00514_事業承継税制の具体的内容と、事業承継税制を考えなくてもいい場合

「事業承継税制」
とは、非公開会社の株式を贈与・相続する場合、普通であれば、株式価値を評価した上で、贈与税・相続税が課されますが、納税を猶予することを内容としています。

施行されたのは平成21年ですが、先代の経営者は役員を退任してからじゃないと株式を贈与できないとか、従業員の8割をそのまま雇用し続け、一時的にも下回ってはならない等の厳格な要件が設定されていた上、経済産業大臣の事前確認まで必要という使い勝手の悪さから、閑古鳥が鳴いているという状況にありました。

その後の改正により、先代経営者は贈与後も役員に留任可能となり、経営基盤を引き続き用いることができますし、また、雇用の維持についても大幅に要件が緩和されました。

加えて、主務大臣の事前確認も不要となりましたから、使い勝手が極めて良くなったといえます。

ただし、緩和されたとはいえ、これら要件は事業承継後も満たし続ける必要がありますので、一度納税が猶予されたとしても、要件不充足のときには納税猶予が取り消され、納税する義務が生じることになります。

なお、事業承継税制というと、何か税金が
「減る」「トクをする」イメージ(というか妄想)
が脳内に充満してしまいそうですが、要するに、
「納税猶予」
すなわち、クレジット払いとかリボ払いとかと同じで、単なる支払いの延期です。

事業承継税制に対応するため、税理士さんに来てもらって、お金や時間や労力を総動員して大騒ぎするような方もいますが、普通に時価で承継でき、その資金も用意できるなら、そんなに必死に頑張らなくてもいい話です。

さらにいえば、出口戦略を明確に描き、後継者を早めに決めて、十分な時間的冗長性を持って、しっかりとした段取りで進めれば、あまり慌てるような話でもありません。

加えて、株価の含みが莫大になるほど事業が大成功しているなら、
「IPO(株式公開)」

「M&A(事業売却)」
という“究極の事業承継”も試してみる価値あり、といえます。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00513_事業承継ニーズの増加と承継を進める際に立ちはだかる課題

事業承継とは、その名のとおり、会社の経営を後継者に引き継ぐことをいいます。

一般に、中小企業等においては、オーナー兼社長の人脈や経営能力が会社経営の基盤となっていることが多く、このような経営基盤を引き継ぐのが誰であるのかといった人的承継の観点が、事業承継を成功させるにあたっての重要な要素となります。

実際、日本の中小企業をみますと、このような
「人的」
な経営基盤を承継しやすい親族内承継が過半を占めておりますが、その割合は近年急速に減速しており、従業員等やM&Aを利用して親族外に承継させる事例も増加しているといわれています。

経営者としての教育を含めたこのような人的承継について決断したとして、次に問題となるのが、経営権を確保するために株式をどのように移転するのか、という財産承継の方法等です。

株式という多額の資産価値が化体した有価証券が移動するのですから、それまで蓄積されてきた含み益が取引によって一気に現実化しますので、この
「利益」
が生まれた瞬間を狙って、日本最大の暴力団などと揶揄される税務当局がみかじめ料を徴求する機会が生じますので、これを逃れる途はなく、原則として課税が発生します。

逆に、もし、事業が赤字垂れ流しで、あるいは負債が多く、株式価値がゼロに近いという場合、当該事業は、承継する価値がなく、さらにいえば、赤字を垂れ流すということは
「1万円札を2万円で買ってきて、5000円で売りさばいている」
という愚劣なことに資源を投入して動員していることを意味し、経済社会の害毒そのものであり、承継はおろか、一刻も早く消えてなくなってしまった方がいい存在といえます。

要するに、承継する価値のある事業とは、株式に相当の価値が内在している企業を指し、となれば、オーナーシップ承継の上では、内在化・潜在化した価値の顕在化を不可避的に内包することになるのです。

