00572_裁判所提出書面への「読ませる工夫」:(4)相手が争いようのない客観証拠を共通認識としてストーリーを構築していく

裁判に提示すべき事実とは、
具体的な事実を、
客観性がある形で、
あるいは相手が争いようのない形で、
呈示していくと、
裁判官としては非常に事案を認識しやすい、
ということになります。

明らかに相手が否定するであろうような形で事実を主張することは、紛糾の原因になるだけで、時間とエネルギーの無駄ですし、裁判官もあまり良い印象をもってくれません。

訴訟上の重要な争点は別として、客観的証拠(公的な文書や相手の自認文書)が残っている事実や相手が認めざるをえない事実を丁寧に拾って主張設計していくと、無用な紛糾が避けられますし、裁判官も審理を進めやすくなります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00571_裁判所提出書面への「読ませる工夫」:(3)要件事実を意識しながらストーリーにメリハリをつける

裁判官は、紛争解決を導く上で必須あるいは本質的な事実とそうでない事実、そうでない事実についても重要なものと不要なもの、という形で事実を階層化して認識していきます。

「紛争解決を導く上で必須あるいは本質的な事実」
を要件事実とかいったりしますが、提出文書においては、このツボを押さえることが必要です。

その他の事実、すなわち事情についても重要なものを中心に述べていくわけですが、
「重要かどうか」
は、
「『学歴社会の頂点に立ち、俗世の芥から隔絶した静謐な生活を送っておられる裁判官の経験則』からみて重要かどうか」
ということですので、くれぐれも
「依頼者の主観に基づく重要性認識」
に振り回されないよう、注意が必要です。

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00570_裁判所提出書面への「読ませる工夫」:(2)修飾語やレトリックは「法曹禁止用語」としてなるべく使わない

素人の方からは意外に思われるのですが、弁護士は事実を語るのであって、相手を非難するのが活動の本質ではありません。

裁判所としても、事実に基づいてどちらかの当事者を勝たせるのであって、人間性や雰囲気や印象によって勝ち負けを決めているわけではありません。

その意味では、書面に
「不当」
「非常に公平を欠く」
「誠実とはいえない」
「明白に虚偽といえる」
「明らかに矛盾する」
等修飾語を書きつらねられても、裁判所としては困るわけで、
「何時、誰が、どこで、どのようなことを、何回した」
から
「不当」
というのか、評価の根拠となるべき事実を知りたいのです。

裁判官の中には、当事者の書面から修飾語を、意識の上で墨塗りして読む人もいると聞きます。

ですが、いちいち墨塗りさせる手間をかけさせるのもよろしくないので、
「評価の根拠となる事実を書かず、華麗な修飾語やレトリックで相手の揚げ足を取るような文書」
は控えた方がいいでしょう。

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00569_裁判所提出書面への「読ませる工夫」:(1)10頁の原則

裁判所に提出する書面のボリュームについては絶対量というのが存在しますが、これがだいたい10頁といわれています。

依頼者からすると言いたい事は山ほどあるのでしょうが、高度な専門性をもつ医療訴訟や知的財産権訴訟、商事紛争を別とし、通常の訴訟であればだいたい10頁もあれば相当な情報量になるので、これ以上書くと裁判官が読んでくれない(読んだとしても、ポイントを絞りきれず、認識が希薄になる)可能性が出てきます。

ですので、どんなに複雑な事象説明でも、提出書面1通につき、10頁以内に収めることが推奨されます。

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00568_訴訟弁護士として、「対裁判所外交(渉外活動)」展開上、注意すべきポイント3:文書を負荷なく読んでいただくための工夫

訴訟においては、訴状、答弁書、準備書面という形で訴訟の進行に応じて様々な書類を裁判所に提出します。

法律家は、小難しいことを書いた大量の文書に常に接しているため、速読に長けた人が多いですし、裁判官も例外ではありません。

ですが、速読に長けたスーパーマンといえども、仕事として義務感でやるからできるわけで、小難しい文書を長時間読まされることが苦痛なことには変わりありません。

訴訟事件というのは、過ぎ去ったことを、あいまいな資料をもとに、事実が
「あーだった、こーだった」
と言い争うわけですから、つまんないことが一杯書いてあるわけです。

自分自身にとっては、関心も興味もない、つまんないことが延々書いてある長文を読めというのは、上記のとおり非常な苦行なわけですが、当事者が裁判官に求めているのは要するにそういうことです。

「裁判官はお客様」
であり、
「お客様は神様(Customers are always right.)」
なわけですが、
「『訴訟において言い分を書いた書面を提出するということ』は、『尊い神様に苦行を強いている』のと同じである」
という自覚が必要であるとともに、少しでも神様を苦行から解放させてあげる努力が必要です。

