01084_アセスメント・環境整備フェーズ>法務活動・フェーズ1>法令管理(フェーズ1A)>(1)法務関連情報の収集・整理その1

企業法務活動の本質は、法務リスクヘの対応ということに尽きます。

リスクヘの対応が適正になされるためには、法務リスクの発見・予見・特定が迅速になされなければなりません。

このような点から企業法務活動を行うに際しては、法令環境・規制環境についての正しい情報の保有が大前提になります。

まず法務関連情報を収集・整理するにあたっては、
「法」
というものをよく理解しておかないと、方向性を喪失しかねません。

一口に
「法」
と言っても、憲法、法律、政令、府例・省令、条例、規則、通達、ガイドライン、命令、指示、指導、裁判例、条理、学説、法理論と実に様々なものが存在しますが、企業に関連するルールとしては、さらに、条約・外国法や社内自治規範(定款や就業規則、社内規則)が加わります。

また、書面に書かれざる法(不文法)ですが、温泉権(民事慣習法上の物権)や商慣習法(商法1条2項)も企業法務活動を規制するルールとして意識する必要が生じます。

まず、法令の調査についてですが、調査ツールとして模範六法や判例六法、大六法等が販売されていますが、最近では、総務省がインターネット上で法令データを提供しており、非常に簡易な検索が可能です。

条例に関しては、自治体によってはウェブサイトで公開しているところもあるので、まずはネットで検索することが推奨されます。

判例調査については、最高裁のウェブサイトにおいて重要裁判例が公開されていますし、第一法規提供の法情報総合データベース判例秘書等、有料で判例データを提供するサービスもあります。

とはいえ、データ化までに時間を要したり、判例解説がついていなかったりしますので、最新の裁判例を解説付でチェックするには、
「判例時報」「判例タイムズ」「金融法務事情」
といった判例雑誌を定期購読するという古くからの方法もいまだ有益です。

法令や判例以外に、企業法務の情報収集活動として各種法律文献を調べることが必要な場合もあります。

最近ではインターネット上の情報も非常に使い勝手がよくなっていますので、簡便な方法としては、Googleやamazon.co.jpでキーワード検索することも有益です。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01083_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(9)外部機関・団体等

企業法務活動を展開する場合においては、いくつかの外部機関や団体の動向を注視すべき必要も生じます。

企業法務に関係する外部の機関・団体等を法務との具体的なかかわりも含めて紹介しておきます。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01082_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(8)企業法務活動に関係する社外専門家

企業法務に携わる社外専門家は前述のように弁護士に限られるわけではありません。

次のとおり、特定分野に関しては弁護士以外の社外専門家に直接助言を仰ぐか、あるいは弁護士も含めた協議を行った上での調整が必要になります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
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01081_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(7)企業法務活動に関係する企業内協働部門

企業法務課題に対応するにあたり、企業内外の協働部門との調整が必要な場合が出てきます。

例えば、ある企業との販売取引の構築を行う際、当該契約形態が委託販売方式か商品売渡販売方式かによって、企業が商品在庫を抱えるか否かの差異を生じ、財務及び税務上の差異が生じてきます。

また、企業再編目的でM&Aを実施する場合、税制適格要件の充足如何によっては、繰越欠損金の税務上の取扱いに差異を生じます。

このように、法務スタッフが企業法務上の課題を取り扱う場合、財務部等の協働部門と事前に調整し、必要に応じて、税務上の都合やあるいは財務戦略日的を優先する関係で、取引形態を変更する場合が出てきます。

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01080_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>セカンドオピニオン

これまでの企業法務の世界では、顧問弁護士(契約法律事務所)業務は1人の弁護士あるいは1つの法律事務所に専属的に依頼し、事案の相談については、顧問弁護士(契約法律事務所)以外の弁護士には一切相談しないという慣例がありました。

