01801_訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その9_法的メッセージの「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」

ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化
には、多大な時間とエネルギーを費消することを頭に入れておかなければなりません。

ここで、注意しなければならないのは、裁判制度を利用するにあたっての
「状況の調査、功利的状況構築、構築状況に照らした法的メッセージの設計、法的メッセージ」

「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
は、社内対応可能な内製課題として対応可能なものではない、ということです。

「法的メッセージ」の「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」を
「企業内活動の言語化・記録化・文書化(株主総会や取締役会の議事録作成)や取引活動の文書化(契約書作成)」
と同じようなもの、と捉えるのは、危険です。

要するに、企業外の敵対勢力(取引トラブル・法令違反に対する当局による不利益措置など)や企業内の敵対分子(労働問題・内部統制問題など)が生じた場合、直接これらカウンターパートと対向して解決を働きかけるための、
「状況の調査、功利的状況構築、構築状況に照らした法的メッセージの設計、法的メッセージのミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
については、社内対応可能な内製課題ではありません。

なぜなら、その状況と似たような判例を精査・分析し、規範ないし要件抽出を行い、当該規範ないし要件に該当しないような状況構築設計を行った上で、あらためて状況を調査し、その上で、
「功利的状況構築、構築状況に照らした法的メッセージの設計、法的メッセージのミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
を行わなければならないからです。

裁判例を読解する時点で、(たとえ法務部に属しているとしても)サラリーマンでは対処不能であろう、と推察します。

結局のところ、
「弁護士費用や裁判所利用料としての印紙代という外部化客観化されたコスト」
さえ支払えば、すぐに、解決できるようなものではなく、気の遠くなるような時間と資源を動員することを、理解しておかなければならない、ということです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01800_訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その8_「感情を優先するか、勘定を優先するか」続

訴訟は、
「感情を優先するか、勘定を優先するか」
という思考優先秩序に依存します。

1 感情を優先する01799をお読みください)

2 勘定を優先する

勘定を優先するなら、結局、拙稿「ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!」 のとおり、

引用開始==========================>
意地や沽券(こけん)のために、訴訟を開始して、却って敗訴してメンツを失っても、意味はないでしょう。「やられたら、やり返す」ではなく、「やられたら、あきらめる」くらいの気持ちをもって、今回の事件を教訓として、類似のリスクの探索と防止を含めて、より強靭な取引管理を推進する契機として活用した方がよほど商売にはプラスと思いますよ。
<==========================引用終了

という行動に帰着します。

要するに、
「泣き寝入りが正しい」
ということです。

とはいえ、
「勘定を優先するなら泣き寝入りが正しい」
からといって、何もしない、というのは、短絡的すぎます。

「訴訟で勝てないなら、やっても仕方がない」
という先入観によって、
「ホコリ(ミスやエラーや違法行為)を無視・軽視して、見て見ぬ振り」
をして、そのままおざなりの解決をして、先に進めようという態度決定は要注意です。

前提として、
「訴訟は、必ず勝たねばならぬものか?」
という根源的問いに関わります。

訴訟は、もちろん、
「正当な権利を実現するために、ロゴス(論理)とパトス(妥当性)とエトス(証拠や反論処理を施して信用を勝ち取る)をすべて実装した上で、絶対勝つ」
というのが本来的な使い方です。

他方で、憲法で裁判を受ける権利が保障されており、どんなくだらない主張や、どんなに証拠が整っていなくとも、訴訟そのものは憲法上の権利として提起可能です。

そして、どんなにくだらない、証拠が乏しい訴訟でも、どうせ勝てるからといって手を抜いて対応すると、欠席判決として負ける可能性がありますので、被告(訴えられた側)は、手を抜けず、時間と費用と労力をかけて対応せざるを得ません。

訴訟になった場合ですが、短くても8ヶ月、下手をすれば、年単位でかかります。

しかも、その間、裁判官(判決を書くのが面倒なので和解を協力に勧告する)が何度も、何度も和解を提案します。

結局、訴訟は加害者(訴えた側)が、圧倒的に有利になる、という日本の裁判制度の致命的欠陥に守られ、ゲームを有利に進められます。

そして、被告は、そうやって手を抜けず、時間と費用と労力をかけたところで、勝っても得るものはありません。

すなわち、訴訟は
「必ず勝たねばならぬ」
という使い方もあれば、
「相手に対して不快感をぶつけて相手に無駄な資源動員を強いる、合法的な嫌がらせ」
として使うことも可能、という言い方ができてしまう現実があるのです。