要するに、
「言いたいことを、言いたいだけ、言いたいように書きつらねる」
というスタンスは神様である裁判官の印象を非常に悪くするわけで、
「たたり」
ならぬ
「敗訴判決」
が下されることになります。

逆に、尊くおわします神様ならぬ裁判所様に、恐れ多くも畏くも、当方のお目汚しの駄文を読んでいただく以上、少しでも負荷なく、あるいは楽に読んでもらうため、提出文書に工夫や配慮をしておくと
「あとできっといいことがある」
ということになります。

どの弁護士さんも、裁判に勝つため、あるいは和解交渉を有利に進める環境を作るため、裁判所提出書面には
「読ませる工夫」
をされているようですが、代表的なものとしては、

1 10頁の原則
2 修飾語やレトリックは「法曹禁止用語」としてなるべく使わない
3 要件事実を意識しながらストーリーにメリハリをつける
4 相手が争いようのない客観証拠を共通認識としてストーリーを構築していく

といったものです。

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00567_訴訟弁護士として、「対裁判所外交(渉外活動)」展開上、注意すべきポイント2:早めの心証形成に協力

裁判官には早めに事件の全体像をみせてあげることが重要です。

裁判官は時間がありません。

弁護士が忙しいといっても、長時間かけて晩飯を食ったり、銀座でクラブ活動をしたり、ヨットに乗ったり、ゴルフに行ったりする程度には時間的余裕があるものですが、裁判官の忙しさは殺人的です(実際、忙しさで病んでしまい、自殺者が出たりもします)。

そんな、掛け値なしに
「死ぬほど」忙しい裁判官
に、
「ある種、どうでもいい、ロクでもないトラブルの話」
を聞いてもらうのですから、よほど要領よく話をしないと、話の全体をわかってもらう前にうんざりされてしまいます。

時間に追われる裁判官は、少しでも早く事件の全体像を把握したがっています。

そして、一度把握した事件の全体像は、よほどのことがない限り、修正したりしません(事件の全体像をコロコロ変えると時間の無駄につながりますから)。

ですので、事件は後半ではなく、初動段階が勝負です。

この段階で、いかに裁判官に効率的に事件の全体像を示すかが、勝負のポイントになります。

弁護士さんによっては、事件の初動段階では素っ気ない主張しかせず、最終段階であーだこーだ議論を展開する、
「差し馬」みたいな方
がいますが、後半でがんばっても裁判官はすでに心証が形成されてしまっているので、ほとんど読んでいない(あるいは逆に粗探しの材料を提供するだけ)という状況になっている場合がほとんどなので、後半巻き返すという戦略は定石からかなり外れます。

要するに裁判官は、
「食の細い食通」
みたいなもので、前菜で料理の腕が判断されるので、前菜で手を抜くと、メインやデザートでいかに美味しい料理を作っても星がもらえない、ということになります。

いずれにせよ訴訟は
「先行逃げきり」
の戦略が重要で、裁判官が早めに事件の全体像がつかめるように初動段階で充実した主張を展開することが遂行上必須です。

とはいえ、きちんと調べた上で主張しないと、依頼者のいい加減な話を鵜呑みにして客観証拠を精査せずに風呂敷を広げるのも危険です。

依頼者の話がころころ変わったり、相手が提出した客観証拠との矛盾を露呈したり、釈明に窮したりすると、挽回が不可能な状況に陥ります。

また、高度な戦略になりますが、相手方に好きなように言いたいだけ言わせて、後半、山のように相手の主張と矛盾する客観証拠を提出してそこで心証を逆転させた方が効果的な場合もあります。

このように例外もありますが、裁判官によっては、こういう弁護士にとって小気味のいい逆転劇も、時間の浪費でありうんざりであると感じる人もいると思われます。

ですので、あらゆる訴訟上の戦略は、お客様である裁判官の事実把握の負荷を少しでも軽減してあげる、という
「顧客第一(Customer First)」
の発想が重要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00566_訴訟弁護士として、「対裁判所外交(渉外活動)」展開上、注意すべきポイント1:納期厳守

訴訟弁護士といっても、実体は、裁判所というお役所の出入りの業者みたいなものです。

そして、出入りの業者風情が納期を遅らせたら出入禁止になるのと同じで、納期厳守は絶対です。

訴訟を遂行する上では、様々な課題の提出が要求され、そのすべてについて納期が設定されます。

曰く、何時何時までに、この点を調べてこい、この点について主張内容を整理しろ、こういう証拠があれば出せ、と。

さらにいいますと、法廷や弁論準備室でのやりとりは時間が限られていますので、期日での時間を効率的に使うためには、議論の素材である主張や証拠は事前に出しておくべき必要があります。