しかしながら、ビジネス環境や規制環境が激変し、法的実務が日々進化変遷し、法令も目まぐるしく変わる現代においては、弁護士の対応力にも当然差が生じることとなります。

すなわち、一括りに弁護士といっても、理論研究に熱心な弁護士と裁判実務に傾倒する弁護士、特定分野に特化する弁護士とジェネラルな活動を行う弁護士、法廷経験の豊富な弁護士と契約書作成業務しか扱わない弁護士、ビジネス・税務・財務等の理解を前提に柔軟にリーガルサービスを構築する弁護士と法的正義の実現を目指す弁護士、国際経験がある弁護士とそうでない弁護士、大都市で開業し最先端の法務課題に常に直面する弁護士と地方で地域に密着したサービスを行う弁護士、という形で色分けされることも厳然たる事実です。

例として、敵対的買収の危機に直面したような場合を想定しますと、企業としては、一方で株主全体の利益を図りつつ、他方で株主を含むステークホルダーズ全体の利益を破壊する特定株主の排除をしなればならない、というジレンマに直面します。

そして、この状況においては、侵害排除の方法として考えうる戦略オプションの選択に直面しますが、裁判例が豊富といえない分野に関し、法令解釈上の決断をして、法律上グレーな分野に踏み込む決断を迫られることもあります。

このような状況の場合、単一の弁護士、例えば、長年当該企業の顧間として、業界の状況や慣行に詳しいという理由のみで継続して依頼している顧問弁護士(契約法律事務所)に全てを委ねるのはリスクが高い場合があります。

企業法務に関心の高い企業は、専門分野や得意分野等を勘案し、複数の弁護士ないし法律事務所と契約し、重要課題について多元的な法的検証を行うことを始めています。

これは、セカンドオピニオンと呼ばれるものであり、最近医療分野において注目を浴びているプラクティスです(「セカンドオピニオン外来」という診療分野を標榜する病院も登場しています)。

すなわち、特定の課題について専門家から意見を採取した場合であっても、多面的に課題を検証したいときや、当該意見に疑義があるとき、あるいは意見の正確性を確かめたいとき等に、別の専門家から二次的、補完的に意見を採取することをいいます。

弁護士に意見を求める課題は企業の生死や事業の成否を決するものが多く、多面的な検証を行い、確実で正確な意見を採取したいというクライアントの要望は強いと思われます。

特に、新規事業に取り組む場合などは、法的な解釈に一定の幅がある場合が多く、弁護士の個性や経験、属性(取引専門の弁護士か、紛争実務経験が豊富な弁護士か)も大きく反映されることとなり、同一課題に複数の意見が呈される場合が多く存在します。

このようにして多元的検証を重ねることにより、企業の予防法務体制が充実し、思わぬリスクの発生や法令違反を伴う不祥事の発生が逓減されることが期待されます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01079_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>弁護士報酬>事案報酬(プロジェクトフィー)

一般的な民事事件等では、委任に際し、事件の経済的規模に応じて一定割合を乗じた着手金を請求し、事件終了後、解決金額等に応じた報酬金(成功報酬)を請求することが多いようです。

しかし、企業法務事案については、事件の経済的スケールが大きく、着手金・報酬金の算定が困難な事態が生じます。

そこで、企業法務事案を多く取り扱う法律事務所等においてはタイムチャージ制を採用するところが多く、この場合、事案の成否にかかわらず、担当弁護士の稼働時間に単価を乗じた費用が請求されます。

タイムチャージ制の難点は、弁護士が法律事務所内で執務した時間や経験の浅い弁護士をOJT(on the job training、実務の実践を通じた実地教育)目的も含めて関与させた場合の時間もチャージされることで、請求される費用と企業に生じた成果にアンバランスが生じることもあり、クライアントにとって不満が生じる場合があります。

この点を克服すべく、アウトプットベースによる課金制度も存在します。

すなわち、企業法務を取り扱う法律事務所によっては、採用契約書・裁判所宛提出文書その他の文書成果物の量に応じたチャージ(ドキュメンテーション・チャージ)や法廷への出廷や事案の協議や対外折衝といったクライアント企業も把握できるイベントに対応したチャージ(イベント・チャージ)等を積算して費用請求することとし、弁護士の法律事務所内の執務時間や新人弁護士のOJT目的で長時間の試行錯誤を重ねた執務時間はチャージしないという扱いをするところもでてきています。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01078_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>弁護士報酬>顧問料

通常、企業は、顧問弁護士(契約法律事務所)との間で法律顧問契約を締結し、一般的な助言を得る体制を整えるとともに長期にわたる信頼関係を構築し、その上で、個別の事案について別途報酬契約等を取り交わし、事案解決を委任します。