すなわち、税務の問題を抜きにしてオーナーシップの承継を行うことはまず不可能です。

実際、いつどのようにして株式を移動するのかといった承継方法いかんによって、課される税金の額は大きく変わりますから入念な準備が必要です。 

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00512_外国人労働者が業務中の事故で怪我をした場合の適用法令と賠償相場

雇用主は、雇用契約上、従業員に対し
「安全に仕事できるように注意する義務」
を負っています。

これに雇用主がこれに反し、うっかり従業員にけがを負わせてしまった場合には、雇用契約法上の債務不履行責任及び不法行為責任が発生します。

当該責任によって、雇用主は従業員に損害賠償を支払わなくてはなりません。

雇用主・従業員ともに日本人である場合、雇用主が従業員に対し、損害賠償責任を負う義務があるかどうかを判断するために使われる法律は、当然日本法となります。

しかし、例えば、従業員がパキスタン人等の外国人であり、雇用主が日本人である場合には、当然に日本法が使われるというわけではないのです。

このように、日本人と外国人がかかわる民事裁判においては、その裁判において何法が使われるべきなのか決めるための法律があります。

それが
「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」といいます)
です。

この法律は、雇用契約上どの国の法律が使われるべきかと事故の損害賠償等不法行為においてはどの国の法律が使われるべきか、といったことから、国際結婚や国境をまたぐ相続の際に使用すべき法律を、当事者の国籍や行為の行われた地等から適切に使用されるように規定されています。

まず、雇用契約のように、当事者間の合意で契約内容が決められる契約については、通則法7条によって
「当事者が選択した法律による」
とされていますので、雇用契約の際に
「日本法による」
と書いてあれば当然日本法となります。

「当事者間で予め適用する法律など選択していないよ!」
という場合でも、通則法8条によって、契約当時にもっとも密接な関係のある地の法律が使用されるとなっています。

一般的に、日本国内において日本人に雇われた場合は、日本法となるでしょう。

また、不法行為については、通則法17条によって
「加害行為の結果が発生した地の法」
が使用されるべきとされています。

そこで、例えば、外国人労働者であれ、けがが日本で発生した場合、日本法が適用されます。

したがって、雇用契約上または不法行為上の責任を判断する際に使用される法律は、いずれも日本法となります。

裁判で日本法が適用される以上、外国人であるからといって、賠償額が安くなる等ということはありません。

しかし、例えば、発展途上国から短期在留資格で一定期間日本で働いた後は、母国へ帰ることが前提となっている場合、日本国での相場で賠償金を支払う、というのはあまりに不公平で企業にとって過酷といえなくもありません。

このような問題点について、裁判所は
「一時的にわが国に滞在し将来出国が予定される外国人の逸失利益を算定するに当たっては、予測されるわが国での就労可能期間内はわが国での収入等を基礎とし、その後は想定される出国先での収入等を基礎として逸失利益を算定するのが合理的ということができる。そして、わが国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無等事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である」
と判断しています(最判1997<平9>年1月28日)。

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00511_下請法(下請代金支払遅延等防止法)が規制する内容

下請法は、下請取引が公正に行われることによって、下請事業者を保護しようという目的で制定されました。

そこで、下請法は、親事業者によって下請事業者に対し従前より行われていたものの、その力関係から泣き寝入りしていた行為、つまり、買いたたきや下請け代金の減額、下請代金の支払いを遅延することや作らせておいた商品の受領を拒否すること、不当に返品すること、物を強制的に購入させたり下請事業者の従業員を強制的に働かせたりすること等を禁止しています。

また、口頭発注によるトラブルを未然に防止するため、親事業者は発注に当たって、発注内容を明記した書面を交付しなければなりません。

具体的には、

1 親事業者と下請事業者の名称
2 委託を行った日付
3 下請事業者による作業内容
4 納入日
5 納入場所
6 納入物の検査をする場合はその検査が完了する日
7 下請代金の額
8 下請代金の支払期日の他、手形決済の場合等特別の約束がある場合には金額や期日等

