00424_違法残業により役員個人が責任を負う場合

会社が責任を負うとしても、役員個人が賠償責任を負うなどということがあるのでしょうか。

この点について、過労死等の場合、会社が責任を負うのはともかく、役員
「個人」
が賠償の義務を負うなんて考えられないという経営者が大半であると思われます。

しかしながら、役員個人も損害賠償責任を負うとの裁判例が近年出されていますので十分な注意が必要です。

これは、
「安全配慮義務」
を会社が負う以上、取締役個人としても、かかる義務を実施可能な会社の体制を万全に構築する義務があり、それを構築していなかったということが責任の理由とされました(「大庄事件」京都地判2010<平成22>年5月25日及び大阪高判2011<平成23>年5月25日。最高裁は上告棄却、上告不受理決定 )。

取締役らが、企業経営の全般について重い善管注意義務を負っていることは皆さんご存じのとおりです。

そして、役員は善管注意義務違反によって損害賠償責任を負うことになるのですが、同判決では、労使関係が企業経営に不可欠であるため、会社の
「安全配慮義務」
を万全にするための体制構築義務も、善管注意義務の具体的な一内容であると明確に判示されたわけです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00423_違法残業から生じる多大なリスク

残業とは、法定労働時間を超過して働かせることをいいますが、この場合、まず労働基準法36条に基づく協定(36協定)の締結が必要です。

そして、週40時間以上勤務させるような法定外残業の場合には、残業代として基本給の25%増を支払わなければなりませんし、それが休日の場合には35%増とする等の規制が働くことになります。

加えて、これらは取締法規であるため、違反行為に対しては刑事罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)も定められています。

実際に、2003年2月3日には、特別養護老人ホームの経営者が、残業手当を支払わずにサービス残業をさせていたなどとして逮捕されるという事件が起きています(共同通信)。

このように、会社には、法で定められた時間を超えて従業員に残業をさせている場合には、未払残業代の支払い義務が生じることはもちろんですが、さらに、仮に超過勤務が原因で従業員が過労死してしまったような場合には、安全配慮義務違反(労働者の生命及び健康等を危険から保護すべき義務の違反)があったとして損害賠償義務まで負担するとされています(「電通事件」、最高裁2000<平成12>年3月24日判決)。

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00422_長年続いてきた契約をいきなり終了する場合の法的リスク

わが国の取引における基本的ルールとして、誰とどのような契約をしようが一切自由である、とされています(契約自由の原則)。

これは、
「取引社会に参加する者が、それぞれ己の知力や財力を最大限に活用して、自由に契約交渉を行い、互いに競争させる基盤を確保することが、市場経済の発展には必須である」
という考えに基づくものであり、資本主義的自由競争国家である日本にとっては国是ともいえる法理です。

契約の自由の原則は、契約をぶった切る自由(契約終了の自由)も保障しております。
したがって、
「契約期間2年の契約を3回更新して合計6年間にわたってお付き合いをした後、より好条件の相手が見つかったので、更新を拒否し、それまで世話になった相手をボロ雑巾のように捨て去り、新しい相手に乗り換える」
ということも本来自由です。

とはいえ、長期間、強固な信頼関係の下に反復継続して更新されてきた契約関係を、一方当事者が全く自由気ままに解消できることを許すと、他方当事者にとって死活問題となるほどの打撃を被らせることになり、あまりに衡平の理念に違背します。

このようなことから、一定期間反復継続されて更新されてきた継続的契約において、更新拒絶が他方当事者にとって不当な打撃を被らせるような場合には、一定の要件の下、
「継続的契約の自由勝手な更新拒絶」
に対する歯止めをかける裁判例が登場するようになりました。

裁判例としては、
「契約の有効期間を1年間とし、期間満了3か月前までに当事者のどちらか一方が通知すれば、契約を終了させる」
との約定があった事案について、札幌高裁1987(昭和62)年9月30日判決は、
「契約を存続させることが当事者にとって酷であり、契約を終了させてもやむを得ないという事情がある場合には契約を告知し得る旨を定めたものと解するのが相当である」
と判示しました。

これ以外にも、複数の裁判例が、
1 「製品の供給を受ける側が、契約の存在を前提として製品販売のために人的物的投資をしている場合など、取引が相当期間継続することについての合理的期待が生じていたと認められる場合」であって、
2 「製品の供給をする側もその期待を認識していた場合」には、
公平原則又は信義誠実原則に基づき、契約の継続性が要請されるなどとして、継続的契約の更新拒絶に合理的理由を求めるべし、
としています。

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00421_検収を放置すると、債務不履行責任を問えなくなるリスク

ビジネスのプロ(商人)同士の取引を規律する商法は、検収や債務不履行について、特別なルールを定めています。

すなわち、商法526条は、商人間の取引について、
「1項 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
2項 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があることまたはその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額もしくは損害賠償の請求をすることができない」
と定めています。

