00912_企業法務ケーススタディ(No.0234):合弁契約

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年4月号(3月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」六の巻(第6回)「合弁契約」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
合弁パートナー:ハイエナジーコーポレーション(「ハイエナ社」)
合弁会社:ネット動画配信事業会社のユナイテッド・ルーセント・インターナショナル社(「ユルイ社」)
株式譲渡先:ダボス・ハイテック・ゼネラル・コーポレーション(「ダボハゼ社」)

合弁契約:
当社がハイエナ社と合弁で立ち上げたユルイ社を、ハイエナ社はダボハゼ社に売り飛ばしました。
ハイエナ社との合弁契約にはユルイ社の株式譲渡制限はつけていたものの、 パートナーの了解ない株式譲渡を禁じる条項が、巧妙に抜かれていたことに気づかず、結果、ユルイ社の取締役会で、ダボハゼ社への株式譲渡承認が押し切られる形で決議されてしまったのです。
そして、取締役全員の任期切れを前にして、ダボハゼ社から、
「51%の株式を譲り受けたので、今後は、取締役員は全てこちらが選任したい」
という申し入れがきたというわけです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:合弁事業
合弁事業(“Joint Venture”略して「ジョイベン」などと呼ばれる)とは、2社以上の会社が共同で経営資源を持ち寄り、1つの事業を立ち上げることをいいます。
企業が合弁事業を行うにはいくつか理由がありますが、その大きな1つとしては、リスクの分散が挙げられます。
特に、規模が大きく新しい事業を立ち上げようとする場合や、自分の不得手な事業分野・土地勘のない分野で勝負する場合や、進出事業分野に適合した経営資源が自分の手元になく新たに調達しなければならない場合は、事業の成功の確度を上げる算段のもと、リスクを分散して、共同事業をやろうというわけです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:合弁会社・合弁契約
一般的に用いられる合弁事業の運営主体は、株式会社です。
合弁事業を行う会社(パートナー企業)それぞれが、合意した割合での出資を行うことによって新たな株式会社(合弁会社)を設立し、出資者の間で出資比率や企業運営の具体的方法(どの会社が何人の役員を送り込むか)等を取り決め、
「合弁契約」
として書面化して、事業を開始します。
合弁契約においては、事業の赤字が続いた場合や、出資企業が脱退したくなった場合の処置や、企業運営において意見の対立が生じた場合の打開方法等、不愉快な事態をより多く想定し、その際の解決のルールをきちんと取り決めておくことが重要となります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:マイノリティーシェアで投資する企業は契約で自衛すべし
一般論としては
「合弁契約が曖昧なものではダメ」
といえますが、マジョリティーシェア(51%超の株式割合)を有するパートナーは、合弁契約が雑な内容であることを気に病む必要はありません。
逆にいえば、少数派株主側としては、合弁をはじめる前に、
「株式を無断で譲渡することの禁止」
「株式を譲渡する場合における先買権(First Refusal Right)」
「違反の場合のペナルティ」
等といった措置を、合弁契約においてきっちりと定めるべきです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:合弁で失敗しないための知恵
合弁事業体の組織形態の選択からよく検討すべきです。
組合形態であれば、組合持ち分の譲渡は他の組合員の同意なしに行うことは困難ですし、単純な多数決原理ではなく、十分な議論を経た合意形成が重んじられます。
合同会社であれば、出資者は株式会社同様、有限責任しか負いませんが、法人統治は組合のような閉鎖的規律で運営されますし、また、出資者の交替には全出資者の了解を要し、加えて、合同会社の業務執行権は原則として全出資者が有します。
株式会社を選択する場合でも、まずはマジョリティーシェアを要求すべきですし、それを取れない場合は、合弁契約で自らの権益を具体化し、マジョリティーシェアを掌握したパートナー企業の横暴を許さないようにしておくべきですし、さらに、合弁会社が自らの関与なしでは身動きできないようにする方法を考えるべきです。