をさらに明記する必要があります。

この書面交付義務に違反すれば、50万円以下の罰金が課せられます。

たしかに、下請法に規定されている罰則は、書面交付義務に違反した場合で、しかも、罰則内容は、最大でも50万円の罰金しかありません。

しかし、下請法に違反した場合は公正取引委員会及び中小企業庁による勧告や公表が行われると規定されています。

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00510_下請法(下請代金支払遅延等防止法)の適用範囲

親事業者と下請事業者の力の差によって生じる
「下請いじめ」
を取り締まるために下請法(下請代金支払遅延等防止法)が制定されています。

下請法における
「下請取引」
に当たるか否かは、取引当事者の資本金(出資の総額)の額と取引の内容で決まります。

下請法が適用されるのは、
1 資本金の額(出資の総額)が3億円以上の事業者が、個人または資本金の額(出資の総額)が3億円以下の事業者に対し、製造委託等をする場合、
もしくは、
2 資本金の額(出資の総額)が1千万円を超え3億円以下の事業者が、個人又は資本金の額(出資の総額)が1千万円以下の法人たる事業者に対し製造委託等をする場合で、親事業者が、物品の製造加工や修理、映像コンテンツやデザインの作成、運送等のサービス提供を他の事業者へ委託する場合
と、なります。

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00509_他人に実印を預けたばかりに、連帯保証人にされてしまうリスク

自らの意思に反し、勝手に連帯保証人とされていたような場合、本人は連帯保証人となる意思がないわけですから、法律理論上、本人に連帯保証の効力は及びません。

しかし、本件のように、自分の実印を他人に預けていたところ、知らない間に連帯保証人となっていたという場合、自らの実印の押された保証契約書が外形上存在する、といった状況が出てきます。

保証契約における保証契約書や売買契約における売買契約書など、契約等の法的な取引(専門用語で「法律行為」といいます)が記載されている文書を
「処分証書」
といいます。

このような処分証書には法律行為の内容そのもの、例えば
「AはBの債務を保証する」
とか
「AはBに対してX不動産を売却する」
といった事実が、ばっちり記載されている、いわば
「取引を示す動かぬ証拠」
となります。

法律行為の有無が争いになった場合、裁判所においては、処分証書があれば当該法律行為があったという認定をするのが原則となっています。

ただし、このような認定がされるのは、処分証書が真正に作成されたことを前提としています。
「処分証書が真正に作成された」
とは、本人の意思どおりに処分証書が作成された、ということです。

この点、民事訴訟法228条4項は、
1 本人の押印がある場合には本人が記載された事実を行う意思のあったこと
及び
2 本人の意思に基づいて押印をしたと推定される
と規定されています。
したがって、自分の印鑑が押印してある処分証書がある場合、処分証書に記載されてある事実が認定されてしまうケースが極めて高いのです。

しかし、実印があれば、必ず
「真正に作成された」
と推定されるわけではありません。

上記2の推定がされる理由は、
「実印は大切に保管・使用されており、みだりに他人に手渡したりしないものだから、作成名義人の印章が押されているならば、特段の事情ない限り、それは作成名義人が自らの意思に基づいて押したものだ」
と考えられるためです。

しかし、実印が盗難に遭ったり、同居の親族に無断で使用する場合もあります。

このような場合にまで、2の推定が働くわけではありません。

ただし、民事訴訟法228条4項があるので、
「特段の事情」
を本人が裁判所に対し明らかにする必要があります。

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00508_取締役が競業避止義務に反して、ライバル企業となる事業を始めた場合の法的責任