もちろん、まったく根拠のない訴訟を提起すれば、不当訴訟として、逆に損害賠償責任を負担することになりますが、(勝つだけの確実な証拠はなくとも)相応の理由と根拠があれば、ポンポン訴訟を提起しても、憲法上正当な権利として許容されます。

実際、
「負けても構わない、圧力として使えれば十分」
「話し合いの場を作れれば目的が果たせる」
「とにかく捨て置け無い」
「大事にして相手に負荷をかけたい」
という形で、日々、勝つ見込みのない訴訟がかなりの数起こされているのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01799_訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その7_「感情を優先するか、勘定を優先するか」

訴訟は、
「感情を優先するか、勘定を優先するか」
という思考優先秩序に依存します。

1 感情を優先する

このまま泣き寝入りは許せん、というのであれば、
1)あれこれ裁判外で仕掛ける
2)正々堂々と訴訟を仕掛ける
の2択しかありません。

(2)は、莫大な資源動員が必要となりますし、かつ、動員資源に見合う期待値は、経済的に成立しません。

このあたりは、拙稿「ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!」をお読みください。

となると、コスパのいい(1)ということになります。

・面談をもちかける:
相手はそれに応じてくれるのか(相手に、こちらのゴール達成に協力をさせるような強制の契機が存在するのか)
・誰かを仲介にして面談に来てもらう:
お願い筋の話であり、このようなメッセージを発すること自体、「(そちらがあっかんべーして、それ以上話が進まなくなってしまっていて、)困っているから助けてくれ」というこちらの状況を伝えるに等しく、ますます、相手をいい気にさせ、増長させるだけではないか
・有力者(たとえば国会議員)あるいは権力機関(たとえば監督官庁)とのネットワークを活用する:
上記と同様な場を設定することも、いまどき、そんな昭和の香りがするやり方で、相手をやり込められるのか
・特に国会議員を動員するのは、
(ア)使えない国会議員を動員するのは時間の無駄だし、
(イ)力があって使える国会議員を動員するのは反社会的勢力に借りを作るのと同じで、たいていロクなことにならない(という経験則)
・こういうショートカット、ファーストトラックを使うのは、本筋できちんとした根拠がなく、正道で戦えないから、邪道を求める、ということが多く、うまく機能せず、結果、相手が、このような動きを察知した上で、なお、さらに、あっかんべーを崩さない、という態度に出た場合、「釘を刺す」どころか、「より、バカにされ、なめられ、軽くみられる」というアイデンティ構築戦略としては、「やらなかったほうがマシ」という悲惨な結果を招くリスクがある
といったことが懸念されます。

そこで、内容証明を出してみたり、するとしましょう。

ですが、これも相手がしっかりと対応できる弁護士をつけ防衛体制を整備してしまえば、当方としてはすべて打ち返されてしまいます。

さらに行動をエスカレートさせると、今度は、攻守が変わりかねません。

結局、
「気持ちが収まらない、しかし、気持ちを収めようとして訴訟をしたいがカネがもったいない」
というジレンマに陥ることになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01798_訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その6_「秩序破壊型アドバイザー」 との対話を通じた作戦協議

有事・戦時の作戦協議(作戦協議の前提としての状況の認知・整理・観察・評価・解釈・展開予測や、作戦立案する際に適用するべき有事空間におけるゲームのロジックやルールやアノマリー等の採否を含む)においては、議論の本質を、短時間で、かつ鮮明に浮かび上がらせることが最優先と考え、カジュアルに、リラックスした雰囲気で話をすすめることが推奨されます。

もともと、ミリタリー空間におけるゲームにおいては、
「何でもあり」
がゲームの基本ですから、硬直した思考や、シビリアン空間における常識に囚われていては、状況や展開推移を見誤り、致命的な状況に陥りかねません。

想像力を刺激するような環境で、参加者全員がフラットな関係に立ち、非常識を歓迎し、タブーのない議論や、たとえ腹が立つような内容であっても相手方の立場に立った思考を鮮明に浮かび上がらせるような協議こそを是とすべきです。

筆者としても、有事・戦時の作戦協議においては、クライアントが腹を立てるような認識や展開予測を披瀝しますし、たまに、
「いい加減にしろ」
と怒り出す方もいます。

ですが、筆者の認識や展開予測は、腹が立つくらい的中し、これに対する備えが後日奏功する場合がほとんどです。

すなわち、
「秩序破壊型アドバイザー」
との対話を通じた作戦協議が、有効適切な作戦立案には絶対的に必要である、と考えます。

「秩序破壊型アドバイザー」とは、
有事対処のような正解も定石もない営みを設計・構築・実施する上で必要な外部知的資源として、既存の秩序を否定し、愚弄し、引っ掻き回し、こき下ろすような、エイリアンのような存在です。

