01861_有事状況において持つべきマインドセット_ストレスから逃げない、他人も自分も信じない、正解や「正解を知っている(と称する)怪しげな人間」を探そうとしない

有事状況は、苛酷です。

ストレスと不安で死にそうになります。

また、トレードオフ課題(あっちを立てればこっちが立たず、肉を斬らせて骨を断つ、といった趣きの、目的達成のために多大な犠牲を伴う決断が迫られる課題)が波状的に突きつけられ、もたもたしていると、どんどん状況が悪化し、機会損失が増大します。

有事がために、人によっては、持病が悪化し死に至ることすらあり得ます。

命は大事です。

というか、私個人としては、有事ごときより、美容と健康の方が大事とも考えます。

「有事」
といっても、議論しているのは、ビジネスや権利や財産の話であり、いってみれば、銭カネです。

命や健康まで取られる話でもなく、たかが、銭カネですし、だいたいの有事は
「身から出た錆」
といったものであり、自己責任、因果応報、自業自得の話です。

ストレスや不眠で死んでも、あるいは美容と健康を失ってまで有事と戦うかどうかは、その人が何が大事にするか、という価値判断となります。

美容と健康を維持した状態で、過酷な有事もうまいこと切り抜けられる、というのは、あまりにも愚劣な妄想です。

「美容と健康を維持した状態で、過酷な有事もうまいこと切り抜けられる」
という常識を持っているとするならば、この常識をも壊さなければならないのです。

有事対処においては、
「自分以外、誰も信じない」
「さらにいえば、自分すらも信じない」
というマインドセットが必要となります。

このような過酷な気構えが必要です。

なぜなら、自分の常識すらアテにできないのですから。

「自分に代わって有事にうまく対応できる人、『その人に頼んでおけば、ストレスもなく、何もかもうまいこと処理し、何もなかったことにしてくれるようなプロフェッショナル』がいるはずであり、そんな『空想上の魔法使い』を探さなければ」
という感覚を持っていたとするならば、この感覚すらも廃棄しなければなりません。

「その人に頼んでおけば、ストレスもなく、何もかもうまいこと処理し、何もなかったことにしてくれるようなプロフェッショナル」
などいません。

絶対いません。

仮に、そういうことを臆面もなく述べる人間がいるとすれば、詐欺師です。

危機に陥った素人に
「耳に心地良い虚構」
を吹き込んでを食い物にするような詐欺師ではなく、知性と経験と誠実さをもつ弁護士であれば、
「有事には正解などありません。大事を小事に、小事を無事に近づけるため、ストレスフルなPDCA(合理的試行錯誤)を繰り返すだけです。そのような試行錯誤すら、知性と経験を要求される過酷な営みなのです。そして、有事における相応の対処が可能な知的資源や事務資源を有する人間は、レア中のレアといえます。正解のない課題に直面したときに、もっとも忌避しなければならない態度は、『正解を探す』『正解を知っていると称するバカが詐欺師を探す』というものです。カネと時間と労力の無駄であり、さらに言えば、貴重で希少な機会を不可逆的に損ないます。正解のない課題に直面したときに出来ることは、最善解を追求すること、すなわち、現実的な目標(落とし所)を設定して、そこに至るために、ダメージコントロール(損害軽減措置)を含む、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、裏技、反則技を創出、整理、選択、実施、見極め、ゲームチェンジという合理的試行錯誤(PDCA)を継続するだけです」
と、助言するでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01860_個人事業主(開業医や独立開業士業)が陥りがちな経営戦略上の誤解

個人事業主が陥りがちな経営上の誤解があります。

お金が欲しくて、お金が大好きで、カネ、カネ、カネで、カネのために人を裏切ることをいとわず、カネのために美容や健康や精神衛生を失い、カネのために人生をかける意気込みで、腹をくくって、個人開業をするような
「ビジネスエリート」
については、この種の誤解とは無縁です。

誤解を起こすのは、それなりに知性と教養があり、お育ちがよく、ジェントルでエレガントさにも価値を置いておられ、お金も好きといえば好きだが、
「カネ、カネ、カネで、カネのために人を裏切ることをいとわず、カネのために美容や健康や精神衛生を失い、カネのために人生をかける意気込み」
を持つには、知性と教養や品位が邪魔して、そこまで腹をくくることは無理、絶対無理、マジ無理、というタイプの経営者、具体的には、脱サラしてベンチャー起業する方や、開業医や独立開業する士業者(弁護士等)です。