ですので、たいていは、課題提出期限は、期日の1週間前とかに前倒しして設定されますが、無論これも納期厳守、仮に納期が維持できないようであれば、いわゆる報連相(報告・連絡・相談)して事前に対応を協議しておくべき必要があります。

弁護士さんの中には、ルーズな人もいますが、基本的にこういう人は裁判官に嫌われます。

裁判官って、小さいころから宿題とか課題とかいったものはすべて期限内に相当中味のしっかりしたものを提出して先生やママに褒められてきたようなタイプの人ばかりです。

夏休みの宿題を忘れて廊下に立たされるようなタイプの人間は、司法試験や司法研修の段階のはるか以前で淘汰されるので、そんないい加減な人間は裁判官には皆無です。

そういう人がお客様であり、神様ですので、納期感覚がいい加減な出入り業者は裁判所では非常に不快な印象がもたれますし、また客であり神である人の不興を被って稼業が成り立つほど甘くありません。

ですので、訴訟遂行上、納期厳守や遅れた場合のフォローは、単純なことですが、少しでも裁判官の心証をこちらに有利に運ぶためには重要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00565_裁判所への「自己の事案認識」を売り込むセールスを展開する際に、認識しておくべき前提環境(ゲーム環境及びゲームルール)

石田鈍一さん側の代理人としてどのような行動を取るべきかにつき、まず訴訟に対応するための全体の指針をのべ、さらに、本件で問題となるべき点を個別に解説していきたいと思います。

これまで述べてきましたとおり、弁護士にとって本件解決のキーマンは裁判所であり、裁判所という
「お客さん」
をいかにこちら側に引き寄せるか、ということが活動のポイントになります。

優秀な訴訟弁護士であるほど、裁判とは裁判官をターゲットカスタマー(あるいはターゲティッド・カスタマー)として、
「自己の事案認識」
を売り込むセールスないしマーケティング活動であることを知っています。

裁判所の好むロジックや文書を用いて、こちらが認識している事実と裁判所に認識してもらいたい事実のギャップをどのようにして埋めていくかを考える必要があります。

弁護士の中には、正義や人権を振り回したり、相手方の主張の些細な矛盾や破綻を長々とほじくりかえしてはそのことで鬼の首でも取ったかのようになっている方がいますが、裁判官とすればこのようなことはどうでもいい話であって、この種の本筋とは無関係な場外乱闘を聞かせるとウンザリすることとなります。

裁判官としては、判決を下す上で必要かつ十分な情報と、その情報の合理性を基礎づける背景事情とを、早い段階で欲しています。

そして、
「その情報の合理性を基礎づける背景事情」
における合理性とは、社会常識と同義ではありません。

むしろ社会常識とは完全に異なる、
「合理的法律人仮説(筆者が勝手に呼称しているものです)」
とでも称すべき合理性が裁判官を支配していると思われます。

合理的法律人仮説とは、すべての人は、法的合理性と経済合理性にしたがって行動するはずである、とする仮説です。

例えば、保佐や後見の処置をしていない認知症の進んだおばあさんが1億円のリフォームを発注し、契約書が締結され、リフォームの工事が完成し代金が支払われたとします。

この場合、社会常識からすると、当該発注はおばあさんの意志ではなく、明らかに業者の詐欺です。

ですが、裁判官を支配する合理的法律人仮説によると、

  • 意思能力に問題や不安があれば保佐や後見の措置を取るのが普通であり、認知症のまま放置されることはあり得ない。
  • 保佐や後見の措置を取っていないおばあさんは、取引の意思決定において完全性に欠けるところはないと思われる。
  • 人は、不要なリフォームを発注するはずなどなく、発注するからには、相見積もりをするなど、慎重に業者を選定し、十全に価格交渉を行い、請負契約を締結するはずである。
  • 人は、中味を読まずに契約書に署名押印するはずなどなく、契約書記載の条件すべてについて吟味し、不服があれば交渉の段階で異議を唱え、納得の上契約書を締結しているはずである。
  • 契約書に基づき互いの義務が履行されているのに、後からそれがおかしいとかいうのは公平ではなく、そういう後出しジャンケンやわがままを認めると、取引社会が崩壊する。

ということになります。

こういう考え方がひどいとか、矯正が必要とか、という話はあるのでしょうが、それは別の問題です。

訴訟弁護士にとって、上記はゲームを展開する上での所与条件であり、これをふまえて最適な行動をしなければならないのです(例えば将棋で桂馬を前に動かしたり、銀を横に動かしたりするとゲームが成立しないように、負けそうになったからといってルールの不当性を訴えても仕方がないのと同じです)。

