げて、専門家にお願いする姿勢〕)、エンゲージを検討します。

たまに、カネを渋り・けちり、敬意も払わず、
「クライアントの言うことをだまって聞け」
というようなクライアントがいます。

このようなクライアントに限って、のっぴきならない状況に陥った挙句、混乱して、
「とにかく急いで対処してほしい。支払いは厭わない。過去の話はどうでもいいじゃないですか」
と、法務相談にやってきます。

著者としては、
「過去の話をきちっと反省し、総括し、矯正する」
ことを促してから、話を聞くようにします。

「過去の話はどうでもいいじゃないですか」
という人間は、つまらない自己保存感情から、過去の愚行を冷静に向き合う勇気もなく、結果、愚かな偏りが修正されず、何度も同種の失敗をするからです。

だからこそ、
「過去の話をきちっと反省し、総括し、矯正する」
のは極めて重要なのです。

「過去の話はどうでもいいじゃないですか。未来志向で」
という人間の戯言は、常習窃盗犯の
「過去は過去。未来に生きます」
という類の話と同様、ミリタリーとしては、ほとんどノイズとして排除します。

そうしないと、結局、同じ失敗を繰り返し、エンゲージしていると、背中から矢が飛んできたり、無駄な修正労力を費やすことになりますので。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01861_有事状況において持つべきマインドセット_ストレスから逃げない、他人も自分も信じない、正解や「正解を知っている(と称する)怪しげな人間」を探そうとしない

有事状況は、苛酷です。

ストレスと不安で死にそうになります。

また、トレードオフ課題(あっちを立てればこっちが立たず、肉を斬らせて骨を断つ、といった趣きの、目的達成のために多大な犠牲を伴う決断が迫られる課題)が波状的に突きつけられ、もたもたしていると、どんどん状況が悪化し、機会損失が増大します。

有事がために、人によっては、持病が悪化し死に至ることすらあり得ます。

命は大事です。

というか、私個人としては、有事ごときより、美容と健康の方が大事とも考えます。

「有事」
といっても、議論しているのは、ビジネスや権利や財産の話であり、いってみれば、銭カネです。

命や健康まで取られる話でもなく、たかが、銭カネですし、だいたいの有事は
「身から出た錆」
といったものであり、自己責任、因果応報、自業自得の話です。

ストレスや不眠で死んでも、あるいは美容と健康を失ってまで有事と戦うかどうかは、その人が何が大事にするか、という価値判断となります。

美容と健康を維持した状態で、過酷な有事もうまいこと切り抜けられる、というのは、あまりにも愚劣な妄想です。

「美容と健康を維持した状態で、過酷な有事もうまいこと切り抜けられる」
という常識を持っているとするならば、この常識をも壊さなければならないのです。

有事対処においては、
「自分以外、誰も信じない」
「さらにいえば、自分すらも信じない」
というマインドセットが必要となります。

このような過酷な気構えが必要です。

なぜなら、自分の常識すらアテにできないのですから。

「自分に代わって有事にうまく対応できる人、『その人に頼んでおけば、ストレスもなく、何もかもうまいこと処理し、何もなかったことにしてくれるようなプロフェッショナル』がいるはずであり、そんな『空想上の魔法使い』を探さなければ」
という感覚を持っていたとするならば、この感覚すらも廃棄しなければなりません。

「その人に頼んでおけば、ストレスもなく、何もかもうまいこと処理し、何もなかったことにしてくれるようなプロフェッショナル」
などいません。

絶対いません。

仮に、そういうことを臆面もなく述べる人間がいるとすれば、詐欺師です。

危機に陥った素人に
「耳に心地良い虚構」
を吹き込んでを食い物にするような詐欺師ではなく、知性と経験と誠実さをもつ弁護士であれば、
「有事には正解などありません。大事を小事に、小事を無事に近づけるため、ストレスフルなPDCA(合理的試行錯誤)を繰り返すだけです。そのような試行錯誤すら、知性と経験を要求される過酷な営みなのです。そして、有事における相応の対処が可能な知的資源や事務資源を有する人間は、レア中のレアといえます。正解のない課題に直面したときに、もっとも忌避しなければならない態度は、『正解を探す』『正解を知っていると称するバカが詐欺師を探す』というものです。カネと時間と労力の無駄であり、さらに言えば、貴重で希少な機会を不可逆的に損ないます。正解のない課題に直面したときに出来ることは、最善解を追求すること、すなわち、現実的な目標(落とし所)を設定して、そこに至るために、ダメージコントロール(損害軽減措置)を含む、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、裏技、反則技を創出、整理、選択、実施、見極め、ゲームチェンジという合理的試行錯誤(PDCA)を継続するだけです」
と、助言するでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01860_個人事業主(開業医や独立開業士業)が陥りがちな経営戦略上の誤解

個人事業主が陥りがちな経営上の誤解があります。

お金が欲しくて、お金が大好きで、カネ、カネ、カネで、カネのために人を裏切ることをいとわず、カネのために美容や健康や精神衛生を失い、カネのために人生をかける意気込みで、腹をくくって、個人開業をするような
「ビジネスエリート」
については、この種の誤解とは無縁です。