助言のポイント
1.合弁事業においては、たとえ「成功を夢見て仲良く一緒にやっていこうというときに、水を差すような無粋なことをするな」といわれても、きちんとしたリスクシナリオを想定して、契約内容に盛り込んでおくこと。
2.合弁契約には「株式を無断で譲渡することの禁止」「株式を譲渡する場合における先買権」「違反の場合のペナルティ」等不愉快な状況を見越した内容とすること。
3.合弁事業体において組織形態を選択する際、株式会社にこだわらず、組合や合同会社も検討してみる 。
4.合弁事業体として株式会社を設立する場合、必ずマジョリティーシェアをとっておく 。仮に、マイノリティーシェアしか保有できないまま、後日トラブルになった場合、圧倒的に不利な立場になることを想定して、シビアな契約内容にしておくことは必須。
5.「商流の管理」「商標権の保全」といった合弁契約外で合弁会社を縛り上げて、間接的に合弁事業を支配する方法も検討する。

※運営管理者専用※

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00911_カウンセリング(法務相談・法律相談)から課題発見・特定、法務プロジェクト化(事件・事案受任)までのプロセス1:初期ヒヤリング

企業の法務担当者が、取引やプロジェクトや事件・事案の関係者たる担当部署(原局・原課・主管部署)相談を申し込まれた場合を想定します。

相談を実施する者が企業の法務担当者である場合(法務相談)もあれば、外部の弁護士(顧問弁護士等)の場合(法律相談)も含みます。

法務カウンセリングを行うに際しては、まず、相談者(企業の原局等)が直面している状況を聴取し、概要レベルで把握します。

ざっくり言えば、
「どんなことを目論んでいて、あるいはどんなことをやらかしてしまい、どんな問題にぶちあたり、何に悩み、何を困っているのか」
さらには、
「(何が問題かすらわからないが)何に不安を感じ、何におびえ、どのような予兆をみてビビっているのか」
といった(割と低劣でドン臭い)類の経緯と直面状況についてです。

この際、状況の概要をメモとして作成して事前送付してもらうような段取りが推奨されます。

また、企業が意図ないし実践するビジネスモデルを端的に記述した資料(場合によっては商品の現物やサービスカタログ)等も持参させることも、直面している状況をより具体的かつ鮮明に理解するために必要です。

この際、相談者には、ジャーゴン(符牒や専門用語)を用いず、
「プレイン・ランゲージ(日常の平易な言語)」
で語らせることが重要です。

生業としてのビジネス(稼業レベル)は、所詮、
「金儲け」
であり、シンプル化すると、

・安く仕入れて高く売る、
・安く作って高く売る、
・奉仕をして手間賃をもらう、

のいずれかに収斂するはずです。

事業としてのビジネス(組織ぐるみで行う企業活動)としては、
・カネを増やす
・支出を減らす
・時間を節約する
・労力を節約する
・ビジネスの活動や成果を数字や文字を使ってミエル化・カタチ化・フォーマル化する
・安全保障活動
のいずれかに整理されます。

ときどき、相談者にビジネスを説明してもらったら、私が聞いても理解できないようなビジネスのメカニズムを話される相談者がいます(嫌味に聞こえるかもしれませんが、状況理解の容易化のため慎ましやかな性格をかなぐり捨てて述べますと、聞いている私本人は「東大卒弁護士」です)。