ここで、個人開業医のケースを取り上げて考えてみましょう。

医療と医療事業はちがいます。

心臓外科医や脳外科医でない限り、医者も、今やコモディティ(日用品。石鹸やシャンプーみたいなもの)です。

医者であれば、医療は誰でもできます。

しかし、ただの医者と、個人開業医とは違います。

ただの医者は医療しかできません。

個人開業医は、医療を
「事業」
として成り立たせなければなりません。

すなわち、ただの勤務医と、個人開業医は、医療が出来るのは当たり前として、
医療「事業」
ができるかできないか、が分かれ目です。

事業は、すなわち、
「商い」
です。

ビジネスです。

リアルに言えば、金儲けです。

医療事業も
「事業」
である以上、
「算術」
「そろばん」
が命です。

要するに、医療事業において永続的に利潤をあげられるか、(一過性ではなく、サステナブルに)儲け続けられるか、が前提となります。

「医療『事業』のことを勉強して、きちんと採算が取れ、持続可能な形でやっていけるモデルができた。だから開業する」
は、生き残れるパターンです。

「医療ができるから開業する」
は、数ヶ月で経済的に死ぬパターンです。

医療「事業」
においては儲からない事柄は、一切関わってはいけません。

1秒たりとも時間の無駄使いは避けましょう。

「儲からないことであるにも関わらず、カネと時間とエネルギーといった資源を費やす行為」
を、日本語で
「道楽」
と呼びます。

貧しい人を助けてあげたい、困っている人にはカネももらわず最高の医療を、義を見てせざるは勇なきなり、困っているときはお互い様。

立派な考え方です。

まことに素晴らしいです。

ですが、もし、儲からなければ、それは、医療であっても、
医療「事業」
ではありません。

もちろん、応召義務がありますので、取締法規に違反しないようにするべきです。

自分の事業すらまともに安定的に黒字に出せない
「(経済的な)要介護者」
が、志と義侠心だけで、道楽に没頭するのは、店が傾く原因となります。

たとえ、正義にかない、高い志に奉仕するものであれ、
「道楽」
は、しびれるくらい儲かってから、です。

自分の商売すらまともに成り立たせることができない人間が、正義や社会や志を語るのは、見ていて滑稽です。

トロイの遺跡を発掘した、考古学の世界で有名なシュリーマンは、トロイの伝説を信じて遺跡発掘の志をもったとき、彼は、スコップをもって、のべつ幕なく、遺跡推定個所を掘り返し始めたのでしょうか?

違いますね。

トロイの伝説を信じて遺跡発掘の志をもった シュリーマン氏が、まず、最初に行ったのは、
「金儲け」
です。

しかも、ただの金儲けではありません。

しびれるくらいエゲつない、戦需品ビジネスで、戦争成金として、名を馳せました。

19世紀に入り、クリミア戦争が勃発すると、シュリーマンは硝石・硫黄・鉛などの戦需品の大商いに成功しました。

これに続く、アメリカの南北戦争では大量の綿花を買い占めて、これまた大成功。

サクラメント(砂金買い付け)、サンクトペテルブルグ(雑貨販売)、パリ(不動産取引)、アメリカ・キューバ(鉄道会社)、ブラジル(国債投資)など世界規模のネットワークで営まれた事業で、シュリーマンは莫大な富を築きます。

そうやって、使い切れない莫大な富をもってから、いよいよ、道楽、いや、生涯の志に没頭します。

遺跡発掘といっても、作業服着替え、スコップを以て、先頭に断って掘り返す、といったような泥臭いことはしません。

パリに居を構えて、優雅に、ギリシャ古代史の本格的な研究やイタリアのポンペイ・ヘルクラネウムなどの古代遺跡踏査などで考古学の知見を深めます。

大規模発掘作業が展開できる資金と、古物収集家としてのインスピレーションによって、小アジア北西部のヒッサリクの丘にあたりをつけ、カネにあかせて四度にわたる発掘の結果、遺跡発掘の成功しました。

その後、ギリシャ本土でもミケネ、ティリンスなどの発掘を行い、幼いころ父から聞いたホメロスの世界が実在することを証明し、その名を後世に遺しました。

個人開業医の先生方、皆さん、志は大いにおありだと思います。

ですが、
「遺跡発掘の志を立てたら、無一文のまま、単身、スコップで、闇雲に掘り返す」
などといったおろかなこと、してませんか?