取締役が競業避止義務に反した場合、どのような責任追及がなされるのでしょうか。

00507のように、会社と取締役は委任契約が締結されており、取締役は、会社にとって最善の策を取る義務があります。

そこで、本件のようにワンマン経営を行っていた会社の代表取締役が、競業避止義務に反して新しい会社を設立したケースについて、判例では、
「代表取締役が新しい会社を設立したのは、会社が代表取締役に対し、新しい部門を設置するようにとの委任があったと考えるのが合理的である」
として、
「当該委任義務の履行として、新しく設立した会社を元の会社の一部門とするか、子会社として引き渡す義務がある」(東京地裁判決・昭和56年3月26日『判例タイムズ』441号73頁)
としたものや、代表取締役および新会社に対する損害賠償請求が認められた事例(名古屋高裁判決・平成20年4月17日)などがあり、役員側に厳しい結果が出ています。

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00507_取締役の競業避止義務

株式会社の取締役は、
会社との間で委任関係に立ち(会社法330条)、
会社に対して
“善良な管理者の注意義務(善管注意義務)”(民法644条)および
忠実義務(会社法355条)
を負っています。

これは、簡単にいうと、
「会社は、取締役を信頼して会社の業務執行を任せているんだから、一切の私心を抱かず、誠心誠意、会社の利益のため、犬のように忠実に働け!」
ということです。

その上で、会社法356条1項1号は
「取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき」
には、株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)において重要な事実を開示した上で、その承認を受けなければならない旨を規定しています。

これが取締役の
「競業避止義務」
といわれるものです。

このように取締役に競業避止義務が課されているのは、会社の資金やノウハウを利用して情報を集めまくり、その上で、
「自分の会社を設立して、ちゃっかり自分だけが儲け放題!」
となることを防ぐためです。

しかし、若いころからお弁当屋を営む会社に入り、一生懸命お弁当屋さんをやってきて、取締役にまでなり、その後退職して、別の会社を設立しようとしたらお弁当屋さんはできません、というのもなんだか澤倍さんにかわいそうな気もします。

しかし、会社法に明記されており、また、当該取締役さんが会社の100%オーナーシップを有していない以上、仕方がありません。

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00506_パブリシティ権侵害による損害賠償を行う場合の要件

芸能人の容ぼうや姿態を無断で利用したからといってすべてがパブリシティ権の侵害になるわけではありません。

どのような芸能人の容ぼうや姿態の利用がパブリシティ権の侵害になるかというと、この点につき裁判所は、
「肖像等に顧客吸引力を有する者は、社会の耳目を集めるなどして、その肖像等を時事報道等に使用されることもあるのであって、その使用を正当な表現行為等として甘受すべき場合もある」
と権利範囲に相当な制限を加えた上で、
「1 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、
2 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、
3 肖像等を商品等の広告として使用するなど、
専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合にパブリシティ権の侵害と認めることができる」
と判断しました(最高裁2012<平成>24年2月2日判決)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00505_パブリシティ権とは

自己の承諾なしに、自己の容ぼうや姿態を撮影されたり描かれたりされず、また、自己の写真等をむやみに公表されない権利を肖像権といいます。

この権利は、明確に何らかの法律上にはっきりと規定されたものではありませんが、国民は憲法13条によって国民の私生活上の自由が保障されており、その一環として認められている権利です。

そして、肖像権は、このような私生活上の自由として保護されているだけではありません。

肖像という個人の容ぼうや姿態は,商品の販売等を行うに際して、これを促進する顧客吸引力を有する場合があります。

そこで,このような顧客吸引力を利用する権利は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくものとして保護されます。

これが肖像権のうち
「パブリシティ権」
と呼ばれるものであり、裁判所によって認められた権利なのです。

プライバシー権という人格上の利益が侵害された場合は精神的苦痛という低い賠償相場の事案にとどまるのに対し、パブリシティ権という経済的利益が侵害された場合、高額な経済的利益の回復も求めることが可能になります。

つまり、
「使用許諾契約を締結した場合の許諾料を損害として算定し、これをすべて賠償せよ」
というような議論が可能となるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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