上記のリフォームの事例ですが、
「合理的法律人仮説」
からするとひどい展開になりそうですが、だからといって絶対的におばあさんが負けるというわけでもありません。

おばあさん側の弁護士は、戦う上で、ハンディキャップを負担していることを認識しなければなりませんし、デフォルトの設定において不利な状況を覆すよう、さまざまな主張や証拠を用い、また裁判官にこちらのロジックを理解浸透してもらうよう、効果的な
「セールス」ないし「マーケティング」
をしなければならない、ということになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00564_裁判所の「偏向的思考習性(独特のバイアスや認知フィルター)」を知る

裁判所の
「偏向的思考習性(独特のバイアスや認知フィルター)」
をいくつか紹介してみます。

とはいえ、経験と主観に基づくものなので、正しい姿かどうかは知りませんが、参考にはなるかと思います。

1 書面による証拠がなければ事実とは認められない
争いになりそうな事実や重要な事実については、一般的に文書化するものだし、文書化されない事実は存在しない事実である。

2 法律や法的合理性にしたがった行動をした方を保護する
逆に法的合理性を無視して、社会常識にしたがった行動をした人間は保護しない。

3 性悪説に立って、全てを勘ぐる、目つきの鋭い、シビアな人間が大好き
性悪説に立って法的予防措置を取るため行動した人間は
「法的に勤勉な人間」
であり勝訴させるが、性善説に立って他人を万事信頼して何も紛争予防措置を取らなかった人間は
「法的に怠惰な人間」
であり敗訴させる。

4 情緒は無視。事実しか見ない
法律に則った主張を簡潔に記した書面はきちんと読んで採用するが、心情に訴えるような主張や形容詞や副詞の多い書面は読まずにポイする。

5 「裁判でウソつき放題」はもはやお約束。尋問においてウソをつくのは当たり前
理路整然としたウソをついた方の話を真実と認める。
あと、銀行員とか役人とかはウソをつくはずがないと考えられる。

6 できれば判決を書きたくない
和解で終わるのが一番いい。
合理的な和解案を拒否するヤツはコノヤロ、あとで判決になったら覚えとけ、とか思ってしまう。

7 勝敗が微妙な事件の場合、負けても控訴しなさそうな方(訴訟費用とか出せないビンボーそうな方)を負けさせた方がいい
「負けたらすぐに控訴しそうな、勝気でお金をもっている方」
を敗訴させると控訴されてひっくり返され、出世に影響しかねないし。

6や7は
「私が裁判官だったらこうするかもしんない」
という程度の与太話です。

ホントの裁判官がそこまで腐っているとは考えたくありませんが。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00563_訴訟における、最重要の「敵」、裁判所を知る

訴訟事件において、裁判所が最大のジョーカーになります。

世間一般のイメージと実体が異なるってのは、世の中においてよくみられる現象ですが、裁判所もその1つです。

裁判所というのは、常に真実を発見できるオールマイティな権力をもった神様ではなく、他の一般のお役所同様、機能的限界が内在する機関です。

当然ながら、お役所ですから、役所内部のルールに沿って言い分を申し述べないとまったく動いてくれませんし(このような特殊なルールないし体系を要件事実論なんて呼んだりします)、お役所が動きやすい環境を作るのは、お役所から何らかのアクションをもらう側としては当然の義務です。

役所に出向いて、プラカードやメガフォンをもってワーワー叫んでも役所は何にも協力してくれませんが、一定の方式に則って完全な文書を準備して提出し、役所が好むロジックを使って説得すると、お役所は様々な便宜を図ってくれます。

我々弁護士の活動というのは、片手に依頼者というお客、もう片手に裁判所というお客(「判決」という我々のもっとも欲するものを出してくれるという点で、依頼者より大事な「お客さん」といえます)を抱え、その両者の認識を整合させるようにすることにあります。

バカもハサミも役人も使いようです。

このような機能的限界を十分踏まえた上で活用しなければなりませんし、逆にこういうことを踏まえず
「機能的限界のない常にかつ当然に真実が発見できる完全無欠の神様」
と考えるとたいてい訴訟運営に失敗します。

神でもなく、全能でもない、裁判所に依存したり甘えたりせず、
「機能的限界がある、気の利かない、使い勝手の悪い、何を考え、何を言い出すかわからない、世情に疎いが、ただ、独裁的権力を振り回すだけの、不気味な公務員」
と考え、うまく使いながら、
「敵」
ではなく、こちらの味方になってもらい、ハサミのように使うべきです。

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