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01859_有事におけるスタッフ起用

たとえば、有事時において、独自の考えからスタッフを起用するクライアントもいます。

起用された有事時スタッフについて、弁護士としては、信頼しないことがあります。

有事時こそ、人事は慎重に運ばなければならないからです。

どれほど平時のオペレーションに長けていようが、シビリアンである限り、有事対処ができるわけではないからです。

誤解してはいけないのは、
「信頼しない」
というのは、人として信頼できるかできないか、企業のオペレーションとしての信頼度、の話ではありません。

それは、ミリタリーオペレーションという意味での信頼性です。

有事対処には、知識やスキルに加え、修羅場経験と気構えが必要ですが、その類のものは、シビリアンに欠落している、のは当然のことなのですから。

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01858_スモールビジネス(個人事業)を立ち上げる際に検討すべき事柄その2

一般的には、顧客リスト(これは事業の生命線です)が整って、売上が見込めてから、独立します。

顧客とは利益をもたらしてくれる人です。

こちらに手間をかけさせ、カネを吸い取るのは客ではなく、ドロボー(時間ドロボー、要するにドロボーということ)です。

顧客リストは整理していますか?

顧客、潜在的顧客は、リストに何人載っていますか?

リストの顧客数×来店率×成約率×客単価

成約顧客数×リピート率×リピート客単価

で、売上が出てくるはずです。

それまでは雌伏の時を過ごします。

まず、顧客、カネを払ってこちらの売り物を買ってくれそうな人のリストを、整理して、よくみてみましょう。

そこからしか、おカネは生まれません。

もちろん、通りがかって飛び込む人はいるでしょうが、それは例外です。

すべては、顧客から発想すべきです。

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01857_ミエル化・カタチ化・言語化・文書化とは

弁護士が、クライアントに
「現在までに発生した事例を、1日毎に日記形式でいいので、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化をお願いします。
1日毎にアップデートしていってください 」
と、お願いすることがあります。

弁護士が聞き取って代行することも可能ですが、ここに、貴重なおカネという資源を投入することは、クライアントのおサイフ状況にもよります。

これは、要するに、
「○月○日以降の相手方の動きをわかっている範囲で、主観や情緒を交えず、客観的に、時系列で誰もがミエルように文書にする」
ということです。

出来事を列挙するだけですから、それほど難しい課題ではないはずです。

ポイントは、以下のとおりです。

1 「○月○日以降」です。それより前のものは不要、ということです。

2 相手方の動きだけです。それ以外の動きは不要、ということです。

3 わかっている範囲だけです。周囲の「客観的」証言を前提にしてください
(僕は悪くない、私は正しい等、そのような弁解を意図した他罰的で情緒的な証言はノイズです) 。

4 主観や情緒を交えずに(相手方は悪、強欲、私の事情等という気持ちは表明しなくて結構です)。

5 客観的に。

6 時系列で(5W2Hで、無理であれば、極力特定して(「○時ころ」とか)。

7 まったく状況を知らない第三者が読んでもありありと状況が理解できるような言語と文書。新聞記事のようなものです。

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01856_スモールビジネス(個人事業)を立ち上げる際に検討すべき事柄

スモールビジネス(個人事業)の立ち上げ、具体的には、屋台を開業する場合もあるでしょうし、ネットで物販をする場合もあるでしょうし、開業医としてクリニックを立ち上げたり、あるいは、我々弁護士のような士業を立ち上げる場合もありますが、このような事業立ち上げの際に検討すべき事柄を整理しておきます。

1 ビジネスモデルのデザイン

まずは、ビジネスモデルを定義し、明確化します。

1)具体的で切迫した課題現実に直面した客がいて、
2)その客が課題解決を強く望み(何を欲しがっているか、どのような恐怖や苦痛から逃れようとしているか)、
3)「当該課題解決(提供した商品を所有することで欲求が解決する場合もあれば、奉仕をしたことで欲求が解決する場合もあります)」に対して、客が、「一定の価値(利潤を付加して提示した価額)」を認めて、金銭を快く払ってくれる、
という関係性があって、はじめてビジネスが成り立ちます。