「東大卒弁護士の国語読解力」
で話を聞けば、宇宙の成り立ちとか量子力学とかのレベルでない限り、たいていのことは理解できます。

ましてや、たかがビジネス、たかが金儲けの話です。

「東大卒弁護士の国語読解力」
をもってしても
「まるきり理解できない」
という事態が生じる蓋然性はほぼ皆無です。

「相談者にビジネスを説明してもらったら、私が聞いても理解できないようなビジネスのメカニズムを話する」
という場合、聞き手の理解力が問題というより、
・相談者が混乱しているか、
・相談者は受け売りしているだけで、実は相談者自身が何をやっているかさっぱり理解できていないか、
・相談者の行っているビジネスや営み自体が構造的に欠陥を孕んでいて、無意味あるいは不効率、無駄で有害で愚劣なものであるため、自分の営みを説明しようとしても、理性的な頭脳と知性では理解できないハチャメチャなものになってしまっている、
・相談者の行っているビジネスや営み自体に詐欺性や欺瞞性があるなど、大きな声では言えない、聞こえが悪い、グレーでダーティーな要素があり、これを、体面・メンツ・沽券を維持しようと、法務担当者や弁護士にまで、カッコつけたり、姑息に糊塗隠蔽しようとしたり、美辞麗句で煙に巻こうとしているため、全体として何を言っているかわからない話になる、
といった事情が原因の大半です。

相談を実施する者が、法務担当者であれ、弁護士であれ、一般に法律を専門的に取り扱う人間は、平均的日本人に比べて、日本語に長け、世事に長けています。

したがって、
「相談を実施する者がまともな読解力を以て注意深く聞いても理解できない、というケースは、聞き手の問題というより、話し手が混乱している、あるいは説明力が壊滅的に低劣」
という高度の蓋然性があるものと考え、話し手を落ち着かせ、頭と話を整理して説明させるべきです。

なお、企業人一般(あるいは日本人一般)は話力や整理力が圧倒的に未熟あるいは幼稚であり、
「企業外部の人間や、業界以外の人間に、簡潔かつ理論的に、自社の活動や自分の置かれた状況を説明する」
というシンプルなタスクが、超弩級に下手くそです。

このことは、上場企業の社長のほとんどが、株主総会の議長として一般株主に説明することを嫌悪し、忌避するメンタリティをみても明らかです。

企業のトップがこの体たらくですから、その下に連なるその他大勢の方々のレベルは推して知るべし、です。

いずれにせよ、
「状況を端的に語らせ、これを法務担当者ないし弁護士として、概要レベルで理解把握する」
という初歩の初歩でも、主に相談者のスキルや不慣れのせいで、相当な時間を要する場合があることに注意すべきです。

なお、企業法務部を設置したり、顧問弁護士を配置すると、この
「相談する側が、どんな商売をやっていて、どういうことを目論んでいて、どんな状況にあるか」
ということを日常的・恒常的に状況共有し、コミュニケーションのコストとスピードと効率性の面で劇的に改善することになります。

すでに内容証明郵便による警告書や通知書や反論書が飛び交い、紛争になっているケースにおいては、クライアントの整理されておらず、まとまりがない話を聞くより、通知書等を見たほうが手っ取り早い場合があります。

主に弁護士としては、セカンドオピニオンを求める依頼者に相談を実施することがありますが、その場合、前任弁護士の文書成果物(各種手続書類や報告書等)をみた方が、早く状況把握にたどり着けます。

相談者に寄り添う、
話を聞いてあげる、
愚痴や悩みを聞いてあげる、
気持ちを理解してあげる、
ということは、相談者の精神的安定にとってはプラスですが、貴重で有限な資源である時間の効率的運用という点では、大きなマイナスになりかねません。

相談者の精神的安定についてはセラピスト他その筋の専門家に委ねるとして、事態解決の専門家たる法務担当者や弁護士としては、簡潔かつ理論的に話を整理していくことに注力するべきであり、結局、その方が、却って相談者にとってのメリットにつながると考えられます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00910_企業法務トレンド今昔(前世紀と今世紀)4:現代の産業社会が求める企業法務の姿

21世紀に入ると、企業の法務ニーズが急激に増加しました。

しかし、現代の企業が欲する企業法務は、もはや
「裁判実務に限定した紛争法務(臨床法務あるいは治療法務)を中心とした従来型法務」
とは異質のものとなります。

すなわち、現代の企業が求める企業法務とは、ビジネスの展開スピードに合致し、合理的・合目的的で、洗練され、ビジネスゴールの多様性に柔軟に対応した高度かつ緻密なものなのです。

