01836_労務に関する法務課題についての動員コスト

企業によっては、楽観想定を堅持し、楽観想定に基づく具体的行動を計画・準備・着手し、また、この点について弁護士に支援をしている最中であったとしても、悲観想定に基づく動員計画(予算見積もり)もみてみたい、予備的に欲しい、という場合もあるでしょう。

その場合、裁判例を抽出し、抽象的な評価概念を、具体的な事実と実例によって根拠構築する必要があります。

要するに、状況を、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化するプロセスが必要になります。

そして、最善手として対処するのであれば、フォーマル化し、交渉することまで想定しなければなりません。

それには、相応の資源動員が必要です。

フェーズ1 状況を、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化するプロセス
フェーズ2 文書化したものをフォーマル化し、後の紛議を見越した通知を起案・作成・発出
フェーズ3 最終的に、和解合意書を取り付ける交渉

フェーズ1~2の事務支援だけではなく、フェーズ3において、弁護士が代理人として対処するのであれば、別途、弁護士インセンティブを設計することになります。

「そんなに面倒なのか、そんなにコストがかかるのか」
と驚く経営者も少なくありませんが、そこまで費用と手間をかけても、なおも、敗北する可能性もある、というのが、一般的な労務に関する法務課題の現実なのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01835_企業トップと弁護士のコミュニケーションインフラが排除されるとロクなことがおこらない

01836に書いたとおり、法務事案(リーガルマター)はすべからくトップマターであり、弁護士からトップに発するメッセージは、相応に重要性があります。

そもそも法務事案であるにもかかわらず、企業トップと弁護士との直接のコミュニケーションインフラを、 中間管理者(企業の担当者)が、
「弁護士のいうことは大げさ過ぎる」
「経営課題ではないから」
などといって、ブロックし、
「法務・安全保障課題の発見・認知」
「法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装と、評価・解釈・展開予測」
「課題対処の計画立案」
を省略し、いきなり
「課題対処の着手・遂行」
にジャンプすることがあります。

しかも、その方策を、弁護士に相談することなく、単なる事務ルーティンとして処理しようとします。

これまでの経験上、中間管理者(企業の担当者)に、 トップとの直接のコミュニケーションインフラを排除あるいはブロックされた場合、ロクなことが起こりません。

そこで、弁護士は、担当者に、当該プロセスや、プロジェクト担当者の課題認知のための資源の有無について、疑義を呈します。

なぜなら、弁護士は、その立場・役割として、常に悲観想定をしているからです。

しかしながら、企業トップとの対話が成立することなく、弁護士としては同意いたしかねるような楽観想定に基づく悪手をすすめる企業も少なくありません。

悪手であったとしても、
「これがトップの決定だ」
といわれれば、弁護士は、指示に従いますし、その範囲と限度において最善を尽くすでしょう。

ただし、弁護士の想定どおり芳しからざる結果となれば、課題対処に関わったとはいえ、法律上はもちろんのこと、事実上も道義上も、弁護士としては責任を負担いたしかねることとなります。

企業の担当者は、従業員としての責任を負うことにはなるでしょうが、全責任を負うわけではありません。

全責任を負うのは、企業経営者以外にはいないのです。

何にせよ、法務事案はすべからくトップマターである認識にたち、トップに連絡を差し上げる前提を崩さない弁護士は、誠実であるとみるべきでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01834_危機管理対策本部のトップ

一般的な企業有事の方法論では、有事の際に最初に行うことは、有事安全保障のための特殊な組織(例えば危機管理対策本部のような臨時組織)を立ち上げ、
・トップ
・情報機関並びに参謀機関
を決定することです。

トップとは、蓋然性に依拠するあらゆる事象や課題について、最終決断を行う存在です。

失敗をした場合に恥をかき、自責・他責を含めて、想定外や不可抗力を含めて、全責任を負うサンドバッグ役となります。

さて、このような思考負荷を忌避する経営者もいます。

そして、試行錯誤するといって、フォアキャスティング(行きあたりばったりの出たとこ勝負)で何かトライしてみて、後はPDCAで、ということを強く志向します。

他方で、
「臨時組織を立ち上げることなど、理解できないし、小難しいし、ビジネス課題でなく所掌外だから」
といって、下に丸投げのスタンスをとる経営者もいます。

そうなると、制御不能の状態に陥りかねません。

正解や定石が明らかな課題であれば、丸投げされる下の人間も対処可能でしょうが、投げる側の人間もよくわかっていない、正解も定石もない有事の難題を丸投げされる、という状況は、下の人間の政治的安全保障という点でも最悪の状況です。