誤解を起こすのは、それなりに知性と教養があり、お育ちがよく、ジェントルでエレガントさにも価値を置いておられ、お金も好きといえば好きだが、
「カネ、カネ、カネで、カネのために人を裏切ることをいとわず、カネのために美容や健康や精神衛生を失い、カネのために人生をかける意気込み」
を持つには、知性と教養や品位が邪魔して、そこまで腹をくくることは無理、絶対無理、マジ無理、というタイプの経営者、具体的には、脱サラしてベンチャー起業する方や、開業医や独立開業する士業者(弁護士等)です。

ここで、個人開業医のケースを取り上げて考えてみましょう。

医療と医療事業はちがいます。

心臓外科医や脳外科医でない限り、医者も、今やコモディティ(日用品。石鹸やシャンプーみたいなもの)です。

医者であれば、医療は誰でもできます。

しかし、ただの医者と、個人開業医とは違います。

ただの医者は医療しかできません。

個人開業医は、医療を
「事業」
として成り立たせなければなりません。

すなわち、ただの勤務医と、個人開業医は、医療が出来るのは当たり前として、
医療「事業」
ができるかできないか、が分かれ目です。

事業は、すなわち、
「商い」
です。

ビジネスです。

リアルに言えば、金儲けです。

医療事業も
「事業」
である以上、
「算術」
「そろばん」
が命です。

要するに、医療事業において永続的に利潤をあげられるか、(一過性ではなく、サステナブルに)儲け続けられるか、が前提となります。

「医療『事業』のことを勉強して、きちんと採算が取れ、持続可能な形でやっていけるモデルができた。だから開業する」
は、生き残れるパターンです。

「医療ができるから開業する」
は、数ヶ月で経済的に死ぬパターンです。

医療「事業」
においては儲からない事柄は、一切関わってはいけません。

1秒たりとも時間の無駄使いは避けましょう。

「儲からないことであるにも関わらず、カネと時間とエネルギーといった資源を費やす行為」
を、日本語で
「道楽」
と呼びます。

貧しい人を助けてあげたい、困っている人にはカネももらわず最高の医療を、義を見てせざるは勇なきなり、困っているときはお互い様。

立派な考え方です。

まことに素晴らしいです。

ですが、もし、儲からなければ、それは、医療であっても、
医療「事業」
ではありません。

もちろん、応召義務がありますので、取締法規に違反しないようにするべきです。

自分の事業すらまともに安定的に黒字に出せない
「(経済的な)要介護者」
が、志と義侠心だけで、道楽に没頭するのは、店が傾く原因となります。

たとえ、正義にかない、高い志に奉仕するものであれ、
「道楽」
は、しびれるくらい儲かってから、です。

自分の商売すらまともに成り立たせることができない人間が、正義や社会や志を語るのは、見ていて滑稽です。

トロイの遺跡を発掘した、考古学の世界で有名なシュリーマンは、トロイの伝説を信じて遺跡発掘の志をもったとき、彼は、スコップをもって、のべつ幕なく、遺跡推定個所を掘り返し始めたのでしょうか?

違いますね。

トロイの伝説を信じて遺跡発掘の志をもった シュリーマン氏が、まず、最初に行ったのは、
「金儲け」
です。

しかも、ただの金儲けではありません。

しびれるくらいエゲつない、戦需品ビジネスで、戦争成金として、名を馳せました。

19世紀に入り、クリミア戦争が勃発すると、シュリーマンは硝石・硫黄・鉛などの戦需品の大商いに成功しました。

これに続く、アメリカの南北戦争では大量の綿花を買い占めて、これまた大成功。

サクラメント(砂金買い付け)、サンクトペテルブルグ(雑貨販売)、パリ(不動産取引)、アメリカ・キューバ(鉄道会社)、ブラジル(国債投資)など世界規模のネットワークで営まれた事業で、シュリーマンは莫大な富を築きます。

そうやって、使い切れない莫大な富をもってから、いよいよ、道楽、いや、生涯の志に没頭します。

遺跡発掘といっても、作業服着替え、スコップを以て、先頭に断って掘り返す、といったような泥臭いことはしません。

パリに居を構えて、優雅に、ギリシャ古代史の本格的な研究やイタリアのポンペイ・ヘルクラネウムなどの古代遺跡踏査などで考古学の知見を深めます。

大規模発掘作業が展開できる資金と、古物収集家としてのインスピレーションによって、小アジア北西部のヒッサリクの丘にあたりをつけ、カネにあかせて四度にわたる発掘の結果、遺跡発掘の成功しました。

その後、ギリシャ本土でもミケネ、ティリンスなどの発掘を行い、幼いころ父から聞いたホメロスの世界が実在することを証明し、その名を後世に遺しました。

個人開業医の先生方、皆さん、志は大いにおありだと思います。

ですが、
「遺跡発掘の志を立てたら、無一文のまま、単身、スコップで、闇雲に掘り返す」
などといったおろかなこと、してませんか?

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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