1 熾烈な市場競争における優位性の確立とビジネスの安全性の向上を調和させることをゴールとして、異分野の知的専門家との創造的な協働作業の中で、企業活動の法的適正を最終的に担保する活動

2 具体的には、経営陣によるビジネスジャッジメント(経営判断)があり、財務責任者や会計士・税理士による会計(税務)判断があり、企業法務スタッフやビジネス弁護士が、これらの判断を前提に、法的リスクをふまえつつ、創造性を駆使し、ビジネススピードに遅れることなく、契約の修正や枠組みの変更を瞬時に実施していく活動

これらが現代において求められる企業法務の姿です。

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00909_企業法務トレンド今昔(前世紀と今世紀)3:法務武装した外資系企業やベンチャー企業の席捲

21世紀に入ると、
「外資系企業」
「ベンチャー企業」
といった新興勢力が産業界を席捲します。

これらの企業は、それまで
「阿咋」の呼吸
で黙示に形成されてきた不文の慣行をことごとく無視します。

欧米の契約文化を徹底するとともに、
「法律や契約に書かれざることについては、すべて企業の自由である」
というアグレッシブな法感覚を当然のように有し、有能で緻密な弁護士を大量に雇い入れ、法務対応が不十分で諸事モタモタしている伝統的企業をどんどん出し抜いていきました。

タフでクレバーな外資系企業による巧みな買収劇や敵対的TOBにおけるベンチャー企業の熾烈な法務対応を通じて、日本の産業界は
「法務力の格差が企業としての優劣や生き残りに影響する」
という事実をまざまざと見せつけられたのでした。

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00908_企業法務トレンド今昔(前世紀と今世紀)2:不祥事予防のために企業が取る行動・対策の変化

企業不祥事の質や傾向における急変状況に合わせて、企業の不祥事予防のための行動も2000年を境に劇的な変化を遂げていきます。

1990年代における、企業の採るべきリスク予防活動といえば、弁護士に話を聞く前に役所や政治家、業界の顔役に相談することが主流でした。

すなわち、当時、
「護送船団方式」

「奉加帳方式」
などに代表されるように、絶大な権限を有する行政機関(霞ヶ関の中央官庁)が企業の守護者として君臨し、様々な事前規制手段を用いながら、業界全体を保護していくという産業規律手法が採られていました。

この実態は、当時の大蔵省が
「銀行は絶対潰さない」
と豪語していたことをみれば明らかです。

要するに銀行の生殺与奪を大蔵省(現:財務省・金融庁)が握っていたのです。

しかし、1990年代の終わりから2000年代にかけて、規制緩和の波が押し寄せて、
「行政による事前規制」
が姿を消し、
「司法による事後監視」
が産業規律の主役となっていきました。

前述のように企業不祥事が質的に変化し、不祥事予防や有事対応を間違えると企業の存続に影響しかねない事態に発展することが認識されるようになるとともに、規制緩和により
「行政機関主導の不祥事予防・有事対応」
が姿を消し、企業は、自らのコストで法律の専門家を雇い、自らの責任で不祥事を予防し、自らの判断で有事に向き合うことが求められるようになってきました。

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00907_企業法務トレンド今昔(前世紀と今世紀)1:前世紀と今世紀にかけて起きた、「企業不祥事トレンド」の大転換

1 前世紀における企業不祥事

前世紀、といっても1990年代の話ですが、その当時、今では企業経営者の間で盛んに話題にされる
「企業法務」

「法令遵守」
といったテーマは、さほど重要視されていませんでした。

では、この時代に企業不祥事がなかったか、といえばそうではありません。

この当時も、総会屋に対する利益供与や入札談合、さらには証券会社の損失補填や金融機関による損失飛ばしや損失隠し等、今と同じく企業不祥事の話題が連日新聞紙上を賑わせていました。