上手くいっても称賛されず、失敗したら、責任を問われるのですから。

結局のところ、蓋然性に依拠するあらゆる事象や課題について、最終決断を行い、失敗をした場合に恥をかき、自責・他責を含めて、想定外や不可抗力を含めて、全責任を負うサンドバッグ役となるのは、企業経営者以外にはいない、ということです。

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01833_安全保障課題に関する前提リテラシーの実装と、評価・解釈・展開予測

発見された安全保障課題を認知したら、問題とすべき状況(直面する病理状況)について、評価・観察・解釈・展開予測を行う必要があります。

ただ、
「病理状況について、評価・観察・解釈・展開予測を行う」
といっても、
「状況を認知・観察・評価・解釈・展開予測する」ことそのもの
が一つの大きな課題であり、正解や定石なき営みであり、
いってみれば、ゲームであり、ギャンブルです。

誰が、どのようなモノサシ(前提リテラシー)を用いて判断するかによって、結果が変わってきます。

1 誰が判断するのか

2 どのようなモノサシ(前提リテラシー)を用いるのか
1)シビリアンの常識を用いるのか
2)ミリタリーのアノマリーを用いるのか

3 誰が、判断するのか
1)楽観バイアスで希望的観測をベースにするのか
2)保守的な判断をベースにするのか

これらを前提にして、はじめて、作戦目標の策定(ゴールデザイン)と、作戦計画の立案・作戦行動の遂行をすることになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01832_安全保障課題の発見・認知

しかるべき有事・安全保障課題の遂行体制が整備されましたら、次に、有事・安全保障課題の発見・認知を行う必要があります。

ただ、
「有事・安全保障課題の発見・認知を行う」
といっても、
「有事・安全保障課題の発見・認知を行う」
というのも一つの大きな課題であり、正解や定石なき営みであり、
いってみれば、選択であり、ギャンブルです。

まずは、状況について、

1 (相応の時間がたち、《確約があるわけではないが》特に目立つ動きがないようにみえるようだから)課題自体消失、と判断するのか(終結宣言)

2 相応の資源を動員して、解決すべき課題として残存している、と判断するのか

について、明確な態度決定をしなければなりません。

課題を解決したとみるのか、対処すべき課題があるとみるのか、このあたりの発見・特定・具体化が、曖昧な状態で場当たり的な対処をするだけですと、有事において、傷を深める結果になりかねません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01831_安全保障課題に対処するミリタリー空間における遂行体制

上場準備をするような規模の企業においては、すでに、社長をトップとする経営上の指揮命令系統は整備されているものと推察されます。

この統治秩序の整備は必須課題であり、当然のことです。

しかし、これは、ビジネス空間における遂行体制であり、いわば、シビリアン空間における指揮命令系統です。

他方で、安全保障課題に対処するミリタリー空間における遂行体制は脆弱、というよりも、明確に体制整備がされていない企業が多くみられます。

要するに、有事安全保障においては、
「状況を認知・観察・評価・解釈・展開予測する」
というのも1つの大きな課題であり、正解や定石なき営みであり、いってみれば、ゲームであり、ギャンブルです。

この
「状況を認知・観察・評価・解釈・展開予測する」
を、誰が責任を以てジャッジし、また、誰がジャッジの前提としての選択肢を整理するか、ということが、体制として必要不可欠です。

この点、ミリタリー空間におけるゲームのロジックやルールやプレースタイル(ソフト面)については、「正解や定石のないプロジェクト」の戦略を立案し、戦略的に遂行する1~11にまとめています。

また、 ミリタリー空間におけるゲーム遂行のためのチームビルディング(ハード面)については、正解も定石も不明なプロジェクトを推進するためのチーム体制を整える1~7に詳しく述べています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01829_クライアントにおける「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」二択の対処方向性

訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その3_「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」にて記しましたが、結局のところ、各種被害事案のミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化が先決課題となります。