要するに、商法においては
「プロの商売人として取引を行っている者同士の取引の場合、商品を受け取った買主は、直ちにその商品の数量、品質等を検査せよ。
そういう大事なことを怠って、家族旅行等というどうでもいいことを優先するダメな商売人は法的措置を取ることは許さん!」
とされているのです。

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00420_約束違反(債務不履行)が生じる場合と、被害当事者の取り得るアクション

頼んだ商品がまだ届かない、頼んだ商品が届く前に消滅してしまった、商品は届いたが数が足りない、といった
「債務者が債務の本旨に従った履行をしない」
場合を総称して債務不履行といいます。

そして、この債務不履行は、概ね、
1 例えば、12月24日までにケーキを届けるという契約において、24日を過ぎてもケーキが届かないといった場合の「履行遅滞」
2 例えば、神奈川県葉山の別荘を買う契約を締結した後に別荘が燃えてしまったといった場合の「履行不能」
3 例えば、赤ワインを10本頼んだのに、8本しか届かず、しかも3本は白ワインだったといった場合の「不完全履行」
に分類することができます。

“一部破損”や“数の不足”といった場合、前記3に該当すると考えられますが、このような場合、債権者は民法上、
「債務の本旨に従った履行を求める権利」
を行使し、完全品との交換を請求したり、足りない分の追完を請求することができます。

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00419_苦労して作り上げたデータベースも、著作物として保護されないリスクがある

著作権法は、データベースについて
「データベースの著作物」
として保護されると規定されています。

しかし、著作権法は、
「創作的表現」
を保護するものであり、すべてのデータベースが平等に保護されるわけではありません。

同法によれば、
「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するもの」
のみが保護されるとされています(同法12条の2)。

条文の文言から明らかなように、
「情報の選択」

「体系的な構成」
に独自の表現が存在することが、著作権法上保護されるための要件となっているわけです。

もう少し砕いていえば、たとえば、車に関するデータベースを考えてみると、
「実際に乗ってみた場合の主観的な乗り心地」
とか
「購入者の職業・家族構成」
のように、車に関するデータとして通常収集される年式・車種等を超えて独自性が認められる指標が存在する場合には、
「情報の選択」
に創作性が存在すると判断される余地があります。

また、
「ある車を検索すると似たフォルムの車が、お勧めとして自動でツリーのように表示される機能」
があったりすると、検索の利便性を独自に高度化しているために、
「体系的な構成」
に創作性が存在するとして、
「データベースの著作物」
と認められる可能性もあるものと考えられます。

ところが、著作権法は、上記のようにあくまでも
「創作的な表現」
を保護するものであり、人の努力の程度によって保護する、保護しないを決するわけではありません。

すなわち、ピカソが5秒でなぐり書きをしたスケッチは独創的な絵画としてもちろん著作物とされるものの、車についてありふれた条件を収集し、ありふれた体系に整えることに何年時間をかけたとしても著作物とはならず、たとえ、データの個数が100万個を超えていようが保護されないものはされないのです。

この点、
「額に汗をかくぐらい、お金と労力をつぎ込んだものについては、著作物として保護すべき」
という
「額に汗の法理」
が諸外国では唱えられることがあります。

このような法理は、EU諸国では比較的認められることもあるといわれていますが、日本や米国では、著作権法の趣旨に合わないことから残念ながら採用されていません。

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00418_「優越的地位の濫用」に対するペナルティ

経済の発展のためには、市場のプレーヤーたる契約当事者らが競争を続けることが必要であり、そのために、自由な契約交渉を行い、自由に契約を締結できるのが原則となっています。

ところが、弱肉強食の経済体制を放置すれば、かえって強者のみが勝ち続けて競争がなくなり、経済が発展しなくなります。

そこで、独占禁止法は、
「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」
「正常な商慣習」
に照らし不当な取引をすることを禁止しています。

具体的には、優越的な地位を利用して、取引の相手方に従業員を派遣させたり、経済上の利益を提供させることや、在庫品を引き取らせることなどが、
「優越的地位の濫用」
として禁止されています。

公取委は
「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」
というガイドラインを作成しています。

これによると、
「取引の継続が困難になることから、著しく不利益な要請を受けても受け入れざるを得ない場合」
であれば
「優越的地位」
に当たるとされ、公正な競争秩序の維持から是認されるものが
「正常な商慣習」
であるとされています。

例えば、70店舗、年商1千億円と結構な規模のスーパーのチェーンストア会社と、この納入業者との関係をみると、納入業者としては言いなりにならざるを得ず、スーパーがその地位を濫用して本来の競争では起こりえないような無茶な行いをすると、公正な競争秩序が維持できないことから、優越的地位の濫用と判断される可能性があるといえます。

