01669_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(12)_法務部を作る(法務組織を部署として立ち上げる)

企業法務担当者としての固有の業務分野(顧問弁護士に外注できない仕事)として、
「法務部を作る(法務組織を部署として立ち上げる)」
というタスクアイテムがあります。

論点としては、
00681_法務部を作る上での論点
といったものがありますが、以下、具体的に列挙していきます。

1 そもそも、「企業法務部」とは何をするところで、どういう組織か?

企業法務部とは、「法務」という「企業をクライアントとする、安全保障サービス」を提供する、
「社内サービス提供部署」兼「外注管理部署」
です。

詳細については、
00601_企業法務部とは
で述べていますが、法務部という組織自体、法律上設置が強制されているわけでもありませんから、なくても、まったく問題ありません。

要するに、「法務」サービスないし機能の調達方法は、企業の実情によって様々ですし、また、法務部という組織も、一切合切外注、という方向すらあり得るところなのです。

2 法務部をそもそも作るか、作らないか

法務部を作るに際して、まず、そもそも、法務部って、
・何をやるところで、
・そもそも要るのか要らないのか、
・要るとして顧問弁護士(外部の契約法律事務所)の仕事と被らないのか、どういう役割分担設計にするのか
という疑問が出てきます。

これについては、
00675_企業法務ケーススタディ(No.0225):法務部って何するところ? 必要なの?
や、日経BizGate誌上に連載の
経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース32:法務部って何するところ? 必要なの?をご覧ください。

法務部を作る、という意思決定をした場合、次に、何をさせるために、どのような予算規模、人員規模の組織を作るか、という論点に移行します。

このあたりの考え方は、
00602_「社内サービス提供部署」である法務部を、サービス内容・提供組織の両面から機能デザイン(設計)する
で述べていますが、
制約要因を冷静に把握し(=分際をわきまえ)、
現実解(シチュエーション・コントロールを早々にギブアップし、
ダメージ・コントロール課題に注力するなどを含む)を現実的手法で実現していくこと
が重要です。

このような観点で、デザインされた、
・当該企業の法務サービスレベル
・当該企業の法務スタッフィングの、予算レベル相応のサイズとクオリティ
が、当該企業にとっての正解といえます。

3 法務部を作るとして、予算規模として、どのようなサイズ感(予算サイズ感)にするか?

また、法務部を作る上では、そのサイズ設計(規模の大小) をどうするか、という問題と絡めて、法務予算の策定も頭を悩ますところです。

この点、法務予算総額の設計の考え方としては、
00608_法務予算設計の考え方
をご覧ください。

法務総額予算を前提として、法務部という組織運営予算は、法務予算の分類上、
「定常的(経常的、平時)法務予算」
として計上されるべき、
配賦先1:社内サービス提供部門としての法務部
配賦先2:外部調達先としての法律顧問(顧問弁護士)の予防法務サービス予算
のうち、
「配賦先1:社内サービス提供部門としての法務部」
に位置づけられます。

このあたりの法務総額予算(法務予算総額) 内の詳細な分類ロジック等については、
00609_法務予算の分類
をご覧ください。

結局、法務予算、すなわち企業における法務安全保障予算の考え方は、どの程度の危険を想定するか、危険感受性と比例します。

この点は、
00605_「法務部」設計に際して考慮すべき、「有事」蓋然性、想定ダメージ及びコスト・パフォーマンス
で述べています。

4 法務部を作るとして、人員規模として、どのようなサイズ感(人員サイズ感)にするか?

人員規模については、予算規模の決定という課題処理が先行し、予算が決まれば、人員規模も自ずと決まってきます。

とはいえ、企業規模の大きさに比例して、
「直面し、処理すべき課題の広汎性やマグニチュード(重篤さ)」
も広く・大きくなりますし、企業規模の大小と、法務の人員サイズ感(規模)との間には、相関性が看取されます。

ここで、企業規模と法務のサイズ感との相関性モデルを、
00632_企業の規模・法務体制に対応した、法務に関する全体テーマ(認知改善課題及び体制整備課題)
で整理しています。

そして、中小零細企業においては、少ない予算・少ない人員で、効率的に(セコく)法務組織を構築する必要性が出てきますが、こういういった工夫については、
00014_企業法務部門の規模格差と、中小企業・ベンチャー企業における法務体制充実に向けた取り組み
00606_中小零細企業の「法務」体制設計
において述べています。

5 法務部を作るとして、階層構造・組織秩序・役割分担として、設計・構築するか?

(1)企業全体として生じる法務活動を担う法務関連の組織一切を総括した場合の階層構造・組織秩序・役割分担
企業全体としての法務活動を担う法務関連の組織一切を総括して、眺めると、以下のように詳細化されます。

01062_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(1)企業トップマネジメント(代表取締役、代表執行役・CEO、社長等)

01063_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(2)トップマネジメント直属の法務関連諮問機関(コンプライアンス委員会等)>立場と役割等

01064_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(2)トップマネジメント直属の法務関連諮問機関(コンプライアンス委員会等)>法的位置づけ

01065_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(3)監視・監督・監査を行う代表取締役以外の法定諸機関

01067_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(4)法務責任者(法務担当役員や法務部長等の法務マネージャー)>資質

01068_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(4)法務責任者(法務担当役員や法務部長等の法務マネージャー)>資格

01069_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(4)法務責任者(法務担当役員や法務部長等の法務マネージャー)>取締役職とするか

01070_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(5)法務スタッフ>資質

01071_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(5)法務スタッフ>活動概要

01072_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(5)法務スタッフ>企業内従事者向け活動

01073_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(5)法務スタッフ>トップマネジメント(経営意思決定機関)向け法務政策提言

01074_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(5)法務スタッフ>企業内一般従業者(役職員)向け法務啓発活動

01075_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(5)法務スタッフ>機関運営

01076_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>企業法務セクションと顧問弁護士(契約法律事務所)の役割分担

01077_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>法律事務所の種類

01078_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>弁護士報酬>顧問料

01079_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>弁護士報酬>事案報酬(プロジェクトフィー)

01080_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>セカンドオピニオン

01081_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(7)企業法務活動に関係する企業内協働部門

01082_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(8)企業法務活動に関係する社外専門家

01083_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(9)外部機関・団体等

(2)法務部内の階層構造・組織秩序・役割分担
法務組織の職制(経営管理における指揮命令を実施する観点から、位階的に整理された組織秩序)設計と、各職制が所掌するタスクの内容設計ですが、典型的な企業法務部を考えた場合、すなわち、
ア 最高法務責任者、法務担当役員
イ 法務部長
ウ 法務課長
エ 法務スタッフ
で構成される企業法務を考えた場合、以下のようなモデルが考えられます。

00611_法務組織の職制設計と所掌分担設計

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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