ところが、21世紀に入ると、企業不祥事は、質や傾向の点において大きな変化を遂げます。

2 「シェアホルダーズ(株主・投資家)に対する背信」から「ステークホルダーズ(企業を取り巻く利害関係者)に対する背信」ヘ

1990年代(前世紀)の企業不祥事といえば、総会屋に対する利益供与等
「シェアホルダーズ(株主・投資家)を裏切るタイプ」
のものでしたが、21世紀に入ると、
「食品表示偽装」
「リコール隠し」
「耐震強度偽装」等
消費者や取引先や社会といった企業に関わる利害関係者すべて(ステークホルダーズ)を裏切るタイプの企業不祥事が増えるようになりました。

1990年代(前世紀)においては、企業が倒産するといえば財務上の破綻が主たる原因でした。

総会屋に対する利益供与や談合等の不祥事といっても、ステークホルダーズの一部でしかないシェアホルダーズヘの影響(それも間接的な影響)に限定されており、
「企業不祥事“のみ”が原因で、企業が倒産する」
ということはまずありませんでした。

ところが、21世紀に入ると、前述のとおり、企業不祥事の種類が製品や商品の偽装等ステークホルダーズすべてを裏切るものが多くなったためか、不祥事は直接収益の悪化につながり、企業不祥事が原因で企業が倒産したり廃業したりする例が増加してきたのです。

3 不祥事インパクト

では、
「シェアホルダーズ(株主・投資家)に対する背信」型不祥事

「ステークホルダーズ(企業を取り巻く利害関係者)に対する背信」型不祥事
とでは、どちらが 企業の経営ないし存続に与えるインパクトは大きいでしょうか。

これは、明らかに、
「ステークホルダーズ(企業を取り巻く利害関係者)に対する背信」型不祥事
のインパクトの方が大きいです。

すなわち、株主総会でインチキした、総会屋にカネを渡した、といった
「シェアホルダーズ(株主・投資家)に対する背信」型不祥事
は、事件としては大きく取り沙汰されるかもしれませんが、実際に影響を受けるのは、自己責任で投資した株主くらいで、財務的に痛むのも、貸借対照表の左下の資本の部が少し痛む程度です。

他方で、例えば、
「食品表示偽装」
「リコール隠し」
「耐震強度偽装」
「品質検査不正」
といった、
顧客を筆頭とする
「ステークホルダーズ(企業を取り巻く利害関係者)」
に対する背信となるような不祥事が起きた場合、いきなり誰も買わなくなります。

そして、売上が極度に落ちます。

損益計算書のトップラインが劇的に落ちますので、大きな損失が発生し、企業の内部留保を凄まじい勢いで食いつぶし、企業は一気に傾きます。

このように、今世紀と前世紀の不祥事のトレンドの変化は、不祥事の重篤性や重大性の変化を意味するのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00906_企業法務ケーススタディ(No.0233):チザイ

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年3月号(2月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五の巻(第5回)「チザイ」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
銚子鯉田(チョウシコイタ)水産
大手食品メーカー 株式会社ガタキチ