独占禁止法に基づき、公取委は、優越的地位の濫用について、
「排除措置命令」
だけではなく、
「課徴金納付命令」
すなわち、課徴金を納付させる措置ができます。

優越的地位の濫用をした事業者は、優越的地位の濫用をした相手方との間の取引額の1%を、課徴金として国庫に収めることになりましたので、
「お叱りを受ける」
「謝れば済む」
わけではなく、かなりの経済的ダメージを被ることになります。

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00417_「あらゆる努力をして世の中に存在する種類物をみつけてきて引渡す義務」が、「手元にある商品を引き渡せばそれでお役御免」に軽減される場合

取引が一定程度進行すると、
「種類物」
を引き渡すための準備として、物を梱包したり、
「〇〇社宛」
といった名札を付けたり、といった作業を行い、最終的に引き渡す物を限定していくことになります。

その結果、実際に引き渡すものが確定することになりますが、この状態を
「種類債権の特定」
といいます。

では、どのような行為をすれば
「種類物」

「特定」
するのかが問題となりますが、
「家具屋で購入したベッドを自宅まで届けてもらう場合」
など、契約上、引渡先まで持参することになっている場合には、当然、持参先まで届けなければ
「特定」
はしません。

他方、契約上、
「ワインを倉庫まで取りに来る」
ことになっている等の場合は、
1 「種類物」を他の物と分離し
2 これを権利者に通知することで「特定」する
と考えられています。

そして、
「特定」
した後に当該
「種類物」
が滅失してしまった場合には、もはや同じ種類の物を引き渡す義務は消滅し、他方で、原則として、物の代金を請求する権利は存続することになります(債権者主義。民法534条2項)。

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00416_特定物と種類物の違いと、売買における法的取扱のポイント

不動産や骨董品のように、その物自体の個性に着目し、世の中に1個しか存在しない物を取引の対象とする場合、その物を
「特定物」
といい、当該特定物の引き渡しを受ける権利のことを
「特定物債権」
といいます。

次に、フランスの赤ワイン12本、といったように、一定量の同じ種類の物を売買等の引き渡しの対象とする場合、その物を
「種類物」
といい、当該種類物の引き渡しを受ける権利のことを
「種類債権」
といいます。

なぜこのような分類がされるかといいますと、地震や台風といった誰のせいにもできない出来事により取引の対象となる物が滅失してしまった場合に、物の引き渡しを受ける権利はなくなってしまうのか、また、物の代金等はどうなるのかといった問題を、物の性質に応じて予め取り決めておく必要があるからです。

すなわち、
「特定物」
であれば世の中に1個しか存在しないので、滅失してしまえばその物の引き渡しを受ける権利は消滅することとなりますが、
「種類債権」
であれば、世の中に同じ種類の物が存在する限り、引き渡しを受ける権利は消滅しません。

この場合、物の引き渡し義務を負う側は、依然として同じ種類の物を引き渡さなければなりません。

すなわち、どこから引き渡し対象の
「商品」(種類債権なので、同じ種類の物が世の中にいくつもあるので、探せば見つかります)
を探してきて、引き渡し義務を履行する準備を整え、約束を果たさなければなりません。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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00415_採用内定を取消す場合の手続き

「人を雇う」
という契約は、いったん成立すると、解消は大変困難です。

雇用と婚姻とは取引としては酷似しており、
「結婚は簡単だが、離婚は大変」
なのと同様、
「採用は安易にできるが、採用した人間を辞めさせるのは極めてハードルが高い」
といえます。

すなわち、解雇は
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法16条)
とされていますが、労働者がよほどのこと、それこそ横領・背任等の犯罪行為やこれに準じるような非違行為でもやらかさない限り、要件の充足は困難と考えられています。

では、
「採用内定を出したが、やっぱ気に入らないから、採用やーんぺ!」
としたい場合はどうでしょうか。

結婚になぞらえると、
「婚約したが、やっぱり婚約解消します」
ということになりますが、これもカンタンに解消できる、というものではなく、それなりに苦労が待ち構えています。

そもそも採用内定の法的性質はどういうものでしょうか?

一般に、採用内定とは
「始期付解約権留保付労働契約」
といわれます。

なんだか、難解な漢文みたいですので、カンタンな日本語に翻訳しますと、
「一応ちゃんとした契約なんだけど、開始時期が4月になっていて、企業側にキャンセルする権利が保持されている、そんな感じの契約」
というものです。

解約権留保付契約、すなわち航空券の予約の様に
「3日前までキャンセルしてもOK」
みたいな契約になっているので、字義通り解釈すると、企業は、
「気が変わったから、やっぱ採用や~んぺ!」
といえそうな感じがします。

しかしながら、最高裁は、採用内定の取消事由は
「採用内定当時知ることができないような事実で、かつ、客観的に合理的と認められ社会通念上相当なものに限られる」
と判断しました(昭和54年7月20日最高裁判決『大日本印刷事件』)。

すなわち、始期や解約権が付いているといっても労働契約には変わりないので、なんでもかんでもキャンセルできるというものではなく、解雇権濫用法理によって厳しく合法性が判断されることになるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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