すなわち、自社や業界に生息せず、社内や業界に生息する人間とはまったく違う価値観や生き方をしてきて、責任者(リーダー)に媚びず、臆せず、既存の権威やシステムや価値観を全否定し、新たな着眼点やブレイクスルーアイデアを提示してくれる人間です。

作戦協議においては、カジュアルでリラックスした雰囲気が推奨され、実際、筆者は、そのような雰囲気で協議を行いますが、話し方のマナーやトーンとは裏腹に、話される内容は、極めて重要な決断課題、誤解をおそれず飾らずに言えば、
「会社や個人運命・生き死に」
をポーカーチップにしたギャンブルにおけるベットに関する決断です。

すなわち、何か正解や定石があるわけではなく、いってみれば、いずれも不正解の選択肢しかなく、どれが
「よりマシな不正解」
を選ぶ営みです。

「じゃあ、どうすりゃいいの?」
と答えを求めたくもなるでしょうが、どんなに優秀な弁護士であれ、正解や定石を知りません。

知っていたら、とっくに教えています。

正解や定石は存在しないのです。

要するに、
「最善解」ないし「現実解」ないし「よりマシな不正解」
を選ぶしかなく、しかもそれが、極めて重要な決断課題だということです。

ちなみに、正解や定石は存在しない営みを協議する場において、
「正解や定石はこれだ」
と断言する手合がいますが、こいつは、間違いなく、詐欺師です。

まともな弁護士は、詐欺師ではありません。

したがって、まともな弁護士であれば、
「正解や定石が存在しない営みにおいて、正解や定石はこれだ」
という嘘はつきません。

そして、
「最善解」ないし「現実解」ないし「よりマシな不正解」
を選ぶ上では、

1)法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装と、評価・解釈・展開予測
2)各選択肢のプロス&コンス(長所・短所)

を明確に整理した上で、要するに、ギャンブルの選択状況をしびれるくらいビビッドにミエル化・カタチ化・言語化・文書化した上で、サイコロを振る、という対処姿勢が推奨されます。

態度決定の前に、まず、しっかりと状況を整理し、その上で、最終的に納得した上で、
「最善解」ないし「現実解」ないし「よりマシな不正解」
を選ぶべきです。

もちろん、当該選択について助力が必要であれば、弁護士は支援をします。

支援はしますが、選ぶのは、総大将である当事者です。

そして、選び終わったら、今度は、
選んだ「最善解」ないし「現実解」ないし「よりマシな不正解」
を正解に近づけるための努力をしていくことになります。

いずれにしても、何らかの決定をする場合、当事者にとって、非常に重要な決断になりますので、いろいろ時間的切迫性はあるものの、十分な精神的余裕を担保した上で、慎重にすべきです。

以上含めて、決断は、すべての展開予測を前提に、慎重にも慎重を重ねることが肝要です。

とはいえ、どこまで突き詰めても、最後は、ギャンブルであり、決断するほかありませんし、悩んだり、先送りしたところで、どんどん時間と機会と選択肢を喪失し、追い詰められていくだけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01797_訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その5_気の遠くなるような時間と資源を動員

リスク管理・戦時対応の専門家である弁護士が立てる有事対応プラン(一種の「軍事作戦」という例え方も可能かと思います)の計画・立案と実施・遂行においては、
「悲観的・現実的に考え抜いて計画するが、着手し、実行したら最後、見極めに達するまでは、最善を信じて全力で遂行する」
という態度が推奨されます。

このような知的な対処手法は、平時のビジネスも同じだと思います。

「楽観的に計画し(あるいは計画すらせず、単なる思いつきで)、適当に遂行してみて、少しやってみてうまくいかないと、何が原因かわからないまま、見極めに到達しない段階ですぐに諦める」
というやり方ですと、当然うまくいきませんし、次の学びのための情報収集すらできません(無論、うまくいかないことが明らか、という見極めに達してもなお、サンクコストバイアスに罹患して、泥沼化したプランに拘泥するのは愚かです)。

「悲観的・現実的に考え抜いて計画し、とはいえ、最後まで不確定要素が残る以上、最後は腹をくくって、勝負に挑み、戦いの最中は、勝敗を顧慮せず目の前の状況対処に全神経を集中させて最善を尽くし、見極めに達するまで一途邁進する」
というのがビジネスで成果を出すための態度であろう、と考えます。