この課題は、法的専門性とは無関係のプロセスです。

当該プロセスは
「法的課題」
などではなく、
「自らが体験した事実の、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化」
という単純な事務課題であり、誰もが小学生のときに行った経験のある
「夏休みの日記」や「朝顔の観察日記」と同様、
「国語の問題」であり、
「(新聞記者や事務系公務員勤務経験2年程度の知的資源と事務資源があれば対処可能な)報連相(報告、連絡及び相談)という純然たる事務課題」
です。

これを完遂しないと、嫌がらせも、猫パンチも、ゲリラ戦といった展開も先に進みません。

他方で、過去の状況の想起や整理統合と、観察・想起・認識状況のミエル化・カタチ化・言語化・文書化プロセスを遂行するには、相応の事務資源(知的資源や整理課題遂行資源や言語化・文書化遂行のための資源)が必要となります。

クライアントにおいては、
「そのような資源(単純な事務課題であり国語の問題を遂行する資源)が存在しない」
という場合もあれば、現場において
「こんなくだらないことに時間をかけている場合ではない」
という抵抗も予想されます。

要するに

1)あくまで内製化を志向し、担当や原局・原課に対して、「宿題」の作成を指示し、クライアントにおいて遂行する
2)「宿題」遂行のための資源(単純な事務課題であり国語の問題を遂行する資源)が存在しない、とギブアップし、カネを払って済ませる

という二択になります。

後者の場合、弁護士が
「カンニング、替え玉受験、レポート丸写し」
のための事務資源提供を行うことになりますので、相応の費用がかかります。

クライアント側において、かなり予算が厳しい、という状況であれば、弁護士としては、あえて、コストのかかる提案(言ってみれば、小学校でやっていた夏休み日記課題や、朝顔の観察日記程度の、体験事実や認知内容のミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化プロジェクトなので、偏差値48程度でできる話ですし)は差し控えることとなります。

ということで、結局は、

1)あくまで内製化を志向し、担当や原局・原課に対して、「宿題」の作成を指示し、御社において遂行する
2)「宿題」遂行のための資源(単純な事務課題であり国語の問題を遂行する資源)が存在しない、とギブアップし、カネを払って済ませる

という二択の対処方向性について、選択を判断しなければなりません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01828_法的・戦略的ランドスケーピング(機能的状況俯瞰)の意義・価値・重要性~弁護士とクライアント、それぞれ眺めている風景が異なると、悲劇を生む~_その4_圧力なき対話の限界・対話をするにはまずは圧力の準備を

相手が訴訟慣れしているとなれば、百戦錬磨です。

当方が、あれこれ法的な正当性を実装した主張を展開しても、相手は、やはり、のらりくらり、曖昧戦略で、時間稼ぎをして、引き延ばすだけでしょう。

相手方は、

引用開始==========================>
真剣かつ誠実に裁判を遂行しようとすると、「弁護士費用や裁判所利用料としての印紙代という外部化客観化されたコスト」以外に、気の遠くなるような資源を動員して、クライアントサイドにおいて、「事実経緯を、記憶喚起・復元・再現し、これを言語化し、記録化し、文書化する」という作業を貫徹することが要求されます
<==========================引用終了

と見切って、
「どうせ訴えてこないだろう」
と、ある意味、正しい展開予測の下に、こちらの要求を無視してくることが想定されます。

圧力がなければ、対話のみでは、まったく交渉が機能しません。

その意味で、(例えは不適切ですが、)核ミサイルを装備して、核ミサイルの発射ボタンを片手に、交渉し、破談となれば、ただちに、ミサイルを発射するような交渉なり戦争を想定しないと、
「足元をみられる」
ということになりかねません。

もしも、当方のクライアントが、
「(弁護士に相談しておきながらも)私は裁判を望んでいない」
という言いだすようであれば、それは、悪手中の悪手です。

前述の例で言うと、核ミサイルをもっていないことを暴露して、難しい安全保障交渉をするわけですから、外交手法として最悪です。

ですので、交渉に際しては、
「戦争上等」
「戦争辞さず」
「むしろ、戦争する気満々なんだけど、ま、そちらがどうしても話したければ聞いてやるわ」
という準備と環境を実装することが、先決課題となるのです。