チザイ:
当社は、チョウシコイタ水産から2億円で購入した特許権で、数社にライセンスし、ロイヤルティを得ています。
最近、ガタキチ社が類似製品を販売し始めたため、内容証明郵便で特許権侵害を警告しました。
ところが、相手はいうことをきくどころか、逆に脅してくる始末です。
弁理士に相談すると、
「この特許はありきたりの技術なので、訴訟したら特許権を失う可能性がある」
といわれました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:「チザイ」バブル
知的財産権、通称
「チザイ」
は、2002年に知的財産基本法なる法律が制定され(施行は2003年)、産業界において脚光を浴びるようになりました。
しかし、その内容はあまりにも複雑で、各権利の法的位置づけや体系を整理して正確に理解している人はほんの一握り、というのが実情で、ビジネス界の事故多発地帯となっています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:チザイの実体
社会の発展や産業の振興はマネやパクリに依存して展開していくことが多く、かつての日本の産業も、外国のオリジナリティ溢れる技術や製品を巧みに模倣、改良することで発展を遂げてきました。
知的財産権に関する各法も、マネ・パクリ・模倣を原則自由とした上で
「厳格な要件を充足した、保護に値するような知的成果やユニークな標識」
に限定し保護するものとしています。
しかしながら、
「厳格な要件」
は、クリアするのが非常に厄介な代物です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:特許が成立してからであっても安心できない
特許要件が1つでも欠ければ、特許を快く思わないライバル企業が無効審判を申し立ててきますし、特許権が侵害されたからといって、差止や損害賠償請求を仕掛けると、特許がつぶされる危険が生じます。
裁判例では、1998年、冷凍の塩味茹枝豆に関する特許を取得した日本水産(ニッスイ)は、ニチロ、ニチレイ、マルハなどに特許使用料を要求する交渉を開始しましたが、各社はこれに猛反発。
2002年2月にニチロが特許庁にニッスイの特許の無効審判請求をしたことから、ニッスイ側は、この対抗措置として、自社の特許権を侵害したとしてニチロの冷凍塩味茹枝豆の販売差止などを求めて東京地裁に提訴しました。
結果、東京地裁は
「ニッスイの特許技術に進歩性はない」
と判断し、ニッスイ側の完全敗訴となりました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:「なんちゃって特許」を振りかざした訴訟提起は慎重に
特許権があるからといっても、強気に訴訟提起したら、無効審判請求の申立てや、特許法104条の3の抗弁(キルビー抗弁)が出され、徹底的に調べ上げられ、たちまち無効とさせられる危険が生じます。
裁判で負けたら、相手の販売差止に失敗するだけではなく、今度はライセンスしている会社からも
「ロイヤルティを全部返せ」
といわれる可能性もあります。

助言のポイント
1.「チザイ」「チザイ」とよく騒がれているが、その実体は、弁護士も避けて通るほど難しいい。知ったかぶりで「チザイ」を扱うと大怪我をする。
2.特許権や特許を受ける権利の売買話には要注意。特に「特許を受ける権利」などという代物は、買ったところでビジネス上意味がないことがある。
3.特許が成立したからといって安心するのは早計。無効審判や、キルビー抗弁(特許法104条の3)によるカウンターパンチと、後から攻撃されて向こうにされてしまうことに注意が必要。
4.有効性に疑問のある「なんちゃって特許」を振り回して、差止や損害賠償をすると、特許無効の抗弁を提出されて、特許の死期を早める結果になりかねない。訴訟提起には慎重な検討が必要。

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00905_企業法務の学び方

企業活動の活発化・複雑化・国際化を反映する形で、企業に関わる様々な法改正が行われ、また、企業法務に関わる様々な事件等が発生します。

このような時流の変化にしたがって、 形を変えて、絶え間なく浮上する企業法務にまつわる様々な事件やプラクティスが出来しますが、これを逐一学ぶことはおよそ不可能です。

他方で、 何らゆらぐことのない、
「企業法務ないし実務活動の全体を貫くフレームワーク」
ともいうべきものも確実に存在します。

この
「企業法務ないし実務活動の全体を貫くフレームワーク」
をしっかりと身につけておけば、
「時流の変化にしたがって、 形を変えて、絶え間なく浮上する企業法務にまつわる様々な事件やプラクティス」
が出来しても、 その本質を理論的かつ合理的に整理・解析することができますし、すぐさまキャッチアップできます。

すなわち、本質的なフレームワークさえしっかり、きっちり体得しておけば、
「この種の非本質的で枝葉とも言える微細なデータや細目は、実際に詳細を調査・把握する際に逐次アップデートないし補充しておけばいい」
という
「一流の実務家のような泰然たる構え」
がとれるようになり、些事に狼狽することなく、ゆったりとした精神的冗長性を維持して、自信をもって実務に対応できるようになります。

マクロとミクロ、森・林と木・枝葉、俯瞰・巨視的と微視・近視眼的、いろいろな言い方は、ありますが、
「木をみて森を見ず」
という諺がありますが、
「ミクロを積み重ねてもマクロに至る」
という安易な方法論が通用しないのが、企業法務の世界です。