もっと簡単に記述すると、
「1万円札を5000円で調達する方法を知っている一方で、その調達した『1万円札』を死ぬほど欲しがっていて、2万円で買う客がいる」、
という関係性が存在して、ビジネスがモデル(仮説)として成立します(5000円を2万円で売るわけなので、化粧品製造販売事業並の、原価率25%の超優良なビジネスモデルです)。

脱サラする前に、開業を決意する前に、会社を設立する前に、まずは、このビジネスモデルを発見し、あるいは仮説構築することが先決です。

・どのような状況にある
・どのような欲求をもった
・どのようなことに価値を置く
客をターゲットとして、

・どのような差別化要因あるサービスないし商品を、
・どのような価格で、
・どのような場所で、
・どのようなオペレーション体制で、
・どのように売るのか
ということを、

決める、ということです。

決める際には、主観や妄想や理念や人生哲学や価値観といったものに惑わされるのではなく、現実を見据え、客を見据え、市場を見据えて、ドライに、クールに、スマートに決定します。

よくみかけるのは、お医者さんや弁護士さんが新規開業する場合の、思考の混乱です。

前記のような客の属性をあいまいにしたまま、売り方や価格を適当に考えて、
「開業すれば、まあ、それなりに儲かるだろう」
という形で安易に開業する場合にみられます。

ひどい場合ですと、
「自分は真面目で立派で仁術をモットーとする医者であり(あるいは市民の自由と人権を守るための正義の弁護士であり)、こんな立派な自分を慕って、客がたくさんやってきてくれる。真面目に医業を究めていれば、お金は後からついてくる」
といった戯言をおっしゃって、上記のようなすべての要素を曖昧にしたまま、開業をおっぱじめるケースです。

そして、こういう、
「ビジネス的に甘く、妄想癖のあるお医者さん」
を食い物にする連中もいます。

曰く、
「先生ほどの経歴と腕と実績があれば、駅前に開業すれば、すぐに、千客万来、たちまち年収が億単位となって、フェラーリでもベントレーでも買えますよ。みすぼらしいマンション開業など言語道断、医療機器も最先端のものを取り揃えましょう。患者さんは見てますよ」
などと調子のいい話をして、莫大な初期投資をそそのかし、医師を借金漬けにするのです。

そうやって、失敗した後、借金漬けにした医師を囲い者のようにして、使い倒す、というような方々の存在も聞きます。

「お金は後からついてくる」
「真面目にやっていると、神様は見捨てない」
いずれも嘘です。

嘘っぱちです。

大嘘です。

お金は後からなんてついてきません。

適当な考えで商売をはじめて後からついてくるのは、借金と債権者だけです。

一生懸命がんばっていても、努力が合理的な方向性を失えば、神様は簡単に見捨てます。

大事なことは、
「合理的で持続可能な、堅実で確実な、ビジネスモデルを構築すること」
であり、実証可能性ある仮説すら構築できなければ、おとなしく、月給取りを続けておくことです。

2 インフラの整備

ビジネスモデルが確立したら、この仮説を実証するために、ビジネスを始めることになります。

開業前のビジネスモデルはどこまでいっても仮説に過ぎません。

もちろん、仮説が崩れる場合があります。

いや、仮説が崩れる場合の方が多いでしょう。

「1万円札を5000円で調達する方法を知っている一方で、その調達した『1万円札』を死ぬほど欲しがっていて、2万円で買う客がいる」
などという美味しい話、世の中、そうそう転がっていません。

ですから、仮説が崩れたり、仮説を修正する必要性を見越しておく必要があります。

ですから、スモールスタートが賢明です。

「スモールスタート」
を設計する上では、

1)売上を想定する
2)ヒト(要員設計。ワンオペレーションにするか、誰か雇うか、アウトソーシングにするか)を想定する
3)モノ(開業場所や開業設備)を想定する
4)チエ・ソフト・情報(情報発信手法や市場や顧客へのアクセス)を想定する

以上のような思考を経て、はじめて、

5)カネ(開業予算)の想定

が論理的に成立し、その予算制約の中で、開業場所や開業場所の中身や規模が具体的に決定されます。

開業直後に赤字を抱えてすぐさま頓挫する事業体の多くは、
「1)売上想定する」
という仮説構築プロセスについて、楽観的かつ過大に見積もりがちです。

さらに恐ろしい場合でいうと、
「投下資本を大きくして、設備や人員を大きくすれば、客が自然に寄ってくる」
という、理解できないほど愚劣な考えです。

戦後まもなくのモノ不足や医者不足、昭和末期や平成初期のような弁護士不足の状況であれば、
「投下資本を大きくして、設備や人員を大きくすれば、客が自然に寄ってくる」
という与太話もあり得たかもしれません。