ところで、
「軍事作戦の立案・遂行」と「ビジネス(要するに金儲け)の立案・遂行」
とでは、決定的な違いがあります。

「軍事作戦の立案・遂行」とは、要するに、
「相手の1万円札を燃やすために、10万円で火炎放射器を買い揃える」ような、
壮大な資源の無駄が生じる営みです。

「非生産的な営みの極地ともいえる裁判沙汰」は、
「お金を払ってくれる客に資源を費やすのではなく、『紛議』という得体のしれない時間泥棒・資源泥棒に、ただひたすら希少な運営資源を食い尽くされること」
を意味します。

立案段階においてすら、腹が立つくらい面倒です。

すなわち、
「軍事作戦の立案・遂行」
といっても、相手への憎しみに駆られて、思いついた攻撃手法を手当り次第に実施していけばいいというものではありません。

もともと資源消耗が著しい営みにおいて、できる限り、効率的な資源消耗を目指すなら、立案段階で、
1)相手方への対処・対応のための論理の模索
2)相手方への対処・対応のための方針の選択
3)相手方への対処・対応のためのプロトコル(要領・手順)の策定
といったプロセスを踏む必要であり、その一つひとつの知的プロセスに時間と資源を必要とするのです。

ビジネスにおいて、
「流行っているから売れる」
「これなら儲かりそうだから」
という雑な感覚で資源動員をしても、売れ残りを抱えて大赤字になったり、店を構えても閑古鳥が鳴く有様で大損を出したり、というのはよくある話です。

「少ない予算や資源を効率的に活用して、最大の効果を」
というのは、ビジネスであれ、軍事作戦であれ同じであり、そのためには、
「賢い無駄遣い(資源消耗)のための、賢い計画策定」
が必要となります。

すなわち、危機事態の観察・評価・解釈やそこからの展開推移を予測し、その対処・対応のための論理を調査・発見し、当該論理に基づいた対処方針と対処プロトコル(要領・手順)を立案・策定するというプロジェクトを立ち上げ、遂行しなければなりません。

「危機事態の観察・評価・解釈や展開予測」
に際して、弁護士は、膨大な裁判例のなかから似たような紛争実例等の検索調査等を行うこととなります。

裁判例は、法令とは違い、裁判官ごとの傾向(いわば「全国に2800存在する独立国家機関」の傾向)という程度のものなので、逐一傾向解析等の上、論理を探り当てるような営みとなります。

なお、この営みは、顧問業務(特段の調査を要せず、ゼネラルな知見で、即座に応答できる助言をカバー)の範疇を超えることとなりますので、顧問料とは別途の調査料が発生します。

さらに、その後も、特定事案についての、現実的で達成可能な作戦目的の定義(SMART基準による目的定義)、目的達成のための課題や障害の発見・特定、課題対処のための方法論(戦略)の抽出とプロコン評価と選択・決定、作戦遂行のための予算を含む資源動員などなど、延々とお金のかかる話が続きます。

「弁護士費用や裁判所利用料としての印紙代という外部化客観化されたコスト」
さえ支払えば、すぐに、解決できるようなものではなく、気の遠くなるような時間と資源を動員することを、理解しておかなければなりません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01796_訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その4_弁護士ショッピング

弁護士は、大事が小事に、小事が無事になるようなプラン(プランA、プランB・・・複数個のプラン)を考えます。

ところが、これらプランを紹介しても、相談者の多くは、強固な思考連鎖のバイアスが邪魔して聞く耳を持ちません。

合理的・論理的に考えられていて、より安全性が高く、確度の高いプランがあるにもかかわらず、相談者が受け入れられないのは、相談者が愚か、ということではありません。

視野狭窄に陥っている、あるいは、プライドやメンツ・自尊心・体裁・性善説といったものにとらわれていると考えられます。

やり方がうまくいかないからと弁護士に相談しにきたのに、
「うまくいかない自説」
を滔々と演説する相談者があまりにも多いです。

それどころか、ドクターショッピングならぬ弁護士ショッピングにはまる相談者もいます。

そして、時間がどんどん費消していき、ますます、のっぴきならぬ状況に陥ってしまう方も少なくありません。

そして、そのような方に限って、
「最初に示されたプランを、相談した時点ですぐさま実行に移していたら・・・」
と、今度は悔やむことに時間を費消していき、ますます、のっぴきならぬ状況に陥ってしまうのです。

少しでも大事が小事に、小事が無事になるようにするためには、
「彼を攻めるには我を顧みよ」
から始めるしかありません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01795_訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その3_「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」