「“戦争”だなんて、そこまで大ごとにせずとも、わたしの知り合いの有力者の仲裁で迅速に解決できるかもしれない」
と、言い出すクライアントもいます。

そのように思いたくなる気持ちもわからないではありませんが、魔法のような解決方法が(本当に)あるのなら、弁護士のやり方(不愉快で、面倒くさく、コストがかかり、期待値も各種条件・環境に依存する)よりも圧倒的に利便性が高いわけですから、弁護士に相談にくるより前に、試みればよかっただけの話です(どこかに、モヤモヤとした不安や不満があるから、弁護士に相談にきたのでしょうが)。

弁護士としては、有力者の仲介によって迅速に解決できた、という事例は寡聞にして知りませんし、たいてい、有力者に相談してもやんわり断られたりして、時間と機会を喪失した挙げ句、最後に、恥ずかしそうに、弁護士の門を叩く、というケースが99.9%、というのが現実です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01827_法的・戦略的ランドスケーピング(機能的状況俯瞰)の意義・価値・重要性~弁護士とクライアント、それぞれ眺めている風景が異なると、悲劇を生む~_その3_そもそも「事件」なのか

クライアントが
「事件」
として認識せずに、
「当たり前の話、常識にしたがった処理がされるべきであり、相手方は、当方の主張を当然受け入れるはず」
と思い込んでいる場合、しかも、相手方が
「(言いたいことがあれば)弁護士を呼んでこい」
と言うのであれば、それは完全に
「事件」
です。

すなわち、相手は
「あっかんべー」
して、当方の要求を拒否している状況です。

実は、民事紛争においては、この
「あっかんべー」戦略
は、実に効果的に機能します。

引用開始==========================>
こう考えると、裁判制度は、原告に対して、腹の立つくらい面倒で、しびれるくらい過酷で、ムカつくくらい負担の重い偏頗的なシステムであり、「日本の民事紛争に関する法制度や裁判制度は、加害者・被告が感涙にむせぶほど優しく、被害者・原告には身も凍るくらい冷徹で過酷である」と総括できてしまうほどの現状が存在します。
<==========================引用終了

という厳然たる状況がある以上、加害者である相手方は、自らに有利な状況を最大限利用し、言を左右にして、のらりくらりして、当方の機先を削いでいくのが、(道義的には誤っていても)戦略的には正しいのです。

「『巧言令色鮮し仁』という対処哲学を固持して、のらりくらり、曖昧戦略で、時間稼ぎをして、引き延ばせ」
という外交方針は、作戦指示として正しい、ということです。

まずは、この状況を、 クライアントが
「事件」
と認識するところから、始めなければならないでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01826_法的・戦略的ランドスケーピング(機能的状況俯瞰)の意義・価値・重要性~弁護士とクライアント、それぞれ眺めている風景が異なると、悲劇を生む~_その2_評価・解釈・展開予測

事件を対処していく上では、前提リテラシーを実装し、当該リテラシーを基礎に、評価・解釈・展開予測のプロセスが必要となります。

弁護士が採用する前提リテラシーは、かなり悲観的なものとなります。

「裁判外で会談を持てば、チョチョイのチョイで解決できる」
という展開は予測されず、結果、訴訟しなければ事態進展せず、また、訴訟を提起しようとすると、コスパでパンクする、という展開が予測されます。

この「訴訟を提起しようとすると、コスパでパンクする、という展開」を支えるリテラシーは、

経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!

に記述しています。

ここで、問題が生じる可能性があります。

例えば、弁護士として(A)という悲観想定での展開予測を行ったものの、クライアントが(B)という楽観想定を強く信じた場合です。

加えて、クライアントが、弁護士に、(B)の楽観想定を前提とした課題対処を求めた場合です。

そして、案の定、弁護士の悲観想定(A)が現実化し、(B)の楽観想定を前提とした雑な手法が悪手となって、事件が不可逆的にどうしょうもない状況に陥る事態を懸念します。

この場合、たとえ弁護士として課題対処に関わったとはいえ、もともと、クライアントが愚劣にも信奉した間違った想定が原因で発生した災いであり、責任は、楽観想定を選択したクライアントに帰すことになります。

しかし、クライアントは、
「なぜ、もっと強く悲観想定を薦めなかった」
などと愚劣なことを言って、弁護士のことを恨みはじめます。

こうなると、醜悪な内部分裂が始まります。

契約不適合責任(瑕疵担保責任)は、除斥期間(時効)が定められており、このような内ゲバ(内部抗争)をやっているうちに、時間が過ぎて、請求権が消失した事例は実にたくさんあります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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