しかし、現代は、モノは有り余っていて、どんな金融政策や財政政策を使ってもデフレが収まらず、医者も弁護士も供給過剰で開業難の時代です。

「大きいことはいいことだ」
ではありません。

大きいことはリスクでしかありません。

3 開業の計画の策定

以上が決まって、はじめて、具体的な計画を策定することになります。

1)(仮説実証前段階ということを踏まえた、適正な規模の)ゴールを「具体的に」イメージし、デザインする
2)開業時期を決める
3)逆算して、やること(タスク)を洗い出す

開業後、仮説がどの程度実証されたかを、みてみます。

もし、
「1万円札を5000円で調達する方法を知っている一方で、その調達した『1万円札』を死ぬほど欲しがっていて、2万円で買う客がいる」
というしびれるくらい美味しい仮説(ビジネスモデル)が現実的のものとなり、お金がチャリンチャリンと増え始めたとしましょう。

それどころか、魚が大漁なのに、魚籠(びく)やクーラーボックスが不足して、魚を取り逃している状況、すなわち機会損失が顕著である、ということになったとしましょう。

そうしたら、そこで、初めて、本格的な要員や設備の拡大を志向することになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01855_「経営に問題を抱えながら、過剰な自尊感情のため、正しい助言を拒絶してしまい、問題を先送りしてしまう開業医」に対する指南メモ

科学の力は偉大です。

医学の力も偉大です。

しかし、
「病気を治す」
というだけでは、医者はこの世で存在することを許されません。

きちんと、
「損益計算をして、採算を維持し、生活を支え、ゆとりを保ち、利益を留保・再投資する」
という営みを成し遂げて、始めて、医者は、この世で存在することを許されます。

開業した医師の中には、以下のような、不合理な認識(というか妄想)をもつことがあります。

・医は算術にあらず、仁術なり
・お金は後からついてくる
・お金は汚いもの。汚いお金のことを細かく考えるのは薄汚れた営み
・医者のことは医者にしかわからない
・経営助言をする者は、開業医については、素人であり、お金のことしか考えない
・私は患者から敬愛されているし、私を頼ってやってくる患者はたくさんいる
・みすぼらしい設備だと経営はうまくいかない。駅前じゃないと、開業できない。大きく投資をして見栄えをよくしたら、後できっちり回収出来る。真面目にやっていたら、そのうちうまく回り始める。

経営相談にいらっしゃったにもかかわらず、このような認識をもったまま、このような認識を前提として開業をすすめようとし、助言を聞き入れることなく、頑迷固陋ともいえるほどに助言を遮断する方もいます。

ところで、著者はビジネス弁護士です。

・成長・成功するビジネス
・全然だめなベンチャー
・大成功している開業医
・その反対の状況で苦しんでいる開業医や開業歯科医
等々、ありとあらゆる事業やビジネスを、ビジネスモデル(損益計画・採算ロジック)から、また、安全保障面(収益確保と採算確保の確実性やストレステスト)から、臨床面で支えた経験をもっています。

ですから、事業内容をお伺いすれば、数分で、ビジネスモデルの病変を発見、助言することができます。

ビジネス弁護士の話を聞き入れてくれればいいのですが、前記のような認識を絶対不変の前提として開業しようとする医師には対しては、
「まあ、痛い目みないとわからないだろう」
と匙を投げるほかありません。

まず、大切なことは、
「もっと人の話を聞いた方がいい」
ということです。

「聞くべき人間を間違えてはいけない」
のは、言わずもがなですが。

特に、前記のようなバイアスを補正するどころか、バイアスを増幅させ、過大で過剰な設備投資を進める(その裏側で、過大な債務を負わす方向に誘導する)ような医療経営コンサルタント等の助言は敬して遠ざけるべきです。

そして、科学や医学と同様に、経営知見の力も偉大である、ということです。

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01854_有事の際、自分に合う弁護士を探す視点その4

弁護士は、事態を予測し、想定した上で、時間的冗長性がある間に備える、という極めて価値ある提案をします。

それを、その場で聞き流した(何も対処せずにいる、というのは、結果的に、弁護士の助言・提案を聞き流したことになります)りしていると、時間と機会を喪失し、選択肢がなくなり、状況はますます悪化します。