その意味では、まずは、巨視的・俯瞰的・体系的なフレームワークを身につけることが企業法務を学ぶ上での先決課題になるものと思います。

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00904_企業法務ケーススタディ(No.0232):破綻した売掛先の対応

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当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
サブ・イクセレント物産株式会社(「サブイ物産」)

破綻した売掛先の対応:
売掛先であるサブイ物産が破綻しました。
当社は、商品引揚げに赴いた際、納入品の見合い分回収として倉庫内の別の商品もついでに頂戴してきたところ、サブイ物産側弁護士から
「先般の商品回収行為は窃盗ないし恐喝に該当する犯罪行為だ。
即刻商品を返還せよ。
しからずんば、刑事告訴する」
と、内容証明郵便による通知書が送られてきました。
当社社長は、商品を取り戻すのは真っ当な自衛行為で、債権者として当然の行動をしたまでだ、と考えています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:取引先の破綻
たとえ所有者や権利者による搬出や回収であっても、商品を保管管理している債務者に無断で持ち出したら、即、窃盗罪が成立します。
搬出の際に脅迫したり暴力を振るったりした場合、恐喝罪や強盗罪が成立することすらあります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:商品引揚げ財産搬出行為に関する裁判例
裁判商品引揚げ行為や財産搬出行為の違法性が問題になった裁判例があります。
破産申立直前の会社の倉庫から債務者(後日、破産)の承諾なく印刷機等を搬出したことを問われた債権者は、
「債務者との間の機械売渡証書を所持しており、機械搬出行為はこの証書に基づくものだ」
と弁解しましたが、裁判所は、当該証書を偽造と断定し、その結果、搬出に関与した債権者及び機械を買い取った者の行為を共同不法行為として、彼らに損害賠償を命じました(東京地裁平成13年7月10日)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:商品引揚げ行為や財産搬出行為についての債務者の了解
商品引揚げや財産搬出行為については、債務者の了解さえあれば違法性はなく、民事上も刑事上も一切問題にならない、ということにはなりません。
法律実務においては、当該了解の程度や了解を得るまでの経緯についてその合理性が厳しく問われ、また、了解を得たとしても搬出行為の方法についても厳しくチェックされることもあります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:売掛先破綻対策
中小企業に掛で商品を卸す行為は
「いつつぶれるかわからない会社に無担保で融資する行為」
と同じであり、そのようなリスキーな貸付をするのであれば、合理的担保を徴求するか、焦げついても影響がない程度の掛に留めるべきなのです。
破綻先に買掛やその他債務がある場合、自社納入商品代金債権で相殺すれば、事実上焦げついた債権が回収されたことになります。
このように、取引破綻時に唯一有効な債権回収手段といえるのは相殺のみであり、まずは相殺の可能性こそ検討されるべきです。

助言のポイント
1.たとえ債権者でも、債務者に無断で債務者保管の商品や財産を持ち出すことは、自力救済禁止の原則により、違法とされる。
2.無断の財産搬出行為は、窃盗罪のほか強盗罪(暴力や脅迫を行った場合)に問われる場合もあるので、絶対しない。
3.債務者の搬出許可を取得する場合、慎重に取り付けておかないと後日無効と言われる可能性もある。
4.「正当な権利があるのであれば、正当な法の手続きを踏んで債権回収をはかればよい」というのが裁判所のスタンス。破綻先からの債権回収は拙速よりも巧緻に行う。
5.何時つぶれてもおかしくない中小企業に掛で商品を卸すのは、不良な債務者への無担保融資と同じで非常に危険。相殺を含めた合理的担保の徴求をした上で、適切な与信管理を行う こと。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00903_企業法務ケーススタディ(No.0231):営業秘密

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年1月号(12月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」三の巻(第3回)「営業秘密」をご覧ください。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
脇甘商事株式会社 食品事業部 元課長 印池 幾多郎(いんち きたろう)