顧問料は、企業にとって具体的な助言がない場合も発生するものですが、法律事務所にとっては貴重な安定収入源を構成します。

その意味では、顧問料は、アクセスチャージや会員サービスにおける定額会費のような機能を有します。

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01077_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>法律事務所の種類

組織形態の面で、個人事業主の場合と弁護士法人の場合とに分けられます。

弁護士法人との呼称を用いない法律事務所は、規模の大小にかかわらず、その実態は、個人事業主たる弁護士個人が経営する屋号(あるいは複数の個人事業主たる弁護士の寄り合い所帯の屋号)です。

企業が契約する主体は弁護士個人であり、仮に当該契約当事者たる弁護士が死亡等すれば、委任契約は当然に終了します(民法653条1号)。

他方、弁護士法人との呼称を用いる法律事務所は、弁護士法に基づき設立された法人であり、契約主体は主に法人としての
「弁護士法人○○法律事務所」
となります。

この場合、仮に担当弁護士が死亡等をしても、法人は存続しますので、委任契約は当然には終了しません。

次に、法律事務所のサイズに応じて、一人事務所、中小規模事務所、巨大事務所に分類されます。

一人事務所は、文字通り、弁護士1名とサポートスタッフ1ないし2名程度により運営される事務所であり、わが国では非常に多い形態です。

取扱分野の傾向としては、相対的に企業法務やビジネス法務よりも個人の民刑事。家事事件が多く、また国選刑事弁護事件や破産管財事件等を恒常的に引き受けているケースが多いようです。

中小規模事務所は、複数の弁護士とサポートスタッフにより運営される事務所であり、都市部の事務所にみられる形態です。

この規模の事務所は、経営者が複数の弁護士を用いて組織的に経営しているところもあれば、弁護士経費を共同して負担して運営コストを減らす目的で、独立した複数の経営者弁護士が運営しているところもあります。

後者の場合、実質的には一人事務所の寄り合い所帯に近く、前者に比べて組織的な対応がやや低調とみられます。

そして、法律事務所の中には所属弁護士数が100人を超える巨人事務所もあります。

事務所内部に複数の専門部門があり、それぞれの部門が企業のセクションのように機能しています。

運営管理コード:CLBP45TO47

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01076_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(6)顧間弁護士(契約法律事務所)>企業法務セクションと顧問弁護士(契約法律事務所)の役割分担

顧問弁護士(契約法律事務所)は、企業内の法務スタッフとともに、企業法務活動を行う上でなくてはならない存在です。

法務活動のフェーズに対応した形で整理すると、概ね次のとおりとなります。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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01075_法務組織の体制構築>企業法務活動を担うハードウェア>(5)法務スタッフ>機関運営

法務スタッフの重要な活動として、機関運営のサポートがあります。

「(意思決定)機関」
とは、法人格を有する組織において意思決定を行う会議体を指します(なお、代表取締役など業務執行を行う個人も、「業務遂行機関」として、機関性を有することがありますが、以下では、取締役会や監査役会や委員会設置会社における各種委員会等、会議体による意思決定を行う機関を議論します)。

機関運営においては、招集権者による招集、開会、報告事項、審議事項、採決、決議、閉会等一定の法的手続に則った進め方をしないと、後日、瑕疵を指摘されて企業運営に重大な影響を及ぼします。

その意味では、法に則った機関運営はすぐれて法的・専門的な側面を持ち、またその重要性から企業の他部門が軽々に扱いえない性質を有しています。

なお、機関運営の結果である各種議事録の作成についても、法律上定められた適正な方式によらなければなりません。

加えて、議事録は企業の意思決定の経過を示す最重要証拠として、紛争の際には立場を問わず援用されますので、その記載の内容や方法は重要な法務戦略をふまえたものでなければなりません。

また、議事録の保管管理の方法や場所についても法律で厳格に定められている場合があります。

以上のとおり、機関運営手続を法技術面でサポートし、また機関決定結果を議事録の形で記録し、作成・保管管理等を行うのも法務スタッフの重要な役割となります。

運営管理コード:CLBP44TO44

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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