にっちもさっちもいかなくなってから、身動きがとれなくなってから、混乱のあまり、
「しばらく考えさせてください」
と言い出すクライアントもいます。

考えてどうにかなるなら、それでよいのですが、交戦にはいっているのであれば、考えても時間と機会を喪失し、選択肢がどんどんなくなり、ジリ貧になるだけ、ということもあります。

戦闘中に真っ先に死ぬのは、
「戦争とは」
「人間とは」
「平和とは」
と哲学的な思索にふける人間です。

戦闘中に生き残るのは、状況を認知し、状況を評価・解釈し、展開予測をし、現実的な目的を設定し、目的達成のための課題を洗い出し、PCDA(試行錯誤)を間断なく継続し、ときにゲームチェンジを行う、ということを反射神経的に行える人間です。

必要なのは、ギブアップではなく、家族や友人のセラピーではなく、思考にふけるのではなく、洞察力と展開予測が正しく情勢判断も正確なプロフェッショナルとの軍議であり、軍議を受け入れるようなメンタルキャパシティの劇的改善です。

弁護士の武器は、手法の構築と実践です。

あの手、この手にとどまりません。

あの手、この手、に加え、奥の手まで考えます。

さらには、禁じ手や、寝技や小技や反則技も含めて、ありとあらゆる手法を構想して、最後まで、往生際悪くあがき続けます。

もちろん、それは、
「理解があって、謙虚で、聞く耳をもち、弁護士にお金と敬意を払ってくれる、忠誠心を刺激するようなクライアント」
から、強く依頼されて、という条件がつきますが。

あるクライアントに言われたことがあります。

人は自画自賛と言うでしょうが、
「親の小言と、畑中鐵丸弁護士の助言は、極上の冷酒と同じ」
だと。

「後からよく効く」
そうです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01853_有事の際、自分に合う弁護士を探す視点その2

有事の際、法務相談中、弁護士の助言や提案を聞いて、
「先生の話は難しすぎる」
「先生の話はわかりにくい」
「先生の話はあまりにも愚劣だ」
「私を愚弄している」
「私は客だ」
と怒りを感じるのであれば、それは、弁護士が
「難しすぎて何を言っているかわからない」
というのではなく、むしろ、しびれるくらい、腹立たしいくらいにわかりやすく、あまりにも鮮烈で、耳を塞ぎたくなるくらい、的を射ているからです。

なぜなら、
「難しすぎて何を言っているかわからない」
のであれば、怒りという感情は出てきませんから。

そもそも、弁護士の話が不愉快としたら、それは、弁護士に原因があるのではありません。

クライアントの状況が不愉快なのであり、これを、なるべく正確に、事態のマグニチュード(重篤さ)をリアルに伝わるように、咀嚼して、しびれるくらいわかりやすく伝えている弁護士には原因はないのです。

たとえるなら、顕微鏡を覗いたら、絶望的な病原菌が見えてきた。

そのときに、絶望的な状況を正確に投影する顕微鏡に八つ当たりしている状況と同じです。

顕微鏡に八つ当たりするのは、あまりに愚かというものです。

むしろ、状況を正確に教えてくれる顕微鏡には、感謝すべきです。

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01852_有事の際、自分に合う弁護士を探す視点その1

「私には、この弁護士は合わない。私に合う弁護士は、話をわかりやすくかみくだいてしてくれる方だ」
と、いうクライアントがいたとしましょう。

そのクライアントの視点は、どこにあるのでしょうか。

有事の際、法務相談では、誠実である弁護士ほど、腹立たしいほどの現実を伝えます。

「勝つため、有利に運ぶために、最善と考えられたもの」
を伝えることこそが、誠実に仕事することだからです。

ただし、それは、クライアントにとっては、
「あまりにも鮮烈で、耳を塞ぎたくなるくらい、的を射ている」
というものです。

「勝つため、有利に運ぶために、最善と考えられたもの」
を伝えることをモットーとしている著者の場合、今まで、どのクライアントからも、
「先生の話はわかりにくい」
「咀嚼が足りない」
と言われたことはありません。

むしろ、
「先生、何を言ってもいいけれど、本当のことだけは言わないで。しかも、わかりやすく、ど真ん中をつかないで」
と言うクライアントもいるほどです。

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