裁判制度を利用するにあたって、絶対的に必要な前提となるのが、
「客観的なものとして言語化された体験事実を、さらに整理体系化し、文書化された資料を整えること」
です。

要するに、
「事実経緯を、記憶喚起・復元・再現し、これを言語化し、記録化し、文書化する」
という作業を貫徹することが要求されます。

それを筆者は
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
と呼んでいますが、これには、多大な時間とエネルギーを費消することを頭に入れておかなければなりません。

そして、それは、弁護士の役割ではありません。

弁護士は、事件の当事者ではなく、事件に携わったわけでも体験したわけでもないので、事件にまつわる経緯を語ることはできません。

無論、事件経緯を示す痕跡としてどのようなものがどこにあるか、ということも、直接的かつ具体的に知っているわけではありません。

弁護士は、そのあたりのストーリーを適当に創作したりでっち上げたりすることはできません。

弁護士の主たる役割は、
「記憶喚起・復元・再現し、これを言語化し、記録化し、ある程度文書化された依頼者の、事件にまつわる全体験事実」(ファクトレポート)
から、依頼者が求める権利や法的立場を基礎づけるストーリー(メインの事実)ないしエピソード(副次的・背景的事情)を抽出し、こちらの手元にある痕跡(証拠)や相手方が手元に有すると推測される痕跡(証拠)を想定しながら、破綻のない形で、裁判所に提出し、訴訟を有利に運べるお膳立てをすることです。

いずれにせよ、訴訟を起こすとは、
「弁護士費用や裁判所利用料としての印紙代という外部化客観化されたコスト」以外
に、気の遠くなるような資源を動員することを意味します。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01794_訴訟を提起する前に知っておくべきこと・ただしておくべき誤解・検討しておくべきこと_その2_「ロゴス(論理)」 「パトス(情緒)」 「エトス(信頼、証拠による証明)」

裁判というゲームは、
「ロゴス(論理)」
「パトス(情緒)」
「エトス(信頼、証拠による証明)」
の3つの軸で展開していきます。

当然のことながら、
「ロゴス(論理)」

「エトス(信頼、証拠による証明)
の2軸に依拠して、互いに攻め合うこととなります。

相手方の
「ロゴス(論理)」

「エトス(信頼、証拠による証明)」
を突き崩す攻撃性と衝撃をもつには、各種状況を想起・記憶復元し、ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化することが必須です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01793_相手方との小康状態をどう評価するか

相手方との争いにおいて、小康状態が続く場合、
「小康状態が続いているのだから、もう大丈夫だろう。弁護士は、もういいだろう。不要だ。あとはこちらですすめよう」
と、考える方はいますし、それは不可能ではありません。

その場合、弁護士としては、委任関係を曖昧にすることは職務上不可能であり、当然、相手方に対して辞任届けを提出することになります。

そうなりますと、いわば牽制の盾となっている弁護士が撤収したことを好機として、相手方が活動を盛り返すことも懸念されます。

安全保障費の費用負担の問題と、防衛体制の構築継続は二律背反の課題となります。

弁護士としては、クライアントの選択を尊重しますが、他方で、いいとこ取りもできないことになるので、以上をふまえて、クライアントが判断することになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01792_権力とは、戦うものではなく、動かすもの_その2

「権力とは戦うもの」
というお題目を唱え、事あるごとに、権力空間や権力者に反目し、批判し、敵視するようなメンタリティをもつことは、民事裁判の仕事をする以前の段階で、不適格です。

権力と戦っても、勝てるわけがありません。

特に、司法権力については、日本最高・最強の権力機関です。

「カラスは白い」
「白鳥は黒い」
というような事実認定すら可能な権力をもっていますし、法解釈権を独占しています。

行政権力すら、司法権力には歯が立ちません。

検察すらも、無罪判決という形で、ノックアウトさせられます。

そんな権力と戦うのは、明らかに愚かです。

権力とは戦いません。

権力の特性を理解し、動かすのです。

権力が自分にとって都合の悪い動き方をした場合は、権力に逆らわないことを所与とし、権力を怒らせない程度に邪魔し、混乱させ、妨害し、足を引っ張り、困惑させ、ほとほと嫌にさせ、資源動員が成果に見合わぬことを自覚させ、ついには諦めさせる方向で、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技を駆使していくのです。

そのために、権力空間の構造、秩序、メカニズム、オペレーションロジックやルールを知り、また、権力者のことを、彼ら・彼女たちの現実・欲求・価値のレベルで知り、感受性をシェアするのです。

これが、民事裁判という司法権力空間におけるプロフェッショナルの本質的な活動の要諦です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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