営業秘密:
ライバル会社に転職した元社員が、勝手に持ち出した当社の製品コンセプトや企画書やレシピを使って競合製品を作り、当社の顧客先に売り込んでいたことが判明したため、内容証明郵便で警告書を出しました。
すると、相手はこのような回答をよこしてきました。
「脇甘社の顧客先は事業概要にも記載され出回っているし、企画書や製品コンセプトやレシピは守秘義務契約を締結せずに下請先やOEM先に常時開示していたし、秘密でも何でもない。
そもそも、私は脇甘社に対して機密保持義務を誓約した覚えがない」
そこで、当社は、相手と転職先企業に対して訴訟提起をすることにしました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:情報を盗んでも刑法上処罰されない
情報化社会にあっては情報そのものが財産的価値を有しているにもかかわらず、刑法上は、情報の窃盗は不可罰とされています。
従業員が所属企業から情報を窃盗したことが刑事上争われたケースでは、データ自体の窃取ではなく、データを表章したコピー紙や電磁媒体等の有体物の窃取が問題となりました。
また、ハッキング等の問題が事件になったケースについても、データ自体の窃取の違法性は問題とされず、データ窃取の前段階としてシステムに不正侵入したことを問題にしています(「窃盗自体は違法ではないが、住居侵入が違法である」との法的構成です)。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:不正競争防止法による営業秘密の保護
企業内で管理される営業秘密に関しては、不正競争防止法が、一定の要件の下に、例外的に情報の持ち出しや利用を禁じています。
法律的に
「営業秘密」
として保護されるのは、
1 公然と知られていない(非公知性の要件)
2 製造技術上のノウハウ、顧客リスト、販売マニュアル等の事業活動にとって有用な情報で(有用性の要件)
3 企業の内部において、秘密として適正に管理されている(秘密管理性の要件)
ものをいいます。
したがって、入手や整理や分析にどれだけ高額な費用と労力を費やしたとしても、その情報がどれだけ大量に盗まれたとしても、公然と知られたものであったり企業内部の管理がいい加減であったりすると、法的には
「営業秘密」
として保護されない、ということになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:秘密管理性に関する裁判例
「営業秘密」
の成否に関しては、秘密管理性がよく争われます。
裁判例(大阪地方裁判所平成19年5月24日判決、判例時報1999号129頁所収)では、
「就業規則に機密保持が謳ってあるので、従業員は保秘義務を負う以上秘密管理性はある」
と、主張した原告企業に、
「不正競争防止法上の営業秘密の要件としての秘密管理性を欠く」
「単に『業務上の機密』というだけではどれがそれに当たるのか明確でないし、また単に『公表していない文書事項』と定めるのみでは、それが漏らしてはならない秘密に属するのか否かを認識させる措置を講じていたとはいえない」
と断じました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:「営業秘密」の保護に値する秘密管理の程度
「営業秘密」
としての保護を主張するには、
1 営業秘密の表示
2 機密管理教育
3 開示先から守秘義務契約を徴収
4 従業員から保秘すべき秘密内容をきっちりと特定した誓約書を徴収
等、対象情報に関して厳格な管理をしておく必要があります。

助言のポイント
1.情報窃盗自体は不可罰。どんなに高価な情報であっても、情報が盗まれたこと自体、法的な文句はいえないのが原則。
2.不正競争防止法上の「営業秘密」としての保護要件を充足する企業内機密であれば、従業員の持ち出し行為や利用行為について例外的に責任追及が可能。
3.不正競争防止法上の「営業秘密」として保護されるには、(1)非公知性、(2)有用性、(3)秘密管理性の要件が必要。
4. 裁判でもっとも争われる営業秘密保護要件は(3)秘密管理性の要件。裁判所が想定する管理レベルは非常に高度である。
5.「そんなに大事なものならキチっとしまっておけ」「杜撰な管理をしておきながら、後から文句をいうな」というのが裁判所の姿勢である 。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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